汽水魚の魅力
汽水魚の世界へようこそ。
一口に汽水魚といっても、その括りは広いです。
海水より塩分が低く、純淡水ではない水域に生息する魚種全般を指しています。
このため該当する魚種の分類も実に多種多様です。
誰もが一度は聞いたことがあるような、フグ、ハゼ、ヒラメ、タツノオトシゴなどの仲間がこのグループには多く含まれます。
これらの種は純淡水魚とは異なる生態や形態を持っており、見た目に独特な魅力を持つ魚種が多いことも魅力です。
観賞魚としての流通するものは、主にフグ、ハゼ類が多いです。
フグ類やハゼ類は愛嬌があり、人によく慣れるものも多く知られています。
汽水魚はその特性上、飼育には塩分が欠かせません。
このため淡水性の熱帯魚の飼育に比べると、飼育には一工夫が必要です。
しかし、塩分とろ過能力の条件さえクリアすれば、実は水質の維持は容易です。
ただし、種によって最も理想とする塩分は異なります。
より淡水に近い環境が適する種、むしろ海水に近い環境が適する種もいます。
淡水〇〇という名前で流通していても、実は汽水飼育が適する種も存在します。
汽水魚の飼育においては、何分の一海水(1/〇海水)という表現が良く出てきます。
種ごとに理想とする塩分はそれぞれ異なるので、各種の詳細については自分で調べることを苦に感じない人に向いているといえるでしょう。
愛らしく、淡水魚や海水魚よりも水質の維持が容易なので、はじめて飼育する観賞魚として。
人とはちょっと違った方向性を目指したい方には、意外とおすすめできるグループです。
淡水魚とも海水魚とも一味違う飼育が楽しめる汽水魚。
奥深い汽水魚の世界へ、貴方を誘いましょう。
汽水魚とは
汽水魚とは海水より塩分が低く、純淡水ではない水域を主に生息する魚種全般を指します。
その性質上、河口域に分布するものが大半を占めます。
汽水魚は種によって「汽水でないと調子を崩すもの」と「純淡水にも適応できるもの」がおり、前者を純淡水で長期間飼育すると状態を崩します。後者は純淡水でも問題なく飼育できます。
一口に汽水魚といっても基本的に飼育には塩分が必要なため、飼育のハードルがやや高く感じられることもあるかもしれません。
しかし、汽水域はもともと塩分の変化が激しく、全般的に「水質の変化に強い」という特性を持つ種が多いです。
一度環境になじんでしまえば、長期間水換えをせずとも足し水だけで管理できてしまうこともあります。それぐらい丈夫な種が多いのです。
このページでは、「汽水でないと調子を崩すもの」を中心に解説します。
分類群ごとの傾向
汽水魚という括りはあまりに広く、大きいです。
このため魚種によってその性質は全く異なります。
汽水魚として流通する魚種が多いグループは、以下のように分けられます。
それぞれの分類群ごとの傾向を簡単に解説します。
あくまでも傾向ですので、最終的には飼育したい種の特性を良く調べましょう。
フグ系
フグの仲間は愛らしい顔つきと仕草が人気です。
「淡水〇〇フグ」の名前で販売されることも多いのですが、長期飼育には塩分が必須となる種も多いので注意が必要です。
それらの種は一時的であれば純淡水に適応することもできるので、純淡水でも飼育可能と間違えられがちです。
混泳とエサに関して注意が必要です。
外見とは裏腹に非常に攻撃性が高いため、基本的に混泳は難しいと考えたほうが良いでしょう。
餌は活きたエビやクリルを好みます。
根気よく餌付ければ、人工飼料を食べてくれる個体もいます。
ハゼ系
ハゼの仲間は主に底層を這って暮らします。
一部、中層をホバリングするように泳ぐ種類もいます。
水質には寛容で丈夫な種が多いです。
人工飼料にも餌付きやすく、比較的飼育しやすいグループです。
塩分に関しては種によってまちまちです。
