タナゴの魅力
タナゴの世界へようこそ。
タナゴは日本産淡水魚の中でも、繁殖期に色鮮やかな婚姻色を呈することから非常に人気の高いグループです。
春または秋に、赤や青、緑といった鮮やかな色彩に身を包み、普段の銀一色の姿とは見違える美しさに変貌します。
この色彩は種ごとに異なるのはもちろん、同種であっても地域ごとにも微妙な差異があると言われています。
このため、産地を気にして集めている人も多いです。
日本産淡水魚の中でもトップクラスの多様性を誇り、大変奥深いグループです。
タナゴは文化の面でも、古くから深い関わりがあります。
タナゴ釣りの文化は遡ること江戸時代から知られており、当時から人気の淡水魚であった様子がうかがえます。
竿やウキなどにも専用の道具があり、こちらも奥深い世界です。
タナゴの仲間はかつて、日本各地にのため池や用水路、小川などに数多く暮らしていました。
しかし、近年急速にその数を減らしていると言われています。
タナゴ類は美しく人気の淡水魚ですが、法令による規制が関わるものも多いです。
その必要性を理解するためには、生態系の知識も身につけなければなりません。
それはタナゴを取り巻く様々な問題を知る機会にもなるでしょう。
タナゴ類の飼育に取り組む際は、ぜひ相応の知識を身につけてから取り組みたいところです。
この記事を読むと、その必要とされる知識を一通り身につけることができます。
それではただ美しいだけでは終わらない、色鮮やかで奥深いタナゴの世界へ。
貴方を誘いましょう。
タナゴとは
タナゴとは、コイ科タナゴ亜科に属する淡水魚の総称です。
フナに似た扁平な体型を持ち、日本各地のため池や用水路、小川などに暮らしています。
タナゴの仲間の最大の特徴は、産卵期になるとオスが普段とは見違えるほど色鮮やかな婚姻色を発揮することです。
この発色は熱帯魚にも負けず劣らずの美しさを呈します。
またこの色は季節限定で、飼育下で最高の発色を見るためにはそれなりの創意工夫が必要です。
飼育するだけなら特に難しい魚ではありませんが、”咲かせる”には相応の技量が求められます。
普段はほとんど銀一色の魚ですが、抜群に仕上がった発色の個体は息をのむ美しさです。
発色させるまでにかかる手間暇も、タナゴ類の飼育における醍醐味の一つといえるでしょう。
主なタナゴ
国内に分布しており、流通が見られる種を紹介します。
タイリクバラタナゴ
学名:Rhodeus ocellatus ocellatus
別名:タイバラ、タランコ、オカメ
全国的に分布が見られる、最もポピュラーなタナゴです。
タナゴ類の代表種のような位置づけにありますが、実は古い時代にやってきた外来種です。
いかにもタナゴらしい扁平な体型と体高を持ち、オスの婚姻色は赤・青・緑で表現され大変美しいことで知られています。
メスは成魚になっても、背ビレの黒色斑が残ります。
飼育は極めて容易です。
特に水質に注文もなく、エサも選好みしません。
低水温から徐々に水温が上がってくると、鮮やかな婚姻色を示すようになります。
繁殖期はタナゴ類としては最も長く、4~10月までシーズンが続きます。産卵は各種二枚貝に行われます。
タイリクバラタナゴはタナゴの中でも比較的改良が進んでおり、さまざまな体色を持った品種が作出されています。
- 体形がひし形
- 髭が無い
- 縦帯は尾の付け根から背ビレまで
- 側線有孔鱗(側線の孔のある鱗)が多い(2~7枚)
- 腹ビレの縁取りは白
タイリクバラタナゴはひし形の体型を持ち、オスは成魚になるにつれ背ビレの黒い斑点は目立たなくなり、目の縁取りは赤くなります。
メスは、背ビレの黒い斑点はずっと残ります。
カゼトゲタナゴやニッポンバラタナゴとよく似ています。
カゼトゲタナゴは縦帯が背ビレの付け根を超えて胸ビレ近くまで伸びるので、簡単に区別できます。
タイリクバラタナゴとカゼトゲタナゴの見分け方
青線:背ビレの付け根の位置
赤線:縦線の先端の位置
ニッポンバラタナゴとの区別は非常に難しいです。
傾向的な特徴として、「側線有孔鱗が多い」こと、「腹ビレの縁が白く彩られる」ものはタイリクバラタナゴの可能性が高いです。
両者を確実に見分けるためには、遺伝子を確認するしかないと言われています。
本種は全国的に広く分布しており、最も見つけやすいタナゴの一つです。
野外で簡単に採集できるタナゴは、ほとんどの場合本種であることが多いでしょう。
ニッポンバラタナゴ
学名:Rhodeus ocellatus kurumeus
別名:ボテ、ニガブナ、キンタ、ニッパラ、ニチバラ
タイリクバラタナゴの日本固有亜種です。
かつては琵琶湖から北九州にかけて広く生息していましたが、タイリクバラタナゴとの交雑や環境悪化により、生息域及び個体数が激減してしまいました。
