最小の淡水フグ、アベニー・パファー<熱帯魚解説>

淡水フグ
淡水フグ種類解説(熱帯魚)

淡水フグの中で最小のアベニー・パファー。
丸味のあるフォルム、かわらしい泳ぎ方で淡水フグで人気も高い種です。
かわいいだけではなく、アクアリストの悩みのスネイル対策としても活躍します。
そんな小さな淡水フグ、アベニー・パファーをご紹介します。

生物学的データ

学名:Carinotetraodon travancoricus

分類フグ目・フグ科・カリノテトラ属
体長最大3cm
食性肉食性
分布インド・スリランカ

インドのパンバ川に生息する、体長3cmの世界最小淡水フグです。

『マーブルアベニー・パファー』などの別名を持ちます。

ハチドリのように胸ビレを激しく動かすホバリングのような泳ぎ方をします。独特な動きがかわいらしいです。

『スネールイーター』という点で水草水槽でも活躍することから人気も高いです。


アベニー・パファーの魅力
  • サイズ小さくかわいらしい。
  • 価格も優しく入手しやすい。
  • 丈夫でビギナーの方でも安心。
  • 完全淡水で終生飼育可能。

小さくてもフグといえば……

テトロドトキシン(フグ毒)

フグといえば毒、『テトロドトキシン』というイメージがあるでしょう。

テトロドトキシンどんな毒?

青酸カリの千倍以上といわれる猛毒です。 フグの肝臓や卵巣などの内臓にあり、種類によっては皮や筋肉にも含まれているようです。

加熱に大変強く、調理での加熱では壊れないといいます。   

※トラフグ1匹分の毒量で約10人分の致死量に相当します。

淡水のフグでもやはりフグであり、例外ではありません。ワイルドのアベニー・パファーの中にはかなりの毒を持っている個体もいるようです。

ワイルド個体の場合、天然の細菌(フグ毒を作る)を微生物が摂取し、その微生物をフグが食べることから、ワイルド個体には毒があるといわれています。

一方、ブリード(飼育下)のフグであれば、毒を生成する餌を摂取することがないため毒を持たないといわれていますが、100%フグ毒がないとも言い切れないようです。

同じような生き物でいうと『ヤドクガエル』が挙げられます。

WC個体

ヤドクガエルのブリードされたCB個体は、毒のある昆虫を食べていないため、ほぼ微毒ですので安全です。ただし、自然採取のWC個体はしばらくの間は毒を保有する危険性があるため、取り扱いには十分注意してください。


気を付けたい病気と対策

低水温や水質の急激の変化によって病気になります。フグは特に白点病・尾ぐされ病にかかりやすいです。

治し方などについてはこちらの記事をお読みください。


淡水飼育でOKな仲間たち

テトラオドン・ムブ

学名:Tetraodonmbu

中央アフリカ・コンゴ川・タンガニィカ湖に生息する世界最大の淡水フグで、最大70cmにもなります。幼魚の時はやや暗い体色に大柄な模様がありますが、成魚になると柄は細かく入り、きれいな黄を発色する体色と尾ビレが魅力です。

大人しい性格といわれていても、やはりフグであるため混泳には向きません。(同種でも激しいけんかをします。)
ザリガニやタニシなど硬い口でかみ砕いて食べる姿は迫力があります。

テトラオドン・ミウルス(ノーマル・レッド)

学名:Tetraodon miurus
アフリカのコンゴ川下流域から上流域に生息をし、砂に潜る習性を持つ中型の種です。

色彩変異個体や生態がユニークなことから人気があります。
ノーマル個体は茶色く地味ですが、赤タイプは人気です。カラーバリエーションが豊富で、茶・オレンジ・赤・白・黒・ベージュがいます。

砂に潜る習性があり、待ち伏せ型の捕食方法をとります。
『ナイルフグ』という別名を持ちます。

テトラオドン・バイレイ(毛有・無)

学名:Tetraodon baileyi (Pao baileyi )
タイ・ラオス・ミャンマーに生息。体表に出る突起(皮弁)が毛のように覆っているのが特徴的です。(産地により皮弁がないもの・少ないもの・枝分かれれしたものといるようです。)

幻のフグといわれた時もありましたが、徐々に流通も多くなりました。
成魚は流れの速い場所に生息していますが、幼魚は流れの穏やかな水草の中にいます。
同じ生息域にはスバッティもいるといわれています。

テトラオドン・スバッティ

学名:Tetraodon suvattii
カンボジア・タイ・ラオス・ベトナムに生息。
褐色の体色、砂に潜って突起した目と口を出し獲物を待ち伏せます。(追いかけて捕食することもあるようです。)
気性が荒いので同種であってもけんかをしますので単独飼いが適しています。
(メンテナンス中にかじられることもあり、注意が必要です。)

テトラオドン・パルストリス

学名:Tetraodon palustris (Pao palustris
タイのメコン川に生息する中型の種です。

黄色味ががった体色に大柄なスポットが入ります。興奮すると体色を明るく変化させ全身が蛍光グリーンに輝くようです。

メコンフグsp.として流通していたようですが、属名が変更され、バイレイと同じ『Pao palustris(パオ・パルストリス)』となりました。

テトラオドン・ドゥボイシィ

学名:Tetraodon duboisi
中央アフリカ・コンゴ川に生息しています。流通が大変少ない種で詳細な情報がありません。
やや緑がかった体色に黒い模様が入ります。

