どうも、ほにゃらら sp.です。
「RO水」というワードに皆さん聞きなじみはあるでしょうか。
「RO水」とは、水草やサンゴの本格的な育成にあたって非常に重要となる、不純物を限りなく含まない水のことです。RO水は専用の浄水器を使用して作ることができます。
今回は「RO水」とその重要性、そしてRO水を作る「RO浄水器」についてご紹介しようと思います。
RO水とは
RO水とは、逆浸透膜という特殊な浄水器のフィルターを通過させることで、細菌、ウィルス、重金属、放射性物質など水中の不純物を極限まで除去した水のことです。
逆浸透は英語でReverse Osmosisと表し、その頭文字を取って「RO水」と呼ばれます。
RO水は本来、乾燥地帯や離島などの水の確保が難しい地域において、海水から淡水を作り出す目的で発展した技術です。逆浸透膜を通過した水は不純物が除去され、限りなく純水に近くなります。
水道水の水質はお住まいの地域によってpH、GHに変動があります。
地域によっては水道水原水のpH、GHが高く、特定の生体の飼育には不向きなことがあります。
そこでRO浄水器を通せば限りなく純水に近い水が得られ、その水質はどの地域においてもpHは7、GHは0に近いものとなります。
住んでいる地域に関係なく、水質を“リセット”したものがRO水と考えることもできます。
得られたRO水にソイルなどの腐植酸を含む弱酸性に傾ける素材や、ミネラル剤の添加などを調整することで、狙った水質に調整していくことが可能です。
なおRO浄水器は決して安いものではありません。
一方で、RO水でないと実現できないこともたくさんあります。
導入の際は本当にRO水が必要なのかどうか、よく考えて購入しましょう。
とはいえ、いきなり試してみるには少々ハードルが高いかもしれません。
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RO水の導入を考えたい場面
アクアリウムにおいてRO水は、「上級者が使う水」のイメージが強いかもしれません。
いわゆる「育成が難しい」とされる生体に利用される傾向があります。
RO水の導入を考えたい場面は、「何をやってもpHが下がらない!」ときの最終手段になります。
GHを上げる分にはGH上昇またはミネラル系の添加剤を投入すれば解決しますが、下げる分にはRO水を用いる必要があります。
pHが下がらない理由の一つにGHが高い可能性が挙げられます。このGHの高さはお住いの地域によってばらつきがあります。
pH、GHを下げる添加剤はいくらか存在しますが、それらを使用してもダメなとき、
RO水の導入を検討しましょう。
例えばこんな場面でRO水は活躍します。
要は水道水原水のGHが高く、調整剤では対応しきれないときに用いられます。
DIフィルター(イオン交換膜)を搭載したタイプの製品ではさらにコケの発生源となる物質の除去もできるため、コケ対策にも有効です。
RO水は育成難易度の高い生体の育成にも、コケ対策としても有用な水ですが、全ての生体にRO水が有効……というわけでもありません。
また、導入のハードルもやや高めとなりますので、どうしてもGHが下がってくれない!
と感じた場面の最終手段として導入するのが良いでしょう。
RO水の有効性
RO水が有効となる場面について、それぞれのジャンルごとに解説していきます。
水草育成編
水草育成においてRO水は、弱酸性の軟水を得るための原水として利用します。
基本的に水草育成を行う場合では底床にソイルを用いますので、pHは原水よりも少し下がります。
RO水は特に極端な弱酸性・軟水環境を好む水草の育成に大変有効です。
代表例として南米産のホシクサ科の水草がよく挙げられます。
これらの水草はpH5~6、GH0~3という極端な環境を好み、日本で一般的な水道水をカルキ抜きで塩素中和しただけではなかなか得られない水質です。
それゆえ育成難関種として知られますが、RO水を用いることによりその育成を実現します。
南米系ホシクサをふんだんに使用したレイアウトは、簡単にまねできない上級者の証ともいえるでしょう。
RO水が有効なのは、何もホシクサ類に限りません。
ロタラやブリクサ、ルドウィジアなど、水草レイアウト水槽で用いられるほとんどの水草は水質がこの範囲にある弱酸性・軟水環境で調子良く育ちます。
水質が原因で水草がうまく育たない場合は、RO水を採用してみるとうまくいくことがあります。
水草の要求する水質
pH:5~6、GH:0~3
RO水
pH:7,GH:0
お住いの地域に関係なく一定です。
水道水+カルキ抜き
pH:7~7.5,GH:3~5
お住いの地域によりバラバラです。
水道水はお住まいの地域によって水質に違いがあります。
日本の水道水は世界的にみるとおおむね軟水で、地域によってはそのまま使えるラッキーな人もいます。
ただし、地域によってはpHやGHが高く、水草の育成に向かない水である場合もあります。
そんなときにもRO水の出番です。
お住まいの地域の水道水が水草の育成に適しているかどうかは、あらかじめpH、GHを測定しておくと良いでしょう。
熱帯魚育成編
