どうも、ほにゃらら sp.です。
今回のテーマは「弱アルカリ性の水質を好む水草」について。
アクアリウムに用いられる水草はその大多数が「弱酸性の軟水」を好みます。
このため、一般にアクアリウムおいて水草の育成は、「底床にソイルを使用し弱酸性の軟水環境を整え、CO2添加を行う」というものがスタンダードです。
しかし、数ある水草の一部にはそのスタンダードな育成方法が通用せず、むしろ弱アルカリ性で硬度のある環境を要求してくる“あまのじゃく”なものもいます。
今回はそのような水草をご紹介します。
弱アルカリ性の水質を好む水草
元来の性質として、弱アルカリ性(pH7.1~7.5程度)を好む水草は以下の通りです。
「金魚藻」と呼ばれる水草は、概ねこの性質を共通して持っています。
また弱アルカリ性を好む水草の多くの種類に共通して、「水上葉を作らない(作れない)」という性質があります。
水中環境に完全適応した水草が、これらの特性を持っているとも言えます。
バリスネリア
「バリスネリア・スピラリス」をはじめとしたバリスネリアの仲間について。
テープ状の葉を展開する後景草ですが、こちらはグループ単位で弱アルカリ性の水質を好む特性があります。
元々適応範囲が広いので弱酸性にも適応でき、レイアウト水槽でもよく使われています。
元来は弱アルカリ性の水質を好むため、大磯砂を使用した多少硬度のある環境のほうが、調子良く育つ傾向があります。
マツモ
「金魚藻」でおなじみのマツモも弱アルカリ性の水質を好む水草です。
こちらも適応範囲が広いので弱酸性にも適応できますが、どちらかと言えば弱アルカリ性の方が調子よく育つ傾向があります。
本種をはじめとした「金魚藻」は、そもそも対象魚である金魚が日本の水質になじんでいます。
日本の水はpH7.0~7.5の弱アルカリ性であることが多いので、その環境に合う水草が選ばれたというわけなのでしょう。
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アナカリス
「金魚藻」の一種として知られるアナカリス。
適応範囲が広い水草で、あらゆる環境でよく育ちます。
特に好むのは弱アルカリ性の水質で、環境が合うとぐんぐん成長します。
マツモと違って葉が柔らかいので、金魚のおやつにも適しています。
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カボンバ
マツモ、アナカリスと並び「金魚藻」の一種として知られるカボンバ。
先に紹介した2種に比べると、育成という点では若干難易度は上がります。
とはいえ、ある程度の光量があればCO2は添加せずとも育成は可能です。
こちらも葉が柔らかいので、金魚のおやつにも適しています。
なおカボンバには複数の種類がありますが、弱アルカリ性の環境が適するのは「グリーンカボンバ(Cabomba caroliniana)」のみです。
それ以外のカボンバは弱酸性の軟水を要求するなど一般的な水草同様で、必ずしも弱アルカリ性の環境を好むわけではありません。
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ナヤス
非常に繊細な葉を持つイバラモ科の水草です。
葉の長さは2~3cm、やや深い緑色で葉脈は褐色を呈します。
茎の色も葉脈同様褐色を呈し、どこか和風な印象を与えてくれます。
適応可能な水質条件が幅広く、弱酸性~弱アルカリ性まで幅広く適応できます。
成長は非常に早く、光量がそれほどなくとも育ちます。
葉はメンテナンス時に手が当たっただけで折れてしまうほど脆いものの、成長スピードが圧倒的で環境条件が良ければ短期間で草体全体がボリュームアップしていきます。
特性上、草姿のコントロールが困難です。
軽く触っただけで草体が簡単に節が折れてしまうため、レイアウトにはやや扱いにくいでしょう。
一方、ブリードを目的とした水槽では有用とされます。
マツモと同様に余剰栄養分の吸収能力が高く、しかも稚魚・稚エビの隠れ家としては葉が細かく密生する本種の方が向いています。
折れたところからも殖えるので、密生させやすい性質があります。
