どうも、ほにゃらら sp.です。
今回紹介するのはコリドラス・アドルフォイ。
薄い白地の褐色に頭部のオレンジ色が良く映え、目と背にはっきりとした黒いバンドが入ります。
この色彩の絶妙なコントラストが大変美しく、人気の種です。
メジャー種の中ではちょっぴり高価な位置づけにあり、コリドラスの飼育に慣れてきた頃にコレクションに加えてみたくなる、憧れを感じさせる存在でもあります。
コリドラスは基本的に水質にあまり意識せず飼育できる種が多くいます。
しかし、アドルフォイに関してはちょっと注文をつけてきます。
今回はコリドラスマニアへの入り口ともいえる、アドルフォイを掘り下げてまいりましょう!
コリドラス・アドルフォイとは
生物学的情報 | |
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名前 | コリドラス・アドルフォイ |
学名 | Corydoras adolfoi |
分類 | ナマズ目カリクティス科コリドラス亜科 |
食性 | 雑食 |
ノーズ | ショートノーズ |
柄 | アイバンド系 |
分布 | ブラジル-ネグロ川 |
飼育要件 | |
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飼育しやすさ | ★★★★☆ 容易 |
入手しやすさ | ★★★★☆ そこそこ見かける |
混泳しやすさ | ★★★★★ とても混泳向き |
最大体長 | 5cm程度 |
適正水温 | 22~27℃ |
pH | 生存可能:5.0~8.0 適正範囲:5.5~6.5 |
備考 | 弱酸性の軟水を好む |
コリドラス・アドルフォイは1984年に輸入され、冒頭で述べた美しさから一躍コリドラスのスター的存在になった種です。
あまり水質にうるさくないコリドラスの中では水質に注文を付けてくる方で、pH6.0付近の弱酸性を好みます。
というのも、本種の原産地はネグロ川であり、本来はブラックウォーターとなる水域に生息します。
このため、発色を良くするには原産地の水質に近づけるのが理想的です。この水質に近づけるほど地肌が白く、頭部のオレンジは鮮やかになり、黒の発色は濃くなります。
pH7.0付近でも飼育できることにはできるのですが、アドルフォイのポテンシャルを最大限に引き出すならば、弱酸性で飼育したいところです。
ブリードにするか、ワイルドにするか
アドルフォイはブリード、ワイルド共に一定数の流通が見られます。
基本的には一般的なワイルド/ブリードの選び方に準じると良いでしょう。
アドルフォイに関して言えば、ワイルド個体のほうが体高があり、がっちりした体形の個体が多い印象です。
ブリード個体はワイルドに比べると小柄で、ころころとした愛らしい体形の個体が多い印象です。
どちらも性質に大きな違いはありませんが、いろいろな種類と混泳させて気軽に飼いたい場合は、ブリード個体のアドルフォイ単独で、現地の水景を再現するつもりで飼いたい場合はワイルドを選ぶと良いのではないでしょうか。
ただし、ワイルド個体は入荷が不安定なので、欲しいと思ったときに早めに購入するのが良いですね。
この点ブリード個体は入手性が良く、ワイルド個体に比べると安価です。
弱酸性の水質にしよう
コリドラスの飼育において水質調整系のアイテムを使うことはあまりありませんが、アドルフォイに関しては有用です。
弱酸性を好むといってもコリドラスの性質上、ソイルは不向きである点に注意が必要です。
底床はコリドラスの例に漏れず、「田砂」のような目の細かい砂が理想的です。
アドルフォイの場合、ソイルが使えないのでろ材や水質調整剤で整えることが基本となります。
現地の水を再現しよう
アドルフォイの故郷であるネグロ川は、ブラックウォーターで白砂の川床であることが知られています。
これを再現するには、ブラックウォーターに整える水質調整剤と、真っ白な砂を併用したいところです。
特に「アマゾン川源流の白砂」はその再現にピッタリです。
ワイルド個体のアドルフォイなら、この組み合わせはまるで故郷そのもの。とても発色が良くなることでしょう。
入れるだけですぐにブラックウォーターを作り出す調整剤です。
持続的にブラックウォーターを作り出すろ材です。
フィルターに入れるだけで使えます。
アマゾン川の源流・アンデス山脈で採取された白い砂です。
