どうも、ほにゃらら sp.です。
今回紹介するのはアクアリウムにおけるコケ対策生体の代表種の一つ、ミナミヌマエビ。
水槽内でもよく繁殖し、特に糸状のコケの除去に効果的であることから、古くから人気の高い淡水エビです。
主にコケ対策として人気の高い本種ですが、飼育の際はいくつか知っておかなければならないこともあります。
この記事では、コケ対策要員としてミナミヌマエビを導入する場合に知っておくべき情報を一通りまとめました。
コケ対策要員としての導入の検討をきっかけに、ミナミヌマエビを取り巻く背景の細かい話も、ぜひこの記事で学んでおきましょう。
ミナミヌマエビとは
名前 | ミナミヌマエビ |
学名 | Neocaridina denticulata※ |
別名 | ブツエビ |
分布 | 西日本、朝鮮半島、中国、台湾 |
体長 | 最大3cm |
飼育要件 | 水温: 10~28℃ 水質: 弱酸性~弱アルカリ性 餌:人工飼料、生餌 繁殖:容易 |
ミナミヌマエビは日本にも分布する淡水性の小型のエビです。
熱帯魚の水草レイアウト水槽によく導入されますが耐寒性があり、本種だけでいえばヒーターなしでも飼育可能です。
適応できる水質の範囲も広く、導入後一旦落ち着いてしまえば飼育は難しくありません。
釣り餌としても利用されており、「ブツエビ」の名はこちらの用途での知名度が高いかもしれません。
ヤマトヌマエビとの違い
ミナミヌマエビとヤマトヌマエビはどちらもコケ対策要員として人気の高い生体です。
透明な体やコケをついばむ行動がユニークな点から一定の鑑賞性もありますが、どちらかといえばレイアウト水槽におけるコケ対策を目的に導入される場面が多いでしょう。
項目 | ミナミヌマエビ | ヤマトヌマエビ |
---|---|---|
見た目 | ||
最大サイズ | 3cm程度 | 4~6cm程度 |
1匹当たりのコケ取り能力 | 低い | 高い |
水槽内で繁殖 | 可能 (条件が合えばとても殖える) | 困難 (一般家庭ではほぼ不可) |
熱帯魚からの捕食されやすさ | されやすい | されにくい |
コケ処理の丁寧さ | 丁寧 | 粗い |
水草の食害リスク | ほぼなし | あり |
水草の抜きやすさ | ほぼなし | 植えたばかりの草は 抜かれることがある |
野外での生息環境 | 緩やかな流れの小川や池 | 流れの速い渓流の中上流域 |
高水温・酸欠への耐性 | 強め※急変には弱め | 弱め |
水質悪化への耐性 | 強め※急変には弱め | 弱め |
脱走リスク | 低い ※地上歩行性なし | 高い ※地上歩行性あり |
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分類はとても複雑
鑑賞用に流通する個体は特に区別されていませんが、”厳密にミナミヌマエビと呼べるエビ”は西日本のみに分布しています。
それ以外の地域に分布しているものは、厳密にはミナミヌマエビではないようです。
また西日本に分布する在来のミナミヌマエビの中にも、地域により異なる複数の系統が存在するようです。
アクアリウムにおいて流通するものはより広義となっており、朝鮮半島・中国・台湾などに分布するシナヌマエビや、それとの交雑種も”ミナミヌマエビ”の名で流通しています。
ここでは後者の”アクアリウムにおいてミナミヌマエビの名で流通するエビ”を対象に、ミナミヌマエビとして説明していきます。
なお、両者の外見は極めてよく似ています。
角の長さで両者を判定できるともいわれていますが、交雑個体の存在も考慮すると100%確実な判断方法とは言えません。
コケを除去する能力に関してはどちらであっても同程度と思われます。
コケ対策や一般的な観賞用として飼育する分には、どちらであっても特に違いはなさそうです。
コケ対策の定番中の定番
ミナミヌマエビは主に、レイアウト水槽でのコケ対策として導入されます。
特に緑色の糸状コケの除去が得意で、水槽サイズに対し少し多めに入れておくと発生予防効果が見込めます。
コケ取り要員として導入する場合の、目安となる導入数は以下の通りです。
水槽サイズ | 目安となる導入数 |
---|---|
30cmキューブ | 10~20匹 |
45cm水槽 | 15~30匹 |
60cm水槽 | 20~40匹 |
90cm水槽 | 30~60匹 |
120cm水槽 | 45~90匹 |
既に水草にコケが生えてしまっている場合や、その対策として予防的に導入したい場合は上記の数を目安に導入すると効果的です。