純淡水に適応できる種もいれば、汽水でないと調子を崩す種もいます。
流通量が比較的多いハゼ類としては、「ナイト・ゴビー」や「バンブルビー・フィッシュ」は塩分を要求する種の代表です。
混泳に関しても、種によって性格が荒いものと温和なものとがおり、まちまちです。
基本的には若干の気の強さを見せる種が多いので、隠れ家を十分に用意した上で様子を見ながら行うと良いでしょう。
カレイ/ヒラメ系
カレイ/ヒラメの仲間は砂地に潜って暮らします。
基本的に底床は目の細かい砂を使用することと、肉食魚なので餌付けに時間がかかることの2点を把握しておきましょう。
肉食性が強いので、口に入るサイズの魚は捕食してしまいます。
人工飼料も食べますが、餌付くには時間がかかることが多いです。
混泳に関しては、サイズが同程度で上~中層を泳ぐ魚種とであれば混泳可能です。
スズキ系
ここまで紹介したいずれの種にも当てはまらない魚の多くは、このグループに当てはまることが多いです。
いわゆる「魚らしい」体型をした汽水魚は、ほとんどの場合スズキの仲間です。
スズキ目は広いので、魚種によって食性や混泳などの性質は千差万別です。
全体的に見れば比較的餌付きやすいものが多く、飼育はしやすい部類に入ります。
ヨウジウオ系
細長く特異な体型を持ったグループです。
タツノオトシゴに比較的近縁なグループで、汽水域を中心に純淡水~海水まで幅広く分布します。
種によって塩分の要求度合いが全く異なるので注意が必要です。
淡水魚として流通する種の多くは純淡水でも飼育ができますが、例えばイッセンヨウジウオなど一部の種では塩分の添加が必要です。
大きく分けて、大陸の内陸部を原産地とするものは純淡水で飼育可能、河口や沿岸域を原産地とするものは塩分を要求する傾向があります。
このグループの魚は給餌が特殊となり、成魚でも活きたブラインシュリンプ幼生が主食となります。
慣れれば冷凍品でも食べてくれるようになるでしょう。
人工飼料は口にしないと考えたほうが良いです。
性格は温和ですが特殊な給餌方法を要求する関係上、他グループの魚との混泳にはあまり向いていません。
ヨウジウオ類は給餌にひと手間かかりますが、他グループには見られない個性的な行動を見せてくれるのが魅力です。
流通が見られる主な汽水魚
観賞魚として比較的流通の見られる汽水魚は次の通りです。
汽水魚といっても、長期飼育には塩分が必要なものと、そうでないものとがいます。
どちらのタイプなのかによって、飼育可能な水質の条件は大きく異なります。
これから飼育しようとしている魚は塩分が必須なのか、そうでないのか、よく確認しておきましょう。
このページでは、特に前者について中心に解説します。
汽水環境が必須な種
長期飼育には塩分が必要なグループです。
真の意味での汽水魚といえるのは、こちらのグループです。
一時的であれば純淡水で飼育できないこともありませんが、純淡水のまま長期間飼育を続けると、高い確率で状態を崩します。
ミドリフグ
学名:Tetrandon nigroviridis
最大体長:約15cm
汽水魚を代表する、ポピュラーなフグの仲間です。
タイからインドの汽水域に生息しており、名前の通り緑色の背中に黒のスポットが入ります。
フグの仲間らしく、危険を感じると一般的なフグ同様に体内に水や空気を取り込んで体を膨らませます。
純淡水でも一時的に飼育可能ではあるものの、本来は汽水域に生息する種です。
若干の塩分があったほうが長期飼育には良いでしょう。
フグの中でも飼育は容易で人工飼料にもなれますが、最初は冷凍アカムシやクリルなどから餌付けると良いでしょう。
性質はやや荒く魚食性の強い種なので、混泳には向きません。
基本的に単独飼育とし、小魚やエビなどを中心に与えましょう。
ミドリフグは2種類いる?