結果、現在ではごく一部の限られた地域にのみ生息しています。
各地で交雑が進んだため、いまや純系のニッポンバラタナゴは希少な存在となっています。
タイリクバラタナゴに酷似しますが、繁殖期のオスは名前の通り体側面がバラ(薔薇)色に染まります。
ニッポンバラタナゴの方が、より赤みが強くなる傾向があるようです。
日本産淡水魚の中でも特に美しい種類の1つです。
飼育に関しては、タイリクバラタナゴと特に変わらず容易です。
ドブガイ類に産卵を行います。
- 体形がひし形
- 髭が無い
- 縦帯は尾の付け根から背ビレまで
- 側線有孔鱗(側線の孔のある鱗)が少ない(0~2枚)
- 腹ビレの縁取りは透明
ニッポンバラタナゴはタイリクバラタナゴ同様にひし形の体型を持ち、オスは成魚になるにつれ背ビレの黒い斑点は目立たなくなり、目の縁取りは赤くなります。
メスは、背ビレの黒い斑点はずっと残ります。
カゼトゲタナゴやタイリクバラタナゴとよく似ています。
カゼトゲタナゴは縦帯が背ビレの付け根を超えて胸ビレ近くまで伸びるので、簡単に区別できます。
ニッポンバラタナゴとカゼトゲタナゴの見分け方
青線:背ビレの付け根の位置
赤線:縦線の先端の位置
タイリクバラタナゴとの区別は非常に難しいです。
傾向的な特徴として、「側線有孔鱗がないまたは少ない」こと、「腹ビレの縁が透明」なものはニッポンバラタナゴの可能性があります。
ただし交雑していることも多いようで、この特徴を持っていたとしても100%確実にニッポンバラタナゴであるとは言い切れないようです。
ニッポンバラタナゴとタイリクバラタナゴの見分け方
①腹ビレの縁取り
他に、②:側線有孔鱗の数(タイリク2~7、ニッポン0~2)でも識別できます。
ただしこの2つはあくまでも傾向的な特徴です。
両者を確実に見分けるためには、遺伝子を確認するしかないと言われています。
本種の分布は極めて局所的で、安定的な数が見られるのは九州地方しかないと言われています。
野外で見られる本種に似た魚は、ほとんどの場合タイリクバラタナゴでしょう。
カゼトゲタナゴ
学名:Rhodeus sinensis atremius
別名:シュブタ、ベンチョコ、ニガブナ
九州北部固有のタナゴです。
尾ビレの付け根から暗青縦帯が入り、背ビレと尻ビレの縁がわずかに赤く縁どられる上品な印象の小型タナゴです。
繁殖期は4~6月で、マツカサガイ等に産卵します。
- 体形がひし形
- 髭が無い
- 縦帯は尾の付け根から胸ビレまで
- 九州地方北部に生息する
カゼトゲタナゴはひし形の体型を持ち、オスは成魚になるにつれ目の縁取りは赤くなります。
メスは、背ビレの黒い斑点はずっと残ります。
本種は分布がやや局所的で、九州地方北部にのみ分布します。
タイリクバラタナゴやニッポンバラタナゴとよく似ています。
カゼトゲタナゴは縦帯が背ビレの付け根を超えて胸ビレ近くまで伸びるので、簡単に区別できます。
カゼトゲタナゴとタイリクバラタナゴの見分け方
青線:背ビレの付け根の位置
赤線:縦線の先端の位置
ヤリタナゴ
学名:Tanakia lanceolata
別名:ボテ
本州・四国・九州の河川、湖沼に生息します。
在来タナゴとしては分布が広く、比較的見つけやすい種類です。
本種は婚姻色は体がオリーブグリーンに染まり、腹部は黒、胸や背ビレ、尻ビレの縁はヒレが赤~オレンジに染まります。
この発色は、分布域によって微妙に異なることも知られています。
関東では4~6月に産卵期を迎えます。
性質は温和なので混泳にも向いています。
餌は選り好みせずに食べます。
繁殖期は4~6月で、各種二枚貝に産卵します。
- 体形が流線型
- 髭が長い(目の直径ぐらいの長さがある)
- 縦帯が背ビレの途中まで入るが不明瞭
- 体色が淡い
- 背ビレ分枝軟条(スジ)の数:8~9本
ヤリタナゴは流線型の体型を持ち、国産タナゴ類の中でも髭が長いことが判別のポイントです。
アブラボテやタビラ類とよく似ていますが、アブラボテに比べると「体色が淡い」こと、タビラ類と比べると「髭が長い」「縦帯が不明瞭」であることから区別できます。
ヤリタナゴとアブラボテの見分け方
体色:ヤリタナゴは淡め、アブラボテは濃いめ。
背ビレと尻ビレ:ヤリタナゴは外縁が直線的、アブラボテは外縁が曲線を描く。
柄が全く違う。
両種は比較的近縁な関係にあるらしく、分布域が重なるエリアでは交雑個体が見つかることもあります。
交雑個体は通称「ヤリボテ」と呼ばれます。
ヤリタナゴとタビラ類の見分け方
口ひげ:ヤリタナゴは長く、タビラ類は短い。
縦線:ヤリタナゴは不明瞭、タビラ類は明瞭。
タビラ斑:ヤリタナゴは無し、タビラ類は有り。
