今回は色彩豊かでコレクション性の高いベタの繁殖についてです。
ベタは闘魚としてより強い個体を作ることから始まり、今では色鮮やかな美を追求する品種という位置付けに変わってきました。このように、ブリーダーさんたちの努力の賜物であるベタの繁殖について掘り下げてみようと思います。
繁殖の歴史
ベタの歴史は深く、米国コロンビア大学の研究者ヨン・ミ・クォン氏の研究で、タイでは1000年前から飼育されたといわれています。そんなベタの繁殖が行われた理由の本質は「闘魚」にあり、より強いベタを作出するために700年以上続いてきました。
闘魚といわれるベタですが、原種とされているスプレンデンス種は攻撃性がさほどなく、「改良品種の方が攻撃性が高い」といいます。
トラディショナル・クラウンテール・ハーフムーン・フルムーンなど、ヒレに特徴を持つ品種も強い闘魚作出の過程で生まれました。
現在ではタイを中心に、日本・アメリカ・ヨーロッパでは観賞用として繁殖が行われています。
豊富なバリエーション
今もなお人気の高いベタはブリーディングが盛んに行われ、現在流通している多くは改良品種です。
観賞用として美しいベタはヒレの形やカラーバリエーションが豊富です。
品種やカラーバリエーションは下記の記事でご紹介しています。
雌雄判別は容易
色彩やヒレの形状
オスは背ビレ・胸ビレ・尻ビレ・尾ヒレの各ヒレが長くなります。メスはヒレが伸びずに短いです。
色での判別は色彩の鮮やかさにあります。オスは色彩の明度が高いですが、メスは色のバリエーションはオス同様にありますが、やや明度が低い、暗めといった印象を受けます。
ヒレでの雌雄判別に比べると、色味での判別は難しいです。
産卵管
婚姻線
フィンスプレッディング(フレアリング)
フィンスプレッディングとは、オスが行うヒレを広げた威嚇行動です。
※フレアリング=ベタの時にだけ使う名称です。
オスが行う行動といっても、個体の性格により、フレアリングをしないオスや、フレアリングをする性格の強いメスがいます。
フレアリングした時にも、エラの大きさでオスメスの判断ができます。正面から見た時にオスの方がエラが大きく、メスのエラは小さくなります。
エラについて下記の記事で詳しくご紹介しています。
ペアリングの方法
3.浮草を導入する
浮草を浮かべ、オスが泡巣を作り始めるのを待ちます。
4.メスをオスの飼育容器に導入!
導入したタイミングでエサは与えません。(エサを与えてしまうと繁殖行動しない場合があります。1週間はあげなくても大丈夫)健康であれば3週間は問題ありませんが体型は崩れます。
導入後の注意点として、すぐに産卵行動に入るようであれば問題はありませんが、双方がヒレをかじりあってボロボロになってしまう場合があります。
お互いキズつけ合う行動が見られたら、一度別の水槽に分けてあげ休ませてから、再度改めてお見合いをさせてください。
メスが隠れられる場所を設置
おすすめはウィローモスです。微生物が湧くので稚魚の生存率も上がります。スポンジフィルターでもOK。
数日で泡巣で繁殖行動を行い、50~100個程度の卵を産み落とします。落ちた卵をオスが拾い泡巣に付着させます。
※産卵しない場合、ペアの相性・照明が明るすぎるなどが考えられます。お見合いのし直しや、照明を暗くする、ストレスを感じないようにブラックウォーターなどで視界を隠してあげましょう。
5.産卵行動後
産卵が終わったら、メスは取り出し別の容器へ移動させます。(オスから距離をとる・隠れたりする行動がみられる。)
オスは稚魚がある程度成長したら別に移します。
稚魚の育成
ふ化までの期間は?
産卵後、ふ化するまでオスが卵の世話をしてくれます。ふ化するタイミングは平均2~4日、水温25℃~27℃が適温になります。
※水温30℃に上げると早くふ化します。
遊泳開始からエサやり
ふ化直後2~3日はヨークサックから栄養を吸収して成長します。
※稚魚が泳ぎ始めたらオスを別の水槽へ移しましょう。
遊泳が始まると同時にエサを食べ始めます。稚魚のサイズは非常に小さく、ブラインシュリンプも食べられません。与えるエサは、より小さいインフゾリアやPSBなどの微生物となります。※PSBは水質安定にも有効。
与える期間としては約1週間程度になりますが、この期間を乗り越えるのが難しく「魔の1週間」とも言われるほどです。
「魔の1週間」を乗り越えるために、できるだけサイズの大きいメスを選ぶのがおすすめです!