実は観賞魚として流通するミドリフグには2種類いるといわれています。
「ミドリフグ」として一般的に流通しているものの大多数は、先に紹介したTetrandon nigroviridisです。
一方で、「完全淡水ミドリフグ」などの名称でごくまれに流通するものとして、Tetrandon sabahensisという別種が知られています。
外見はどちらも瓜二つ、見た目での区別は困難です。
しかし、後者(sabahensis)は純淡水で飼育可能といわれています。
両種は分布域が異なるので、仕入元を確認できれば区別ができるかもしれません。
とはいえ、後者(sabahensis)の流通は極めて少ないです。
基本的に流通しているミドリフグは前者(nigroviridis)ですので、汽水魚と考えたほうが良いでしょう。
ハチノジフグ
学名:Tetraodon biocellatus
最大体長:約15cm
タイ~インドの汽水域に生息するポピュラーなフグの仲間です。
ミドリフグに似ますが、上から見ると数字の8のような模様があり、これが名の由来となっています。
驚くと一般的なフグ同様、体内に水や空気を取り込んで体を膨らませます。
基本的な性質はミドリフグに準じ、本種も長期飼育には塩分を必要とします。
餌や混泳についても同様で、最初は冷凍アカムシやクリルなどから餌付けると良いでしょう。
性質はやや粗く、混泳には不向きです。
インドトパーズ・パファー
学名:Tetraodon fluviatillis
最大体長:約10cm
インド、スリランカ、バングラディッシュ原産のフグの仲間です。
成魚は各ヒレがオレンジに染まり、黄色い体色に黒い点模様が美しい種です。
幼魚はハチノジフグフグに似た容姿を持ちます。
本種は「マミズフグ」という別名もあり、幼魚が淡水域で採集されます。
純淡水での飼育も一時的であれば可能ですが、本来は汽水域に生息する種なので、若干の塩分を入れたほうが調子がよいです。
汽水を用意できる場合は、1/5~1/4海水ほどに、徐々に調整していくとよい結果を得やすいです。
飼育は容易で餌は赤虫などを好みますが、フグの中でも人工飼料に慣れやすいといわれています。
性格はフグの中でも温和な部類に入るとされますが、リスクを避けるならば単独飼育が理想的です。
アーチャー・フィッシュ
学名:Toxotes jaculatrix
最大体長:約20cm
「テッポウウオ」の名前で有名なインド洋から東大平洋沿岸域原産の汽水魚です。
水を口から鉄砲のように飛ばし、水上の昆虫などを撃ち落す行動で古くから知られます。
本種は偏平した体に明瞭な暗色班が特徴的で、気分や体調によって暗色の部分が増えたりします。
導入時には神経質な一面を見せますが、一旦落ち着けば容易です。
長期飼育には塩分が必要で、純淡水での長期飼育は難しいでしょう。
本種と近縁な「セブンスポット・アーチャーフィッシュ」は塩分を必要としないので、間違えないようにしましょう。
バンブルビー・フィッシュ
学名:Brackygobius doriae
最大体長:約3cm
東南アジアの河川下流域に生息する小型のハゼです。
黄色と黒のストライプはまさしくバンブルビー(蜂)のとおりで、愛嬌のある顔をしています。
飼育は容易ですが、同種間では若干気の強い所があるので隠れ家を用意してあげると良いでしょう。
一時的であれば純淡水でも飼育できますが、汽水域に生息するので長期飼育には1/4~1/5海水程度の塩分を添加したほうが調子が良いようです。
本種とよく似た種に「フレッシュウォーター・バンブルビー・フィッシュ」というハゼがいます。こちらは塩分は不要です。
ナイト・ゴビー
学名:Stigmatogobius sadanundio
最大体長:約9cm
東南アジアの汽水域原産のハゼの仲間です。
淡い色彩にスポットを散りばめた体色に青く輝く背ビレのワンポイントと青い目の美しい種です。
特にオス個体では美しい背ビレが伸張し、青く輝くワンポイントが特に際立ちます。
フィンスプレッディングは非常に見ごたえがあります。
飼育は容易です。
1/4~1/5海水程度の汽水を用意すると良いでしょう。
純淡水での長期飼育は難しいです。
