グッピーの世界
グッピーの世界へようこそ。
熱帯魚といえばグッピーといえるほど、代表的な熱帯魚の一種です。
熱帯魚を飼育したことが無い方でも、名前ぐらいは聞いたことがあるかもしれません。
鮮やかな色合いに染まる尾ビレをフリフリとひらめかせ、優雅に泳ぐ姿は古くから人気が高いです。
1980年代後半~1990年代にかけては“グッピーブーム”と呼ばれるほど流行したこともあり、熱帯魚飼育の基礎を確立させた魚と言っても過言ではありません。
はじめての熱帯魚飼育において、基本を学ぶには最適な魚といえるでしょう。
見た目がきれいなうえに丈夫で飼育しやすく、「初心者向け」の熱帯魚の代表としても挙げられます。
オスメスそろって飼育していれば、いつの間にか子供が生まれていることもあるほど、繁殖も簡単な魚です。
しかし、その実。
「熱帯魚はグッピーに始まり、グッピーに終わる。」ともいうぐらい、奥の深い魚でもあります。
それは世界中で様々な品種が作出されており、色とりどりの姿を楽しめることが最大の理由です。
そして、繁殖も簡単なことから、誰にでもオリジナル色彩を持った個体を生み出せるチャンスがあるのです。
誰でも簡単に飼育でき、分かりやすい魅力を持つ一方で。
突き詰めると(とんでもなく)奥が深い……。
まだまだ世界の広がりを見せ、その果てを知らないグッピーの世界へ。
貴方を誘いましょう。
グッピーとは
学名:Poecilia reticulata
グッピーとは、尾ビレが大きくカラフルで、フリフリと優雅に泳ぐ姿が魅力的なカダヤシ科の熱帯魚の一種です。
色鮮やかな色彩が魅力で、赤、青、黄色他、色とりどりの品種がいます。
水質の悪化にも大変強く、極めて強健です。
初めて魚を飼育する方でも容易に飼育ができます。
分類 | カダヤシ目カダヤシ科 |
別名 | レインボーフィッシュ ミリオンフィッシュ ニジメダカ |
体長 | オス:3~4cm メス:5~6cm |
原産地 | ベネズエラ、南米北部、コロンビア、ブラジル、ギアナ、小アンティル諸島 ※その他世界各国に人為移入、日本にも。 |
pH | 7.0~8.0(中性~弱アルカリ性) |
グッピーは飼育が簡単な熱帯魚の代表ともいえる魚ですが、実は飼育の際にいくつかの知っておくべきポイントがあります。
もし飼育が難しいと感じることがあれば、ポイントを押さえられていないのかもしれません。
そのあたりをここでは解説していこうと思います。
オスとメスで色彩が違う
グッピーというと尾が大きくカラフルなイメージがあります。
実は、そのようなカラフルな色合いを持つ個体は全てオスです。
メスはメダカにそっくりな体型をしており、オスに比べると尾も小さく、やや地味めな印象です。
体長はメスの方がオスよりも一回りほど大きくなります。
旺盛な繁殖力
グッピーは繁殖力が旺盛です。
オスメス1ペアそろっていれば、いつの間にか子供が増えていることも珍しくありません。
また、グッピーは卵ではなく直接子供を出産します。
このため子の生存率が高い点も特徴です。
特別なことをしなくてもどんどん殖えていくので、賑やかなアクアリウムを楽しむことができるのも、魅力といえるでしょう。
ワイルドグッピー(原種グッピー)
グッピーの原産国は主に南米北部です。
一般的に知られるような、尾が大きくフリフリと泳ぐグッピーは全て人の手により改良が加えられた“改良品種”となります。
実は野生のグッピーは、オスも尾が短いのです。
体色もいくらか色が入りますが、個体によってバラバラです。
改良品種の色鮮やかさとは程遠い発色となります。
カラフルな個体を何代にも渡って選別・交配を繰り返されたものが、今日見かける色とりどりの美しいグッピーなのです。
一方、これはこれで独特の味わいがあり、ワイルドグッピーこそ至高!と魅力を感じる方も一定数います。こちらもこちらで、突き詰めると奥が深い世界です。