ネグロ川流域の砂も、これとよく似た白い砂が多いといわれています。
流木レイアウトに向いています
流木もやしゃぶしやアンブレラリーフなどと同様にタンニンを含むため、多少ですがpHを下降させる効果があります。
アドルフォイの水槽には、どちらかといえば石よりも流木のレイアウトのほうが向いていると言えるでしょう。
混泳について
コリドラスなので、基本的に協調性はよく非常に混泳向きです。
コリドラス同士はもちろん、コリドラスに攻撃をしてこない小型種であれば、ほとんどの熱帯魚と混泳が可能です。
アドルフォイと同郷のネグロ川出身の種をいくつかピックアップしてみましょう。
これらの種類と混泳させると、原産地のネグロ川な雰囲気が楽しめるかもしれません。
もちろん、ネグロ川出身以外の熱帯魚と混泳させても楽しいですよ。
混泳相手 | 混泳相性 | 備考 |
---|---|---|
グッピー | 〇 | グッピーは弱アルカリ性を好みます。 アドルフォイとは水質がやや合わない点に注意します。 |
プラティ・卵胎生メダカ | 〇 | 多くの卵胎生メダカは弱アルカリ性を好みます。 アドルフォイとは水質がやや合わない点に注意します。 |
カラシン・小型テトラ | ◎ | |
コイ・ラスボラ | ◎ | |
ローチ・ボーシャ・タニノボリ | ◎ | ローチ、タニノボリ系は好相性です。 ボーシャ系の攻撃性を持つ種では注意が必要です。 |
フライングフォックス/アルジイーター | ◎ | |
ドワーフシクリッド | ◎ | |
アフリカンシクリッド | × | |
エンゼルフィッシュ | 〇 | |
ディスカス | 〇 | |
ベタ・グラミー・アナバス | ◎ | |
コリドラス | ◎ | |
オトシンクルス・ロリカリア | 〇 | 大型種の場合、遊泳域が重なるのでエサの取り合いが発生することがあります。 サイズや飼育数、遊泳スペースを調整すれば問題はありません。 ※一般的なオトシンクルスやオトシンネグロは特に問題はありません。 |
プレコ | 〇 | 大型種の場合、遊泳域が重なるのでエサの取り合いが発生することがあります。 サイズや飼育数、遊泳スペースを調整すれば問題はありません。 ※タイガー、ブッシープレコ系はトラブルを起こしにくいでしょう。 ※セルフィン、ロイヤルプレコ系は力関係を要観察です。 |
レインボーフィッシュ | ◎ | |
ハゼ・ゴビー | 〇 | 遊泳層が被るため、攻撃性の高い種では注意が必要です。 |
フグ・パファー | × | |
エビ・ビーシュリンプ | 〇 | 稚エビは食べられる可能性があります。 |
※混泳相手の種や性格によっては、例外もあります。
◎・・・混泳に適した組み合わせです。
〇・・・混泳は可能ですが、種や個体の性格によっては工夫が必要な場合もあります。
△・・・混泳は不可能ではありませんが、適しているとは言えません。工夫次第で可能になる場合もあります。
×・・・混泳には適さない組み合わせです。
繁殖について
一般的にコリドラスは繁殖が難しいといわれますが、アドルフォイはその中では比較的容易な部類に入ります。
コツは弱酸性の水質を維持すること。pH6.0前後に水質を維持できれば簡単です。
繁殖を狙う場合は赤虫やイトメをたっぷり与えると良いでしょう。また、オス2匹メス3匹程度で飼育するのがオススメです。
アドルフォイは発色を良くし、大きく育てようとすると自然とこの条件を満たすため、繁殖条件が成立しやすいです。
ブリード個体よりも、ワイルド個体のほうが繁殖に成功しやすい傾向にあります。
繁殖条件が成立すれば、あとの流れは一般的なコリドラス同様です。
十分に成熟するとオスがメスをしきりに追うようになり、pHの変動や水温などの変化をきっかけに産卵行動に至ります。アドルフォイの場合、異種交配が成立しやすいのもポイントです。
雑種を作りたくない場合は、アドルフォイ単独で飼育する必要があります。
卵は非常に粘着性が高く、水槽面やパイプ、流木などに数個ずつまとめて産卵します。この産卵時にはTポジションと呼ばれるユニークな行動が見られます。
産卵直後の卵は簡単にはがせるので、別容器に移して十分にエアレーションします。
孵化後の稚魚はヨークサックが吸収された後、ブラインシュリンプの幼生をふ化させて与えます。
こんなにたくさん!アドルフォイ似のコリドラス
全部同じじゃないですか!って?