アカヒレタビラ、キタノアカヒレタビラ、ミナミアカヒレタビラは背ビレの縁取りが赤くなること、シロヒレタビラも婚姻色が最大まで出来っていない個体は赤くなることがあります。
このため、ヒレの色での判定はあまりあてになりません。
本種は分布がやや広く、本州・四国・九州に分布しています。
在来のタナゴとしては、比較的見つけやすい部類です。
アブラボテ
学名:Tanakia limbata
別名:ボテ
西日本を中心に広く分布するタナゴです。
国産のタナゴの中でも、濃色の体色が特徴的な種です。
体形は近縁種のヤリタナゴより体高が高く、体色は褐色を帯びた銀白色で、肩部や体側面に斑紋や縦帯は入りません。
口角に1対の長い口髭があり、背鰭には紡錘型のオレンジ色の斑紋が入ります。
和名のアブラ(脂)は本種の体色に由来し、ボテはタナゴの俗称です。
生息地により婚姻色に差が見られることも知られています。
体側上半部から背にかけて、濃尾平野から関西地方では暗緑色、岡山では紫色、九州では褐色に染まります。
吻端には白い瘤(追星)が1つ現れ、大型個体では10cmに達することもあります。
繁殖期は4~6月で、各種二枚貝に産卵します。
繁殖期以外は温和ですが、繁殖期になると途端に攻撃的な性格へと変貌します。
タナゴ類としてはトップクラスに気が荒くなるので、混泳の際は注意が必要です。
- 体形は流線型だがやや体高がある
- 髭が長い(目の直径ぐらいの長さがある)
- 縦帯がない
- 体色が濃い
アブラボテはやや体高のある流線型の体型を持ち、国産タナゴ類の中でも「体色が濃い」ことが判別のポイントです。
「婚姻色でなくても色が濃い」ことが多いので、比較的他種とは間違えにくいとは思いますが、強いて言うならばヤリタナゴとはやや似ています。
ヤリタナゴに比べると「体色が濃い」こと、「縦帯がない」こと、「背ビレと尻ビレの模様の入り方が異なる」ことから、比較的容易に区別できます。
アブラボテとヤリタナゴの見分け方
体色:アブラボテは濃いめ、ヤリタナゴは淡め。
背ビレと尻ビレ:アブラボテは外縁が曲線を描き、ヤリタナゴは外縁が直線的。
柄が全く違う。
両種は比較的近縁な関係にあるらしく、分布域が重なるエリアでは交雑個体が見つかることもあります。
交雑個体は通称「ヤリボテ」と呼ばれます。
本種は西日本では数が多く、比較的普通に見られるようです。
カネヒラ
学名:Acheilognathus rhombeus
別名:金平、アブラセンパラ、オクマボテ、カネシビ、シビンタ、タイジャコ、ヒラザコ、ヒラボテ
西日本を中心に広く分布するタナゴです。
元来は琵琶湖湖淀川以西の本州、北九州に生息していましたが、近年では放流により関東・東北などでも見られるようです。
体高があり、背ビレ、尻ビレが大きく目立ちます。
飼育は容易ですが最大で12cmと、タナゴの中でも特に大型になる種なので、大型水槽で飼育すると良いでしょう。
婚姻色は体が青緑、各ヒレがピンクと鮮やかに染まります。
大型なので大変見ごたえのあるタナゴとして、人気の高い種です。
琵琶湖では9~10月に産卵期を迎え、稚魚は翌春に二枚貝から浮出します。
産卵から浮上までに約半年要するので、繁殖の難易度は高めであることも知られています。
他のタナゴ同様、雑食性ですが、本種は特に植物食傾向が強めです。
水草の新芽やアオミドロなどの植物質のエサを好みます。
葉の柔らかい水草は好んで食べられてしまうため、注意が必要です。
カネヒラは国産タナゴの中では人気種ということもあってか、比較的改良が進んでいます。
さまざまな体色を持った品種が作出されています。
- 体形は若魚は流線型、成長につれ体高が出てひし形に近くなる
- 髭が短い
- 縦帯が背ビレの中ほどまで入る
- エラブタの少し上に不明瞭な黒斑が入る
- 背ビレ分枝軟条(スジ)の数:12~13本
カネヒラはやや体高のある流線型の体型を持ち、国産タナゴ類の中でも体色が濃いことが判別のポイントです。
ヤリタナゴやタビラ類とよく似ていますが、ヤリタナゴと比べると本種の方が「髭が短い」こと、タビラ類と比べると本種の方が「体高がある」「エラブタの黒斑が不明瞭」なこと、また「背ビレの分枝軟条が12本以上と多い」ことで区別できます。
若魚やメスはタビラ類と一見して区別の難しい個体も多いですが、背ビレの分枝軟条を数えて「12以上」であれば本種と判定すると良いでしょう。
カネヒラとヤリタナゴの見分け方
口ひげ:ヤリタナゴは長く、カネヒラは短い。
縦線:ヤリタナゴは不明瞭、カネヒラは明瞭。
カネヒラとタビラ類の見分け方
タビラ斑:カネヒラは不明瞭、タビラは明瞭。
背ビレ分枝軟条:カネヒラは12本以上、タビラは9~11本
※分枝軟条は先端が分岐している軟条(スジ)の本数を数えます。