ミナミヌマエビは水槽内で殖える性質を持っていますが、レイアウト水槽で飼育する場合は稚エビが生まれても混泳魚に食べられるなどして、数がだんだんと減っていってしまうことがほとんどです。
ミナミヌマエビをたくさん繁殖させたい場合は専用の水槽を用意し、魚との混泳はさせないほうが良いです。
親エビが寿命を迎えるなどしてだんだんとミナミヌマエビの数が減ってくると、水槽のコケが目立つようになってきます。
水槽内で殖える
コケ対策生体としてのミナミヌマエビの長所の一つに、水槽内で繁殖可能という特徴があります。
ただし、魚と混泳させていると自然とミナミヌマエビが殖える状態にするのは難しいです。
魚を入れずにミナミヌマエビ単独で飼育していれば、特別な対応は不要です。
特に繁殖を意識せず飼育していてもいつの間にか増えているほど簡単です。
繁殖させたい場合は専用の水槽を用意し、魚との混泳は避け、フィルターにストレーナーカバーを付けると良い結果が得られます。
ミナミヌマエビとよく比較されるコケ取り用のエビとしてヤマトヌマエビが挙げられますが、水槽内での繁殖が可能な点はミナミヌマエビがヤマトヌマエビとの差別化を図れる要素の一つでもあります。
コケ対策要員としてみた場合、1匹当たりの処理能力が高いヤマトヌマエビと、繁殖による数の増強と丁寧な処理が特徴のミナミヌマエビとで選ぶ形となるでしょう。
同じコケ対策要員としてもそれぞれ得意とする領域が若干異なるので、両方入れるのも有効です。
▼繁殖について 詳しくはこちら
飼育方法
コケ対策要員として導入する場合は、レイアウト水槽のサイズに合わせて上記の数を目安に導入すればOKです。
一般的な水草レイアウト水槽の環境条件を満たしており、水草や熱帯魚が調子よく育っている水槽であれば、その環境でミナミヌマエビは十分飼育可能です。
なお、魚が大きいとミナミヌマエビが捕食されてしまう可能性がありますので、混泳魚の選定には気を付けましょう。混泳については後述します。
また、ミナミヌマエビ自体の観賞を主目的として導入する場合は以下の記事にに詳しくまとめてあります。
ここでは、レイアウト水槽にコケ対策用として導入する場合を中心に説明していきます。
エビの飼育において、熱帯魚以上に気を付けるべき要素として3つの注意点があります。
1.高水温:夏場の急激な水温上昇に注意です。クーラーやファンを使い水温の安定化を図りましょう。
2.急激な水質変化:水合わせは時間をかけてじっくりと行いましょう。
3.薬品類:魚病薬は使用厳禁。水草などに付着する残留農薬にも注意してください。
高水温対策
ミナミヌマエビは熱帯魚に比べ高水温にはとても弱いです。
水温が28℃を超えると、急激に弱りだす傾向が見られます。
クーラーや冷却ファンなどで、水温は常に28℃以下になるよう保ってください。
夏場はエアコンの効いた部屋での管理がおすすめです。
一方で国産種なので、低水温には耐性があります。
水温・水質の急変に注意
ミナミヌマエビは水温や水質の急変にはとても敏感です。
熱帯魚も急変には弱いですが、エビの場合はさらに繊細です。
水温や水質の急変は生死に直結するので、導入の際の水合わせはゆっくり時間をかけて行いましょう。
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薬品類は厳禁
ミナミヌマエビは薬品類に極めて弱く、魚病薬の投入は生死に直結します。
また水草には流通する過程で農薬が使用されていることもあり、この残留農薬によっても全滅することがあります。
ミナミヌマエビが入っている水槽に水草を入れる場合は「無農薬」と明記されているものを選ぶと安心です。
混泳について
熱帯魚との混泳
小型の熱帯魚やコリドラスやプレコなどとの混泳は可能です。
大型の熱帯魚やエビを捕食する種との混泳はできません。
※稚エビは1mmほどと小さく、小型の魚でも食べてしまう可能性があります。
ミナミヌマエビは水槽内でよく殖えますが、甲殻類を食べる食性を持つ魚には稚エビは食べられてしまいます。
エンゼルフィッシュやシクリッドなど、やや大型になる魚種が入っている場合は親も食べられてしまう可能性があります。
熱帯魚と混泳させた場合、増えるスピードよりも減るスピードのほうが速いということも少なくありません。
同居する魚が小型魚であっても、魚を入れている時点である程度は食べられてしまう可能性に留意しておきましょう。
もし、ミナミヌマエビのみを効率よく繁殖させたい場合には、魚は入れないほうが良いです。
エビ同士の混泳