改良品種系のグッピーに比べると低pHへの適応力がやや高く、自分の仔を食べてしまうことが少ない傾向があります。
グッピーは人為的な移入により世界各地にも分布を広げており、日本でも一部地域に帰化している例が知られます。
国産グッピーと外国産グッピー
グッピーは大きく分けると、「国産グッピー」と「外国産グッピー」に大別できます。
どちらも種としてはグッピーとなり、同一種です。
しかし、品種の種類や飼育上の性質が大きく異なります。
ネオンテトラと並び、大変強健で飼育が容易なため「初心者向け」のイメージが強く知られます。
アクアリストの中には、初めて飼育した熱帯魚がグッピーだったという方も少なくないでしょう。
外国産グッピーの難しさ
冒頭でグッピーの飼育は容易と述べました。
安価で丈夫で美しいため、初めて熱帯魚を飼育してみたくなるきっかけと、その敷居の低さを良いバランスで持ち合わせています。
しかし、外国産グッピーには“特有の難しさ”もあります。
外国産グッピーの場合、魚自体は丈夫でも輸入状態が悪いことが多く、このためロットによっての当たり外れが大きいのです。
状態の良いロットであればラッキーで、トリートメントは最小限で済みます。
しかし着状態の悪いロットの場合、販売店で投薬等によるトリートメントが長期間発生し、なんとか状態を立て直します。
もし、ホームセンターなど専門店での入手でない場合は、このケアがなされていないかもしれません。
それゆえに購入してすぐに病気を発症、死んでしまうケースも少なくないでしょう。
また、専門店で入手した場合であっても、外国産グッピーは日本の水に慣れていないため環境の変化には打たれ弱く、水になじむまでの間は病気しがちな傾向があります。
はじめて飼育する場合は、最初の2週間をいかに乗り切るかが最初で最後の難関となります。
この期間を乗り切れれば、後は楽々。水になじんだといえるでしょう。
一旦乗り切ってしまえばあとはグッピー本来の性質通り、極めて強健です。
当たりのロットを引けさえすれば、安くて丈夫で飼いやすい、まさに言うことのない魚です。
しかし見た目での区別が難しいため、狙って引き当てるのはなかなか現実的ではありません。
また外国産グッピーは色とりどりでカラフルな一方で、販売時には品種ごとの管理は厳密になされていないことが多いです。
販売用水槽内でランダムに交配されてしまっていることが多く、このために品種改良を狙う場合は不向きとなります。
※外国産グッピーも生産時は、現地のファームでは品種ごとに系統管理されています。
日本へ出荷される際に、ミックスして出荷されます。
国産グッピーの飼いやすさ
一方で国産グッピーの場合、日本の飼育環境に慣れているため最初に失敗するリスクが低いです。
生まれも育ちも日本であり、輸送時間も短いため、ロットによる当たり外れがあまりありません。
このため販売までのトリートメントも最小限で済むことが多く、状態が良い個体を入手できる可能性が高いです。
また、日本の水に慣れているため、外国産に比べると受ける変化が小さくなります。
外国産グッピーに比べると安定している要素が多いのが魅力です。
熱帯魚飼育の最低限の基本が守れていれば、まず失敗することはないでしょう。
このために、はじめての方でも飼育しやすいと言えるのです。
もし国産グッピーの飼育が上手くいかない場合、外国産はなおさら上手く行かない可能性が高いでしょう。
さらに、国産グッピーのメリットとして品質が安定していることが挙げられます。
基本的にペア販売となり、多くの場合品種ごとに分けて販売管理されているので、品種改良を狙う際にも計画を立てやすい点が優れます。
外国産に比べるとやや高価である点は確かに引っかかりますが、とにかく失敗したくない!
