アヌビアスとは
分類 | サトイモ科(Araceae)アヌビアス属(Anubias) |
主な原産地 | アフリカ |
和名 | – |
pH | 5~7.5 |
GH | 0~6 |
CO2 | なくても可、あったほうが良い1滴/3秒 |
アヌビアスはアフリカ大陸に分布するサトイモ科の仲間の植物です。アクアリウムでは古くから親しまれ、丈夫な水草の代表種と言えます。昨今では品種改良も進み、さまざまな品種が流通しておりコレクターにも人気があります。
また、アヌビアスは仏炎苞と呼ばれる花を水中でつけることがあります。水中では受粉はできませんが、花っぽい花をつける水草はアヌビアスやブセファランドラ等のサトイモ科の植物でしか見ることができません。
そんなアヌビアスは丈夫な水草でもあり、初心者の方へもよくオススメされます。
初心者向けの理由
育成が簡単
日本の水質によく適応し、丈夫かつ暑さにも強いです。
照明が弱くても育つ
陰性水草のため、水草専用ライトではなく熱帯魚の飼育用の低光量な照明でも育成ができる水草です。
CO2の添加がなくても育成できる
生長がかなり遅いため、CO2の添加がなくても育成することができます。
ただし、CO2を添加したほうが成長が促進され、より早くボリュームを持たせることができます。
流木や石に活着して育てられる
アヌビアスは活着する性質があるため、流木や石に巻き付けてレイアウトをすることが多いです。
流木に巻き付けてある商品をポンと水槽に入れるだけで簡単にレイアウトをすることができます。
水槽をメンテナンスする際も、流木を移動してお掃除できるので楽ちんです。
成長が遅い
ミクロソリウムと同様に成長が遅く、トリミングなどの手間がかからないため、長期維持が可能な点も人気の理由になっています。
食害を受けることが少ない
アヌビアスは葉が堅いため、生き物からの食害を受けることが少ないです。水草を食べてしまう金魚がいる水槽でも導入することができます。
主なアヌビアス
アヌビアスナナ
学名:Anubias barteri var. nana
アヌビアスの仲間で一番よく流通している小~中型の種類です。育成は容易。一応原種でもあり、カメルーンが原産のようです。 また、アヌビアスナナの改良品種として葉が全体的に黄色になるアヌビアスナナ’ゴールデン’があります。
アヌビアスナナ プチ
学名:Anubias barteri var. nana ‘petite’
アヌビアスナナの改良品種でアヌビアスナナをさらに小型化したものがアヌビアスナナプチです。育成難易度はアヌビアスナナと同程度。小型水槽向けのアヌビアスです。
アヌビアス バルテリー
学名:Anubias barteri var. barteri
アヌビアスナナより大型で、アヌビアスの仲間ではド定番の種類です。育成難易度はアヌビアスナナと同様ですが、陸生傾向もあり、根茎部分は水中に沈め、葉を水面から出すようなレイアウトも可能です。原種はナイジェリアやカメルーンに分布しています。
アヌビアス ランケオラータ
学名:Anubias barteri var. glabra ‘lanceolata’
アヌビアス ランケオラータは細葉のアヌビアスの仲間で、アヌビアスの中でも特徴的な種類です。育成難易度はアヌビアスナナよりは若干高く、CO2の添加をしたほうが水中下での育成はしやすいです。
アヌビアス ハスティフォリア
学名:Anubias hastifolia
耳がついているような葉の形が特徴的な大型になるアヌビアスです。育成難易度としては完全水中化はやや難しく、根茎部は水中に、葉は水上に出すような管理のほうが育成しやすいです。アフリカ大陸で広く分布しナイジェリアやカメルーン、コンゴにも自生しています。
アヌビアス キリン
学名:Anubias barteri var. nana ‘Kirin’
2020年ごろに日本に入荷し始めた、葉に強いウェーブが入るアヌビアスの改良品種です。同じような葉の形質で小型の「キリンミニ」や大型になる「ジャンボキリン」のような品種も続々出てきています。
アヌビアスの使い方
アヌビアスは石や流木に根を活着させて育つ性質があります。そのためアクアリウムでは流木や石に巻きつけてレイアウトに使用することが多いです。