ちがいますよーっ。
ちゃんとよく見ましょう。
コリドラス・イミテーター
学名:Corydoras imitator
アドルフォイと同じネグロ川産のコリドラスです。
種小名の”imitator”とは”偽の”または”擬態した”という意味を持ちます。
吻部が長い点でアドルフォイとは区別できます。
コリドラス・バーゲシー
学名:Corydoras burgessi
ウニニ川原産のコリドラスです。
ウニニ川はネグロ川の支流で、やはりネグロ川水系に分布する種となります。
アドルフォイに比べると背ビレの黒の面積が多く、また背のバンドは背ビレの付け根付近までしか入りません。飼い込むと体側部もうっすら黒みを帯び、アドルフォイとは異なったシックなイメージです。
コリドラス・ニューアドルフォイ
コリドラス・デュプリカレウス
学名:Corydoras duplicareus
ポランガ川、ネグロ川産のコリドラスです。
アドルフォイに一番よく似た色彩パターンを持つ種だと思います。
配色パターンが極めてよく似ますが、こちらは背ビレの黒いバンドがアドルフォイに比べるとかなり太いです。また、頭部のオレンジ色の発色も、より赤に近いオレンジに染まります。
コリドラス・ナイスニー
学名:Corydoras nijsseni
ネグロ川産のコリドラスです。
アドルフォイに似た色彩パターンを持ちますが、体形はエレガンス系で目が下寄りに付きます。
背部の黒いバンドには個体差が見られ、まだら模様になったタイプも見られます。
コリドラス・セルラータス
学名:Corydoras serratus
ネグロ川産のコリドラスです。
アドルフォイに似た色彩パターンを持つ大型種で、ベントノーズ・アドルフォイとも呼ばれます。
吻部の形状が最大の特徴で、頭部のオレンジもアドルフォイに比べると薄い傾向があります。
コリドラス・アドルフォイ まとめ
アドルフォイにはよく似た種がたくさんいますが、これでもうばっちり見分けられますね!
またここまでで、実は全員ネグロ川出身であることにお気づきでしょうか?
微妙な変化はあるものの、色形はどの種も似通っています。
これは、コリドラスではよく知られる現象で「互いに擬態をした結果」と考えられています。
どの種が擬態のお手本になったのかは分かりませんが、ネグロ川水系のコリドラス同士で真似っこしあった結果、このようなそっくりさんがたくさん生じる形になったみたいですね。
コリドラスは基本的にトゲが鋭く毒を持ちます。
ネグロ川ではこの色彩を持っていると捕食者に対し防御機構としてきっと有利に働くのでしょう。
これをミューラー型擬態といいます。
身近な例ではミツバチやスズメバチなど、多くのハチが黒と黄色の縞模様を持ちますが、これもミューラー型擬態の一例です。
アドルフォイの色彩は水槽内では白と黒のコントラストに鮮やかなオレンジのワンポイントがアクアリストの目を楽しませてくれます。
一方で、野生下では肉食魚に対し「まさか俺を食べる気かい?やめときな。刺さるぞ?」という警告色として役に立っているのかもしれません。
熱帯魚の色彩は、厳しい野生環境を生き抜く上で何かしら有利に働く特性があるはずです。
その色彩にはどんな意味が込められているのか……。
現地に生息する他の熱帯魚との関係性から、あれこれ想像を膨らませてみるのも楽しいですね。
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