どうも、ほにゃらら sp.です。
今回のテーマはメダカの飼育者の心得について。
メダカ飼育における禁忌。それは「放流」行為です。
いかなる理由があろうと、
飼育しているメダカを放流しても良い場面は存在しません。
メダカに限らず、飼育魚の放流という行為には目に見えない甚大なリスクを抱えています。
飼育者がただ一つだけ覚えるべきこと、それは
とにかく「放流しない」こと。
必ず最後まで責任をもって飼育しましょう。
今回はさまざまなケースを想定し、放流してはいけない理由をQ&A形式で解説します。
放流して良い?悪い?Q&A集
Q1.メダカを繁殖させていたら増えすぎてしまった。放流しても良いですか?
A1.ダメです。絶対に放流してはいけません。
殖え過ぎてしまったメダカは、選別漏れ用の水槽で管理すると良いでしょう。また、知人や友人に譲ると喜ばれるかもしれません。
近くのショップに引き取ってもらうのも一つの手です。
どうしても行き先が無く困ったら、エサ用メダカの代わりとして肉食魚に与えることも、最後の選択肢となるでしょう。
メダカの繁殖は軌道に乗ると、ものすごい勢いで殖えることがあります。
数十匹~百匹単位に及ぶことも珍しくありません。
繁殖は計画的に行いましょう。
いかなる理由があろうとも、絶対に野外に逃がしてはいけません。
Q2.元々メダカのいる川に、いろいろな色のメダカがいたら楽しいと思う。放流しても良いですか?
A2.ダメです。絶対に放流してはいけません。
野外に改良メダカを放つ行為は、その地域独自に育まれてきたメダカとの交雑が発生するリスクを引き起こします。
もし、野外で色とりどりのメダカが見られたら楽しいと考えるのであれば、あなたにメダカを飼育する資格はありません。
色とりどりのメダカは、自宅敷地内のプラ船や水槽内で楽しみましょう。
絶対に野外に逃がしてはいけません。
Q3.元々メダカのいない川に、放流しても良いですか?
A3.ダメです。絶対に放流してはいけません。
元々メダカがいない川であっても、そこにメダカが入ることで既存の生物と競合を引き起こす可能性があります。
また、飼育されていたメダカの体表や体内に、飼育環境由来の細菌や病原体などが付着している可能性もあります。
メダカには無害でも、他の生物にとって有害な病原体を持ち込むリスクがあります。
絶対に野外に逃がしてはいけません。
Q4.既に改良メダカが見られる川なら、放流しても良いですか?
A4.ダメです。絶対に放流してはいけません。
既に改良メダカが見られるということは、誰かが放流してしまったのでしょう。
放流が生じた時点で、Q1~3で説明したリスクにその川はさらされてしまっています。
しかし発見が早い段階で手を打てば、うまくすると事態を収束できるかもしれません。
そこに放流個体を追加することでリスクを助長するなど、もってのほかです。
もし野外で改良メダカを見かけた場合は、発見した地域の自然保護団体などに連絡すると良いでしょう。
また、見かけた改良メダカは可能な限り捕獲して、その水域から駆除することが好ましいです。
絶対に野外に逃がしてはいけません。
Q5.クロメダカなら、放流しても良いですか?
A5.ダメです。絶対に放流してはいけません。
クロメダカとは見かけが野外で見られる色彩のものと同じメダカを指しています。
外見は全く同じでも、遺伝子が異なります。
Q2でも説明した通り、メダカには全国各地に10種類以上の遺伝子型があるといわれています。
そのそれぞれは、各地域で独自に育まれた系統です。
一度野生のメダカとの交雑が生じてしまったら、純系を元に戻す方法はありません。
メダカの遺伝的多様性を破壊しかねない、許されない行為です。
絶対に野外に逃がしてはいけません。
Q6.地元で採れたメダカを殖やしました。その子供なら放流しても良いですか?
