アクアリストなら「ビオトープ」という言葉を一度は聞いたことがあるはず。しかし、アクアリウムにおいてビオトープはまだまだマイナージャンル。「なんとなく知っているけどあまりよく分からない」ではもったいない!そんなあなたに伝えたい。本記事では、ビオトープの魅力をたっぷりお伝えします。
ビオトープって何?
ビオトープとは、ギリシャ語の生命(bio)と空間(topos)を由来としたドイツ生まれの造語です。日本語では、「生物空間」や「生物生息空間」と呼ばれ、生き物が暮らす空間、生物の生息地のこと、または生物が住みよい環境を人の手で作ることを指します。
アクアリウムにおいてのビオトープは、「水を張った容器内の水生植物と水棲生物の活性により廻る生態系」をいいます。
ビオトープは水場を中心にした生態系を作ることで自然に生き物が集まり、人の手を加えずとも成立する自然の水景をあなたのお宅にもたらしてくれます。
ビオトープを作ってみよう
何はともあれビオトープを作ってみましょう。今回はビギナーでも比較的簡単に管理できるスタイルでの紹介です。スタイルに正解はありません。自分にあったスタイルを見つけてみましょう。
容器を設置しよう
まずは植物や水草を植えるための容器を設置します。ビオトープにおいて、植物は二酸化炭素の吸収・酸素の供給、夏場の水温上昇の緩和、水生生物のストレス軽減など非常に大きな役割を担います。植物を安定して育てるために、明るい場所に容器を置きましょう。理想は『西日が当たらず風通しが良く日当たりの良い場所』ですが、ひと工夫で解決できるので一日中日陰になるようなところを避けて設置すれば問題ありません。
容器のデザインはお好みで、大きさは設置場所に合わせたサイズのものを選びましょう。容器の素材選びに悩んでしまう人は次の基準を参考にしてみてください。
陶器鉢
見た目重視&インテリアとしてのビオトープ作りをしたい方向け
メリット
・デザイン性に優れている
・熱伝導率が低く水温の上昇を防ぐ
デメリット
・重くて扱いにくい
・割れ物である
・高価である
プラスチック鉢
扱いやすさ&コスパ重視の効率派の方向け
メリット
・軽くて扱いやすい
・陶器鉢に比べて安価である
デメリット
・経年劣化する
・プラスチック特有の質感が出てしまう
トロ船(プラ箱)
コスパ重視&生き物をたくさん飼したたい生粋のアクアリスト向け
メリット
安価である
大容量で植物や生き物を多く入れられる
引っかかりがあるため持ち運びやすい
デメリット
プラスチック特有の質感が出てしまう
デザインに幅がない
場所を取る
その他の容器
バケツ
お手軽で場所を取りません。
ボウル
テーブルの上などにも置けてインテリアに最適です。
発泡スチロール
植物や生き物のストックにも便利。経年劣化に注意。
植物を導入しよう
容器が置けたら次は入れる植物を選びましょう、今回はビギナー向けということで容器に直接用土を入れるのではなく、植物が植えられた鉢を容器に入れる方式をおすすめします。鉢に植えておくことで冬越しのできない種類の植物を簡単に家の中に避難させられます。『根が絡み合って取り出せないからリセット……』なんてことにならずに済みます。
植物を選ぶときに役立つ「役割理論」
ビオトープにおける植物の第一の役割は水質浄化ですが、視点を変えれば植物に違った役割を与えることができます。
直射日光を水面に入れない浮葉植物
水面を覆うように葉が広がる浮葉性植物は直射日光を水面で受け止め水温上昇を防ぎます。
また、スイレンは大きな花を咲かせビオトープの主役になることが多いです。
枝葉を広げ水質浄化を促進させ、日陰を作る有茎草
枝分かれし、葉っぱをたくさんつける有茎草は成長が早く水質浄化能力が高いです。
