通信販売で魚やエビを買ったら・・・
アクアリウムを趣味として行っている方の中には、通信販売で魚などの生き物を購入した経験がある方も少なくないでしょう。
無事届くのかな…病気になっていないかな…サイトの画像通りの個体かな…
店頭で選んで購入するわけではないので、さまざまな不安が付きまといます。
ショッピングサイトでカートに入れてから手元に届くまで、通常の店頭購入の比ではない緊張感がありますよね。
荷物が届いて、玄関先でドキドキしながらいざ梱包を開けて見たら…
こんな魚を買った覚えないんだけど!
そりゃ状態はピチピチ元気だけど、でもこれは何?この色は何?!
と、慌てて購入店舗に電話「全然色が違う!!!!」。
こんな経験はありませんか?
魚やエビの色が変わる理由として、
・ストレス
・水質の変化
・エサ
・周囲の環境へ合わせた変化
等があります。
それらを加味して考えると、水槽から狭い袋にパッキングされ、暗い中で長時間揺られるというのは、
物理的なストレスや水質の変化、周囲の環境変化等、生体の色が抜ける条件がフルコースで揃った状況と言えます。
色が変わる仕組み
魚やエビは色素胞と呼ばれる色素細胞を持っています。色素胞の中には色素顆粒や反射小板が存在し、その位置や分布を変えることで体色を変化させています。
自分の置かれている環境の色や光の強さに合わせて体色を変化させ、環境に擬態することで生き残る術が魚やエビには備わっているのです。
これがいわゆる“保護色”というものですね。
視覚で光の強さや色を感じ取り、色素胞の拡散と収縮で色を変化させるのです。
エビの場合
多くのアクアリストの水槽の中では現在、チェリーレッドシュリンプやオレンジチェリーシュリンプ、ブルージェリーシュリンプなどミナミヌマエビを品種改良したさまざまなカラーのエビが
アクアリウム水槽の中でツマツマと苔をつまみながら人々の目を楽しませております。
チェリー系のエビは特に輸送時の色抜けが顕著で、到着時の様子はほぼミナミヌマエビといっても過言ではありません。
エビの色抜けについての予備知識がない方は、たいてい届いた時のその地味な色にびっくりするでしょう。
詐欺写真ではありません。
エビたちの生物学的な所業です。
メダカの場合
メダカに関してもよく「色が抜けている」と驚かれる方が多い魚です。
メダカ品種が多様になると共に、体色に関してもかなり繊細な区分がされ、品種特性として同定する材料とされております。
当然ですが、ネットや図鑑に載っているメダカの色は最高の環境を整えて最高発色となっているタイミングで撮影されますので、相当色鮮やかで綺麗な状態なのです。
それをデフォルトと思ってはいけません。
もっと言いますと、特にブラウザでメダカの画像をご覧になっている場合、使用しているブラウザにより色が違ってしまうという事はあまり知られてはいません。
もっともっと言いますと、実物や紙媒体のように太陽光やライトの光を反射させた色を目から脳に認識させている状態(反射光)と、
テレビやスマートフォンやパソコンのように画面そのものが光ることで色を目から脳に認識させる状態(透過光)で、
脳そのものが色の認識に差が出ることもまことしやかにささやかれております。
そのため、自分が思い描いていた「色」と、実際に今目の前である「色」が異なっていても慌ててはいけません。
そんな時は、メダカにも保護色に変化する機能が備わっていることを思い出していただきたいです。
透明なビニール袋に梱包された状態で、真っ白な発泡スチロールに入れられ、外光から遮断された身動きのとりづらい状態で、長時間揺られるストレスたるや…
環境の色(白)+輸送ストレスのダブルパンチで、小さく繊細なメダカさんの色が抜けていない方がおかしいと最初から思っていた方が、心構えとしてより健全です。
色の戻し方
まず、ストレスはすべての生物において大敵であることをご理解ください。
それを前提とすると、輸送のストレス、新しい環境へのストレスが、いかにメダカやエビにかかっているかおわかりいただけるでしょう。新たな環境に早くなじめるよう、何ならストレスなく快適に暮らせる環境を整えることに全力を注いであげてくださいね。
そしてメダカの場合は、環境を整える際の飼育容器は黒いものを選んでください。
黒い発泡スチロール、黒いタライ、4面ブラックの水槽などがおすすめです。
そして忘れてはいけないのが底砂です。こちらも濃い色を選んでいただくのがいいでしょう。
黒や茶色の底砂がおすすめです。
「じっくり飼いこむことで色が上がってきます」という言い回しはよく目にするかと思います。
まさにこれです。飼い込んでください。
種類ごとの発色のコツ
赤い魚、赤いエビ
赤というのはとりわけ発色が難しく、その魚の体色に本領を発揮させるのには時間がかかります。飼育水を弱酸性の軟水にすることで赤の発色が徐々に出てきます。
コイ科の魚
コイ科の魚は最高の発色の状態に持っていくまでやはり時間がかかることが多いです。飼育水を弱酸性にすることが発色には重要。また、複数で飼育をしている場合、その群れの中で一番発情した強いオスが一番鮮やかに発色をするといわれています。
シクリッド
大前提としてシクリット系のあの鮮やかで美しい色を引き出すのは飼育者の熟練した腕が必要です。
シクリッドの中でも、アフリカンシクリッドは群れの中で一番強いオスが青く発色します。いわゆる「婚姻色」と呼ばれる発情に伴ったオスの発色です。
赤やオレンジの魚の体色は海水・淡水の甲殻類が持つアスタキサンチンというカロテノイド色素に影響を受けます。そのため餌にクリルやエビを用いることで色揚げ効果が期待できます。シクリットを鮮やかに発色させたい場合はクリルを与えることをお勧めします。
また、アピストグラマは餌にブラインシュリンプを与え、徹底した水質管理を行い、しっかりと発情をさせることでその鮮やかな色を引き出すことができます。
青系のエビ
青系のエビを発色させるのはひと工夫が必要です。弱アルカリ性の水質と明るい底砂を敷くと良いでしょう。また、エビをより青く発色させたい場合は、赤い発色をさせる環境(弱酸性の水質+暗い環境)から遠ざけると良いといわれています。
特殊な環境で発色が良くなるパターン
ディスカスはベアタンクでこまめな水替えをすることと明るい環境を用意することが重要です。
また、落ち着くと黒い発色を出すので、出させないためにもベアタンクで管理し、こまめな水換えと明るい環境を用意して発色の管理を行ってください。
本気の発色を見ること自体が飼育の目的になる魚
ワイルドベタやリコリス・グラミーなど、最高の発色を見ること自体が目的となる魚もいます。この難しい魚たちは、諸々の条件を整えたところで初めて画像のような最高発色を見ることができます。
水質は弱酸性の軟水、明る過ぎないやや暗い環境。そしてしっかりとした性成熟。
画像のような発色を見るのは容易ではありません。しっかりと飼い込み、環境を整えて発色してくれたら飼育者としてこれ以上うれしいことはないでしょう。
コメント