エサには非常に貪欲でアカムシなどの生餌を好み、口に入る小さなエビや稚魚との混泳できません。
同種間では若干小競り合いをしますが、大きな問題になることはありません。
淡水ハオコゼ
学名:Neovespicula depressifrons
(Vespicula depressifrons)
最大体長:約10cm
東南アジア、インド洋から大西洋沿岸の汽水域原産のカサゴの仲間です。
「淡水」と名がつき流通しますが、純淡水での長期飼育は難しいとされています。1/4~1/2海水の汽水での飼育が適します。
輸入されてくる個体は幼魚で小さな個体が多く、茶褐色の体色に尖った背ビレと大きな胸ビレ、愛嬌のあるしぐさ動きがかわいらしい種です。
ホバリングしながらゆったりと泳ぎ、大きな瞳でキョロキョロとする姿は見ていて飽きません。
また水槽飼育下では成長が非常に遅いことからかわいい姿のまま飼育が可能なのも魅力の一つです。
飼育はエサと水質に注意が必要で、肉食性が強くアカムシなどの生餌を好みます。
口に入る小さなエビや稚魚との混泳できません。
エサ食いが非常にゆっくりなので、エサが十分に行き渡るように混泳魚には注意が必要です。
同種間では若干小競り合いをしますが、大きな問題になることはありません。
致死性ではありませんが、カサゴの仲間は背ビレに強い毒をもつので、取り扱い時や水槽管理時には注意が必要です。
南米淡水ヒラメ
学名:Citharichthleri uhler
最大体長:約30cm
アマゾン河口域原産の淡水ヒラメの仲間です。
淡水ヒラメや淡水カレイは数種知られ、独特の体型から人気の種です。
淡水と名がつき流通しますが、純淡水での長期飼育は難しいです。
若干で良いので塩分を入れると良いでしょう。
塩分さえクリアしていれば、飼育は容易です。
ヒラメの仲間だけあって、擬態の達人なので体色は地味めです。
しかし、左側についた2つの大きな瞳はとても愛嬌があります。
最大で30cmとやや大型になるので、ペットフィッシュとしての付き合いも楽しめます。
菱形の体、四角い尾ビレ、大きな口も特徴的です。
ヒラメ系の観賞魚の中では動きが活発で、底砂に潜ることも少ないようです。
イッセンヨウジウオ
学名:Microphis leiaspis
最大体長:約20cm
アフリカ東部からオセアニアの沿岸域に広く生息するヨウジウオの仲間です。
本種は国内にも生息することが知られ、南西諸島のほか和歌山県や静岡県など、黒潮の影響を受ける地域でも見られます。
吻部からエラ蓋にかけて見られる1本の黒線が特徴的な種です。
飼育は難しく餌と混泳魚に注意が必要です。
非常にゆったりと泳ぐため他の魚に追い回されたり齧られたりされないように、できれば単独飼育が望ましいでしょう。
本種をはじめとしてヨウジウオの仲間は、基本的に人工飼料をほとんど口にしません。
飼育には沸かしたてのブラインやミジンコなどの微小な生餌を必要とします。水質には広く適応します。
トビハゼ類も汽水魚
魚でありながら水を嫌い、陸地に暮らすことが知られるトビハゼ類も実は汽水魚です。
飼育には若干の塩分が必要です。
トビハゼ類はその生態上、飼育方法があまりに特殊なため、ここでは割愛します。
別の機会に、専用の飼育方法をお届けできればと思います。
海水寄りの汽水魚
ここでは淡水魚としてのルートで入荷のある魚種を主に紹介しました。
川と海はつながっています。
汽水魚の中にも当然、汽水~海水域に適応した、海水寄りの環境を好む種もいます。ヒメツバメウオ(モノダクティルス)はその代表種です。
これらの種は海水魚としてのルートで入荷してくることが多いです。
このページでは淡水魚として入荷のある魚種を、主な対象として紹介します。
海水魚としての入荷が主となる魚種は、ここでは割愛します。
別の機会に、専用の飼育方法をお届けできればと思います。
メダカも汽水魚?
メダカは淡水魚としては異例ともいえるほど、塩分に対する耐性が高いことで知られています。
その適応力は時間をかけて慣れさせれば、海水にも適応できてしまうほどです。
メダカは淡水魚ですが、この性質だけみれば汽水魚として扱うこともできるといえるでしょう。
※メダカを汽水~海水で飼育すると、塩分代謝にエネルギーを使うため、いつもより痩せやすくなります。エサはこまめに与えましょう。