と言う方は、国産グッピーのほうがオススメできます。
一方で、国産グッピーは外国産グッピーに比べるとやや高価です。
値段を比較するとその差に驚いてしまうかもしれませんが、外国産ほど大量生産されているわけではないこと、選別コストなど生産上の性質の違いが、価格に反映されています。
安価で入手しやすいぶん、初心者の方は外国産グッピー……と思いがちですが、飼育のしやすさでいえば実は国産グッピーのほうが断然失敗が少ないです。
主な外国産グッピーの品種
外国産グッピーは通常、品種別に販売されていることはあまりありません。
さまざまな品種が入り混じった状態で、「ミックスグッピー」として販売されることがほとんどです。
まさに“はじめての熱帯魚”に最適と言われるだけあって、安価で美しく丈夫な魚です。
代表的な品種をいくつか紹介しますので、ミックスグッピーの中から探してみましょう。
※ミックスグッピーに入りうるものだけでも、数十種類が知られています。
ネオン・タキシード
外国産グッピーの中では人気の高い品種です。
体の後半部が黒く染まり、尾ビレと背ビレが水色一色に染まるというシンプルな色彩をしています。
レッドテール・タキシード
ネオンタキシードの赤版ともいえる品種です。
タキシード系の品種の中では、最も基本的な発色を持つ品種となります。
シンプルな色彩で人気が高く、見かける頻度も多いです。
モザイク
赤をベースとした体色に、大きめの黒い斑が入る品種です。
グッピーの中でも特に基本的な色彩を持った、基本的な品種の一つとなります。
分かりやすく派手な色彩で楽しませてくれるので、見ていて飽きがきません。
尾ビレの柄の入り方は個体差が大きく、成長段階によっても大きく変化します。
キングコブラ
“コブラ”と呼ばれるメタリックな網目がボディに模様が入り、黄色と黒の尾の発色が主張が強く、人気の品種です。
数あるコブラ系品種の中でも最も基本的な品種という位置づけにあり、この模様を持つ派生品種も数多く存在します。
ボディに輝く網目模様が入っていたら、それはこの“コブラ”系の品種です。
パイナップル
ボディはゴールデン、尾はイエローといった具合に、全身が黄色く染まり、特に体の後半部は濃い黄色に染まる品種です。
名前の通り、パイナップルを彷彿とさせる発色を示します。
フラミンゴ
ボディはゴールデン、尾はレッドに染まるグラデーションが美しい品種です。
その発色から燃え上がるように発色した“フラミンゴ”の愛称で知られています。
外国産グッピーの中でも、古くから人気の高い品種です。
主な国産グッピーの品種
国産グッピーには数百を超える品種が知られ、派生形を含めるとその数はまさに無限大といえます。
比較的安定して流通が見られる人気品種をピックアップして紹介します。
ブルーグラス
1980年代のグッピーブームの火付け役となった、青い尾ビレに黒く細かなスポットが乗る古くから人気の根強い品種です。
国産グッピーの代表のようなイメージが強い本品種ですが、実は色の遺伝の仕方が少々複雑な品種としても知られます。
高品質な系統を何世代にもわたって維持していくとなると、意外にも難易度は高めになります。
レッドグラス
ブルーグラスの赤版と言ったイメージの品種で、青が赤に置き換わったような発色を持つ品種です。
遺伝的にはむしろこちらが基本となる発色であり、次世代への発色の維持も赤系となるこちらのほうがしやすいです。
ブルーグラスを繁殖させていると、一定の割合でレッドグラスも生まれてきます。
ドイツイエロー・タキシード
淡い黄色の発色と、体の後半部の黒い発色とのコントラストが美しい古くから人気の根強い品種です。
ブルーグラスに次いで人気の高い品種として知られ、尾ビレが無地のタイプの中ではトップクラスの人気を誇ります。
ブルーグラスに比べると次世代の品質が非常に安定しており、高確率で親と同じ発色を持つ子が得られます。
高品質な系統を維持しやすいという点も、人気の高い理由になります。
フルブラック・グッピー
全身真っ黒な体色が特徴的な品種です。
鮮やかな色彩のものが多いグッピーの中では黒一色は異彩を放ちます。
2006年にシンガポールより輸入された外国産グッピーをベースに改良が進められた国産化した品種で、シックな色彩は古くからの人気が根強いです。
