グッピーの混泳禁止
「外国産グッピーと国産グッピーの混泳はお勧めしません」という注意書きを目にしたことがある人も多いでしょう。あんなに群れで仲良く楽しそうにしているのに、なぜ国内産・外国産という違いだけで一緒の水槽に入れてはいけないのか不思議ではありませんか。群れたがりのグッピーたちですから、生まれの違いでケンカなんてするわけないはず…。そう、混泳禁止の理由はけんかをするからではありません。
実は、「グッピーエイズ」という病気が原因なのです。
グッピーエイズとは
グッピーエイズは感染力が強く、致死性の高いグッピー特有の病気です。発症すると不自然な泳ぎ方をするようになり、いずれ死に至ります。そして、グッピーだけではなく卵胎生メダカであるプラティにも感染することが知られています。
(ウイルス性ではなく、カラムナリス系の細菌性感染症の一つといわれています。)
1990年代にグッピーエイズが大流行しました。それ以降、グッピーエイズに罹患した大抵のグッピーは死んだ一方で、抗体を体内に持って生き残ったグッピーたちはグッピーエイズキャリアとなり、現在でも病気の感染源となっています。
抗体を持っているグッピー同士を鑑賞目的で飼育する分には全く何の問題はありません。抗体を持たないグッピーを水槽に入れなければ、その水槽がたとえグッピーエイズの病原体を持っているグッピーの集いでも平和なグッピーの楽園となるでしょう。
グッピーエイズキャリアという考え方を、飼育者がしっかりと理解しておかないといけないのです。
“carrier”すなわち「運ぶ存在」
さて、キャリアというワードが出てきました。どういう意味でしょうか。
ここでいうキャリアとは、自身の通信回線を持っている携帯電話会社ではありません。
もちろん中央省庁に採用されたエリート国家公務員のことでもないのです。
アクアリウムの情報サイトでキャリアといったら、病気のウイルスには感染しつつも発症はしていない状態にある魚のことを指します。
「無症状病原体保有魚=キャリア」とは、“carrier”すなわち「運ぶ存在」を意味します。
無自覚に病原菌を運び、感染を拡大させてしまう存在なのです。
発症していなければ病原体を保菌しているかはわかりません。そのため、魚が健康そうに見えても実は病気を持ち込む可能性があるということは常に念頭に置いておいた方がいいでしょう。
(エイズキャリアのグッピーを業界用語で「くらってる」なんていうそうです。)
そしてアクアリウム業界で常々「特定の魚同士の組み合わせは絶対行ってはいけない」と言われている理由が、このキャリアの話と密接にかかわっているのです。
国産グッピーと外国産グッピーを混泳させると
一般的に外国産グッピーはグッピーエイズキャリアである可能性が高いといわれています。一方、国産グッピーはグッピーエイズに感染をしておらず、体内に抗体を持っていないことが多数です。そのため、グッピーエイズキャリアの可能性の高い外国産グッピーをいくら念入りに薬浴などのトリートメントを行ったとしても、抗体を持たない集団と混泳をさせるとあっという間に感染が広がり、国産グッピーが全滅に追い込まれてしまいます。
もちろん逆もしかりです。キャリアの国産グッピー集団に、抗体を持たない外国産グッピー集団が合流しても同様のことが起きます。
もっといえば、同じ国産グッピー同士でもブリーダーや仕入れ元により異なる病気のキャリアになっている場合があります。混泳させてしまうと免疫、抗体を持っていない方の品種に病気が感染したりすることがあります。交配などに用いる場合はしっかり様子を見て、入念にトリートメントを済ませた個体同士で行うと良いでしょう。
そういった理由から、国内産×外国産グッピーの混泳、突き詰めていくと異なるブリーダー産同士のグッピーの混泳はお勧めしていないのです。
こんなにある混泳禁止の組み合わせ
以上、グッピーエイズのキャリアと混泳の危険性についてお話ししましたが、注意しなければいけないのは何もグッピーだけではありません。
プラティ × モーリー | グッピーエイズなど |
外国産エンゼルフィッシュ × 国産エンゼルフィッシュ | シクリッドエイズなど |
外国産ディスカス × 国産ディスカス | ディスカスエイズなど |
A養魚場の金魚 × B養魚場の金魚 | 金魚ヘルペスなど |
中国産金魚 × タイ産金魚 × 国産の金魚 | 金魚ヘルペスなど |
A養魚場の鯉 × B養魚場の鯉 | コイヘルペスなど |
このようにたくさんの病気のキャリアの可能性があることを踏まえて、一般的なアクアショップでは、仕入先の違う魚同士は絶対に混ぜないようにしているのです。
病気の蔓延を防ぐために
それでもどうしても混泳をしたい、しなければいけない状況になった場合の対策として、
高濃度オキソリン酸(グリーンFゴールドリキッド)で30分薬浴という方法を採る方もいらっしゃいます。こちらの方法はメーカー推奨ではありませんので、あくまでも個人の判断で行っていただきたいと思います。高濃度薬浴は生体自体にダメージを与えてしまう可能性もあり、基本的にはお勧めしておりません。
もし、どうしても行う場合の手順は以下の通りです。
・水槽の水量を減らす→ 60cmなら水位を10cm程度(18Lくらい) ・その水量に対し、規定量の魚病薬を入れる ・30分程度の短い時間で薬浴する ・薬浴後、全て換水する
用法容量を守った薬浴の場合。グリーンFゴールドリキッドを用い、記載の規定量で1週間程度の薬浴でもいいかもしれません。
まとめ
魚にはまだまだ原因が分からない病気がたくさんあります。
病気の早期発見・早期治療がカギとなります。常に魚の健康状態を把握しておきましょう。
魚病薬なども沢山ありますが、早期発見のための観察こそ一番の病気の予防になることを忘れてはいけません。
・常に観察し、何か異常がないか?疑うこと
・常に観察し、魚の特性や性質を理解すること
・常に観察し、少しの異常も見逃さないこと
これからも気を引き締めて魚たちに接していきたいですよね。
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