どうも、ほにゃらら sp.です。
今回は、コケ対策に用いられる「貝」の使い分けについてご紹介します。
ひと口に貝といっても、さまざまな種類が存在します。
貝ならどれもコケを食べるんでしょ?
・・・いえいえ、全く違います。
多くはコケを食べますが、その度合いは種類によって強弱があります。
なかにはあんまり食べないものも。
貝で「コケ対策」はできますが、貝の種類によって働きぶりはかなり異なります。
種類によって得意不得意があるので、対策したい場面に応じて使い分けが必要です。
水槽に入れてから、「まさか、こんなはずじゃなかった」
・・・とならないためにも、コケ取り要員として販売される主な貝とその特徴、具体的に有用な場面について触れていきたいと思います。
貝で除去できるコケ
まず前提として、貝は全てのコケを除去できるわけではありません。
貝が除去を得意とするコケは、
「茶ゴケ(珪藻類)」「スポット状緑ゴケ(緑藻類)」の2種類です。
緑ゴケにはスポット状のものと房状のものとが存在しますが、特に前者によく効きます。
「繊維状の緑ゴケ(アオミドロ類)」や「シアノバクテリア(藍藻類)」の除去に関しては、
ほとんど効果がありません。
貝を入れればすべてのコケを除去できるわけではないので、まずはこの点で注意が必要です。
コケ除去ランキング
コケ対策能力をランキング形式にしてみました。
S>A>B>C>Dランクの5段階で、左に行くほど除去能力が高くなります。
※対策対象は「茶ゴケ(珪藻類)」「スポット状緑ゴケ(緑藻類)」
※屋内水槽という条件下
というわけでズバリ!
単純にコケの除去能力で選ぶなら、「フネアマガイ」か「カバクチカノコガイ」がオススメです。
それでは、ここまで紹介した主な貝の特徴ついて少し深掘りしてみましょう。
コケの除去以外にもさまざまな得意分野があり、
上述のランクでは低くても、状況によってはこの2種より有用な場面があります。
コケ取り貝能力比較
コケ取り能力の高いカノコガイ類を中心に、単純なコケ取り能力以外の要素も比較してみましょう。
淡水順応性
カノコ貝の仲間は幼生の期間に降海するため、河川下流域から汽水域に生息する種がほとんどです。
販売されている種は純淡水で飼育可能ですが、長期飼育には汽水のほうが適した種もいます。
pHが低い水草レイアウト水槽などでは、純淡水に良く順応する種のほうが長期飼育が容易です。
陸棲の強さ
つまるところ、脱走のしやすさです。
カノコ貝は本来、完全な水中より水際を好み、湿ったところであれば陸上でも生活できます。
夜間に活発に活動し、水槽壁面を登って水槽外に出てしまうことも。
脱走癖の強い種はオールガラス水槽で飼育すると水槽外に出てしまうことがあるので、フタをして隙間をしっかり塞いでください。
低温耐性
チャームで取り扱っているカノコ貝の仲間は本州に生息する種もいれば、南西諸島以南に生息する種、海外に生息する種もいます。
メダカや金魚、日本産淡水魚と一緒に飼育する場合、低温に耐えられる種を選びましょう。
イシマキガイかフネアマガイがオススメです。
ヒーターを使用する場合は貝がやけどしないよう、ヒーターカバーを使用したほうが良いでしょう。
入荷サイズ
チャームに入荷されるサイズの比較です。
水槽のサイズや目的に合わせて参考にしてください。
※季節や入荷ロットによって若干の差異があります。
各種の特徴
フネアマガイ
学名:Septaria porcellana
アクアリウムに用いられるコケ取り用の貝類としてはトップクラスの除去能力を持ちます。
ガラスや石・流木の表面に生えるタイプのコケであれば、本種を導入することでブルドーザーのように頼もしく殲滅してくれます。
個体あたりの除去能力も高く、60cm水槽で2~4匹程度導入すれば1~2週間程度できれいさっぱり片づけてくれるでしょう。
カバクチカノコガイ
学名:Neritina pulligera
フネアマガイと双璧をなす強力なコケ取り貝です。
能力自体はほぼ変わらないので、好みで選んで良いでしょう。
フネアマガイ、カバクチカノコガイの2種は、大変強力な除去能力を誇ります。
その一方で、入荷が他の貝に比べると安定しません。
欲しい時にすぐ入手できるとは限らないのが難点です。
イシマキガイ
学名:Clithon retropictus
コケ取り用の貝としてはおそらく最も有名な巻貝です。
壁面に生えるコケをブルドーザーのように削ぎ落として食べる様子は、大変頼もしい限り。
単体あたりの除去能力はフネアマガイに劣りますが、数を入れれば引けを取りません。
安価で入手しやすい点でも勝ります。
サザエイシマキガイ
学名:Clithon sp.