選別基準が分かりやすく、しっかりと黒みの強い親を選んでいけば系統を維持しやすいのも特徴です。
ハクホワイト・グッピー
白い尾ビレと全身を覆うプラチナの輝きが人気の品種です。
水草水槽でもひときわ目立ち、ゴージャスな印象を持った品種といえるでしょう。
親魚に近い発色を持つオスを交配させて、尾ビレに赤いシミがない個体を残していけば系統維持はしやすい品種です。
モスコーブルー・グッピー
全身が濃紺に染まる品種です。
旧ソ連時代にロシアで作出された品種といわれますが、詳細な経緯は不明です。
日本へはドイツ経由で1996年に輸入されました。
シックな体色が水草水槽などでは特に美しく、他の品種に比べてがっちりした体型をしています。
青い色彩は見る角度によって色味が変わり、独特の魅力を持った品種です。
グッピー飼育の基本
ここでは観賞を主な目的としてグッピーを飼育する場合の基本的な例を紹介します。
※繁殖に重きを置く場合は、若干変わってきます。
グッピーの飼育は、熱帯魚飼育において基本中の基本といえます。
というのも、グッピーは適応力が高い魚だから。
水があって、フィルターが付いていて、温度が熱帯魚に適性で、魚がふつうに暮らせる程度のきれいな水を保っていればそれで十分。
生命力の強い魚ですので、ほとんどの環境に適応できてしまいます。
このため、必ずしもグッピーにとって最適な環境を用意しなかったとしても、飼育自体は簡単にできるのです。
- ペア飼育なら30cm水槽で十分
- 低水温にも水質悪化にも強い
- 低pHの弱酸性環境にも適応するが、どちらかといえばpHやや高めの弱アルカリ性環境を好む
- 導入時、最初だけ注意(特に外国産)
水に慣れるまでは病気しやすい - 水に慣れてしまえば病気にもほとんどかからない
水槽の選択
特に選びません。
フィルターが設置できるものであれば、どのサイズでもOKです。
フィルター、照明が付いたセットなら、より安心して始めることができますね。
グッピーはオスとメスそろっていれば、特別なことをしなくてもいつの間にか勝手に殖えます。
将来を見越すと、多くても3ペア程度にとどめておくのが良いでしょう。
繁殖させたくない場合は、オスのみで飼育するのも一つの手です。
フィルターの選択
飼育するだけなら特に選びません。
どのフィルターでも飼育可能です。
メンテナンス性と長期的な維持管理を視野に入れると、小型水槽では「外掛け式フィルター」、60cm以上の水槽では「上部式フィルター」「外部式フィルター」がオススメです。
水質について
グッピーは適応範囲がかなり広いため、水質についてはさほど気にしなくても問題ありません。
どちらかといえば弱アルカリ性を好みますが、多少弱酸性に傾いても平気です。
したがって、フィルターに初期付属のろ材をそのまま利用すればOKなことがほとんどです。
また、正確には弱アルカリ性の水が良いというよりは、「pHが落ちていない水」が重要です。
つまり、頻繁に水換えをして硝酸塩の蓄積が少ない水を、グッピーは本来好みます。
繁殖を狙う場合はpHが低いとメスが太りにくいため、少し高めに管理するのが理想です。
底床の選択
観賞目的なら、なんでもOK。
グッピーは底床を特に選びません。
極端な話、観賞目的であればなんでも構わないので、見た目で選んでOKです。
混泳させたい生体がいる場合、グッピーは適応範囲が広いので、混泳相手が要求する環境に合わせると良いでしょう。
もしグッピーにとって水質の観点からベストな組み合わせを選ぶのであれば、相性が良いのは大磯砂など砂利系の底床です。
これにサンゴ砂を少量加えると、グッピーの繁殖にはベストマッチな組み合わせとなります。
底床には大磯砂のみを単品で使用し、握りこぶしぐらいの化石サンゴや飾りサンゴなどを1~2個入れても同様の結果が得られます。
繁殖に主眼を置きたい場合は、この組み合わせが良いでしょう。
餌
顆粒またはフレークの人工飼料が良いでしょう。
子供が生まれて大小さまざまなサイズの個体がいる場合は、フレークフードを与えておくと各々が自分で食べやすいサイズを選んで食べてくれます。
基本的に改良品種であることもあり、人工飼料を与えればすんなり食べてくれる個体がほとんどです。
繁殖に重きを置く場合は、稚魚のうちはブラインシュリンプ幼生、もしくはその粉末フードを与え、ある程度成長したら冷凍アカムシを与えるのが有効です。
