ニムファの魅力
ニムファの世界へようこそ。
ニムファとは、世界各地に広く分布するスイレンの仲間です。
アクアリウムではスイレン科の「ニムファ」とミツガシワ科の「ニムフォイデス」の2グループが、ニムファとして扱われます。
他にもコウホネの仲間や、バルクラヤの仲間もこのグループとして扱うこともあります。
ニムファ系の水草は屋内水槽で栽培できる熱帯性スイレンの一種ともいえ、水槽内では柔らかな水中葉が独特の世界観を演出します。
このグループの最大の特徴として、「浮葉を出す」ことが挙げられます。
水中ではウェーブのかかった丸形の葉を、水上では丸型に切れ込みの入ったハスのような葉を展開します。さらに調子よく育てると、水面で花を咲かせます。
水中と水上で趣の異なる2種類の葉が楽しめるのが、このニムファ類の特徴です。
また、ニムファ類には葉に模様が入る種類もいくつかあり、他の水草には見られない独特な色彩表現も魅力といえるでしょう。
柔らかな葉と浮葉を使い分け、1株で2つの楽しみ方ができるニムファ。
水槽内で楽しむ小型スイレンの世界へ、貴方を誘いましょう。
ニムファとは
分類 | スイレン目スイレン科 |
pH | 6.0~7.0 |
GH | 0~6 |
CO2 | 必須 |
主な原産地 | 世界各地 |
分類 | スイレン目ミツガシワ科 |
pH | 6.0~7.0 |
GH | 0~6 |
CO2 | 必須 |
主な原産地 | 世界各地 |
「ニムファ」は世界各地に広く分布する熱帯性スイレンの仲間です。
よく似た生態を持つミツガシワ科の「ニムフォイデス」も「ニムファ」として括ることがあります。
また、「ニムフォイデス」とはラテン語で「ニムファに似たもの」を意味します。
(Nymphaea(ニムファ属)+oides(~に似た)→Nymphoides(ニムファに似たもの))
育成方法やレイアウトでの活用方法はどちらもほぼ同様ですので、このページでは同グループとして解説します。
レイアウトでの性質について
このグループは柔らかな丸葉を密生させる性質から、他の水草に比べ強い存在感があります。
この存在感を活かし、レイアウトでは主に中央付近で目を惹く”センタープランツ”として植え込むことが多いです。
独特なゆらぎのある丸葉や、斑入り模様は他の水草では実現が難しい表現です。
また浮葉を出す性質がありますが、これは目的によって歓迎されたり、嫌われたりします。
育成方法次第である程度コントロールすることも可能です。
上手に活かして、独創的なレイアウトを作り上げてみましょう。
花の管理について
ニムファ類は調子良く育てるとまず浮葉を展開し、その後花を咲かせます。
オープンアクアリウムやアクアテラリウムの形式で、そのポテンシャルを最大限に発揮させることができます。
もし完全に水中で管理したい場合は、浮葉を出しそうなら全てカットすることで、咲かないようにすることもできます。
開花には非常に多くのエネルギーを集中させます。
水中葉の勢いを維持したい場合は、水中葉を維持したほうが美しい景観になることが多いです。
一方で、水槽内で横から見るレイアウトをメインとする場合は、咲かせないほうがむしろ都合が良いことも多いです。
この場合は、咲く前にカットしてしまうのも一つの手です。
主なニムファ
水草レイアウト水槽で特に使用頻度の高い人気種をピックアップして紹介します。
タイニムファ
学名:Nymphaea sp.
赤~茶のヒラヒラした葉を展開するスイレン科の水草です。
ニムファ類の中では最も一般的で入手しやすい種類です。
育成環境が良いと非常に大型化するため、60cm水槽では2000lm程度のやや暗めの照明を用いたほうがむしろ育成しやすくなります。
「タイニムファ」の名前で流通する植物は複数種含まれているといわれており、Nymphaea rubraを中心に他にもあると思われます。
タイガーロータス
学名:Nymphaea lotus
斑入りの葉が個性的なスイレン科の水草です。
ニムファの仲間の中では比較的浮葉を出しにくく、水中葉での維持がしやすい種類です。
長期間育成すると光を求め水面まで柄を伸ばします。
「グリーンタイプ」と「レッドタイプ」の2種類があり、それぞれ全く異なる色合いの葉を展開します。
本種は東南アジアから「タイガーロータス」という名で入荷されますが、交雑している可能性もあります。
葉が展開していない芋の状態では、展開するまでどちらの色なのか分からない場合も多々あります。
サンタレン ドワーフニムファ
学名:Nymphaea sp.