イシマキガイに角が生えたような殻を持つ巻貝です。
基本的な性質はイシマキガイに準じます。
こちらのほうが見た目が派手なため、見た目にこだわりたい方は選んでも良いでしょう。
サイズが同じであればイシマキガイと除去能力は変わりませんが、イシマキガイよりも全体的に小ぶりな個体が多いです。
フネアマガイ・イシマキガイ動画
フネアマガイ、イシマキガイの働きぶりがよくわかる動画です。
たった1週間でこれだけの効果があります。
コケにお悩みの場合、ぜひ試してみてくださいね。
カノコガイ系各種
その他のカノコガイ系に関しては、コケの除去性能という観点では微々たる差であり、ほぼ横並びと考えて良いでしょう。
基本的な性質はいずれもイシマキガイと同様です。
水槽から出たがる傾向があるものもいるため、脱走防止にフタが必要です。
種類によってさまざまな柄がありますが、お好みで選ぶと良いでしょう。
タニシ系
タニシ類は基本的な性質が共通し、差異はサイズ程度のためまとめて解説します。
タニシ系巻貝のコケの除去能力は標準レベルです。
弱酸性の環境よりも弱アルカリ性の環境のほうが調子良く、水草を中心としたレイアウト水槽にはあまり向いていません。
どちらかといえば屋内水槽よりも屋外のビオトープで抜群の働きが期待できます。
フネアマガイ、イシマキガイは本来感潮域となる河川の下流に生息しているため、ビオトープのような屋外環境での飼育は適していません。無理に導入しようとすると、調子を崩してしまいます。
この点、タニシ類は屋外環境であれば上述したフネアマガイ、イシマキガイなどを軽く抜き去り、
トップクラスの働きぶりを見せてくれます。
巻貝としては珍しく、アオミドロ系の糸状の藻類や青水もある程度除去してくれます。
水槽内では主にヤマトヌマエビやミナミヌマエビにその役目を担ってもらうことが多いのですが、
屋外のビオトープであればタニシで賄えるのもポイントです。
レッドラムズホーン
学名:Indoplanorbis exustus var.
赤い色合いが美しい小型の巻貝です。
単体でのコケ取り能力は高くありませんが、非常に食欲旺盛でなんでもよく食べるため、残飯の処理能力も高いです。
最大の特徴として、良くも悪くも大変よく殖える点が挙げられます。
水質に関しては非常に寛容で、極端にpHが低い環境でなければほぼどんな環境にも適応します。
雌雄同体なので2匹いれば繁殖でき、特に何もしなくても環境が合っていれば爆発的なペースで増殖します。
あまりに殖えすぎるので、レイアウト重視の水槽では逆に駆除したくなることがあります。
特に何もしなくても勝手に増殖する、残飯を積極的に掃除してくれる点から、どちらかといえばレイアウト水槽よりもグッピーや卵生メダカといった小型魚のブリード水槽の掃除要員として向いています。
稚魚の様子がよく見えるように壁面を掃除してくれる上、稚魚の残飯も片づけてくれます。
ラムズホーンのフンは細長く目に見えるため、稚魚水槽では掃除しやすい点でも優れています。
与える仕事を間違えると厄介者になってしまいますが、場面を選んで仕事を与えれば唯一無二の大活躍を見せてくれます。
なお、よく見かけるレッドラムズホーンは改良品種で、アルビノ個体といわれています。
原種は黒ですがほとんど流通せず、もっぱらレッドタイプが数多く流通しています。
他にもさまざまなカラーバリエーションがあるので、お好みで選ぶと良いでしょう。
レッド以外はあまり流通量が多くありません。
見かけた時が買い時です。
ラムズホーンはその旺盛な繁殖力から、自然環境に逸出した場合の悪影響が懸念されています。
どの生体にもいえることですが、絶対に野外に逸出させないよう細心の注意を払ってください。
ラムズホーンに関しては、特に稚貝や卵が非常に小さいため、
除去したつもりでも除去しきれていない場合があります。
具体的な対策方法として、ラムズホーンの飼育水槽から出た排水や水草の破片などは
その都度熱湯に通してから捨てると万全です。
アンモナイトスネール
学名:Marisa cornuarietis
まるでカタツムリのような、派手な殻を持つ巻貝です。
水槽内で活発に動き回るため、観賞価値は高いです。
その反面、コケの除去能力に関してはサイズの割に高いとはいえません。ラムズホーンと同様に簡単に殖えることから、レイアウト重視の場合はかえって駆除したくなることがあります。
殖え過ぎると、勢い余って水草も食害してしまう点にも注意が必要です。
コケを食べないわけではありませんが、働きぶりはさほど良くないため、
コケ取り要員としてよりも観賞用として導入するのが良いでしょう。
コケ取り以外で有能な貝
ここから下はあまりコケ取り要員としてはあまり効果を期待できない種類です。
しかし、コケ取り以外で注目すべき能力があるので、最後までご覧ください!