混泳
基本的には温和なため、混泳に向いています。
グッピーに対して攻撃性のない魚種であれば、ほとんどの種が混泳できます。
混泳相手 | 混泳相性 | 備考 |
---|---|---|
グッピー | ◎ | 国産と外国産の組み合わせは× |
プラティ・卵胎生メダカ | △ | グッピーエイズのリスクあり。 ※グッピー同士よりは低確率。 |
カラシン・小型テトラ | ◎ | |
コイ・ラスボラ | ◎ | |
ローチ・ボーシャ・タニノボリ | ◎ | ボーシャは△ |
フライングフォックス/アルジイーター | 〇 | |
ドワーフシクリッド | △ | グッピーに対する攻撃性注意 子供は食べられてしまう |
アフリカンシクリッド | × | |
エンゼルフィッシュ | △ | グッピーに対する攻撃性注意 子供は食べられてしまう |
ディスカス | △ | グッピーに対する攻撃性注意 子供は食べられてしまう |
ベタ・グラミー・アナバス | 〇 | |
コリドラス | ◎ | |
オトシンクルス・ロリカリア | ◎ | |
プレコ | ◎ | |
レインボーフィッシュ | ◎ | |
ハゼ・ゴビー | △ | グッピーに対する攻撃性注意 子供は食べられてしまう |
フグ・パファー | × | |
エビ・ビーシュリンプ | ◎ |
※混泳相手の種や性格によっては、例外もあります。
◎・・・混泳に適した組み合わせです。
〇・・・混泳は可能ですが、種や個体の性格によっては工夫が必要な場合もあります。
△・・・混泳は不可能ではありませんが、適しているとは言えません。工夫次第で可能になる場合もあります。
×・・・混泳には適さない組み合わせです。
グループごとの相性が良くても、ヒレを齧る習性を持つ魚種はグッピーとの混泳はできません。
泳ぎが早い魚種との相性も今一つです。
弱酸性の軟水環境を要求する生体は、グッピーがその環境に合わせる形であれば可能です。
オススメのコケ取り
グッピーの繁殖水槽において、ラムズホーンはコケ掃除、残餌処理に活躍します。
イシマキガイやフネアマガイに比べても小回りが利き、特にグッピーの繁殖を重視する場合はこちらの方が有用です。
流通が多いのはレッドタイプですが、他のカラーも時折流通が見られます。色はお好みで選んでOKです。
オススメの水草
スプライト系の水草は、古くからグッピーブリーダーの間で好んで用いられています。
弱アルカリの水質でも良く育ち、浮草のように水面に浮上したがる性質があるためその根が稚魚の隠れ家として役立ちます。
浮草として育てる分には明るさも肥料分もさほど必要とせず、グッピーの残り餌や排せつ物から生じる硝酸塩を吸収もしてくれます。
混泳相性が良くない生体
混ぜるな危険!!!
グッピーを飼育する上で、最大とも言える注意点が一つあります。
それは、「国産グッピー」と「外国産グッピー」を決して混泳させてはいけない こと。
グッピーには「グッピーエイズ」という特有の病気が知られており、両者を混ぜて飼育すると高確率で発症、どちらかが全滅する可能性が高いです。
▼グッピーエイズについて 参考記事
まれに混ぜても生き残る個体がいますが、その個体は「キャリア」と呼ばれる病原体を保因した個体となっています。
その個体が入った水槽に他のグッピーを入れると、次々と感染させてしまう可能性が高いです。
繰り返しになりますが、「国産グッピー」と「外国産グッピー」を決して混泳させてはいけません。
グッピーに比べれば低確率ですが、プラティやモーリーなどの卵胎生メダカの仲間も、この病気に感染するリスクがあります。
なお卵胎生メダカ以外の魚には、この病気は感染しません。
したがってこの病気に関しては、卵胎生メダカ以外の魚は混泳させても全く問題ありません。
グッピーの繁殖
グッピーの繁殖は簡単です。
おそらくすべての熱帯魚の中で最も容易な魚種と言えるでしょう。
繁殖生態
グッピーは性的二型が著しく、冒頭で述べた通りにオスとメスの姿が大きく異なります。
このため、成熟した個体であればまず見間違えることはないでしょう。
尾ビレが大きくカラフルなものがオス、ボディが大きく全体的にヒレの短いものがメスです。