A6.ダメです。絶対に放流してはいけません。
地元で採れたメダカの子であっても、放流してはいけません。
人の手で殖やしたメダカでは、親個体が限られており自然界に比べると遺伝子の構成が偏っている可能性が高いです。
たとえ地元の同じ系統から得られた個体であっても、放流には慎重になるべきです。
加えて、人工的な飼育環境下にいる時点でメダカ以外の影響が考えられます。
例えば同居する他の魚や、購入した底床、水草など飼育環境由来の影響を多かれ少なかれ受けているはずです。
Q3で説明したものと同等のリスクがあります。
一方で、このような取り組みを考えているということは、地元のメダカを守りたい気持ちがあることは理解できます。
個人宅で維持していたメダカが、実は絶滅してしまった貴重な系統の末裔であり、そこから復活に至ったケースもあるようです。
このため、放流はせずに飼育自体は続けてください。
地元のメダカを守りたい心がけ自体は大切です。
そのためにも、まず個人的な放流は思いとどめてください。
その後、専門の研究機関に相談してみると良いでしょう。
絶対に野外に逃がしてはいけません。
Q7.メダカの飼育ができなくなりました。放流しても良いですか?
A7.ダメです。絶対に放流してはいけません。
引っ越しなど生活環境の変化によって飼育ができなくなることはあると思います。
しかし、いかなる理由があろうとも放流はしてはいけません。
まずは知り合いの方などに掛け合い、もらってくれる人を探しましょう。
絶対に野外に逃がしてはいけません。
Q8.もらい手が見つかりません。放流しても良いですか?
A8.ダメです。絶対に放流してはいけません。
生き物の飼育を始めた以上は、必ず最後まで責任をもって面倒を見なければなりません。
どうしてももらい手が見つからない場合、かわいそうでも責任をもって飼育者が飼育を終わらせるほかありません。つまり、最終手段は殺処分となってしまいます。
しかし、これはあくまでも最終手段です。
そうならないように、できるだけもらってくれる人を探すことに専念してください。
「メダカ 里親募集」などで検索してみるのも良いでしょう。
メダカを生かしておきたい気持ちは大変よくわかります。
自然の中で生きて欲しい。そんな心の優しい方だからこそ、放流という発想に至るのも分かります。
しかし、一度飼育した生き物の放流は絶対にしてはいけない行為です。
その小さな優しさが、皮肉にも生態系に破壊をもたらしてしまうのです。
絶対に野外に逃がしてはいけません。
メダカの放流が抱える問題
ここまでのQ&Aの内容を整理してみましょう。
まず、メダカの放流の是非についてはいかなる理由があっても「非」です。
絶対に放流してはいけません。
次に、その放流してはいけない理由については大きく3つあります。
- 競合の問題
- 交雑の問題
- 病原体の問題
競合の問題
本来メダカが生息していない場所にメダカが放流されると、元々いた生物と放流されたメダカとの間で競合が起こります。
また、元々その場所に生息していた小型の水棲昆虫などにとっては、放流されたメダカは天敵となります。
このように元々メダカがいなかった環境に急にメダカが追加されることにより、生態系のバランスが崩れてしまう恐れがあるのです。
したがって、絶対に放流してはいけないのです。
交雑の問題
交雑の問題は目に見えないので危険性を感じにくいのですが、非常に深刻な問題です。
本来野生のメダカが生息していた場所にメダカが放流されると、交雑が生じてしまう恐れがあります。
日本のメダカは1種ではなく、「キタノメダカ」と「ミナミメダカ」の2種に分けられます。
改良メダカはこのうち「ミナミメダカ」をベースに作出されたといわれています。
これら全て合わせると、10種類以上の系統に分けられるといわれています。
例えば「ミナミメダカ」では、東日本型、東瀬戸内型、西瀬戸内型、山陰型、北部九州型、大隅型、有明型、薩摩型、琉球型と9つの型が知られています。
改良メダカはこれらとは異なる遺伝子型を持つため、一度交雑が生じてしまうと取り返しがつきません。
