世間でも問題視されている外来生物の代表格、アメリカザリガニ。
昔からなじみがあり、店頭でもカラフルな魅力ある品種も多くいました。そんな彼らの今後についてご紹介したいと思います。
アメリカザリガニとは
生物学データ
学名:Procambarus clarkii
分類 | ザリガニ下目・アメリカザリガニ属 |
体長 | 8~12cm |
食性 | 雑食 |
分布 | アメリカ・メキシコ・ドミニカ・日本・フランス・スペイン・ドイツ |
アメリカザリガニは、アメリカ合衆国南部のミシシッピ川原産のザリガニです。
体色は赤色ですが中には褐色の個体もいます。歩脚と呼ばれる脚が左右で5本ずつあり、第1・2・3脚に鋏を持ちます。中でも第1脚は大きく発達しています。
※オスはハサミや体が大きく発達します。
日本にも固有種のザリガニがいるため、移入し定着した際に「ニホンザリガニ」「アメリカザリガニ」となったようです。別名として、エビのような身体にカニのようなハサミを持つことから「エビカニ」、体色が赤いことから「マッカチン」などと呼ばれます。
赤色だけではなくカラーバリエーションが豊富です。与えるエサにより色が変わることはありますが、主に突然変異色個体から固定化された個体が流通しています。
青・オレンジ・白はポピュラーな人気カラーです。
上記で説明した3カラーより、ちょっと珍しい「ブラックキング」「ゴールデンキング」「タイゴースト」などもいます。
他にもオレンジザリガニの派生「スノースパイン」やタイゴーストの派生「ブルームーン」など品種も多く、コレクション性の高いことも人気の1つです。
条件付き特定外来生物
規制対象
外来生物の定着により日本固有の生態系に影響がでていることは皆さんご存じではないでしょうか。
下記の記事もあわせてご参照ください。
以前より外来種として注目されていた「アメリカザリガニ」ですが、2023年6月1日より規制が開始されます。
今回実施されるのは「条件付特定外来生物」ということで、条件付きで飼育が許可されています。
販売・購入はできなくなりますが、無償での譲渡や採集によるペットとしての飼育は可能です。
※採集した個体を飼育した場合、野外に放すことはできなくなります。最後まで飼育してください。
外来種の脅威
外来種が規制になる理由は、日本固有種、在来種への影響があるためです。改めて「アメリカザリガニ」の特徴を考えてみましょう。
水質や水温への適応能力が高かったため、日本の環境に順応し勢力を拡大してしまいました。すべてが飼育していたものが原因というわけではありません。
※養殖場・繁殖場などから逃げ出したこともまた原因の1つになります。
今回は「アメリカザリガニ」などが対象となりましたが、飼育している生き物を野外に放つ行為は、日本固有の生態系に影響を与えてしまいます。結果的に生き物の飼育を楽しむ機会が狭まることにつながります。
飼育方法・設備
最適な水質:弱酸性~弱アルカリ性 適した水温:15℃~25℃
水温は1~30℃まで飼育可能といわれていますが、30℃を越えるような夏場には注意が必要になります。
水槽選び
アメリカザリガニは、縄張り意識が強いため、小さいサイズの水槽での多頭飼育はおすすめしません。
30~45cm以上の水槽をおすすめします。
※30cm水槽に1匹という目安でお選びください。
多頭飼育の場合、隠れ家を多く入れるようにしましょう。
フィルター
フィルターはなくても飼育可能です。
フィルターなしの場合、水量はザリガニがかぶる程度にして飼育します。この場合、水換えの頻度は1週間に2~3回程度です。
フィルターを使用する場合は、フィルターが動く水量より多く入れる必要があります。水換えの頻度は1週間に1回と管理は楽になります。
※ザリガニはエラ呼吸を行うため、水中の酸素がなくなると片方のエラを水の外に出して酸素を取り込みます。水量が多い場合、酸欠で死んでしまうことがありますので注意してください。
※エアチューブなどハサミを使って器用に脱走します。脱走しないように工夫が必要です。
底砂
底砂を敷くと、触覚の根元の平衝胞に砂を入れてバランスを取る行動を見ることができます。
脱皮の際の足場になり脱皮の補助や、砂を掘る本来の生態を見ることもできます。
※粒の細かい暗色の物がおススメになります。
エサ
肉食性が強い雑食です。小魚・イトメ・赤虫・水草などなんでも食べます。
ご飯や煮干し、するめなども好んで食べますが、水を汚す原因となるためザリガニ専用フードなどの人工飼料などを与えるようにしましょう。熱帯魚の人工飼料も食べます。
混泳・水草
アメリカザリガニは肉食性が強いので、小さな魚・エビなどとの混泳はできません。
また、大型の熱帯魚やエビを捕食する魚との混泳もできないため、混泳には向いていません。
同種であっても縄張り争い、エサの取り合いでケンカをするため、単独での飼育が好ましいです。
水草を抜いてしまうだけでなく、切ってしまうことがあります。また、水草はアメリカザリガニにはエサとなり、食害に遭ってしまいます。
繁殖方法など
アメリカザリガニの繁殖期は春から夏です。7~8cm程度のオスとメスを同じ水槽に入れて交配させます。交配を確認できたら、オスとメスを別々の水槽に戻し観察します。
産卵回数は年に1回で、交尾から1~3カ月ほどでお腹に卵を抱えます。
同じ水槽で飼育している場合、抱卵確認できたら別の水槽に分けましょう。
卵からふ化し、稚エビの状態になると親から離れていきます。
お腹から離れたら、親個体は別の水槽・容器へ移動させます。
稚エビは1週間で脱皮を繰り返して成長し、1年で4~5cm程度に成長します。
繁殖は容易で簡単に殖えていきます。1度に200~1000個近く産卵するので、安易な繁殖はやめましょう。
まとめ
規制が始まったアメリカザリガニですが、規制後も飼育は可能です。
安易に野外採取して飼育できないから放すなど無責任なことはできません。これはアメリカザリガニに限った話ではありません。
飼育者として、生き物を飼育することの責任の重みを感じていただければと思います。
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