グッピーは卵胎生という繁殖形態を持ち、メスは産卵するのではなく稚魚を直接出産します。
▼卵胎生について こちらも参考
グッピーをはじめとした卵胎生メダカの仲間は、オスの尻ビレが“ゴノポディウム”と呼ばれる卵胎生メダカ類特有の生殖器に変化しており、これによりメスの総排泄腔に精子を注入します。
メスの妊娠期間は3~4週間程度です。
初産では数匹程度しか生まないことがありますが、成熟したメスは最大で50~100匹程度の稚魚を出産することもあります。
一度の交尾で2~3回出産でき、稚魚は約3カ月で成熟します。
卵胎生のため稚魚の生存率が高く、産仔数が多く、さらに成熟からまた出産可能になるまでの世代交代のサイクルも速いです。
この性質により多種多様な改良品種を作出しやすく、世界で最も有名な熱帯魚へとなりました。
繁殖方法
オスとメスがそろっており、ストレスのない環境下であれば特別なことをしなくても勝手にどんどん殖えていきます。
逆に殖えすぎても困ることも……。
もし、思うように殖えない場合は、次のポイントをチェックしてみると良いでしょう。
稚魚の生存率を上げて効率よく殖やしたい場合、出産直前のメスを産卵箱に隔離すると良いでしょう。
飼育水槽で出産させてしまうと、親や他の個体が生まれたばかりの稚魚をエサと誤認してしまい、食べられてしまうことが少なくありません。
スプライトなどの水草をたくさん茂らせていれば、それに隠れて稚魚は生き延びますが、隔離ケースを使えばより確実です。
出産間近のメス
メスのグッピーのお腹の奥、腹ビレの付け根付近に黒いマークがあります。
このマークは「妊娠マーク」とも呼ばれ、妊娠して出産を控えたメスは、このマークが大きく広がりお腹が大きくなってきます。
出産経験が少ないメスの場合はあまり大きく膨らみませんが、何度も出産を経験したメスの場合でははち切れそうなほどお腹が膨らむことがあります。
このマークが大きくなっていれば、それは出産が間近な証です。
産卵箱に隔離しよう
妊娠マークが大きくなったメスを確認したら、産卵箱に隔離しましょう。
産卵箱の中で出産させることにより、稚魚が他の魚に食べられにくくなります。製品によっては親と稚魚を分ける仕切りが付いており、より安心できるものもあります。
稚魚が生まれたら
稚魚が生まれたらすぐに自分で泳げます。
また、エサも自力で食べることができます。
まずは親と隔離
親は自分が出産した子を、自分の子と認識できません。
効率よく稚魚の数を増やしたいならば、親は速やかに産卵箱から出しましょう。
仕切りがない場合、餌と間違えて食べてしまうリスクがあります。
ただし、お腹のふくらみがまだ残っており、妊娠マークも小さくなっていない場合は、まだあと数回の出産を行う可能性があります。
まだ産みそうな場合、仕切りのついているタイプの産卵箱であればそのままにして様子を見ましょう。
仕切りが付いていないタイプの産卵箱の場合は、そのままにしておくと先に生まれた稚魚が親に食べられてしまう可能性があります。
その場合は産卵箱をもう1個用意して、親をそちらに移すと良いでしょう。
もしくは、先に生まれた稚魚を別の水槽に隔離します。
稚魚への餌やり
稚魚用に販売されている人工飼料を与えるか、親にフレークフードを与えている場合はそれを与えれば十分育ちます。
もし、大きく立派に育てたい場合はブラインシュリンプの幼生をふ化させて与えると理想的です。
食べられるサイズに成長してきたら赤虫を与えると、より成長速度が良くなります。
次世代の繁殖を狙うなら
稚魚は生後2カ月くらいでオスはゴノポディウムの形成が見られるようになり、これでオスメスの区別がつきます。
雌雄判別ができる状態になったら、オスメスはそれぞれ分けて管理します。
生後3カ月くらいで成熟し、繁殖が可能になります。
本格的な繁殖を狙う場合、メスの選別のほうが重要です。
メスの水槽にはオスが混じらないように管理します。
判断に悩ましい個体は、オス扱いで振り分けると良いでしょう。
腹ビレが尖るのがオス。
選別
グッピーは環境が良いと際限なく稚魚をどんどん産むため、数十~数百匹にまで数が膨れ上がってしまうこともあります。
ミリオンフィッシュの別名は伊達ではありません。
流石に100万匹まで増えることはなくとも、100匹を超えたら一般家庭での飼育においてはキャパオーバーする可能性が高いでしょう。