これらの系統は長い時間をかけてそれぞれの地域で独自に育まれて来た遺伝子です。
その長い歴史を、放流という行為は交雑を介して不可逆的に破壊してしまうリスクを秘めています。
遺伝子が関わる問題は「何も起きていないから良いじゃないか」ではなく、何かが起きてからではもう手遅れです。
したがって、絶対に放流してはいけないのです。
昨今叫ばれているメダカの放流問題の多くは、この問題が大部分を占めています。
病原体の問題
メダカの問題なのでメダカに着目しがちですが、メダカに付着している微生物にも着目する必要があります。
一度人工的な環境で飼育されたメダカは、その体表にさまざまな影響を受けている可能性があります。
例えば、同居している他の魚から移されたものであったり、砂利や水草に付着していたものが付着していたりするかもしれません。
それがメダカにとって問題ない病原体だったとしても、例えばドジョウには影響があるかもしれません。フナに影響があるかもしれません。
魚だけに限らず、水棲昆虫やその他の生物に影響があるかもしれません。
そして一度野外に広がってしまうと、取り除いて元の状態に戻すのは極めて困難です。
このため、予防原則が第一です。
したがって、絶対に放流してはいけないのです。
守らないとどうなるの?
守らないと、将来的にメダカの飼育に何らかの規制がかかる可能性が高まります。
最悪の場合、飼育禁止になることもあり得るでしょう。
メダカは近年、「第3の外来魚」ともいわれています。
第3の外来魚
第3の外来魚とは、メダカをはじめとした観賞用の改良品種が野外に逸出したものです。
改良メダカとは種としてみた場合、野外に分布する「ミナミメダカ」と同種です。
このため、先に述べた「交雑の問題」による悪影響が極めて深刻なのです。
交雑により地域固有の遺伝を持った集団を雑種化により滅ぼしてしまったり、観賞には有益でも自然界での生存に不利な形質を持ち込んでしまったりすることが考えられます。
第2の外来魚の場合、在来の近縁種がいれば、“交雑する可能性がある”という問題があります。
一方で第3の外来魚の場合は、放流された地域に同種が住んでいれば、“高確率で交雑を引き起す”ことでしょう。
これらの脅威は目に見えません。
そのうえ、この脅威を理解するためには高度な専門知識を要求されます。
だから、絶対に放流してはいけないのです。
メダカを末永く楽しむために
自然環境で悪影響を及ぼす可能性のある魚類はどうなるか。
記憶に新しいところでは「アリゲーターガー」や「ナイルパーチ」が特定外来生物に指定され、以後無許可での飼育はできなくなりました。
メダカは特定外来生物ではありません。
また、大型で力が強いわけでもなく、強い肉食性があるわけでもありません。
他の生物を追い出してしまうような、縄張りを強く主張するわけでもありません。
しかし交雑によって、野生の在来のメダカの遺伝子を静かに破壊してしまうリスクを秘めているのです。
そしてそのリスクを完全に理解するためには、遺伝子や生態に関連する高度な知識が要求されます。
全ての人が全容を理解するのは困難といわざるを得ません。
でも、「放流しない」ことだけ守れば、そのリスクを避けられるのです。
もし、今後も野外で改良メダカが見つかるような状況が長く続くと、将来的に飼育に規制がかけられてしまっても、何ら不思議ではありません。
これからも末永くメダカという趣味を楽しんでいくためには、とにかく絶対に「放流しない」こと。
放流さえしなければ、これまで通り楽しめます。
メダカを愛好するのであれば、全員知っておきましょう。
メダカの放流 まとめ
とにかく放流は、ダメ。
これだけ覚えてください。
一度飼育し始めたメダカは、絶対に放流しないでください。
改良メダカの奥深い世界と、大切な自然環境を守るために、必ず知っておきましょう。
▼絶対に放流せずに、自宅でお楽しみください。
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