南米産の小型のスイレン科の水草です。
葉が明るい黄緑、オレンジ、赤などに染まり、赤茶色の斑が入るかわいらしい葉を展開します。
アクアリウムでよく知られるニムファの中では葉の大きさが一番小さい部類に入り、比較的浮葉を出しにくい種です。
小型水槽でも楽しめます。
ロータス ラビットイヤー
学名:Nymphaea oxypetala
南米原産の熱帯性夜咲きスイレン科の水草です。
ニムファ系の水草としては珍しく、浮き葉を作らない性質を持ちます。
ウサギのような形の水中葉を主に作ることで知られ、膜質で半透明、黄緑色、全縁、葉縁は大きく波立つ場合があり、葉の基部はやじり形で葉の耳は開切り込みの深い葉を形成します。
状態の良い環境で育てると非常に大型化します。
90~120cm水槽が適正サイズとなるでしょう。
バナナプラント
学名:Nymphoides aquatica
バナナのような房(殖芽(越冬芽))を付けたユニークなニムフォイデスの仲間の水草です。
水中葉は黄緑色から茶色の円形の葉をつけ、有柄、葉の基部は心臓形です。
葉の縁は全縁でゆるやかに波立ちます。
株が小さい場合は浮遊しがちです。
房が大きなバナナ状になれば、ある程度は沈んでくれることが多くなります。
育成は容易で見た目もかわいいため、前景に置くだけで水槽の印象も変わります。
グラスアクア等でも楽しめ、瓶やボトルに置くだけで涼しげに。
自生地ではバナナを出した状態で浮き葉を展開し、流れに乗って新しい場所で育つことで分布を広げています。このため、浮葉が出ている状態が本種にとっては標準となります。
ニムフォイデスsp.タイワン トロピカ
学名:Nymphoides cristata?
トロピカ社からニムフォイデスsp.“taiwan”の名で入荷された、ニムフォイデスの仲間の水草です。
ライトグリーンが美しく、小型水槽でも使える扱いやすさも魅力です。
センタープランツとして用いても良いのですが、後景に複数本植えることで後景草としても使えます。
本種の詳細には不明点が多く、水中葉を展開する点、形が似ている点からヒメガガブタに近い仲間ではないかと思われます。
コウホネ
学名:Nuphar japonicum
透明感のある柔らかな水中葉を展開するスイレンに近縁な、日本にも自生する水草です。
本来は屋外でビオトープ植物として楽しむことが多い種類ですが、水槽内での育成も可能です。
漢字では河骨と書き、白い根茎が骨に見えることからこの名前があります。
地下茎は通常白色で太く地中を這い、葉は根茎の先端より出て水位の条件により水上葉の外に浮葉や水中葉も作ります。水槽内では、主に水中葉の鑑賞を楽しみます。
水中葉は楕円形で薄く、葉縁は波打ちます。全体的に葉は透き通り美しいです。
水上葉はしっかりと厚みのある濃い緑色の葉を展開しますが、屋内ではやや維持しづらいかもしれません。
バルクラヤ ロンギフォリア レッド
学名:Barclaya logifolia
細身の葉が大変美しいニムファの仲間です。
他のニムファ類よりはやや遠縁で、浮き葉を作ることがなく扱いやすい水草です。
葉の基部は心臓形、葉縁は波立ちます。
酸性から弱酸性の水質で育ち、レイアウトでは中景から後景のワンポイントに植え込むだけでも美しい水景が演出できます。
ニムファの仲間は主に根から栄養を吸収する為、肥料は固形肥料を根本付近の低床内に埋め込む方法が有効です。
水草レイアウト水槽で主に利用されるニムファ類は以上です。
他にも流通が少ない種など、珍しいものもいろいろあります。
あえて他の種類を用いることで、個性的なレイアウトを創り上げてみるのも良いでしょう!