特にシュリンプのブリード水槽では水質を選ばないこと、短期間でよく増えること、稚エビの足場になることから、非常に有用な水草として評価されています。
本来は中性付近を好む水草
次に紹介するのは、ある程度弱アルカリ性の水質にも適応可能な水草です。
これらの水草は本来、中性付近の水質を好む水草です。
水草育成の定説である「底床にソイルを使用し弱酸性の軟水環境を整え、CO2添加を行う」育成方法がマッチするわけでなく、中性付近で若干の硬度がある環境を最も理想とします。
先に紹介したグループと異なり、弱アルカリ性の水質を特別好むわけではありません。
あまりアルカリ性に傾きすぎると、溶けてしまうことがあります。
活着性の水草は、根からの栄養供給には依存していません。
成長が遅いのでコケに覆われやすい性質がありますが、この点は栄養分が少ない大磯砂を底床に採用しすると覆われにくくなります。
アヌビアス
水草の入門種に挙げられる代表的なグループです。
アヌビアス・ナナをはじめ種類が多く、コレクションも楽しめます。
種類によって、水生のものと半水生(完全な水中化は苦手)のものとがいます。
入手しやすい種類は、ほとんどが水生です。
石や流木に着生する性質があり、育成の要求条件が低いことから幅広い用途に使用されています。
強い光や肥料は必要無く、逆にどちらも抑え気味のほうがきれいに育てることができます。
葉が硬いので、水草を食べる性質のある魚から食害を受けにくいのも特徴です。
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ミクロソリウム
アヌビアス同様、入門種として挙げられる活着性水草の代表的なグループです。
シダ植物の一種で、こちらも種類が多くコレクションが楽しめます。
こちらも石や流木に着生する性質があり、育成の要求条件が低いことから幅広い用途に使用されています。
アヌビアス同様に強い光や肥料は必要なく、逆にどちらも抑え気味のほうがきれいに育てることができます。
本来は中性付近が最も理想的で、アルカリ性に傾いた水質では、葉の雰囲気がゴワゴワとシワが入る形に成長することがあります。
夏場の高水温は苦手なので、この点だけ注意が必要です。
育成自体は大変容易なグループです。
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ウィローモス
ウィローモスはハイゴケ科に属する水生苔の一種です。
一口にハイゴケといっても陸生のものと水生のものがおり、本種は水中環境によく適応した種となります。
アクアリウムにおいては古くから「モス」の通称でなじみ深い水生苔で、落ち着いた色合いの複雑な茂みを作ることから流木や石に括り付けてレイアウトに多用されます。
ウィローモスを活着させた石や、流木はまさに「苔生した」という言葉がピッタリの、非常に趣ある水景をかもし出します。
「ウィローモス」「南米ウィローモス」「ジャイアント南米ウィローモス」といった比較的低光量を好むモス類は、中性に近い水質の方が育てやすいでしょう。
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ウォータースプライト
ライトグリーンの羽状葉が美しい水生のシダ植物です。
水中でゆらゆら揺れる姿は美しく、育成が容易な水草として古くから知られています。
特にグッピーの繁殖には、稚魚の隠れ家としてよく用いられます。
底床に挿して育ててもよいですが、水面に浮かせて育てると小株が発生して次々に浮き草のように育てることもできます。
葉は軟質で、葉のところどころから子株が生じたり葉の裏に胞子を付けて繁殖します。
水草として育成するには60cm水槽で光束3000lm以上、酸性~弱酸性、ソイル、CO2添加あり、液肥主体の施肥で育成しやすいです。
一方で浮き草として育てる場合は、弱アルカリ性も含め比較的幅広い水質に適応してくれます。
光量もさほど要求せず、底床やCO2の要求も特にないので、簡単に育成可能です。
根張りは良く、一度植栽すると移動が困難です。
パールグラス
明るい緑の小さな葉を星状に展開するゴマノハグサ科の水草です。
美しい色合いと柔らかな茂みを作り、トリミング次第で好きな形に仕上げられるのでレイアウトの中景~後景によく用いられる種です。
