どうも、ほにゃらら sp.です。
今回ご紹介するのはカネヒラ。
鮮やかな青緑とピンク色が表現される婚姻色を持ち、タナゴの中でも特に美しく人気の高い種類として知られています。
カネヒラは国産のタナゴ類としては10cmを超える最大種です。
体高もあるため、表記サイズ以上に見栄えします。
大型種であり、また遊泳性も高いため、大型水槽で群泳させると特に見事です。
また、本種は秋に産卵期が訪れる「秋産卵型」で、秋に婚姻色が現れます。
全国的に数が少なくなっているタナゴ類の中では、比較的自然下での生息数が多いほうとされます。
西日本ではよく見られるタナゴです。
カネヒラとは
生物学的情報 | |
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名前 | カネヒラ |
学名 | Acheilognathus rhombeus |
別名 | 金平、アブラセンパラ オクマボテ カネシビ シビンタ タイジャコ ヒラザコ ヒラボテ |
分類 | コイ目コイ科タナゴ亜科 |
食性 | 雑食 (草食傾向強め) |
分布 | 日本(濃尾平野以西~九州北部)、朝鮮半島 ※関東以北のものは移入 |
飼育要件 | |
---|---|
飼育しやすさ | ★★★★☆ 簡単 |
入手しやすさ | ★★★☆☆ ふつう |
混泳しやすさ | ★★★★☆ 混泳可能 |
最大体長 | 12cm |
適正水温 | 5~25℃ |
pH | 生存可能:6.0~9.5 適正範囲:6.5~9.0 |
備考 | 水草を好んで食べるため注意 |
カネヒラは西日本を主な分布域とする国産タナゴの最大種です。
タナゴ類は全国的に数が少なくなっているとされるものの、本種に関しては比較的数が多いといわれています。
在来タナゴ類はその希少性から、ほとんどの種が環境省が公開するレッドリストに絶滅危惧種として記載されています。
しかし2024年1月現在、本種はレッドリストに記載されていません。
※都道府県版レッドリストでは記載されている県もあります。
カネヒラは国産タナゴ類の中では最も大型になり、最大で12cm程度まで成長します。
また、体高も最も高く、成魚ではひし形に近い体形となります。
オスは秋になると胴体は青緑を基調としてメタリックな輝きを見せ、背ビレや尻ビレは鮮やかな桃色に染まります。
国産タナゴの中でも屈指の美しさを持ち、大型種であることも相まって人気の種です。
遊泳性も高いため、その美しさを十分に堪能するために90cm以上の大型水槽での飼育が良いでしょう。
タナゴ類に共通していえることですが、低温には強いものの極端な高水温は苦手です。
できるだけ水温は25℃を超えないように飼育しましょう。
水質には寛容で、飼育は比較的容易です。
タナゴ類としては比較的大型で体力があるので、飼育しやすい部類に入ります。
飼育上の注意点としては、「水草を好んで食べること」に注意が必要かもしれません。
タナゴ類は共通して雑食性ですが、どちらかといえば草食寄りとなり、水草を好む性質があります。
種によってどれだけ水草を好むかの度合いは異なりますが、カネヒラはその中でも最も水草を好む性質が強いです。
また大型であるため、むしゃむしゃと水草を貪るように食べてしまいます。
レイアウトに水草を入れる場合は、ある程度カネヒラのおやつになってしまうと割り切りが必要かもしれません。
植物質を多く与えたほうが状態良く育ちやすいようなので、栄養補給として水草を入れるのは有効でしょう。
カラーバリエーション
カネヒラは大型で人気のタナゴということもあり、いくつかの改良品種が作出されています。
原種の時点で十分鮮やかな美しさを持ちますが、改良品種もそれぞれ独自の美しさがあります。
特に”ブルーメタリック”は黄色や赤の発色が弱まることで、原種の発色とは大きく趣が変わります。
シロヒレタビラやマタナゴのような、ブルーを基調とした涼しげな発色を表現します。
自然では見られない発色を固定化した、大変見事な品種です。
有用なアイテム
カネヒラは飼育設備に関して要求は低めです。
飼育するだけならば水槽サイズは60cmあれば終生飼育ができ、フィルターや底床の種類もあまり選びません。
ただし、それだけではカネヒラの最大の特徴である婚姻色がうまく表現されないことも多いでしょう。
婚姻色が出ていないカネヒラは、地味な銀色の魚です。
状態良く仕上げてこそ、カネヒラは本領を発揮します。
餌に関しては雑食性ですが、とにかく植物質を好みます。
人工飼料にもすぐ餌付きますが、与えていても水草があれば水草も食べるでしょう。