広げた茎や葉によって日陰ができ水温の上昇を防ぎ、魚が涼むことができます。
高く伸び強い茎で外敵から魚を守る (イグサ科植物・ガマ科植物・イネ科植物・カヤツリグサ科など)
高く鋭く伸びるこれらの植物は、鳥や猫などの外敵から魚を守ってくれる頼もしい味方です。
魚に寝床を提供してくれる抽水植物
水深があっても生育に問題がない抽水植物は、水中に複雑な地形を作り出して魚のすみかになります。
また、細い茎を持つ抽水植物は産卵床にもなります。
浮草
ビオトープに浮草を添えることで、より「ビオトープ感」が増すだけでなく、水温上昇の抑制・水質浄化の効果を得ることができます。
種類によってはかわいらしい花もまた、メダカを飼育する場合には良い産卵床になってくれます。
植物は日光を好みますが、水温が上がってしまうと魚によくありません。水温をコントロールするためにも植物選びは慎重に。また、手前には背の低い植物、奥には背の高い植物を持ってくるなどアクアリウムの基本的な知識を応用すればレイアウトのバリエーションも増えます。
生き物を導入しよう
容器の設置と植物の植栽が出来たら、いよいよ生き物を入れましょう。ビオトープに最適な生き物を紹介します。植物を植えて、1~2週間経ってからの導入がおすすめです。
ビオトープにピッタリの生き物
魚
メダカ
かわいらしいビオのアイドル
小さなビオトープから飼育可能で繁殖も可能。肉食性で蚊の幼虫であるボウフラを食べてくれるので、ボウフラ対策にもってこいです。
ドジョウ
ビオトープの掃除屋
下層を泳ぐドジョウは上層の食べ残しや沈んだ餌を処理してくれます。注意点として泥を攪拌してしまうため水が濁る点、高温に耐えられるマドジョウやシマドジョウを選ぶ必要がある点があります。
モツゴ
清流魚のような美しい見た目
水質が安定したビオトープであれば飼育可能です。メダカの天敵であるヤゴを食べてくれますが、メダカとのサイズ差があるとメダカまで食べられてしまうため混泳は厳しいです。体長10cmほどに成長するので大きめの容器(鉢)を用意しましょう。
エビ
ミナミヌマエビ
小さくてヤマトヌマエビより安価です。自然に繁殖をするのでどんどん増えていきます。
※エビは高温と残留農薬に弱いため、水温と使用した植物の安全性を確かめてからの導入をおすすめします
貝
タニシ
コケ取りに加え水中の有機物を食べるため、ろ過能力を有しています。
やや注意が必要な生き物
金魚
水をよく汚し、草食性がとても強いため植物の新芽が食べつくされてしまいます。その一方で、よくコケを食べてくれるという利点もあります。小さい個体を選ぶか、丈夫で固い植物を選ぶ必要があります。
コイ
土を掘り起こす性質があります。金魚と同様に水をよく汚し、草食性がとても強いです。稚ゴイ時期の期間限定ではなく、成魚まで育てたい場合は大きめの容器を用意するか、池クラスの環境を準備しましょう。
※コイの自然環境への放流は生態系に著しい影響を与える可能性があります。放流は絶対にやめましょう。
ビオトープには不向きな生き物
ザリガニ
植物を食べ、気に入らないものは自慢のハサミで切ってしまいます。自分専用のおうちをDIYする天才です。さらには、居場所に飽きてしまえば植物をよじ登って脱走してしまいます。同様の理由でサワガニもビオトープでの飼育は避けた方が良いでしょう。
日々の管理
ビオトープは観察が命です。観察すべきポイントを挙げていきます。
水温
魚だけでなく植物にも最適な温度があります。水温計だけでなく植物の状態も指標にしましょう。
温度が高すぎたらすだれや遮光ネットで日差しをやわらげましょう。風通しの良い場所に移動するだけでも温度が変化します。低すぎる場合は冬越しの準備をしましょう。
水の状態