▼メダカについて詳しくはこちら
汽水魚飼育の基本
ここでは「塩分の添加を必須とする」グループの基本的な飼育方法について解説します。
水槽の選択
汽水魚と一口にいってもサイズは大きく異なります。
飼育したい魚種の最大サイズを元に水槽サイズを決めましょう。
目安としては、ほとんどの魚種が飼育できる60cm水槽が最も扱いやすいでしょう。
フィルター、照明が付いたセットなら、より安心して始めることができますね。
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フィルターの選択
汽水魚は全般的に、そこまで水質に敏感ではない種がほとんどです。
生息域の関係上水質の変化が激しいためです。
外掛け式、上部式、外部式なら、どれを選んでも問題ないでしょう。
ただし、ここまで述べた通り、種ごとの性質はばらつきが大きいです。
水流を好む/好まないなど、ベストな判断は種による部分が大きくなります。
飼育を検討している種の自然下での生態を事前に調べておくのが好ましいでしょう。
ちなみに水槽サイズが30cm以下は外掛け式、45cm以上は上部式か外部式がおすすめ。
中型種以上は、60cm以上で上部か外部式フィルターの利用をおすすめします。
水質について
ここでは「塩分の添加が必要な種」を対象に解説します。
「純淡水にも適応できる種」に関しては、塩分の添加は必要ありません。
ここで添加する塩分には「人工海水の素」を使用します。
汽水魚は一般に、1/4~1/2程度の海水が良いとされます。
実際にはどのぐらいの塩分が理想的となるかは、種による部分が大きいです。
河口域でも川に近い環境を好む種は塩分は低いほうが良く、海に近い環境を好む種は塩分は高いほうが良いです。
最適な塩分がわからない場合、1/3海水相当に調整すると多くの汽水魚に汎用的に使えます。
不明な場合は一旦1/3海水を基準としておき、生体の様子を見ながら必要に応じてそれより塩分を減らしたり、増やしたりすると良いでしょう。
汽水の作成方法
人工海水を規定量溶かして淡水で2~4倍に割る方法と、通常の海水を作る際に必要な人工海水の素の使用量を1/2〜1/4に減らして溶かすという2種類の方法があります。
海水を作る場合:1Lあたり35g程度が基準。
汽水(1/4~1/2海水)を作る場合:水1Lあたり人工海水の素6~18g程度が目安。
例
- 1/2海水 比重1.010~1.012
淡水1:海水1 60Lなら30Lの淡水に30Lの海水を混ぜる
または人工海水の素を規定量の1/2で使う
- 1/3海水 比重1.007~1.008
淡水2:海水1 60Lなら40Lの淡水に20L海水を混ぜる
または人工海水の素を規定量の1/3で使う
- 1/4海水 比重1.005~1.006
淡水3:海水1 60Lなら45Lの淡水に15L海水を混ぜる または
人工海水の素を規定量の1/4で使う
汽水魚は基本的に塩分の変化の激しい環境に生息しています。
その性質上、多少塩分に差があっても許容してくれることが多いでしょう。
1.005~1.012の間であれば、多くの種は問題なく飼育できると思われます。
自力での塩分調整が難しいと感じる方は、足し水や水換えに便利な調整済みの汽水が販売されています。こちらを使用すると便利です。
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※「足し水君 汽水」は約1/3海水、「ホロホロボトル用」は約2/3海水 相当の比重となります。
※ヒメツバメウオなど海寄りの環境を好む汽水魚には「ホロホロボトル用」の方が有効です。
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食塩はNG
汽水魚の飼育において、食塩の添加はNGです。
淡水魚の塩水浴に使われる粗塩も向いていません。
理由は、汽水を構成する成分のうち「塩化ナトリウム」しか入っていないからです。
天然の汽水には塩化ナトリウム以外にも、さまざまな微量元素が溶解しています。この水質を再現するには、人工海水を規定量より薄めて溶かすのがベストです。
天然海水での作製は微妙?