熱帯魚飼育においてRO浄水器を用いる場面があるとすれば、「ディスカス」か「アピストグラマ」を本格的に飼育する場合になるでしょう。
それ以外の魚種では、あまり使う機会はないかもしれません。
ただ「弱酸性の軟水」を好む、生態の不明な魚を飼育したい場合は、覚えておくとどこかで応用が利くでしょう。
RO水を熱帯魚飼育に用いる場合、GHが0である点に注意します。
GHが0ということは、KHも0であるためpHの緩衝作用がまったくありません。
水槽内やフィルター等にカルシウム質のものを採用していれば多少補給されますが、もしそういった素材が何もない場合はpHの急激な変化を招くリスクがあります。
硝酸塩の蓄積などによるpHの変化が、ダイレクトに反映されてしまうためです。
このため「低pHの軟水を好む」と表現される魚種であっても、GHが0の水は飼育に適していません。
一般にGHは1~3の範囲で管理していくのが理想的です。
GHが低すぎる場合、ミネラル剤を微量に添加して理想的な値に整えましょう。
添加しすぎてしまうとRO水を採用した意味がなくなってしまうので、さじ加減には注意します。
なお、浄水器の中にはあえてミネラルを完全除去しないタイプの製品もあります。
ディスカス飼育での有用性
ディスカスの飼育において重要となるのは「高水温」「弱酸性の軟水」「病気対策」の3点です。
このうち高水温はヒーターで高温設定にしておけば解決できますが、お住まいの地域によっては水道水をカルキ抜きで中和しただけではディスカスの飼育に適さない水となる場合もあります。
また、RO水は逆浸透膜により細菌やウイルスなどもろ過できるため、繊細なディスカスにとってはこの点でもうれしいところです。
ディスカスブリーダーの間では、この病気対策をメインとしてRO水が採用されることがあります。
アピストグラマ飼育での有用性
アピストグラマの飼育に重要となるのは「著しく低pHの軟水」です。
とりわけ、コロンビア産やネグロ川水系産の、俗に“難種”といわれるアピストグラマはこのような水質を要求する傾向にあります。
アピストグラマの飼育では、通常の熱帯魚飼育ではなかなか目指さないライン(5.0台)までpHを下げることがあります。
このラインまで下げないと、発色が現れなかったり、繁殖のスイッチが入らないものがいるためです。
一般的な水道水でこのラインまで下げることは、お住まいの地域によってはなかなか難しいため、RO浄水器が採用されることがあります。
▼アピストグラマについて 詳しくはこちら
シュリンプブリード編
地域によっては水道水のpH、GHが高すぎるためにレッドビーシュリンプなどのブリードに合わない場合があります。このような場合にRO水の採用が検討されます。
シュリンプの場合では甲殻を形成するためにカルシウムやマグネシウムが必要なため、RO水を生成した後にミネラルの添加が必要です。
GHが0の環境では、脱皮を失敗しやすくなってしまいます。
GH4程度の環境が適正となるようです。
シュリンプで重視される「TDS」
シュリンプのブリードにおいて、脱皮の成功率に関わる硬度は非常に重要です。
しかし、GHの測定には試薬が必要で高価なため、頻繁に確認を行うとコストがかさんでしまいます。
このためGHよりも手軽に測定を行うことができる、「TDS」がその指標としてよく用いられます。
TDSとは、Total Dissolved Solids の頭文字を取った略称で、水中に溶けてイオン化している物質の総量を表しています。
浄水器のメンテナンスの際にいずれにせよ計測することにはなりますが、シュリンプを本格的にブリードする際は普段もこの値を見ることがあります。
TDSはカルシウムやマグネシウム以外の物質も含め、イオン化している物質すべてを測定しているため、GHに比べるとこの値は“ざっくり”とした指標になります。
しかし、TDSはGHと異なり、水に漬けるだけで使用できる測定器があります。
このため、シュリンプのブリードにおいてはGHよりも頻繁かつ手軽に測定できるので広く用いられます。
TDSが80~100程度の場合に、シュリンプに適正といえるGH4に近い水質となります。
このため、あらかじめ水道水原水のTDSを測定しておき、TDSが上記の範囲になるようミネラル剤を添加し近づけるのが理想です。
硬度調整に便利なモンモリロナイト
この時に添加するミネラル剤として、シュリンプでは“モンモリロナイト”が広く使われます。
あらかじめ固形のモンモリロナイトを水槽に投入しておくことで、硬度が自然に調整されるよう整える場合もあります。微調整にはパウダータイプが便利です。
▼ビーシュリンプについて 詳しくはこちら
サンゴ育成編
RO水が最も真価を発揮するのは、なんといってもサンゴを育成したい場面でしょう。
特にミドリイシをはじめとした、ハードコーラル系のサンゴの育成に威力を発揮します。
ハードコーラルの多くは水質に敏感で、海水中に含まれる元素のバランスが大変重要です。
理想的な組成の人工海水を得るためには、RO水を原水として用いるのがベストです。
RO水を用いて作成することで、その人工海水が持つ本来のバランス・性能を最大限に発揮できるようになるのです。