攪拌させたわけでもないのに水が濁ってはいませんか?濁った水は鑑賞の妨げになります。濁りの色の違いによって次のような対応を取りましょう。
緑色の濁り
水がグリーンウォーターになっています。生き物にとって最適な環境といえますが、気になる方は直射日光を水面に入れないようにすると改善されます。
茶色っぽい濁り
粒子の細かい泥が着底せずに舞っている状態です、何回か水換えをして透明になるのを待ちましょう。
白っぽい濁り
有機物が溶け込みすぎている場合があります。腐ったような匂いがする場合はすぐに水換えをしましょう。
黒っぽい濁り
植物の根などの灰汁、あるいは水自体が腐っている場合があります。水換えを行い、植物を取り出して植え替えも行いましょう。
生き物
毎日観察して異常がないかを確認しましょう。また、外部からやってくる生き物にも注意しましょう。
ボウフラ
蚊が湧きます。メダカなどのボウフラを好む魚を入れると見るからに減少します。
ヤゴ
メダカなどの小型魚を食べます。葉の上に抜け殻を残すので確認しましょう。
ヨトウムシ
ガの幼虫です。植物が食害にあうため、見つけ次第取り除きましょう。ヨトウムシは夜間に活動するので、夜に見まわりを行い割りばしなどで捕殺するとよいでしょう。
アブラムシ
植物の養分を奪います。市販の薬品が有効ですが、薬品に弱いエビなどが入っている場合は足し水の際に洗い流しメダカの餌にしてしまいましょう。
カイガラムシ
植物にくっつき養分を吸い出します。はがし落としましょう。
猫・鳥などの哺乳類
水を飲みに来ます。魚を狙うようであればネットをかけましょう。
ビオトープの管理は、一度生態系を作ってしまえばあとは手を加える必要はほとんどありません。
その他の観察ポイント
・ビオトープの状態が安定するまでは生き物に餌を与え、水が濁ってきたら水換えをしましょう。
・水の蒸発が目立ってきたらカルキ抜きした水を足しましょう。
・風通しも重要。伸びすぎた植物は剪定しましょう。
・ボウフラの湧かない時期に餌を少しあげるなど、細かいバランスを人の手で補いましょう。
やってくる生き物はすべてが害虫というわけでもなく、アブラムシを狙ってテントウムシが来たり、ガを狙ってカマキリが来たりします。スイレンや水辺植物の花の蜜を吸いに蝶がやってきて受粉を助けます。多様な生き物が集まってこそのビオトープです。楽しみましょう。
屋外で楽しめるアクアリウム用品
ソーラー充電式 エアーポンプ
太陽光で充電できるソーラー充電式エアーポンプです。コンパクトなため持ち運びしやすく、川遊びや釣り、熱帯魚の移動に便利なほか、屋外で楽しむビオトープにもぴったりです。ソーラーパネルの向きは変えられるのでる能率良く充電できます。エアストーンやエアチューブ付きですぐに使えます。
テトラ ソーラーフローティング ファウンテン
太陽光発電により運転する噴水装置です。噴水部分とソーラーパネル分離タイプなので、噴水を設置した容器は日陰に置くことができます。魚を飼育している水槽や睡蓮鉢などに最適です。フロート付きなので砂利や砂泥によるモーター停止を減らすことができます。フロートを外せば、モーター付属のキスゴムで水底にも設置できます。噴水作動時、溶存酸素量を増加させます。
▽ソーラーフローティング ファウンテンが作動している様子を動画でチェック!▽
まとめ
カスタマイズの自由度と、外置きならではの自然を意識しながらの立ち上げがビオトープの魅力です。使う植物や生き物、容器や用土など発想次第で無限の可能性が生まれます。
まだまだ未開拓な分野であり、正解はありません。アクアリウム上級者の方も今まで生き物を飼ったことのない初心者の方でも、お庭やベランダにひとついかがでしょうか?
最後までご覧いただきありがとうございました。
コメント