同じテトラオドン属のムブやショウテデニーなどの輸入に混ざってごく稀にお目にかかることがあります。

テトラオドン・ファハカ

学名:Tetraodon lineatus
アフリカ中央から西アフリカに生息する、淡水フグの大型種です。最大40cmほどになります。

幼魚の時はスポットに褐色といった地味なイメージもありますが、成長すると、鮮やかな体色に波紋のような柄がきれいです。

『テトラオドン・リネアータス』『ナイルフグ』との別名も持ちます。

テトラオドン・ショウテデニー

学名:Tetraodon schoutedeni
アフリカに生息する種では最小、成魚でも9cmほどにしかなりません。

黄色の体色に黒いスポットが入るきれいな種です。

以前は幻の種といわれ、入荷が少なく入手困難でしたが、近年では入手しやすくなりました。
それでも珍種のため高額です。

淡水ミドリフグ

学名:Tetraodon nigroviridais

ベトナムの淡水域に生息するミドリフグです。2012年以降に淡水飼育限定で取り扱われるようになりました。

ミドリフグといえば汽水のイメージがあり、本種は別種と区別されましたが、流通時には区別されないこともあるようです。

汽水飼育のミドリフグとの違いは、成長した時の大きさが少し大きく、顔付き・体型はトパーズパファーに似ているところのようです。

『完全淡水ミドリフグ』『ベトナムミドリフグ』『フレッシュウォーターミドリフグ』など別名を持ちます。

南米淡水フグ

学名:Colomesus asellus
アマゾン川流域に生息、淡水フグの仲間の中で唯一南米にする種になります。

黒のバンド模様とユニークな顔つきが特徴的になり、『アマゾンパファー』という別名を持ちます。

他のフグと比較すると温和で、同種であれば混泳は可能です。

アカメフグ

レッドテールアカメフグ 柄が有るのがメス・黒色でお腹が白がオス

学名:Carinotetraodon irrubesco
レッドテールアカメフグ
インドネシア原産。赤い尾びれに色彩の変わる目を持つオス、体全体に柄が入るメスと、オスメスで異なる特徴を持ちます。

学名:Carinotetraodon borneensis
ボルネオアカメフグ
ボルネオ島原産の種です。オスは頭部の黄色・腹部は赤い発色を持ち、メスは黄色の体色に黒のラインが入るように、オスメスで柄が異なります。

『ボルネンシス・アカメフグ』『ジェット・パファー』という別名を持ちます。

ブロンズ・パファー

学名:Auriglobus modestus
タイ・マレーシア・インドネシアに生息しています。

金色に輝く体色が美しいく、大きな尻ビレと背ビレが特徴的でマンボウのような体型を思わせる種です。
『ゴールデン・パファー』との別名を持ちます。

メコンフグ

学名:Tetraodon turgidus
タイ・カンボジア・ラオス・ベトナムのメコン川に生息する中型の淡水フグです。

黄色の体色にスポット柄があり、大きな眼状斑を持つ特徴があります。

『メコンフグ』の名でいくつかの種が流通していますが、本来メコンフグとは本種を指します。

インドシナレオパード・パファー

学名:Tetraodon palembangensis
タイ・マレーシア・インドネシア広域に分布しており淡水フグとしてはポピュラーな種です。

背から尾にかけて折れ曲がった山のような体型が特徴的。目もクリッとしていてかわいらしいのですが、気性が荒く混泳には向きません。

インドエメラルド・パファー

学名:Tetraodon cutcutia
インド・ミャンマー原産。
青く光る目を持ちます。
幼魚の時は褐色ですが、成魚は緑の体色に尾ビレの先が赤くきれいです。


飼育環境・設備

フグの歯

フグの仲間は非常に強い歯を持ちます。

中・大型種はヒーターのコードやエアーチューブをかじられないよう、設置場所の工夫やガードが必要になります。

前歯の伸びすぎを防ぐために、殻の付いた巻貝等の硬いものをエサとして与える方法もあります。

水槽

30cm水槽
45cm水槽
60cm水槽

30cm以上の水槽であれば飼育可能です。
飼育匹数によりますが、選ぶ水槽が大きいほど多くの生き物を入れても大丈夫でしょう。

選び方ポイント

1Lの水に対して1匹(1cm程度)の魚という目安があります。

30cm45cm60cm90cm
4匹10匹20匹60匹
アベニー単独の匹数になります。ご了承ください
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フィルター

フグはエサの食べ方がうまくありません。水を汚すため、フィルター選びも飼育環境より少し上のものを選ぶと良いでしょう。

水温・水質

フグは白点病になりやすい種です。白点病の原因となる寄生虫は25℃以下で繁殖するので、水温は25~27℃とやや高めでの飼育をおすすめします。

適切なpHは弱酸性~弱アルカリ性です。

アベニーパファーの場合、水温26~30℃くらいの高温でも生活できるので白点病の予防にもなります。

底床(ソイル)

底床は弱酸性に傾けるソイル、弱アルカリ性に傾ける砂利の両方が使用可能です。

人工飼料に慣れづらく、ブラインシュリンプ・赤虫・イトメのような「冷凍餌」「生き餌」を与えます。

慣らすことも不可能ではありませんが、個体差によってしまうため、基本的には食いつきのいい赤虫イトメや貝類をあげると良いでしょう。

チャームでは、コストパフォーマンスの良いエサ用の貝も用意しています!