人工飼料をメインに与えつつ、エサ用の水草を入れておき自由給餌させると調子が上がりやすい傾向があります。
日本産淡水魚はふつう、調子を良くしたい時は冷凍アカムシを与えます。
そのほうが状態が上がりやすく、痩せの予防にもなるからです。
しかし本種に関しては植物質を好むためか、動物質に偏った給餌を続けていると、なぜかやせ細ってしまったり、調子を崩すことがあります。
あくまでもメインは植物質。
植物質を多く含む人工飼料を主食とし、たまに赤虫を与えるのが有効です。
水槽 | フィルター | 底床 | 餌 |
---|---|---|---|
60~90cm | 投げ込み、外掛け、上部、外部 | 大磯砂、砂利、砂 セラミック | 人工飼料、水草、イトメ、赤虫 |
タナゴの中でも大型種になるため、最低60cm以上あれば飼育可能です。
45cm以下の水槽での飼育はあまりおすすめできません。
90cm以上の水槽で群泳させるのが最も美しいでしょう。
水質に関しては寛容で、あまり細かい要求をしてきません。
投げ込み式、外掛け式でも十分です。
本種の特性上、大型水槽で飼育することも多いでしょう。
その場合は上部式や外部式フィルターの使用がおすすめです。
ソイル以外であれば、何でも使えます。
大磯砂が良いでしょう。
カネヒラはタナゴ類の中で最も植物質を好みます。
このため植物原料の配合を強化した、植物食性の魚種向けの人工飼料をメインに与えるのがおすすめです。
カボンバやアナカリスなど、葉の柔らかい水草を与えると喜んで食べます。
人工飼料以外での、自由給餌ができる植物質として入れておくと良いでしょう。
たまに冷凍アカムシを与えて、栄養バランスをとるとなおよいでしょう。
カネヒラは他の魚種とは異なり、動物質一辺倒の給餌は調子を崩す原因になります。
この点、留意しながら与えましょう。
混泳について
攻撃性はさほど高くありません。
サイズが同程度の魚種であれば、混泳は可能です。
ただし、本種は繁殖期になると同じタナゴ類に対して、攻撃性が高くなります。
水槽に二枚貝を入れてある場合は、その二枚貝の周囲を縄張りとして主張することがあります。
二枚貝があったほうが、発色は良くなる傾向があるようです。
タナゴ類とも混泳は可能ですが、最終的には体格差が生じやすいです。
混泳できるのはサイズが同程度のうちと考えたほうが良いでしょう。
本種は国産タナゴの中でも最も体格が大きいため、その分有利になりがちです。
タナゴ類と混泳させることが多いものと思われますが、特に繁殖期は注意しましょう。
繁殖を目的としない場合は、二枚貝を入れないほうが攻撃性は抑えられます。
(その代わり発色も落ちる傾向があります。)
混泳させる場合はできるだけ体格が近い種のほうが良く、ヤリタナゴやイチモンジタナゴなどとの混泳は、比較的トラブルが起きにくいです。
バラタナゴやカゼトゲタナゴなど、小型種との混泳はおすすめできません。
タビラ類は混泳自体には問題ありませんが、メスが本種と非常によく似ています。
特に繁殖を狙う場合は慣れないと区別が難しいため、取り違えると困りものです。
- 体形は若魚は流線型、成長につれ体高が出てひし形に近くなる
- 髭が短い
- 縦帯が背ビレの中ほどまで入る
- エラブタの少し上に不明瞭な黒斑が入る
- 背ビレ分枝軟条(スジ)の数:12~13本
カネヒラはやや体高のある流線型の体型を持ち、国産タナゴ類の中でも体色が濃いことが判別のポイントです。
若魚やメスはタビラ類と一見して区別の難しい個体も多いですが、背ビレの分枝軟条を数えて「12以上」であれば本種と判定すると良いでしょう。
カネヒラとタビラ類の見分け方
タビラ斑:カネヒラは不明瞭、タビラは明瞭。
背ビレ分枝軟条:カネヒラは12本以上、タビラは9~11本
※分枝軟条は先端が分岐している軟条(スジ)の本数を数えます。
成魚は体形が異なるので一目瞭然ですが、カネヒラの若い個体は流線型をしておりタビラ類とそっくりです。
判別の際は背ビレの条数(スジの数)を数えるのが確実です。
ヤリタナゴ、マタナゴ、イチモンジタナゴは比較的トラブルが少ない組み合わせです。
混泳させる場合はなるべくサイズが近い個体を選ぶと良いです。
体格に差が出てきたら、別々の水槽で飼育したほうが良いでしょう。
混泳相手となる主なタナゴ | 相性 | 留意事項 |
---|---|---|
タイリクバラタナゴ | △ | 体格差が大きいので要注意 |
ニッポンバラタナゴ | △ | 体格差が大きいので要注意 |
カゼトゲタナゴ | △ | 体格差が大きいので要注意 |