こうなるとすべての個体を管理しきることは不可能に近いので、選別作業が必要になります。
良質なグッピーを本格的に殖やしていくのであれば、選別作業を避けては通れません。
選別の際に重視すべき項目は品種によって異なります。
一般にオスは望む発色や形質に近い個体を、メスは尾の付け根が太く、全体的にがっしりした体格の良い個体を残すと良いとされています。
グッピーの病気
グッピーは丈夫な観賞魚ですが、病気にかかることもあります。
特に購入直後、「環境の変化が発生するタイミング」は、最も病気が発生しやすい時期となるので注意が必要です。
グッピーは環境に馴染むまでは病気にかかりやすい一面があります。
一旦環境になじんでしまえば、そうそう病気にはかかりません。
環境になじんだグッピーは大変強健であり、病気にはかかりにくい魚です。
しかし小型で体力が無いため、一度かかってしまうと立て直しは結構難しめです。
定期的な水換えなどにより、予防原則に努めるのが大事です。
白点病、水カビ病、尾腐れ病はグッピーが掛かりやすい代表的な病気です。
この他にもいくつかグッピー特有で見られやすい病気がありますので、紹介しておきます。
グッピーエイズ
国産グッピーと外国産グッピーを絶対に混泳させてはいけない理由です。
1990年代にシンガポール産のグッピー、プラティに蔓延した病気で、今もなお外国産グッピーでは低くない確率で見られます。
初期症状としてはエラが膨らみ、頭を左右に振って力なく水面をふらふらと泳ぎます。
ヒレの発色はくすみ、全体的にすぼんでしまうことが多いです。
この病気は難治性で、感染した魚は高確率で死亡してしまいます。
対処法はエロモナスやカラムナリス感染症同様、抗菌剤が効くケースがあるといわれています。
その正体は現在もよく分かってはいませんが、抗菌剤が効くようなのでウィルスではなく細菌系の感染症ではないかと推測されます。
この病気は治った後も厄介で、もし治療に成功したとしても生き残った個体はグッピーエイズの感染因子を保有している「キャリア」個体になってしまいます。
キャリア個体は見た目は健康なグッピーそのものですが、他の健康なグッピーと混泳させると、高確率でグッピーエイズに感染させてしまいます。
したがってこの病気の対策としては、とにかく混ぜないことが最も重要です。
この他にも外国産と国産に限らず、出自が異なるグッピーを混ぜる際はとにかくリスクが付きまとう と覚えておくと良いでしょう。
現在流通する外国産グッピーはその大部分がキャリア個体であると推測されるため、国産グッピーと混泳させると高確率で感染させてしまうのです。
なお、外国産だけでなく国産グッピーでもキャリア個体である可能性はあります。
ハリ病
グッピーの稚魚に発生しやすい病気です。
成魚に発生することもあります。
尾ビレが溶け、残った鰭条が針のように鋭く尖って見える症状からこの名前で呼ばれます。
またグッピーエイズ同様、頭を左右に振って力なく水面をふらふらと泳ぎます。
水質悪化が原因とも、尾腐れ病と同じカラムナリス菌が原因ともいわれますが、詳細についてはよくわかっていません。
抗菌剤系の魚病薬が有効とされますが、稚魚への発生が多いことから魚病薬では効き目が強すぎ、ダメージを与えてしまうことが多いです。成魚であれば魚病薬を使用して問題ないでしょう。
初期症状であれば、0.5%塩水浴に一定の効果が見られるといわれています。
吸血線虫(カマラヌス)
グッピーへの寄生が知られる線虫の一種です。
グッピー以外でも、卵胎生メダカの仲間は寄生されやすいといわれています。
グッピーの総排泄腔付近から、赤く細いヒモのような物体がぶら下がることがあります。
最初はフンのように見えますがいつまでもぶら下がっているので、フンではないと気づけます。
その正体は寄生虫で、最終的にはグッピーの体力を吸い取り衰弱死させます。
総排泄腔から飛び出してはじめてその正体が確認でき、それまでの間見た目は健康なグッピーと区別ができないという点でも厄介さを極めます。
対処法も実質的に存在しない大変厄介な寄生虫で、市販の魚病薬では効果的なものがありません。
また1匹寄生を確認したら、その水槽の魚は症状が出ていないだけで全て寄生されている可能性が高いといわれます。
