捕食されがちなエビ
まず大前提として、あらゆる肉食動物にとってエビはとってもおいしい。
人間にだっておいしい…。
そのため結論から言うと、水槽内での混泳と考えた場合、ごくごく一部の草食性の魚以外、口にエビが入るサイズの魚にとってはおいしいだけの同居者となります。
水槽という限られた生態系において混泳を考える以上、
できれば「食べたり食べられたりして個体数を維持しながら生態系を保っているのね…」という大局観をもって混泳を見守ってくださいね。
もし、「稚エビ1匹たりとも食べられないようにする!」という高い志を持っているならば、普通の熱帯魚との混泳は全くお勧めしないのです。
生まれたてのミナミヌマエビの稚エビのサイズをご存じですか?わずか2mmにも満たないサイズなんです。
ちょっとヒメダカがあくび(?)した隙に稚エビが口の中に飛び込んで来たら、吐き出すすべはないのですから…。
エビとの混泳の条件
それでも、「水草コケ取りのエビだけが入った水槽では味気ない」と、何とか新たな熱帯魚導入を目論む方は多く、そういった問い合わせが後を絶ちません。皆様の向上心ったら!
もちろん、好む水質がエビと同じぐらいということが大前提ですが、
エビとの相性がいい生き物の条件とすると
「コケや流木などの植物性のものが主食」「底面の残飯掃除をするのでエビに興味がない」
ということは非常に大事な条件です。
また、多少食べられてしまうことは目をつぶっておくとすれば、捕食のリスクが少ない条件として
「遊泳領域がエビと違う」
いわゆる「棲み分け」ができるということも考え方としてはアリです。また、棲み分けのためにエビが逃げ込める水草を多めに植えたり、エビの隠れ家になるようなシェルターを設置したりと環境整備を入念に行ってください。
「口が小さくて温和」
ということもエビとの混泳条件としては必要になります。しかし小さな口でも追い回すこともありますし、お腹がすいたら食べようとしますので、魚たちの餌をしっかりと用意し、空腹のためエビに興味を抱くことがないよう丁寧にケアしてあげてください。
それでも基本的には小さい魚だろうがおいしそうなエビを追いかけたりつついたり、食べようと試みるでしょう。
ですので、ここではあくまでもエビが水槽のメインで、魚をサブ的に泳がせたい!という場合を前提にご紹介させていただきます。
エビとの混泳におすすめの生き物
エビに興味がない生き物
オトシン
コケ取りの魚としてアクアリストには最も有名な魚で、南米原産の小型ナマズの仲間です。口の形状が特殊(吸盤状)でエビを食べる形ではないため稚エビも安全です。エビが食べづらい水草の葉の表面のコケや水槽面のコケも取ってくれます。おとなしい性格も見ていて愛らしいですよ。
コリドラス
底床をモフモフしているかわいらしい姿にファンも多いコリドラス。エビを襲うこともないので混泳も安心と思いきや、底床の残餌をエビと取り合い(何ならエビに負ける…!)、痩せてしまうこともあるので餌を与える際は注意が必要です。エビに全く興味がないわけではなく、食べようと思えばエビだって食べられます。
小型ローチ
コリドラス同様底床のモフモフ係。小型のものは温和でエビとの混泳向きです。ただうっかりクラウンローチを入れてしまうと、成長とともにかなり大きくなり性格もなかなか強くなってしまいます。クーリーローチやロージーローチなどの小型種を選んでください。
それでもやはり食害は完全に避けられません。
プレコ
これもまたオトシン同様に、吸盤状の口でコケを食べる熱帯魚です。ペコルティア、タイガー系の小型種であればエビとの混泳にも向いています。ただ、プレコは糞の量も多く、水槽を汚しやすいために定期的なメンテナンスや掃除が必要になります。そこを計算の上、導入されることをお勧めします。
貝類
全くつまらない回答かと思いますが、超安全なのは貝類です。
そう、絶対にエビを食べない。食べようがない。
「映えない」「そういうことじゃなくてさ」という苦情は承りません。
稚エビの一匹も食べられたくないという場合は貝を飼ってください。コケも取ってくれます。 働き者です。エビと貝のダブルで水槽ピカピカです。