光量が高いと一旦横に這った後、各節目から一斉に上に向かって伸び上がるので、この特徴を前提にレイアウトの作成に取り掛かるのがお勧めです。
CO2の添加や明るい照明等、水草水槽に要求される事項を満たしていれば育成自体はそれ程難しくありません。
1点だけ、パールグラス系の水草は硬度を若干要求すると言う特徴があります。
この点が、一般的な水草育成のセオリーとは異なります。
真新しいソイルを使用した水槽や、原水の硬度が極端に低い地域、RO水を使用した水槽など、「一般的なレイアウト用水草が理想とする環境条件」では逆に上手く育たなかったり、貧弱に育つことが多いです。
この特性から、どちらかと言えばソイルよりも大磯等の砂利系の底床に向いています。
また石組系のレイアウトにもマッチするでしょう。
肥料分の要求量は多めです。
不足するとすぐに新芽が白化を起こします。
底床肥料よりも液体肥料を多めに与えた方が良い結果を得られます。
成長の速さからあまりコケに見舞われることはありませんが、草体が細かい分一旦コケが付くと取り除くのに非常に手間が掛かりますので、予防としてミナミヌマエビやオトシンをコケ取りとして入れましょう。
トリミングには強めですが、頻繁に繰り返しすぎると葉が縮れたようにいじけだすことがあるので注意が必要です。
スラウェシ島原産の水草
今回のテーマは「アルカリ性でも育つ水草」。
となれば、入手は困難ですがスラウェシ島の水草も外せません。
インドネシアにあるスラウェシ島はpHの高い湖が点在する特殊な環境です。
この湖に生育する水草は、アルカリ性に傾いた水質での育成が良いと言われています。
スラウェシ産の水草はここまで紹介した種と趣が異なり、詳細については不明点も多く、いずれも入手・育成共に困難な種類です。
pHは育成に重要な指標の一つですが、それだけでは育成できないようです。
高額であることも多く、育成要件にも不明点が多いので維持自体も難しいとされています。
もし運よく入手できた方は、ぜひ長期維持に挑戦してみてください!
ホシクサ sp.スラウェシ
スラウェシ島原産のホシクサです。
浅い水中や水際で群生して生息することが多いようです。
カーペットスターと比べるとやや葉が柔らかく、背丈が若干高くなります。
茎から新芽を出すため、マット状に広がることもあります。
トゥティ湖周辺は弱アルカリ性の水質ですが、この種は適応能力が高く、弱酸性に傾きやすいソイルでも育成可能です。
ホシクサ sp.トゥティ デカボシ
スラウェシ島、トゥティ湖原産のウニ型ホシクサです。
現地では小川などの水位が浅い所に自生しています。
弱アルカリ性の環境に生育するようですが、酸性に傾いた水質にも適応可能なようです。
葉幅が狭く繊細な葉が大変美しい種です。
大株になると30cm程度まで大きくなるといわれています。
南米系のホシクサに比べ適応の幅が広く、溶けることも少ない種類です。
60cm水槽で3000lm以上、CO2添加の環境であれば問題なく育成できます。
セレベスカーペットスター
スラウェシ島、トゥティ湖原産のホシクサです。
浅い水中や水際で群生して生息することが多いようです。
葉が肉厚で硬く、茎から新芽を出すため、マット状に広がることもあります。
「カーペットスター」「スラウェシカーペットスター」という別名でも流通します。
オテリア メセンテリウム
スラウェシ島、トゥティ湖原産のミズオオバコの仲間です。
葉が強くウェーブしており、特異な草姿をしています。
弱アルカリ性の地域にしか自生していないとされる、希少な沈水性植物です。
詳細な育成条件は解明されていないものの、現地同様に弱アルカリ性に傾いた環境での育成が適するものと思われます。
発根を待ってから植えた方が、良い結果を得られるようです。
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弱アルカリ性を好む水草 まとめ
いわゆる「金魚藻」と呼ばれる、初心者向けとされる水草にこのような性質を持つ種が多いです。
多くの地域の水道水で元々の水質がマッチしているため、育てやすいといわれます。
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