市販の魚病薬が効かないため、対処法はリセット一択になってしまいます。
万全を期する場合、生体や水草は全て焼却処分、水槽や使用器具も消毒すべきといわれます。
なお発症後ただちに死亡するわけではないので、しばらくの間騙し騙し飼育を続けることはできます。
カマラヌスの寄生が認められる水槽へ新しく魚の追加はとても推奨できるものではありませんので、その代限りで終生飼育すると良いでしょう。
グッピー豆知識集
グッピーの名前の由来
1858年に本種を発見したイギリスの植物学者、グッピー氏に由来します。
要は人名由来です。
日本で二番目に輸入された熱帯魚
1918年(大正7年)に金魚養殖家の秋山吉五郎氏がアメリカから輸入したといわれています。
この2年前にソードテールが輸入されていることから、最初に輸入された熱帯魚がソードテール、2番目がグッピーとなります。
青いグッピーの歴史
グッピーの発色は元来、赤が顕性で遺伝する(赤い形質が現れやすい)性質があります。
かつて、世界中で青いグッピーを作ることが求められた時代があり、ブルーグラスは青系グッピーが一般化する先駆けになった品種と言えます。
1990年代
1991年 不完全優性ではないブルー系品種「USブルー」が発表。(ただし、単色にヒレを染める性質があり、グラス系への導入はできなかった)
1994年 ジャパンブルーが作出(ただし、尾ビレが大きくできなかった)
1999年 ラズリーが作出(ジャパンブルーと異なり、尾ビレが大きくできた)
ブルーグラスの誕生以降、青いグッピーの安定した作出が可能になり一般的に流通が見られるようになりました。
現在ではこれらの品種をベースに、さらなる派生品種が数多く登場しています。
飼育上の注意点
グッピーを繁殖させた場合、次世代の繁殖に用いない個体は一つの水槽にまとめて飼育しておくと良いでしょう。
もし飼育しきれない数の場合、残さないと決めた個体はかわいそうですが処分します。
ただしかわいそうだからといって、絶対に野外に放流してはいけません。
グッピー用語集
基本的な形質
グッピーの品種の色彩は、主に体色、体の模様、尾ビレの模様、ヒレの形状の4つで構成されます。
グッピーの色彩を構成する形質は数えきれないほど多様なものが知られますが、その中でも基本形となる形質をいくつかピックアップして紹介します。
グッピーのすべての品種は、これらの形質を組み合わせたものです。
各形質の遺伝の法則性について勉強すると、お好みの形質を組み合わせたグッピーを、ある程度狙って作り出せるようになります。
“自分だけのオリジナルグッピー”を、誰にでも産み出せるチャンスがあるのです。
ここでは比較的安定して流通が見られ、入手しやすい代表的な形質の紹介のみに留めます。
既に数多くのバリエーションがあるように見えますが、ここで紹介したものは数あるグッピーの形質のほんの一部にすぎません。
より多くの形質やそれぞれの遺伝法則については、詳しくまとめたものを別の機会にお届けしようと思います。
飼育・繁殖用語
トリオ(Tr)・・・3匹セットでの販売です。通常、国産グッピーはペア販売が基本ですが、「リボン」や「スワロー」系グッピーはオスが繁殖能力を持たないため、3匹セットで販売されます。
掛け戻し・・・親と子を交配させることです。
遺伝させたい形質によっては子同士を掛け合わせるよりも、親と子を掛け合わせたほうが狙いの形質を早く得られることがあります。
顕性/潜性(優性/劣性)・・・遺伝子によって制御された、色模様の表現されやすさです。
顕性は表現されやすく、潜性は表現されにくい形質を指しています。
形質によっては、単純に一つの遺伝子で制御されているとは限りません。複数の遺伝子で制御されている場合もあります。
以前は優性/劣性と呼ばれていましたが、今後は顕性/潜性の呼び方が主流になっていくものと思われます。
突然変異・・・遺伝子の変異により、本来であれば出現しないはずの形質を持った個体が現れることです。
さまざまなグッピーの色模様は、元を辿れば全てこの突然変異に由来します。
グッピーは比較的変異が発生する確率が高く、それゆえに多種多様な色彩が見られます。
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