アヌビアスは根茎部が非常に重要な植物で、根茎に栄養を蓄えて、葉や根を伸ばします。そのため砂やソイルなどへ植え込んでの育成は向いていません。根茎部を砂やソイルに埋めてしまうと、そこから腐ってしまうのです。
アヌビアスの巻き付けかた
アヌビアスはポットの状態で入荷します。 ポットには土の代わりにロックウールが使用されていますが、巻き付ける際は不要なためロックウールは水で洗い流します。 アヌビアスの古い根はハサミでカットします。古い根は復活する見込みがないので、取り除くことで新しい根や新芽の展開を促してあげます。 土台にテグスやビニタイで巻き付けます。テグスは根茎部を抑えるようにし、できるだけ葉は押さえないように巻き付けます。
巻き付けオススメアイテム
流木・石に活着した商品
流木に巻き付けるのが苦手な方や、面倒に感じる方は既に巻き付けてある商品もあります。
アヌビアスの育成の基本
水温 | 20~28℃ |
光量 | 60cm水槽:1000lm程度 |
CO2 | なくても可、あったほうが良い |
pH | 5~7.5 |
GH | 0~6 |
肥料 | 不要 |
水温
アヌビアスは元々アフリカの暖かい地域に自生する水草です。そのため暑さには強いですが、寒さには弱い面があります。日本の春~秋の気候ではヒーターは不要で、夏季は屋外栽培も可能です。
ただ、冬の寒さにはめっぽう弱いため、冬場は屋内へ入れ、ヒーターなどで水温を20~28℃に保ってあげると良いでしょう。
光量
アヌビアスはいわゆる陰性水草と呼ばれ、少ない光量でも育成が可能です。60cm水槽でおよそ1000mlの光量があれば十分に育ちます。
CO2の添加
アヌビアスを枯れないように維持する、または生長が遅くても良いと考えるならばCO2の添加は不要です。一般的にCO2の添加は植物の光合成を促進させる効果があり、これは熱帯魚におけるエアレーションと同じ感覚と言えばわかりやすいでしょうか。そのためアヌビアスを育成する上でCO2の添加があって困ることはないので、予算と水槽管理に余裕があれば積極的にCO2添加機器の導入を考えると良いでしょう。
底床
アヌビアスに合う底床は特にこれがいいというのはなく、ソイル、大磯、砂利のどの底床でも育成が可能です。ただ、アヌビアスが若干硬度がある水質を好む点や、生長が遅く肥料をあまり吸収しない点から、栄養をあまり含まない大磯砂を使用したほうがきれいに調子良く育成することができます。
水質
アヌビアスが初心者向けと言われるゆえんは、水質をあまり気にせず育成することができる点にあります。ただ日ごろの管理においては、一般的な水草同様カルキを抜いた水での管理が良いでしょう。軟水ですと調子を崩す場合があるので、RO水ではなく、浄水で育成可能です。
RO水
逆浸透膜で濾過した水のため不純物がほぼ取り除かれている。ミネラルも取り除かれているので硬度は低い。
浄水
浄水器のろ材の種類によって除去される不純物が異なる。ミネラルが残るため硬度はある程度保たれる。
トリミング
アヌビアスは生長が遅いため、トリミングをほとんど行いません。種類により葉の展開する量は異なりますが、古くなり黄色くなった葉やコケがついてしまった葉などをハサミで切る程度のケアとなります。 コケが葉に大量に付着してしまった場合、新芽部分を残して葉をすべて切ってしまっても大丈夫です。根茎部分が健康的であれば、また新たな葉を展開することが可能です。傷んだ葉やコケの付着した葉は思い切って切ってしまうのも良いと思います。
レイアウトでの使い方
アヌビアスの水槽内への配置方法は大きく分けて2種類のパターンがあります。
小型~中型で水中向き
アヌビアスナナやナナプチなどの小型~中型のアヌビアスは水性傾向が強く、水中下でも新芽をどんどん展開します。また、アヌビアスは陰性水草のため、水槽の前景や岩組の影などやや暗い場所に配置をしても問題なく育成することが可能です。
大型で葉を水面に出す
