どうも、ほにゃらら sp.です。
今回紹介するのはブラックファントムテトラ。
体高のあるボディに、漆黒に染まり大きく広がる背ビレと尻ビレが魅力的な小型カラシン(テトラ)の仲間です。
黒い大きなスポットがうっすらと輝くブルーに縁どられる点も見逃せません。
総じてシックな色彩が魅力です。
単体で飼育しても見ごたえがあり、水草レイアウト水槽に群泳させても人気の高い種です。
シックな色彩と特異な体型から、組み合わせる魚種によって主役も引き立て役も両方こなすことができ、融通の利く魚種です。
ブラックファントム・テトラとは
名前 | ブラックファントム・テトラ |
学名 | Hyphessobrycon megalopterus |
分布 | ブラジル ― パラグアイ川、グァポレ川 |
サイズ | 最大体長5cm程度 |
最適pH | 6.0~7.5くらい あんまり気にしなくてOK |
ブラックファントム・テトラはブラジル、パラグアイ川、グァポレ川原産のカラシンです。
小型ながらも背ビレと尻ビレを大きく展開し、漆黒に染まる体色は存在感があります。
特徴的な黒い色彩は、水槽になじみ、状態が良いほど濃くなります。
状態が良いと黒いスポットの周りにはメタリックブルーの縁取りが現れ、シックな配色を持つ熱帯魚の中ではトップクラスの美しさを見せてくれます。
水槽に入れたてのうちは色が薄く、やや透明感があり、赤みが入ることもあります。
入れたてのうちは”黒き幻影”のイメージとは程遠い体色であることもありますが、これはじっくり飼い込むほどに黒く染まってきます。
※メスはあまり黒に染まらず、腹ビレを中心にむしろ赤みが強くなります。
同種のオス同士では「フィンスプレッティング」というヒレを広げ合う行動が見られます。
この行動により最大限までお互いにヒレを広げ合い、優劣を競います。
本種の色形の美しさが最高潮を迎える瞬間でもあるので、一見の価値があります。
メスはオスに比べるとヒレがあまり大きく広がりません。
雌雄判別が難しいといわれるテトラ類の中では、色形で判別できるので容易な部類に入ります。
本種はヒレの大きさや広がり具合で優劣を競うので、気性の荒いカラシン類のように他の魚を激しく追い掛け回したり、ヒレをかじったりするといったことはほとんどありません。
フィンスプレッティングはある種、個体間の争いを平和的に解決する方法の一つともいえるでしょう。
本種は東南アジアで大量にブリードされているため入手は容易です。
飼育も容易な上、性質も温和で混泳にも適しています。
本種の飼育に関しては、熱帯魚飼育に必要とされる基本的な設備を整えていれば、それでOKです!
飼育だけならpHもどちらかといえば弱酸性を好みますが、そんなに気にする必要はありません。
少しぐらいアルカリ性に傾いても平気です。
割と水質には寛容なので、あまり小難しく考えなくとも基本さえ押さえれば問題なく飼育できます。
よく似た別種
本種は“ファントムテトラ”と称される、体高のあるハイフェソブリコン属(旧メガランフォダス属)の代表種ともいえます。
特異な色彩を持つため、よく入荷の見られる種の中では本種に似たものはいません。
まず間違えることはないでしょう。
“ファントムテトラ”と括られる体形が似た種はいくつかいるので、紹介します。
レッドファントム・テトラ
学名:Hyphessobrycon sweglesi
コロンビア、オリノコ川原産のカラシンです。
赤く透明感のある体色と黒の大きなスポットが入る美しい魚で、オスは背ビレと尻ビレが大きくなります。
水草水槽によく映えることから水草レイアウトの広がりとともに人気になった魚です。弱酸性の水質で長期間じっくり飼い込むと、赤い発色が鮮やかになります。
こちらも同種間でフィンスプレッディングすることが知られており、その光景は小型種ながら見ごたえがあります。
レッドテール・イエローファントムテトラ
学名:Hyphessobrycon sp.