ヤリタナゴ | ◎ | 比較的おすすめ |
アブラボテ | △ | 春先にアブラボテの攻撃性が強くなる ので要注意 繁殖期以外は温和なので混泳可能 |
マタナゴ | ◎ | 比較的おすすめ |
イチモンジタナゴ | ◎ | 比較的おすすめ |
タビラ類 | 〇 | 混泳相性自体は良好 メスがカネヒラと酷似するため注意 背ビレの条数で識別可能 |
ゼニタナゴ | △ | ゼニタナゴが神経質な点、 秋に繁殖期がかぶる点に留意 戦うとゼニタナゴが負けやすい |
その他、タナゴ類以外でもサイズが同程度で温和な種や、遊泳圏の異なる魚種(低層魚)であれば混泳は可能です。
繁殖について
カネヒラを含むタナゴ類は、二枚貝に産卵するという特異な産卵生態を持ちます。
このため、繁殖には二枚貝が必要です。
タナゴ類は一般に、種類により貝に選好みがあります。
二枚貝であれば、何でも良いというわけではないようです。
その種類が好む貝だと、産卵成功率が上がるといわれています。
カネヒラの場合は、イシガイやタテボシガイを好む傾向があるようです。
カネヒラの産卵期は秋です。
8月末~10月頃が最盛期で、この時期にオスの婚姻色が最も鮮やかに表現されます。
産卵が近づいたメスは卵でお腹が膨らみ、産卵の準備ができると輸卵管と呼ばれる細長い管をぶら下げるようになります。
この管を二枚貝に差し込み、二枚貝の体内に産卵します。
カネヒラはタナゴの中でも繁殖は難しい部類に入ります。
というもの、秋産卵型のタナゴは二枚貝の中で半年近く過ごすため、その間の二枚貝を生かしたまま管理する難易度が非常に高いためです。
途中で貝が死んでしまうと卵も死んでしまうため、いかにして貝を生かすかがポイントになります。
タナゴ類の飼育よりも二枚貝の飼育のほうが難しく、二枚貝を用いた繁殖方法は難易度が高い上、初心者向きではないといわれます。
二枚貝を用いる手法は以前はスタンダードでしたが、環境への負荷も大きいことが分かってきた昨今、むやみには推奨されなくなってきました。
近年では人工授精の方法も確立されつつあるようです。
詳しいノウハウは不明点も多い手法ですが、二枚貝を必要としない点から環境に負荷をかけずにタナゴの繁殖にチャレンジできるといわれ、将来性のある手法とされています。
こちらの方法を探求したほうが、タナゴの将来のためには良いでしょう。
タナゴ類の飼育に取り組む際は、ぜひその複雑な背景も知っておきましょう。
その上で、相応の熱意を持って取り組んでください。
外来種としての脅威
カネヒラはタナゴ類の中でも大きく立派なことから、観賞魚や釣りの対象として人気があります。
元々国産ではあるものの、近年では関東地方や東北地方など、本来の分布域外でも発見されたという報告があります。
関東以北で見つかる個体は人為的な移入によるものと考えられており、アユなどの種苗放流への混泳の他、観賞用もしくは釣り用として放流されたのではないかと考えられる場所からも見つかっているようです。
カネヒラは国産タナゴの最大種ということもあり、在来のタナゴと二枚貝を巡って競合する可能性があります。
そして体格が大きい分、戦うとカネヒラが勝ちやすい傾向があります。
関東や東北地方の固有種であり、カネヒラと同じ秋産卵型で、繁殖期がかぶる「ゼニタナゴ」。
ゼニタナゴはカネヒラが移入すると生存競争に負け、数を減らしてしまうといわれています。
このように、国産種であっても本来の分布域外への放流は在来種に対して取り返しのつかない悪影響を及ぼすことがあるのです。
このような国産種由来の外来魚は、「国内外来魚」や「第2の外来魚」と呼ばれ、近年問題視されています。
飼育個体の放流は、絶対にしてはいけません。
必ず、終生飼育に努めてください。
▼こちらも参考
カネヒラ まとめ
カネヒラ。
国産タナゴ最大種であり、美しい婚姻色を表現することから人気の高いタナゴです。
10cmを超える上、体高があるので、タナゴ類の中でも最もボリュームのある種といえるでしょう。
飼育は容易で、基本的なタナゴ類との飼育方法が押さえられていれば問題なく飼育できます。
エサに関しては留意点が一点あります。
「植物質に偏った雑食性」という点に留意して給餌すると良いでしょう。
植物素材を強化配合した人工飼料がもっともおすすめです。
タナゴの中でも最も見栄えが良いと言っても過言ではない種です。
発色を引き出すには調子良く飼い続けることと、時期が重要です。
ぜひ仕上げてその美しさを堪能してみてくださいね。
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