貝を飼いましょう。(われながら予期せぬダジャレに動揺しております)
エビが口に入らない魚
メダカ
メダカの口は水面に浮くエサを食べやすいように上を向いています。そこからも水面付近で泳ぐことが多い魚であるという事がわかります。棲み分けもできて口も小さい。エビをつつくことはあっても食べてしまうことはほとんどありません。ただ、ちっちゃい稚エビは口に入ってしまいます。食べられてしまうことは覚悟してください。
日本のメダカは特に水質や水温などもエビとの混泳向きといわれています。
テトラ系
最大体長が4㎝程度の性格の穏やかな小型のテトラ系は口も小さくエビとの混泳に向いています。水草を多めに茂らせたり、エビの隠れ家になるようなレイアウトを組んだりと工夫をすることでより混泳向きの水槽になります。
グッピー
水槽に入れるだけで一気に映える魚、それがグッピー。味気なかったエビ水槽が一気に華やぎます。「グッピーのひらひらの尾ひれをエビがちぎってしまうのでは…」と心配される方もいるかもしれません。あくまでもエビのハサミのフォルムからそういうイメージを持たれがちではありますが、基本的に小型エビは生きている魚を襲うことはほぼありません。むしろグッピーは水槽のゲジ対策で入れることもあるぐらいですので、目に入ればエビを執拗に追いかけて食べようと試みる可能性があります。
そして、どの魚でもそうですが稚エビに関しては食べられてしまうものと覚悟してください。
小型ラスボラ
東南アジア原産の小型のコイの仲間です。あくまでもブリジッタエやヘテロモルファなどの小型で温和な種類のみ、エビとの混泳にチャレンジしてください。うっかりスマトラなんかを入れてしまった日には一晩で駆逐され、平和なエビの国が恐怖の帝国になってしまうことでしょう。
エビ
ヤマトヌマエビ
ミナミヌマエビとヤマトヌマエビは混泳できるのか。よく皆様からの問い合わせが来る質問です。人気のこの2種のエビの混泳に関して検討される方は少なくないでしょう。小さくてかわいらしいミナミヌマエビと強力コケ取りマシーンのヤマトヌマエビ。2種のいいとこどりをしながら水槽管理ができたならば…と誰しもが考えるはずです。
結論から言うと混泳は可能です。交雑もしませんし、捕食・被捕食の関係もありません。ただし、弱ったエビや死んでしまったエビに関しては、”水槽の掃除屋”の通り名通りぼりぼり食べられてしまいます。
繁殖という観点で見ると、通常の淡水水槽での繁殖が可能なミナミヌマエビと幼生期には海水が必要なため通常の淡水水槽での繁殖はできないヤマトヌマエビ。
最終的に水槽という閉鎖空間に主(あるじ)として繁栄するのはミナミヌマエビとなってしまうでしょう。
ビーシュリンプ
ミナミヌマエビのいる水槽に、小さくてかわいいビーシュリンプを混泳させようという方もいらっしゃるかと思います。こちらの組み合わせ、できなくはないです。そうはいっても、多くのアクアリストがやりたがらないのは理由があります。水質の悪化にも強いミナミヌマエビの感覚でビーシュリンプを飼育すると、水質悪化で大抵のビーシュリンプが死んでしまうのです。
ですので、ミナミヌマエビの水槽にビーシュリンプを入れるのではなく、ビーシュリンプの水槽にミナミヌマエビを迎え入れる感覚の方が水質維持の心意気が異なると思います。
また、繁殖も繊細な気遣いが必要なビーシュリンプに比べ、どんどん増えていくミナミヌマエビ。一定期間が過ぎると、やはり繁殖力旺盛なミナミヌマエビが水槽を乗っ取り、ミナミヌマエビ王国が完成している可能性もあります。そのあたりは覚悟してくださいね。
まとめ
このように、エビ水槽に仲間を増やす場合、それ相応の妥協点を見つけながら新たな仲間を選んでいただくのがいいと思います。しつこいようですが、稚エビは基本的には魚に食べられます。大人のエビも魚にとって「食べられそうなら何とか頑張って食べてみよう」と思われる生き物である、ということを忘れてはいけません。
そういったことを踏まえ、ぜひ新たな仲間を迎えてみてくださいね。
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