成魚は体形が異なるので一目瞭然ですが、カネヒラの若い個体は流線型をしておりタビラ類とそっくりです。
判別の際は背ビレの条数(スジの数)を数えるのが確実です。
本種は西日本では数が多く、比較的普通に見られるようです。
シロヒレタビラ
学名:Acheilognathus tabira tabira
別名:ボテ、タビラ
濃尾平野~西日本にかけて分布するタナゴです。
体側後方には青緑色と淡紅色の縦帯があります。
5亜種いるタビラの基亜種で、本亜種は主に関西地方を中心に分布しています。
アカヒレタビラに似ていますが、繁殖期のオスは尻ビレの縁と腹ビレ前縁が白くなります。
尻ビレの内側と腹部が真っ黒に染まるのも特徴です。
濃尾平野の個体群は減少しており、絶滅が心配されています。
四国の個体群は在来か移入か判然としないようです。
繁殖期は長く、春から秋にかけて産卵しますが、最盛期は初夏です。
タテボシガイ系、マツカサガイ系の二枚貝等に産卵します。
- 体形は流線型
- 髭が短い
- 縦帯が背ビレの中ほどまで入る
- エラブタの少し上に明瞭な黒斑が入る(通称:タビラ斑)
- 背ビレ分枝軟条(スジ)の数:9~11本
シロヒレタビラは流線型の体型を持ち、通称「タビラ斑」と呼ばれる明瞭な黒い斑点をエラブタの少し上に持つことがポイントです。
この「タビラ斑」はタビラ5亜種に共通して見られる特徴です。
タビラ類5亜種の中での判別に関しては、婚姻色が出ていない時期のオスや、メスを外観で判別するのはほぼ不可能です。
国産タナゴ類の中でもヤリタナゴやカネヒラとよく似ていますが、ヤリタナゴと比べると本種の方が「髭が短い」こと、カネヒラと比べると本種の方が「体高が低い」「エラブタの黒斑が明瞭」なこと、また「背ビレの分枝軟条が11本以下と少ない」ことで区別できます。
若魚やメスはカネヒラと一見して区別の難しい個体も多いですが、背ビレの分枝軟条を数えて「9~11本」であれば本種と判定すると良いでしょう。
タビラ類とヤリタナゴの見分け方
口ひげ:タビラ類は短く、ヤリタナゴは長い。
縦線:タビラ類は明瞭、ヤリタナゴは不明瞭。
タビラ斑:タビラ類は有り、ヤリタナゴは無し。
アカヒレタビラ、キタノアカヒレタビラ、ミナミアカヒレタビラは背ビレの縁取りが赤くなること、シロヒレタビラも婚姻色が最大まで出来っていない個体は赤くなることがあります。
このため、ヒレの色での判定はあまりあてになりません。
タビラ類とカネヒラの見分け方
タビラ斑:タビラは明瞭、カネヒラは不明瞭。
背ビレ分枝軟条:タビラは9~11本、カネヒラは12本以上。
※分枝軟条は先端が分岐している軟条(スジ)の本数を数えます。
成魚は体形が異なるので一目瞭然ですが、カネヒラの若い個体は流線型をしておりタビラ類とそっくりです。
判別の際は背ビレの条数(スジの数)を数えるのが確実です。
アカヒレタビラ
学名:Acheilognathus tabira erythropterus
別名:ボテ、タビラ
関東地方~東北地方太平洋側にかけて分布するタナゴです。
体側後方には青緑色と淡紅色の縦帯があります。
5亜種いるタビラの亜種で、本亜種は主に関東地方を中心に分布しています。
シロヒレタビラに似ていますが、繁殖期のオスは尻ビレの縁と腹ビレ前縁が赤くなります。
尻ビレの内側と腹部も黒く染まりますが、真っ黒にまではなりません。
繁殖期は4~6月で、イシガイやマツカサガイ等に産卵します。
餌は、生餌、人工飼料等をバランスよく与えるのがよいでしょう。
キタノアカヒレタビラ
学名:Acheilognathus tabira tohokuensis
別名:ボテ、タビラ
信越~東北地方日本海側にかけて分布するタナゴです。
体側後方には青緑色と淡紅色の縦帯があります。
5亜種いるタビラの亜種で、本亜種は主に東北地方日本海側を中心に分布しています。
以前はアカヒレタビラに分類されていましたが、信越~東北地方日本海側のものは本亜種として細分化されました。
アカヒレタビラに非常によく似ていますが、本亜種の方が体高が低くなる傾向があります。
繁殖期は春で、ドブガイ等に産卵します。
餌は、生餌、人工飼料等をバランスよく与えるのがよいでしょう。
ミナミアカヒレタビラ
学名:Acheilognathus tabira jordani
別名:ボテ、タビラ
北陸及び山陰地方に分布するタナゴです。
体側後方には青緑色と淡紅色の縦帯があります。
5亜種いるタビラの亜種で、本亜種は主に北陸地方を中心に分布しています。
以前はアカヒレタビラに分類されていましたが、北陸と山陰地方のものは本亜種として細分化されました。
近畿地方はシロヒレタビラの分布域となっており、飛び地のような興味深い分布様式を示します。