ニムファの使い方
ニムファ類はその存在感を活かし、水槽内のワンポイントとして植え込むと良いでしょう。
センタープランツ向きの水草です。
ニムファ類は元々浮葉植物ですので、その性質上、光を求めて水面に葉を出します。
このため、1株で水中葉と浮葉の2つの形態を楽しむことができ、特に水槽上部にフタをしないオープンアクアリウムにはよくマッチしています。
ビオトープ風のアクアテラリウムにも良いでしょう。
一方で、横からの鑑賞に特化する場合、つまり一般的な水草レイアウトのスタイルで楽しむ場合には、この浮葉がジャマに感じることがあります。
浮葉が要らない場合は、途中でカットしてかまいません。
また、光量強めで管理することで浮葉を出しにくくなります。
もし浮葉が要らないのであれば、暗めのライトで管理するとすぐに光を求めて浮葉を出してしまいますので、できるだけ明るいライトを用いて管理すると良いでしょう。
ニムファの育成の基本
冒頭でのおさらいとなりますが、以下の環境を満たしていれば基本的に育成可能です。
育成に適した環境であれば成長は早く、大型化する傾向があります。
水温 | 20~28℃ |
光量 | 30cm水槽:1000lm以上 45cm水槽:2000lm以上 60cm水槽:3000lm以上 |
CO2 | 必須 1滴/3秒(60cm水槽の場合) |
pH | 6~7 |
GH | 0~6 |
肥料 | 固形肥料 |
水温
熱帯性スイレンの仲間なので、低温には弱いです。
最低でも20℃以上を必要とします。
夏季限定で、屋外での育成も可能です。
光量
60cm水槽で3000lm程度が目安です。
光量が弱いライトを用いるほど、浮葉を出しやすくなります。
浮葉を出させたい場合は暗めのライトを、出させたくない場合は明るめのライトを用いて管理すると良いでしょう。
CO2添加
レイアウト水槽では水中葉での鑑賞がメインとなるため、鑑賞性を保つには必須といえるでしょう。
CO2添加が無い場合、小型化して葉の枚数も少なくなる傾向があります。
また、浮葉も多くなります。
底床
ニムファ類の育成にはソイルが最適です。
根からの栄養吸収力が非常に高く、底床からの栄養要求度が高い水草です。
このため、底床には栄養系ソイルを用いるのが最も育成しやすくなります。
水質
いわゆる一般的な水草が好む、弱酸性の軟水を理想とします。
pH6~7、GH0~6が理想値です。
底床に栄養系ソイルを用いていれば、特に何もせずに概ねこの理想の範囲内となるでしょう。
もし、水道水原水の硬度が高い場合は、硬度を下げる水質調整剤やRO水の導入などを検討してみてください。
▼こちらも参考
トリミング
基本的に浮葉のカットがメインとなります。
葉が多すぎる、あるいは大きすぎると感じたら、その柄を根元からカットしましょう。
水中葉メインで管理したい場合、柄が長くなってきた葉を株上1~2cmくらいのところでカットすると、柄が長くなりにくくなります。
ライトが暗いと柄が長くなりやすいので、トリミングが億劫なら明るいライトを用いると良いでしょう。
なお、浮葉をカットしすぎると、株自体の成長が止まり休眠に入ることがあります。
このため、株の成長を目的とする場合はカットしないほうが良いです。
景観の維持を取るか、株の成長を取るか。目的に応じて選択してください。
コケ対策
定番ですが、ヤマトヌマエビとオトシンクルスが有効です。
肥料
底床からの栄養吸収力が強いため、固形肥料が特に有効です。
株の近くに埋めておくと良いでしょう。
殖やし方
ニムファ類は球根で殖える植物です。
育成してしばらくすると、球根から新たな株が芽吹いてきます。
この株を切り離してソイルに植えればOKです。
株を増やしたい場合は、浮葉はカットしないほうが良いようです。
ニムファ用語集
浮葉・・・水面に展開する葉です。
ニムファはスイレンの仲間で、元々浮葉植物です。
このため水中葉よりも浮葉の形態が、自然下でのニムファ本来の姿です。
水槽内では水中葉の鑑賞がメインとなりますが、本来はこちらは水深のある環境で展開される葉となります。
強い光を当てると水面に浮葉を展開する必要がなくなるため、水中葉を維持しやすくなります。
光が弱いと光を求めて水面に葉を伸ばすため、浮葉を展開しやすくなります。
浮葉植物・・・水底に根を張り、水面に葉を展開する水生植物を指します。
スイレンの仲間が代表的です。
スイレンもニムファ属ですが、アクアリウムにおいては“水槽内で栽培されるニムファ属”を特に「ニムファ」と呼び分けることが多いです。
ビオトープなど“屋外栽培をメイン”に楽しむものは「スイレン」と呼び分けられることが多いです。
球根・・・ニムファの本体です。
葉をカットしたぐらいではダメージを受けませんが、球根が傷つくとダメージを受けます。
球根を大きく成長させたい場合は、浮葉はカットせずにそのまま展開させた方が、良い結果が得られます。
ムカゴ・・・ミクランサなど一部の種が用いる、栄養繁殖の手法の一つです。
脇芽が養分を蓄えて肥大化したもので、見た目は種子に似ていますがそれとは全く異なります。
ミクランサでは葉についた状態のまま、子株の葉や根が生えてきます。
これを切り取って底床に植えることで増殖を狙えます。
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