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ポイント

フグは人に慣れやすく、餌をあげてるうちに水槽に近づくだけで寄ってきます!

※クリル系のエサは慣れるとよく食べてくれます。フグ全般的に有効です。

餌を食べないときはこちらの記事をご参照ください。

混泳

フグは気性が荒く、同種での縄張り争いがおこりやすいです。他の魚に対してもヒレなどかじることがあるので十分な隠れ家を用意する必要があります。

混泳上の注意(魚・同種)

※ヒレが長い種。動きが遅い種はヒレをかじられることがあるので注意が必要となります。

※動きが機敏な種の魚であれば、小型魚でも混泳は可能です。

※同種間でケンカはありますが、十分なスペースを確保していればそれほど問題はないでしょう。

混泳上の注意(エビ・貝)

混泳可能:十分に育ったミナミヌマエビ、ヤマトヌマエビや、石巻貝ほどのサイズであれば問題ないと思います。

混泳不可:稚エビ・ビーシュリンプなど小さいエビ、サカマキガイなどの小型の貝類などは捕食の対象になることから混泳はできません。


多頭飼育をする場合、隠れ家を入れる、入り組んだ流木・石でレイアウトをすることが事故防止につながります。

繁殖

水槽内での繁殖例は多く知られるように繁殖は可能です。ただし、気性が荒く縄張り意識が強いため、
飼育水槽よりは繁殖用水槽を別に用意した方が成功しやすくなるでしょう。

オスの特徴

オスは目の後ろに黒い皺・スポットが大きなマーブル模様をしています。

体色は黄色っぽさが強い傾向にあり、尻尾まで黒い1本のラインがあります。

メスの特徴

メスは腹部以外に黒スポットがはいります。ヒョウ柄のような模様になる個体も多いです。
オスと比較すると体色は白っぽく、お腹の白色が目立ちます。

体型もメスの方がふっくらと丸い形になる傾向にあります。


アベニー・パファーの繁殖期は自然環境下では、だいたい6月~8月頃に産卵を行うことから、水温は25℃位に保つようにします。飼育環境下であれば常に水温が一定に保てることもあり、季節を意識する必要はありません。

オス・メスを同数でのペアリングは確率を下げてしまうので、オスの数を少なめに入れるのがポイントになるでしょう。

オス・メスが一緒に並んで泳いでいればペア成立になります。

産卵はばらまき型で5日~7日程度でふ化するようです。

ふ化温度帯

約24~26℃:3~4日
約22~23℃:5~7日
約27℃以上:カビが生える可能性が高まるので注意

稚魚育成

餌はブラインシュリンプでOKです。
餌を食べ始めるサイズになると足りなくなることもあるため、冷凍ブラインシュリンプなども併用すると良いでしょう。

※冷凍ブラインシュリンプはベビーブラインシュリンプが良いです。

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・ふ化直後は稚魚のお腹に「ヨークサック(卵嚢)」という透明な嚢がついています。
(ヨークサック(卵嚢)から栄養を吸収するため、卵嚢が付いている間は餌を食べずにじっとしています。)

・3日~4日後にヨークサック(卵嚢)がなくなり始めると壁についたりします。(この期間も餌はまだ食べません。)

・5日~6日後、稚魚に目の輪郭がわかるようになり、底に降りてくるようになります。このタイミングで餌を与え始めます。(食べないこともあります。様子を見ながら与えるようにしましょう。)

・稚魚が泳いで移動するようになれば、ブラインシュリンプを食べ始めます。1日2回、少量ずつ与えるようにしましょう。

稚魚育成注意点

・急激な水質の変化に弱い
・強い水流は避ける(水流に負けてしまうので体力低下につながります)
・肉食である(成長し、サイズ差ができます。かじる傾向にあるのでサイズを分けての育成が必要になります)

※水温により成長速度も変わります。低い水温であれば成長は緩やか、高水温であれば早まります。


まとめ

丸いフォルムに鮮やかな色彩、泳ぎもかわいらしく人気の淡水フグの紹介でした。

アベニー・パファーは小型で水草水槽でも飼育ができます。水槽に発生したスネール対策としても有能で種類を選べば混泳も可能です。

混泳させ水槽観賞するのも、単独飼育で種の生態を観察するのも新たな発見があるでしょう。

他の魚種にない魅力を持つフグたちをぜひ一度お迎えいただけたらと思います。




投稿者
WT

多くの生き物のブリーディングを経験をし、今はもっぱら観葉植物・DIY!

自分の好きな物での部屋作りが楽しい。

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