また北陸地方と山陰地方の個体群とでは、遺伝的にやや離れているとも言われています。
山陰地方の個体群は、2012年頃に採集が規制されたため、流通するものはほとんどが北陸地方産のものです。
一部、規制以前に採集された山陰地方の個体群の子孫が、ごく少数出回っているようです。
アカヒレタビラに非常によく似ていますが、本亜種の方が発色が淡く、繁殖期にヒレは赤というよりも桃色に染まる傾向があります。
繁殖期は春で、ドブガイ等に産卵します。
餌は、生餌、人工飼料等をバランスよく与えるのがよいでしょう。
イチモンジタナゴ
学名:Acheilognathus cyanostigma
別名:ボテジャコ
濃尾平野~西日本にかけて分布するタナゴです。
一部、九州地方に移入された個体群の存在も知られています。
体側の肩の部分から尾びれ基部にかけて長く伸びる青緑色の縦帯があり、これが和名の由来となっています。
婚姻色は全体的に緑を帯び、ヒレの先端は桃色に染まります。
繁殖期は4~6月でドブガイやイシガイに産卵します。
食性は雑食性です。
成魚は他のタナゴ類に比べやや神経質です。
落ち着いた環境でじっくり飼育するのが良いでしょう。
- 体形は流線型
- 髭が短い
- 縦帯が非常に長い
イチモンジタナゴは流線型の体型を持ち、国産タナゴ類の中でも「縦帯が非常に長い」ことが判別のポイントです。
一文字の名の由来になった通り、縦帯は国産タナゴ類の中でも最長で尾ビレの付け根から胸ビレ付近まで1本の筋がまっすぐ明瞭に入ります。
この点で、他のタナゴ類とは容易に識別可能です。
マタナゴ(タナゴ)
学名:Acheilognathus melanogaster
別名:ボテ
関東以北の太平洋側の一部の河川、湖沼に生息するタナゴです。
体高はタナゴの仲間で最も低く、背ビレと尻ビレが小さいのが特徴です。
婚姻色は全体的に黒くなり、尻ビレ端に白いラインが出ます。
鼻先には体に対して大きめの追星が固まって表現されます。
全体的に渋い魅力のある種です。
雑食性で、藻や底生動物など何でも良く食べます。
関東では4~6月に産卵期を迎え、大型の二枚貝に産卵します。
- 体形は流線型
- 体高がタナゴ類で最も低く、モロコ類やモツゴと見間違えることも
- 髭が短い
- 縦帯は背ビレを超える
- 背ビレ分枝軟条(スジ)の数:8~9本
マタナゴ(タナゴ)は流線型の体型を持ち、国産タナゴ類の中でも「背ビレ分枝軟条が少ない」ことが判別のポイントです。
一見してイチモンジタナゴやタビラ類によく似ていますが、まずイチモンジタナゴとは分布域が被りません。また縦帯の長さが全く違うので区別は容易です。
タビラ類の中ではアカヒレタビラと分布域が被りますが、アカヒレタビラと比較するとかなり体高が低く、背ビレの分枝軟条が8~9本と少ないことで区別できます。
また、本種にはタビラ斑もありません。
本種の婚姻色はシロヒレタビラに似ます。
尻ビレの縁取りが白く縁どられ、体側の発色も青が強めです。
マタナゴとタビラ類の見分け方
タビラ斑:マタナゴにはなく、タビラにはある。
背ビレ分枝軟条:マタナゴは8~9本、タビラは9~11本
※分枝軟条は先端が分岐している軟条(スジ)の本数を数えます。
ゼニタナゴ
学名:Acheilognathus typus
別名:ヤスリメ
東北地方を中心に分布するタナゴです。
太平洋側は関東地方から岩手まで、日本海側では新潟から秋田県に分布すると言われていますが、関東地方の個体群は既に絶滅しているのではないかと考えられています。
鱗がとても小さく、ヤスリメという別名でも呼ばれます。
婚姻色は腹部が赤くなり、味わい深い上品な美しさを表現します。
飼育はやや難しく、神経質な点を見せます。
雑食性ですが、水草の新芽やアオミドロなどの植物質を好む傾向があります。
また、エサをこまめに与えないと痩せやすいです。
神経質な性格をしているため、本種単独でじっくり飼育すると良いでしょう。
関東では9~10月に産卵期を迎え、稚魚は5月に二枚貝から浮出します。
浮上までの期間が約半年と長いため、繁殖の難易度は高めです。
- 体形はひし形
- 鱗が細かい
ゼニタナゴは体高のあるひし形の体型を持ち、国産タナゴ類の中でも「鱗が細かい」ことが判別のポイントです。
「ヤスリメ」と呼ばれるほどとにかく鱗が細かいのが特徴で、この点で他のタナゴ類との区別は容易です。
外国産のタナゴ
近年、人気の高まりを見せている大陸系のタナゴたちです。
国産種には見られない、独特な発色が魅力的です。
トンキントゲタナゴ
学名:Acheilogathus tonkinensis
別名:中国タナゴ
ベトナム北部、中国南部、ラオスに生息するタナゴです。