カワニナ
学名:Semisulcospira libertina libertina
ホタルのエサとして知名度の高い、日本各地に生息する巻貝です。朝鮮半島にも生息しています。
清流を好み、本種が生息していれば自然が保たれた環境であるという指標になるでしょう。
水槽内よりもどちらかといえばビオトープでの導入のほうが向いており、コケや付着した汚泥を積極的に掃除してくれます。
タニシよりも高温に弱い点に注意します。
ただし、タニシと違って本種は水草もそれなりに好むようです。
コケと水草が同時にある環境では水草を選んで食べてしまう傾向がある点は、やや難点となります。
いかにも日本の清流というイメージがあるため、特に日本産淡水魚を中心とした水槽では、鑑賞目的に採用するのも良いでしょう。
キラースネール
学名:Clea helena
インドネシア、タイ、マレーシア原産の淡水性のエゾバイの仲間です。完全に肉食性で、コケは食べません。
本種最大の特徴は小型巻貝を食べることで、別名「アサシン・スネール」とも呼ばれます。
ただし、生きた貝を積極的に襲うわけではないようで、どちらかといえば蓄積したデトリタスが主食となるようです。
マシジミ
学名:Corbicula leana
日本原産の小型の二枚貝です。
二枚貝であるため、コケを直接除去する能力はありません。
しかし、青水(グリーンウォーター)の除去に関しては目を見張るものがあります。
入れておくだけで1週間もすれば透明な水に戻してくれます。
青水にしたくないのにどうしても青水になってしまう場合、対策としてはベストな選択といえます。
基本的に砂に潜り込んでしまうため、鑑賞はできませんが、縁の下の力持ちらしい働きを見せてくれます。一度底床に潜ると回収が難しいので、ネットなどに入れておくと管理しやすくなります。
なお、青水に悩んでいない場合に、先に入れてしまうと餓死してしまいます。
青水が出てきてからの対策要員として導入しても遅くはありません。
貝と水質
多くのコケ取り貝は、基本的に水質には寛容です。
しかし、やはり理想的な範囲はあるもので、中性から弱アルカリ性、pH7.0~8.0程度の環境を好みます。
あまりにも低pHに傾いている環境では、貝殻の先端が腐食し、欠けてしまうことがあります。
とはいえ、一般的に水草レイアウトを行う環境、たとえばpH6.0~6.5程度でへこたれることはありません。
とはいえ、働きぶりが思わしくなく、なんとなく調子が悪そうだな?と思ったときには水質を疑ってみると良いでしょう。
貝類は水質を悪化させる原因となる硝酸塩が蓄積すると、水面に揃って上がってくることが多くなります。
この性質は、換水が必要なタイミングを判断するバロメーターとしても使えます。
繁殖について
イシマキガイ、フネアマガイ、カノコガイ系の貝類は、水槽に導入しているといつのまにか白いつぶつぶがガラス面や石・流木などについていることがあります。
このつぶつぶの正体は、貝の卵です。
しかし、ふ化には海水が必要なため、そのまま放っておいてもかえることはありません。
水槽内の生体には全く無害です。
もし、鑑賞の妨げになるようであれば、スクレーパーで削るか、ピンセットで突けば除去できます。
産み始めると結構なペースで産んでしまうことがあるので、水草レイアウト水槽では敬遠される場合もあります。
ラムズホーンやアンモナイトスネール、カワニナに関しては水槽内でもよく殖えます。
ラムズホーンとアンモナイトスネールはゼリー状の卵を水槽内のあちこちに産み付けます。
カワニナは卵胎生であるため、直接稚貝を出産します。
コケ取り要員として導入する場合、むしろ不用意な繁殖は好ましくない場面が多いと思います。
イシマキガイ、フネアマガイ、カノコガイ系を採用しておけば、基本的には安心です。
B品とは
欠けやトゲの折れなど、外観上少し難がある個体は「B品」として販売しています。
カノコ貝の仲間は成長と共に殻の頂点が欠けたり、傷ついたりします。入荷ロットによっては、B品がほとんどの場合もあります。
サザエ石巻貝のようにトゲのある種は、成長と共にトゲが欠けてなくなってしまう個体も多いです。
大きな個体ほどB品の割合が高いことが多く、チャームでは鑑賞価値が高い個体を入荷させるために、傷や欠けの少ない小さめの個体を入荷しています。
そのため、B品のほうが大きな個体や、色違いの個体が入る傾向があります。
B品でも飼育やコケ取り能力には問題はなく、使い方次第ではお得です。
貝を制すものコケを制す まとめ
今回は比較的よく流通する貝類の使い分けについてお伝えしました!
貝の種類によってできることとできないことがありますので、ぜひ場面に応じて使い分けてみてくださいね。
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