RO水を使用すると、コケが発生しにくくなる点もうれしいところです。
RO浄水器の導入
ここまでで、RO浄水器がどんな場面で有効なのか分かったと思います。
では、さっそく導入してみましょう。
2種類ある浄水器
浄水器にはいくつか種類があり、搭載しているフィルターの種類によって性能が変わります。
浄水器のフィルターは主に4種類あります。
このうち、ROメンブレンを搭載している浄水器を、RO浄水器と呼びます。
ROメンブレンを搭載していない浄水器は、RO水を精製できません。
単純に塩素の除去が目的の場合は、ROメンブレンを搭載しない浄水器が用いられます。
DIフィルターまで搭載している機種はハイエンドモデルとなります。
ケイ酸塩、リン酸塩、硝酸塩といったコケ発生の原因となる物質も除去することができ、より高品質なRO水を精製できます。
なお、どのフィルターにも寿命があり、定期的な交換が必要です。
フィルター交換のタイミングは水の生産量に大きく左右されますが、通常の使用の場合約1年程度は持ちます。
また、RO浄水器は通常の浄水器に比べると水の精製に時間がかかります。
これは逆浸透膜を通過させる工程に時間がかかるためです。
RO膜表面に雑菌が繁殖することを防ぐため、不純物は濃縮され「捨て水」として排出されます。
捨て水は純水の2~5倍程度排出されます。
この捨て水はRO水ではなく、汚水のように汚いわけでもないのでお風呂掃除や洗濯に活用できます。
こういった点も加味し、1日あたりどのくらいの純水を生産できるのかといった点も、購入の際に重要な情報となります。
一般的な水道でROメンブレンを通過させるためには、水圧が足りないこともあります。
このような場合には、専用の加圧ポンプを使用します。
製品ごとに適切な専用品がありますので、指定されたポンプをご利用ください。
RO水 使用上の注意点
- アクアリウム用浄水器を通した水は人体に害はありませんが、飲用は避けてください。
- 故障や不完全燃焼の原因になりますので湯沸かし器に直接つながないでください。
- 生成水の水あふれにご注意ください。ため水タンクは流しに設置する、RO水の場合、加圧ポンプにタイマーを設置したりフロートを併用すると安心です。
- 長期間(約2週間)使用しないと内部にカビが発生して全ての浄水器用フィルターが使用できなくなります。通水せずに放置しないでください。
しばらく使用しなかった場合は、2時間ほど空回ししてTDS値が水道水より小さくなってから使用すると安心です。 - RO水に関して、水道水をそのままメンブレンに通すとすぐに目詰まりを起こします。
塩素は膜の寿命を縮めるのでセディメントとカーボンを通過した水を通してください。
また、水温の低い冬場は夏に比べて生成量が少なくなります。 - RO/DIを通した水はミネラルが極端に少ない軟水です。
海水の場合は各種ミネラルが含まれた人工海水を溶かすので問題ありませんが、そのまま硬度が低すぎるRO水を淡水のエビや魚などに使うと調子を崩してしまう場合があります。
一度に大量の水換えは避けるかROを通さない水で割って使う、硬度調節のコンディショナーを併用する、あるいは粗めのメンブレンを採用した浄水器(エキスパートフレッシュなど)を使用することをおすすめします。
RO水 まとめ
RO水の導入が決まったら、次はどの製品が目的にマッチするのか選んでみましょう。
おまけ 地の利を活かそう
RO水が不向きな地域
RO水の運用に当たって、中には水道水の原水がRO水に向いてない地域もあります。
日本の水道水はおおむね軟水といわれますが、これは飲用水としての場合の話となり、お住まいの地域によってはpH、硬度が非常に高い地域もあります。
このような地域ではRO水を使用することにより弱酸性の軟水環境を実現できるようになるものの、浄水器用フィルターの寿命は通常より早まりやすいです。
水草レイアウトやサンゴの維持管理には残念ながら全く不向きとなる一方で、このような水質でこそ飼育・繁殖が向いている生体もいます。
災い転じて福となす。
地の利を活かしたアクアリウムに取り組むのも、一つの方針といえるでしょう。
大雑把にいえば、RO水が向いていない生体=RO水が不向きな地域に適した生体といえます。
ROに不向きだからこそ有利な生体
グッピー
グッピーは硬水でも軟水でもどちらにも適応しますが、どちらかといえば本来は硬水寄りの環境を好みます。
pH7.5以上の硬水環境は繁殖に理想的といえます。
もし本格的な繁殖を見据えるのであれば、むしろ硬度の高い水道水原水はグッピーにとって好都合です。
アフリカンシクリッド
アフリカのマラウィ湖やタンガニィカ湖に暮らすシクリッドの仲間は、熱帯魚としては異例の高pH・高硬度の水質を好みます。
通常はサンゴ砂や化石サンゴなど石灰質を含んだ素材をふんだんに使用し、硬度を高めることで青や黄色の鮮やかな発色を促します。
しかし、水道水原水のpH・硬度が高い地域の場合、さほど水質に気を使わずとも発色が楽しめるかもしれません。
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