学名、分布不明と不明点が多い小型カラシンです。
体形はブラックファントムに似ていますが、全身が黄色、尾が赤に美しく染まります。
状態良く飼育すると赤が濃くなり、各ヒレの先端も白く染まります。
有用なアイテム
ブラックファントム・テトラの飼育は小型カラシンとしては標準的といえます。
したがって、本種の飼育に関して特別有効といえるアイテムはありません。
テトラ類全般に共通する基本的な性質については、小型カラシン共通ページをご覧ください。
本種は安定した環境で長期間飼育すると、漆黒の発色が期待できるでしょう。
ソイルでなく大磯などを使用していても問題なく発色してくれますが、可能であればpH6.0~6.5の範囲を維持すると、より良い結果が得られると思います。
混泳について
ブラックファントム・テトラは非常に混泳向きのカラシンです。
テトラ類同士であれば基本的に問題ありません。
同じテトラ類同士や、ラスボラ、コリドラスなどが混泳相手として良いでしょう。
この点も、熱帯魚の基本として古くからの人気の秘訣といえるでしょう。
カージナルテトラやインパイクティス・ケリーなどの色鮮やかなテトラ類と組み合わせると、シックな色彩の本種は引き立て役として良い仕事をしてくれます。
ブラックネオン・テトラなどのシックな色彩のテトラ類やコリドラスなどと組み合わせると、大きく広がるヒレが目立ち、主役としての存在感を発揮してくれるでしょう。
組み合わせ次第でどちらの役割もこなせるのが、本種の魅力といえます。
熱帯魚の例
混泳相手 | 混泳相性 | 備考 |
---|---|---|
グッピー | ◎ | グッピーは弱アルカリ性を好みます。 |
プラティ・卵胎生メダカ | ◎ | 多くの卵胎生メダカは弱アルカリ性を好みます。 |
カラシン・小型テトラ | ◎ | |
コイ・ラスボラ | ◎ | |
ローチ・ボーシャ・タニノボリ | 〇 | |
フライングフォックス/アルジイーター | 〇 | |
ドワーフシクリッド | △ | サイズ差に注意 |
アフリカンシクリッド | × | |
エンゼルフィッシュ | 〇 | ファントムテトラ類は体高があるので、 他のテトラ類よりはエンゼルフィッシュとの 混泳に向いています。 |
ディスカス | 〇 | ファントムテトラ類は体高があるので、 他のテトラ類よりはディスカスとの 混泳に向いています。 |
ベタ・グラミー・アナバス | ◎ | |
コリドラス | ◎ | |
オトシンクルス・ロリカリア | ◎ | |
プレコ | ◎ | |
レインボーフィッシュ | ◎ | 多くのレインボーは中性付近を好みます。 |
ハゼ・ゴビー | 〇 | |
フグ・パファー | × | |
エビ・ビーシュリンプ | 〇 | 稚エビは食べられる可能性があります。 |
※混泳相手の種や性格によっては、例外もあります。
◎・・・混泳に適した組み合わせです。
〇・・・混泳は可能ですが、種や個体の性格によっては工夫が必要な場合もあります。
△・・・混泳は不可能ではありませんが、適しているとは言えません。工夫次第で可能になる場合もあります。
×・・・混泳には適さない組み合わせです。
基本的には、テトラ類に対し攻撃を仕掛ける生体でなければ、ほとんどなんでも混泳可能です。
テトラ類がトラブルの火種になることは少ないですが、テトラ類以外の同居魚同士の相性はよく考えてあげてくださいね。
テトラ類以外の生体間での相性はあるので、留意しましょう。
ブラックファントムテトラの繁殖
小型カラシン類は全般的に家庭での繁殖は難しいとされますが、本種は比較的狙える部類に入ります。
産卵までは狙えますが、稚魚育成の難易度は高めです。
pH6.0ぐらいの弱酸性の水質を維持し、水槽一面に水草を茂らせていると繁殖の条件が整いやすくなります。
雌雄の区別も本種は容易で、成熟して繁殖の準備が整った個体であれば全身が黒いものがオス、赤みを帯びるものがメスです。
※未成熟個体や、繁殖の準備ができていない場合は、オスも赤みを帯びることがあります。
産卵させるまでの手順
- 熱帯魚飼育の基本的な飼育設備を整えます。
底床や水草の上にばらまくタイプの産卵形態をとるため、ウィローモスをよく茂らせておきましょう。この茂みに向かってばらまかれたものが、生存率が高くなります。 - テトラ類は基本的に群れで飼育するので、5匹以上で飼育していれば大抵の場合オスメス混じっていると思います。
テトラ類の雌雄判別は難しい種が多いですが、ブラックファントム・テトラの場合は容易です。
全身が黒いものがオス、赤みを帯びるものがメスです。 - 1日2回以上、多めにエサを与えます。
人工飼料でも構いませんが、冷凍赤虫を与えると良いでしょう。 - 十分に成熟したメスはふっくらとした体型になってきます。
- 弱酸性の軟水環境を維持しつつ、週に1回程度の定期的に水換えを行って水質の維持に努めましょう。
- メスがふっくらしてきて、オスがメスを積極的に追い回すようになったら可能性が高いです。
水槽内での自然繁殖も可能ですが、できればペアで繁殖用の水槽に移した方が成功率が高まります。水槽内に茂らせたウィローモスも、この時一緒に移しましょう。 - 産卵はpHや水温の変化などをきっかけに行われます。繁殖用の水槽は水換えは普段より多めに行うと良いでしょう。
産卵は夕方や明け方に行われることが多く、照明が消えている間に産卵することが多いです。 - 産卵が行われた場合、ウィローモスへの付着が確認できます。
産卵が確認できたら、できる限り早く親魚を繁殖用の水槽から取り出します。
産卵後の育成
ばらまき型産卵のため、卵を水槽内で発見することは困難です。
また、小型カラシンの初期試料はインフゾリアが必要です。
水槽内での自然繁殖の場合は、たくさんの稚魚を残すのは難しいでしょう。
繁殖用の水槽で卵をかえした方が、生存率が高まります。
稚魚がかえったら、最初はインフゾリアを与えます。
一週間ほどしたら、ブラインシュリンプの幼生を食べられるようになります。
ブラインシュリンプ幼生を食べられるようになれば、稚魚の生存率はぐっと高まります。
1cm程度のサイズになったら、水質悪化に気を付けながら1日数回こまめに人工飼料を与えると良いでしょう。
親に与えている顆粒やフレークフードをすり潰したものでも代用できますが、稚魚専用に販売されているフードが理想的です。
ブラックファントム・テトラ まとめ
ブラックファントム・テトラ。
シックな体色が美しく、大きく広がるヒレの主張も強いことから混泳水槽でも、水草レイアウト水槽でも人気の高いカラシンです。
安定した環境でじっくりと飼い込めば飼い込むほど、漆黒に染まりその魅力を発揮してくれます。
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