体高のある体型に尾ビレ付け根から見られる赤い色彩が特徴的な種です。
背ビレの赤と尻ビレの白の対比も美しく、側線上のメタリックブルーのライン等、国産種とは異なる趣きを持ちます。
”レッド”タイプの他、”ブルー”タイプが知られています。
飼育は他のタナゴと同様で問題なく、餌は人工飼料、生餌とよく食べます。
冬季はヒーターが必要になります。
カザンタナゴ
学名:Sinorhodeus microlepis
別名:火山タナゴ、シーナンタナゴ
中国に生息するタナゴです。
ヤリタナゴなどに似た体形を持ち、鱗はとても細かいことが特徴のタナゴです。
繁殖期を迎えた雄は体色が背部の黒みが強くなり、腹部から尻鰭、尾ビレの基まで火山のような真っ赤な色に染まります。
餌は人工飼料、生餌とよく食べます。
タイワンタナゴ
学名:Paratanakia himantegus himantegus
Tanakia himantegus himantegus
台湾に分布するタナゴです。
国内に生息するタナゴのように、婚姻色を表したオスは赤を基調とした非常に美しい発色を見せます。
背ビレ、尻ビレに黒と朱の帯が見られ、側線上にはメタリックブルーのラインが入ります。
本種は、日本では天然記念物のミヤコタナゴと近縁関係にある種と言われています。
餌は人工飼料、生餌とよく食べますが、やや高温を好み、飼育にはヒーターを使用して水温を25℃前後に保つ必要があります。
ウエキゼニタナゴ
学名:Rhodeus uyekii
中国などに生息するタナゴです。
体側中央から尾びれの付け根までの青いラインそして、続くように尾びれの真ん中にオレンジのラインが伸びることが特徴の一つです。
国産種でいうところのカゼトゲタナゴと近い種と思われますが、本種の方が黄色みが強く、独特な色合いを持っています。
飼育方法についても、カゼトゲタナゴと特に変わりません。
ハッカタナゴ
学名:Rhodeus albomarginatus
中国に生息するタナゴです。
和名は無く、流通名としてハッカタナゴと呼ばれています。
繁殖期のオスは臀鰭と背鰭が白く縁取られます。
バラタナゴの仲間としては比較的大型で、8cmほどに成長します。
餌は人工飼料、生餌とよく食べます。
タナゴ飼育の基本
水槽の選択
タナゴ類はほとんどが60cm水槽で飼育できます。
カネヒラなどの大型種を飼育する場合や、多種多様なタナゴを集めたい場合は90cm水槽で飼育するのも良いでしょう。
60cm水槽が基本的な選択となります。
フィルター、照明が付いたセットなら、より安心して始めることができますね。
体長が20cm以上になる魚種や、肉食魚系の場合、90cm水槽からがオススメです。
フィルターの選択
タナゴ類の飼育には60cm水槽が適するので、それに見合った上部式フィルターか、または外部式フィルターを採用すると良いでしょう。
水質について
ほとんどのタナゴ類は、概ねpH7.0~7.5程度の弱アルカリ性を好む種が多いです。
元々日本産の魚種ですので、日本の水質にはよくなじみます。
大陸系の種でもこの傾向は変わらないようです。
底床の選択
基本的には大磯などの砂利系底床、または砂が良いでしょう。
ソイルは水質を弱酸性に傾けるため、不向きであることが多いです。
餌
主食の選択
魚種によって大きく異なりますが、主食は大きく分けて「顆粒」「フレーク」の2種類があります。
個体の口のサイズに合わせて選びましょう。
タナゴ類の重要な要素として、基本的に「植物質多めの雑食性」をしています。
このため赤虫などの動物性飼料も良く食べますが、半分以上は植物質を与えることが重要です。
餌の成分表示を見て、野菜など植物質が多く入った人工飼料を基本に与えると良いでしょう。
長期間にわたって動物質に偏った給餌を続けていると、エサを与えているのに痩せてくるなど調子が悪くなることがあります。
柔らかい水草の新芽は好んで食べる傾向があります。
このため、水草を入れておくとある程度は食べられてしまいます。
一方で植物質の補給になると考えることもできます。
水草をどれぐらい積極的にかじるかは、種によります。
例えばカネヒラは植物食傾向が非常に強く、積極的にかじる傾向があります。
副食の選択
主食のみ与えても飼育は可能です。
しかし赤虫やイトミミズなど動物性飼料は嗜好性が高く、好んで食べる種が多いです。
時折与えると良いでしょう。
特に繁殖を狙う場合に有効です。
餌食いが悪い時の最初の餌付けにも良いでしょう。
冷凍飼料が冷凍庫で保管しやすく、扱いやすいです。
ヒーターの使用
日本の気候に慣れていますので、基本的に不要です。
むしろ冬季に使ってしまうと季節感が狂い、せっかくの婚姻色が現れなくなってしまうことがあります。