エビ同士の混泳は可能ではありますが、チェリー系シュリンプやアルジーライムシュリンプとの組み合わせは、交雑が発生する恐れがあるのでおすすめできません。
コケ対策要員として導入する場合、ヤマトヌマエビとの組み合わせはおすすめです。
取扱注意!外来種としての脅威
まず、絶対に放流しないこと。
この一点だけは絶対に守ってください。
詳しい理由は後述しますが、ひとまず放流さえしなければ、とりあえず大丈夫です。
ミナミヌマエビを飼育する場合は、以下の対策を意識したうえで飼育してください。
間引いた個体を放流してはいけない
ミナミヌマエビは繁殖力に長けたエビです。
特に繁殖を意識した管理をしていなくても、飼育環境が良いといつの間にかどんどん殖えていきます。
あまりにも数が増えすぎたときは、間引きしたくなる場面が出てくるかもしれません。
しかし、その時に間引いた個体を絶対に野外に放流してはいけません。
エビ用水槽を別に立ち上げてその水槽に移したり、肉食魚の餌にしたりなど、放流以外の形で対処することが必要です。
もし、そもそも水槽内で数を増やしてほしくない場合はヤマトヌマエビを選んだほうが良いでしょう。
水換え時の流出を防ぐ
ミナミヌマエビの稚エビは非常に小さく、水換え時の排水を野外にしていると意図しない放流に繋がる可能性があります。
特にミナミヌマエビは屋内の水槽だけでなく、屋外のビオトープなどにも導入されることがあります。
屋外での水換えの際に、特に注意が必要です。
もし排水の行き先が自然の河川や池などの水系に繋がっていた場合、これは非意図的な放流行為になってしまいます。意図がなかったとしても、放流は絶対に避けなければなりません。
稚エビは5mm程度と非常に小さいので、目視で全ての個体を取り切るのは困難です。
対策として、水換えの際はネットを使い、排水を濾すことで稚エビの思わぬ流出を防ぐことができます。
一般的な目の細かさの観賞魚用ネットであれば、誤って稚エビを流してしまうことはないでしょう。
目の粗いネットは稚エビがすり抜けてしまう可能性があるので、使用しないでください。
釣り餌としても利用されている
ミナミヌマエビは観賞用としての他に、釣り餌としても流通しています。
釣り餌としては、「ブツエビ」の名で流通することが多いです。
もし釣り餌としてミナミヌマエビを利用する場合、余った個体はリリースせずに必ず持ち帰るようにしてください。
どうして放流してはいけないの?
冒頭に述べた通り、ミナミヌマエビの分類およびその系統は非常に複雑です。
観賞用にミナミヌマエビとして流通しているものは、必ずしも学術研究上厳密にミナミヌマエビと呼べるものとは限りません。
もし観賞用に流通するミナミヌマエビが野外に逸出した場合、他の生物を積極的に襲ったり、侵略的に藻類を食べつくしてしまう・・・という点での脅威はありません。
しかしながら、「在来集団との交雑」という点において、大きな問題をもたらしていることが知られてます。
この問題は捕食や在来種との競合といった目に見えてわかりやすい問題ではなく、「外来集団の侵入による在来集団の交雑集団化」という目に見えにくい問題を引き起こしているため、その脅威性がなかなか認知されにくいという点でも問題となっています。
つまり、放流さえしなければこのような問題は生じません。
放流することなく、逸出のない水槽内でミナミヌマエビの飼育を楽しみましょう。
まとめ
ミナミヌマエビはコケ対策生体として古くから人気の高い淡水エビです。
ヤマトヌマエビと比較すると小型ですが、水槽内で繁殖可能というのが最大の相違点です。
他にも、小型なので小回りが利き、コケの処理が丁寧で水草を食害しにくいという点もヤマトヌマエビとは違うところです。
お互いに得意とする分野が若干異なるので、コケ対策として併用も有効です。
ミナミヌマエビの飼育は容易ですが、その分類は極めて複雑難解です。
ミナミヌマエビの名で鑑賞用に流通する個体は、必ずしも学術研究上のミナミヌマエビと呼べるものと合致するとは限りません。
両者は遺伝子を検査することで識別可能となり、外見での区別は極めて困難です。
ただし、コケ対策や観賞用として飼育する分には、特に違いはないようです。
一方で、コケ対策や観賞用としては問題がなくとも、野外に逸出したものが交雑を引き起こし、生態系や野生集団の保全という観点において問題視されています。
放流さえしなければ、外来種としての問題は防ぐことができます。
排水の際はネットで濾すなど、稚エビの逸出対策も施して飼育を楽しむようにしてください。
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