ハスティフォリアやヘテロフィラなどの大型のアヌビアスは完全水中化が苦手です。葉が完全に水に沈んでいる状態だと徐々に草体全体が小さくなっていき、最終的には枯れてしまう傾向にあります。 そのため、この手のアヌビアスの場合、根茎部分は水中に、葉は水面に出すような配置をしてあげると良いでしょう。万が一 新芽部分が水に沈んでしまっていても、生長とともに水上へ展開していきます。 葉を水槽から出すオープンアクアリウムやテラリウムのようなレイアウトが好ましいです。原産地でも大型アヌビアスは水辺に生えており、葉は水面から出ている場合が多いです。
コケ対策
アヌビアスは生長が遅いため、アクアリウムで一番厄介とされる黒髭コケの被害に遭いやすく、多くのアクアリストがコケとの戦いを強いられます。アヌビアスを水槽へ導入する際、ヤマトヌマエビやオトシンクルスなどのコケ取り生体を多めに導入し予防すると良いでしょう。 コケ発生の原因は水槽内の冨栄養化によるものですので、こまめに水換えをしてコケの予防を行いましょう。 コケの付着がひどい場合は、コケのついた葉をハサミで切ってしまいましょう。 新芽部分を残せば、ほかの葉を切り取ってしまってもしばらくするとまた葉が展開してきますのでご安心ください。
肥料
アヌビアスの育成に基本肥料は不要です。アヌビアスの生長自体がもともと遅く、肥料をあまり吸収しないため、液体肥料などの添加をしてしまうと一層コケが発生してしまいます。育成の過程で新芽部分が萎縮してしまったり、葉が全体的に黄色くなってしまわない限りは液体肥料の添加は不要です。
ただしカリウムだけは例外で、水槽内で不足しがちなカリウムを添加すると葉がシャキっとしてきれいに育成することが可能です。
導入・管理する際に注意すること
水温に注意
アヌビアスは寒さに弱いので、水温は20℃を下回らないように保つことが重要です。
底床に植え込まないこと
アヌビアスは石や流木に活着すると、生長に勢いが出てきます。
植え込んで根茎部を埋めてしまうと株が溶けてしまう原因となるので、注意が必要です。
農薬が含まれていることがある。
アヌビアスはほとんど海外ファームから入荷しており、農薬を使用している場合が多いです。
ビーシュリンプやカニなどには影響が出てしまうことがあるので、導入を控えたほうがよいでしょう。
チャームでは農薬の有無をチェックしておりますが、気になるようであれば「水草その前に」という商品で付着している農薬を処理してから水槽へ導入しましょう。
殖やし方
アヌビアスは株分けで増やします。生長する過程で根茎部分から新しい芽が出て来るのでその部分をハサミで切って流木や石に巻きつけることで増殖することができます。
アヌビアスと相性の良い魚
コリドラス
アヌビアスは流木などに活着させて育成するので、コリドラスなどの底床をつつくナマズ系の魚との相性が良いです。
植え込みタイプの水草だと、ほじくり返されて浮いてしまったりしますが、アヌビアスであればそういったことはありません。
金魚
金魚などの雑食性の強い魚との相性も良いです。
金魚には浮草といったイメージが強いですが、餌が十分に与えられていない場合だと、浮草をつついて食べてしまいます。
しかし、アヌビアスであれば葉が硬いため、多少つつかれても問題ありません。
アフリカンシクリッド
アフリカンシクリッドのようなアルカリ性の水質を好む熱帯魚にもアヌビアスは使用できます。
水草のほとんどは弱酸性を好むため、アルカリ性の水質で使用できる水草はアヌビアスに限られると言っても過言ではありません。
さらに、砂を掘る種類でも石に活着させれば安心して投入できます。
古代魚
アヌビアスはアフリカの植物なので、アフリカ原産の熱帯魚とマッチします。
特にポリプテルスのような大型魚の隠れ家として流木を設置し、その流木にアヌビアスを巻きつけると水槽内が一気に華やかになりますよ!
アヌビアス用語集
根茎(こんけい)
葉と根の間にある芋の部分です。一般的な植物に当てはめると茎みたいな場所です。ここに栄養が詰まっており、葉や根がない状態でも根茎が元気であれば、新芽や根を展開することが可能です。
仏炎苞(ぶつえんほう)
サトイモ科特有の花のことをさします。1枚の苞にヤングコーンのような花の集合体があります。
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