一方で、一度寒さを経験させ」「徐々に温めることで春の訪れを感じさせる」と、任意のタイミングで婚姻色を引き出すことも可能なようです。
常設する必要はありませんが、温度可変式ヒーターを用意しておくと、病気などの対応時に便利です。
外国産のタナゴの場合では、常設したほうが良い種もいます。
タナゴの病気
とにかく白点病に罹りやすいです。
導入してすぐや、調子を崩したタイミングなどは発症しやすいので注意が必要です。
よくある病気(白点病、尾腐れ病、松かさ病)
多くの病気は熱帯魚と共通ですので、主な病気は下記を参照ください。
白点病、尾腐れ病、松かさ病はかかりやすい代表的な病気です。
塩水浴
魚病薬を使用しない対処法としては、症状が軽度であれば塩水浴が有効です。
採集で入手した個体の場合、導入前にしばらくの間塩水浴してから導入すると、コンディションが整いやすくなります。
繁殖について
タナゴ類の特異的な性質として、春または秋にオスが最高潮の婚姻色を見せ、メスが二枚貝の体内に産卵するという性質があります。
水槽内でも上手くいくと、この様子を観察することができます。
店舗では状態の良い個体を安全に発送することを最優先の目的としているため、商品画像では最高潮の発色をお見せできない点が残念なところです。
なお、産卵用として二枚貝を用いる繁殖方法は、以前はスタンダードでした。
しかし、近年急速にその数を減らしているため、見直すべき手法といわれています。
採集について
日本産淡水魚を真に理解するのであれば、自身での採集体験は欠かせません。
最初はきっかけづくりとして魚を購入するのも良いでしょう。
しかし、ゆくゆくは自身で採集に赴き、現地で理解を深めるのが理想形です。
元々日本に生息している魚種ですから、生息環境を直に見て、体験することは飼育する上でも役に立つたくさんの情報を得られます。
自己採集もタナゴの醍醐味
タナゴの仲間は国内に分布していると言っても、地域ごとに様々な種がいます。
ため池や用水路、小川を好む傾向があり、大河川の本流にはあまり分布していません。
繁殖生態を二枚貝に依存している関係上、その生息域を大きく変えることができません。
このため各地域で独自の分化が起こりやすく、その結果東北地方でしか見られないもの、関西地方でしか見られないなど多様性が生まれています。
また、同種であっても分布域によって、婚姻色の発色に微妙な差が見られることも興味深い要素です。
単純に婚姻色が美しいこともあり、”目に見える部分で違いが実感できる”ことがタナゴ類が古くから根強い人気を誇る理由なのでしょう。
まずは、近所でタナゴがいそうな場所であれば、「タイリクバラタナゴ」は比較的遭遇率が高いでしょう。
「ヤリタナゴ」も比較的遭遇しやすい種です。
採集や飼育を通して、日本という島国に、なぜこれだけ様々なタナゴが暮らしているのか。
思いを馳せてみるのもきっと、楽しいことでしょう。
タナゴの採集は楽しいものですが、日本在来のタナゴ類は近年著しく減少しています。
いるところにはたくさんいることもありますが、持ち帰るのは必要最小限に留めましょう。
目安として、60cm水槽でトラブルなく飼育できる数は5~6匹程度が限度でしょう。
それよりたくさん持ち帰っても、ケンカするなどトラブルが生じることがあります。
▼採集に関しての詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
一方で、タナゴ類は日本産淡水魚の中でも特に、法令による制限が多い魚種でもあります。
法律だけでなく地域の条令などで採集に制限が掛けられている種類もいますので、知らずに採集してしまわないよう注意が必要です。
法令による規制のあるタナゴ
国内に分布するタナゴ類の中には、種単位で採集や飼育が法令により禁止されているものもいます。
特に採集を行う場合は、事前に確認しておきましょう。
全ての都道府県で制限(法律によるもの)
- ミヤコタナゴ、イタセンパラ(天然記念物)
- スイゲンゼニタナゴ、セボシタビラ(種の保存法)
- オオタナゴ(特定外来生物)
「ミヤコタナゴ」「イタセンパラ」「スイゲンゼニタナゴ」「セボシタビラ」の4種は、無許可での飼育はできません。
「オオタナゴ」も特定外来生物に指定されているため、無許可での飼育はできません。
タナゴ類は、幼魚は判別が難しいものも多いです。
判別できないタナゴの幼魚は持ち帰らないほうが良いでしょう。
※「セボシタビラ」に関しては2020年に種の保存法対象種として指定されました。
指定以前に流通・採集された個体やその子孫は、飼育していても違法ではありません。
※「オオタナゴ」に関しては2016年に特定外来生物として指定されました。