大きなメスが産んだ卵から生まれる稚魚は大きく!大きければ早くブラインシュリンプを食べ始めることができます。
ふ化から1~2週間後
インフゾリアを与える期間を乗り越え、ブラインシュリンプを食べられるサイズに成長したらエサを切り替えます。エサは可能であれば1日に3回、最低でも2回は与えましょう。1カ月~1カ月半はブラインシュリンプを与えます。
下記の記事にてブラインシュリンプについてご紹介して是非ご覧ください。
1カ月経過した稚魚には!
稚魚は1カ月に1cmほど成長します。1cmを超え始めたら赤虫や親個体にあげている餌を食べられるくらいの大きさにして与えましょう。
餌を与え始めると飼育ケース内も汚れてくるのでメンテナンスが必要なります。スポイトなどでゴミを吸い、足し水は減った分量だけ入れます。稚魚は水質の変化に耐性がないので注意しましょう。
飼育する水温を上げると成長スピードが上がります。ただし、水が汚れるのも早くなります。水換えの頻度も変わりますのでご注意ください。
・産卵から2~4日でふ化。
・ふ化後3日ほどで遊泳・餌やり開始、同時にオス個体の移動。
・稚魚が極めて小さいので1週間はインフゾリアやPSBを与える。
・成長後のエサやりはブラインシュリンプなど1日2回~3回。
・ブラインシュリンプをあたえてから1カ月~1カ月半経過したらエサを人工飼料や赤虫に移行、食べられるくらいのサイズにしてあげるとよい。
※エサを与え始めると汚れるのでメンテナンスを行う。スポイトなどでゴミを吸い、減った分量の足し水。水質変化の耐性が低いので注意をする。
稚魚の選別
稚魚が成長しオスメスの判断ができるようになってきたら、オス個体は個別飼育に切り替えるようにします。オスは縄張り意識が高いので互いに攻撃しあうリスク回避になります。
環境で変化する
上記で雌雄判別が可能となりますが、ベタは環境で性転換します。ベタは卵から生まれた段階ではすべてメスとなります。隣接的雌雄同体といって生まれながらに卵巣・精巣両方を持ち、最初はメスとして成長し、成長段階でオスメスの性別が決まります。
成長段階でオスメスが分かり、選別した際にメスだけになったグループの中からまたオスが現れるといったことがあります。後々オスとなった個体の成長はヒレの伸びも悪く、ちょっときれいとはいえない微妙な個体になってしまいます。
交配するなら同品種を
同品種が生まれる確率が高いですが、もちろん100%同じ個体が生まれるわけではありません。
尾ビレの形状は交配により思った通りに仕上げるのは難しいので、気に入った尾形同士で交配するのが無難です。
例えばハーフムーンが欲しいなら、ハーフムーン×ハーフムーンにする。どうしても尾形の違う個体同士を交配する場合は、メスを好みの尾形の品種から選ぶようにしましょう。
尾形によって表現させにくい色や柄もあります。
ベタの配色
イエロー・オレンジ<レッド<ブラック<メタリック<カッパーの順番といわれています。
スプレンデンス種を起源として、縄張り意識が高い性質を生かし、闘魚としてより強い個体を作出していた中で、ヒレに特徴を持つ品種が誕生しました。
飼育方法や環境
基本的な飼育方法は下記の記事をご参照ください。
繁殖目線でのアイテム選び・飼育方法
飼育容器・水槽
飼育容器は水量が多くて水深の低いものがおすすめですが、ベタは上層域で遊泳する熱帯魚で水槽から飛び出すことがあります。飛び出し防止のためにフタは使用しましょう。
フィルターなど
選ぶ基準は、ろ過能力の高いものです。生体にキズがつく、ヒレが裂けてしまうといったリスク回避、稚魚を吸い込まないものでの選定もあります。フィルターだけではなく、ヒーター・シェルター・流木なども対象になります。
そこでフィルターはスポンジフィルターがおすすめです。ストレーナーが可変するタイプのスポンジフィルターは隠れ家としても優秀です。
ヒーターもシンプルなタイプで問題ありません。
レイアウトについて
上記でも説明しましたが、“ザ・シンプル”で問題ありません。ごちゃごちゃしてしまうと生体チェックもしづらくなります。
最低限のレイアウトを心がけましょう。ベタの寝床、泡巣を作るのに浮き草などはおすすめです。
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