天然海水を真水で割ることで汽水を作ることもできます。
しかし、天然海水はサンゴに有用なミネラルが含まれているのが特徴なため、魚の飼育に使う分にはコストパフォーマンスが悪いです。
どうしても人工海水が手に入らない時の、最終手段として覚えておくと良いでしょう。
RO水の使用
海水魚やサンゴの飼育においてはRO水の使用が有効といわれています。
これは、水道水中に含まれる不純物を極限まで取り除き、人工海水の持つ本来の性能を発揮させることができるためです。
しかし、汽水魚の飼育に関して言えば、元々水質の変化が激しい環境に慣れていることが多いです。
このため、RO水の導入までは必要としないことが多いでしょう。
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底床の選択
基本的には大磯などの砂利系底床、または砂が良いでしょう。
サンゴ砂も有効です。ソイルは不向きです。
底床
汽水魚は大抵の環境に適応します。このため底床はさほど選びません。
pHが高い分には問題ありませんが、pHが7.0を切り弱酸性に傾くと調子を崩しやすくなります。
pHを弱酸性に傾ける傾向があるソイルは、汽水魚の水槽には基本的に不向きです。
同じく腐植酸によりpHを低下させる傾向のある流木も、汽水水槽には不向きです。
餌
エサは魚種によって大きく異なります。
淡水魚用のエサか、海水魚用のエサか、どちらを与えるべきか迷うところがあると思います。
また全体的に生餌を好み、餌付けの難易度が高い魚種も多いので、種類ごとにどんな餌を与えるのが最適なのか見極めて選びましょう。
ハゼ系やスズキ系は比較的餌付きやすく、人工飼料を食べてくれることも多いです。
餌付けが面倒に感じるようであればこれらの種から選ぶと良いでしょう。
フグ系は餌付けの際、個体によってはなかなか餌付かないこともあります。
クセがあるので留意しておきましょう。
▼フグ類への餌付けはこちらも参考
混泳
原則、汽水魚は汽水魚同士での混泳となります。
淡水魚や海水魚との混泳は一時的にできたとしても、長期的な維持は難しいことが多いのでおすすめできません。
汽水域にも純淡水にも適応できる一部の種に関しては、お互いに攻撃性が無ければ混泳は成立するでしょう。
ただし、観賞魚として流通する汽水魚は概ねフグやハゼの仲間が多いです。
これらのグループは元々攻撃性が強く、そもそも混泳は得意でないグループです。
絶対にトラブルを避けたければ、単独飼育が無難でしょう。
コケ取り用の貝について
コケ取りとして人気のあるカノコガイの仲間は汽水にも適応します。
むしろ、多くの種が若干の塩分のある環境を好むため、汽水魚のほうが淡水魚よりも相性が良い傾向にあります。
ただし、フグ類は貝を食べてしまいます。
フグとの混泳は避けましょう。
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水草
汽水魚の水槽には基本的に水草を植えることはできません。
観賞用として販売されている水草の多くは耐塩性を持たないため、植えても枯れてしまいます。
水草を背景に汽水魚が泳いでいる写真もありますが、これは見た目が映えるよう、撮影用としてあくまでも一時的に淡水に泳がせているものとなります。
ただし、一部の水草には耐塩性があるものも知られています。
例えば「ホザキノフサモ」「リュウノヒゲモ」「イバラモ」は、徐々に塩分に慣らしていけば、1/3海水くらいまでの塩分では栽培可能です。
海水寄りの水草(海草)としては、「コアマモ」も栽培可能です。
こちらは少なくも1/3海水以上の塩分が必要です。
いずれもやや入手しにくい種ではありますが、汽水水槽で水草を植えたい場合はこれらから選ぶと良いでしょう。
汽水魚の病気
汽水魚は淡水魚と同じ病気にかかることがあります。
白点病、水カビ病、尾腐れ病などにもかかります。
基本的な対処法は、淡水魚の場合と同様です。
▼こちらを参考
汽水魚用語集
汽水魚の飼育において特に使われる主な専門用語をピックアップして紹介します。
汽水・・・淡水と海水が入り混じった水のことです。
海水の濃度に応じて、 1/3海水、1/5海水などと呼ぶこともあります。
種によって要求される濃度はバラバラです。
汽水魚全体では、およそ1/2~1/4くらいに薄めた海水を求める種が多いです。
比重・・・塩分と水の比重です。
1気圧あたり4℃での純粋な水と同体積の物質との重さの比のことです。
淡水の場合は、比重は1.000になります。
海水は1.021~1.024が標準値です。
これは1気圧4℃の水に比べ、約1.02倍重いということになります。
その性質上、水温が変われば比重も変わります。
汽水では1.005~1.012程度の範囲に調節することが多いです。
塩類細胞・・・魚のエラにある、水中に含まれる塩分を吸収または排せつする細胞です。
淡水魚では吸収、海水魚では排せつする機能があります。
基本的にその逆はできません。
しかし、汽水魚の場合は両方の機能を持ち合わせており、環境によって切り替えることができます。
このため、海水より薄い範囲であれば多少塩分が変化しても、状況に応じて切り替えて生き延びることができるのです。
ただし完全な海水、または淡水環境中では負担が大きいため、汽水を好んで生息します。
海産起源魚・・・海水魚を起源に持ち、淡水域に適応進出してきた魚種を指します。
汽水魚は基本的にすべて海産起源魚です。
塩分が全くない環境では一時的に耐えることができても、長期間は暮らせない種、つまり“完全には淡水に適応しきれていないもの”が汽水魚として扱われます。
純淡水にも適応できる種は、淡水魚として扱われることがほとんどです。
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