オオタナゴの寿命は3~4年程度なので、2016年の指定前に採集した個体であっても、2020年頃に寿命を迎えているものと思われます。
また、特定外来生物は繁殖が禁止されています。したがって、現在は事実上飼育できません。
※指定以前に流通していた個体からの繁殖個体であっても、販売・譲渡・頒布は処罰の対象となるので注意が必要です。
一部の都道府県・地域での制限(県や市町村条令等によるもの)
2023年12月時点です。
- ニッポンバラタナゴ(奈良県、香川県、長崎県)
- カゼトゲタナゴ(長崎県壱岐市)
- ヤリタナゴ(群馬県藤岡市)
- アブラボテ(長崎県)
- イチモンジタナゴ(滋賀県)
- ミナミアカヒレタビラ(島根県、鳥取県、富山県)
- ゼニタナゴ(岩手県、福島県、秋田県横手市)
全国的に採集が規制されているわけではありませんが、上記の種はカッコ内の地域で無許可で捕獲すると条令違反となります。
その他の制限
タイリクバラタナゴはタナゴの中でもポピュラーに流通する魚種ですが、滋賀県内で飼育する場合は県への届出が必要です。
滋賀県にお住まいの方は注意しましょう。
タナゴ用語集
日本産淡水魚の飼育において特に使われる主な専門用語をピックアップして紹介します。
国内外来種・・・国内の在来種ですが、本来の分布域外に人の手により移殖され、定着してしまった種を指します。
例えば関東・東北地方に定着しているカネヒラや、九州地方に定着しているイチモンジタナゴなどが知られています。
地域個体群・・・ある種において、同種でも地域により微妙な差異が見られる個体群を指します。
例えば、アブラボテは産地により婚姻色が微妙に異なるといわれています。
このため、同種でも産地が異なるものは分けて飼育するのが通例です。
日本産の淡水魚は多くの魚種で地域により微妙な差異があることが知られています。
この奥深さを探求して様々な産地のタナゴを集める人も、少なくありません。
銀鱗・・・タナゴをはじめとした一部のコイ魚類に見られる、鱗の輝きが増す現象です。
これは寄生虫による影響を受けた後の治癒痕といわれており、特に遺伝などはしないといわれています。
地域によっては銀鱗個体が多くみられる水域もあるようです。
婚姻色・・・産卵期が近づくと表現される色彩です。
タナゴの真髄は、婚姻色にあるといえます。
普段は灰色や銀などの地味な色彩をしているところ、驚くべき変化を遂げます。
タナゴ飼育における最大の醍醐味と言えるでしょう。
飼育下では条件を整えないと、素晴らしい発色は見られません。
それゆえ、飼育の手腕も問われる点が通好みの要素ともいえます。
普段は見せないこの発色に惹かれ、タナゴに魅入られる人も少なくありません。
放流は厳禁
タナゴ類は日本産淡水魚の中でも、とりわけ外来種問題が深刻です。
鑑賞用や釣り用として人気があることから、各地での放流行為が後を絶たず、本来の分布域ではない地域へと分布が広がってしまう例が見受けられます。
これは一見良いことのように見えるかもしれません。
しかし先述した通り、タナゴ類は各地域で独自の分化が起こりやすく、その結果東北地方でしか見られないもの、関西地方でしか見られないなど多様性が生まれています。
また、同種であっても分布域によって、婚姻色の発色に微妙な差が見られることも興味深い要素です。
タナゴ類は本来、日本という島国で長い時間をかけて各地で分化してきました。
一方で、タナゴ類は近縁の別種とも交雑しやすいという性質を持っています。
同種であっても、地域が異なれば婚姻色にも差があると言われています。
人為的な放流は、そういった多様性を破壊する行為なのです。
近年では外国産のタナゴも入荷されており、それらは観賞魚としては日本のものにはない発色を示す素晴らしい淡水魚です。
しかし、万が一野外に放流されるようなことがあれば、定着・交雑によりいとも容易くタナゴに関わる生態系を破壊してしまうでしょう。
現にタイリクバラタナゴの侵入により、ニッポンバラタナゴの分布域はほとんどタイリクバラタナゴに置き換わってしまっています。
ニッポンバラタナゴは、九州の一部地域を除いてはいまや絶滅状態に近いとまで言われています。
他のタナゴ類でも、このようなことはあってはなりません。
放流さえしなければ、このような生態系を攪乱する行為は防げるのです。
水槽内で飼育されている限りは、タナゴ類は素晴らしい観賞魚です。
タナゴを飼育し始めたら、途中で逃がすことなく、必ず寿命を迎えるまで飼育に努めましょう!
まずはきっかけとして、
タナゴの魅力に触れてみましょう。
タナゴの奥深さが分かってきたら、
ぜひ採集にもチャレンジしてみましょう。
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