カラシンの魅力
カラシンの世界へようこそ。
もしかすると、「テトラ」の名前のほうがなじみ深いかもしれませんね。
「テトラ」はカラシンの中でも、小型種が多く属する一グループを指しています。
おそらく熱帯魚の中でもトップクラスに有名であろう「ネオンテトラ」などが属するのがこのグループ。
人食い魚として有名なあの「ピラニア」もこのカラシンに属します。
カラシンは主に南米大陸に広く生息し、一部はアフリカ大陸にも分布しています。
日本を含むアジア大陸には、この仲間は分布していません。
「カラシン」は非常に広い括りとなるため、小型種と大型種では性質が全く異なります。
ここではネオンテトラをはじめとした「小型カラシン」を中心に解説します。
小型カラシンは色鮮やかで飼育しやすい種が多く、水草水槽のお供として古くから人気です。
はじめて飼育する熱帯魚がこのカラシンの仲間であることも珍しくないでしょう。
他にも、水草レイアウト水槽とも好相性なのがこの小型カラシンです。
カージナルテトラやラミーノーズテトラなどは、レイアウトコンテストに出品されるような水槽に泳がせる魚として、その代表格と言えます。
流通が安定している種類も多く、入手性が良い点もこのグループの魅力です。
一方で、他の入荷に少数混じる形でしか入荷の見られない珍しいカラシン、通称「珍カラ」を集めるといった楽しみ方もあります。
はじめての熱帯魚飼育にもよし。本格的なレイアウトにもよし。
珍種を集めても、よし。
南米の雄大な大自然を彩るカラシンの世界へ。
貴方を誘いましょう。
カラシンとは
カラシンとは、主に南米大陸に幅広く生息する熱帯魚です。
一部、アフリカ大陸に生息するものもいます。
「カラシン」という括りはあまりに幅広く、ネオンテトラをはじめ肉食魚として有名なピラニア、怪魚として有名なタライロンまで含まれます。
多くの種は流線型をしており、群れで中層を泳ぎ回ります。
また、サケやマスの仲間のように「脂ビレ」を持つ点が共通します。
他にも、カラシンの仲間は鋭い歯を持つことも特徴です。
例えばピラニアはその代表で、牙魚とも呼ばれます。
遠目に見ると一見小さくて愛らしい小型カラシンも、正面からズームで顔を見ると意外と強面な顔つきをしています。
顔は強面でも大半の種は温和です。
その鋭い歯でヒレをかじり合うぐらいの小競り合いが見られることがありますが、致命傷に至るほどのケガをさせてしまうことはほぼありません。
「カラシン」という括りではあまりに広すぎるので、観賞魚の世界では主に「小型カラシン」と「中大型カラシン」に大別されます。
このページでは、ネオンテトラやラミーノーズテトラなどの小型カラシンについて解説します。
小型カラシンの多くの種は体長3~5cmと小柄で、温和で飼育しやすく、東南アジアなどで養殖技術が確立されているため流通も多いです。
入手しやすい種類が多い点も、うれしいところですね。
テトラとは
小型カラシンには、「〇〇テトラ」とつく種が数多く存在します。
「テトラの仲間」という表現のほうがしっくりくる方もいるかもしれません。
これは小型カラシンの多くが、かつて「Tetragonopterus」属に分類されていた名残です。
またこのグループの魚は、以前は全てカラシン科にまとめられていました。
現在では研究が進み、さまざまな属に細分化されましたが、アクアリウムにおいてはその名残で〇〇テトラと呼ぶ習慣が残っています。
小型カラシンの魅力
群泳の美しさ
小型カラシンは体長はほとんどの種が3~5cmと小柄で、宝石のように輝きながら群れをなして泳ぎます。
その光景はまさに壮観。ぜひ5匹以上で群れさせてみてください。
水草と相性が良い
小型カラシンは水草水槽との相性が抜群です。
レイアウトコンテストに出品される水槽の多くでこの小型カラシンを群泳させています。
レイアウト水槽に泳がせる魚に迷ったら、カラシンを群れさせましょう!というぐらい、カラシンと水草は相性が良いです。
主な小型カラシン
比較的安定した入荷が見られる人気種をピックアップして紹介します。
ここまで挙げた種は、ほとんどが温和で混泳させやすい種類です。
ネオンテトラ
学名:Paracheirodon innesi
アマゾン川上流域原産のカラシンです。
熱帯魚の代表とも言えるポピュラーな種で、古くから入門魚として愛されています。
東南アジアで大量に養殖されており、美しく、安価で、丈夫で飼育しやすいことからその人気は衰えることを知りません。
バリエーション
ネオンテトラにはいくつかのバリエーションが知られています。
ダイヤモンド・ネオンやニューレッドゴールデン・ネオンはその代表です。
ロングフィン系はまだまだ流通量が少なく高価です。
カージナル・テトラ
学名:Paracheirodon axelrodi
ブラジルのネグロ川、コロンビアのオリノコ川原産のカラシンです。ネオンテトラ同様に熱帯魚の代名詞的存在です。
ネオンテトラによく似ますが、腹部の赤いラインが頭から尾の先まで入る点、一回り大きくなる点が異なります。
バリエーション
バリエーションとしてはアルビノ個体が流通します。
古くから細々と流通していましたが、まとまった数での流通が見られるようになったのは2016年頃からです。
体色が明るくなり、赤いラインがより映えるようになった点がこの品種の特徴です。
グリーン・ネオンテトラ
学名:Paracheirodon simulans
ブラジルのネグロ川、コロンビアのオリノコ川原産のカラシンです。ネオンテトラやカージナルテトラに似ていますが、赤の面積が少なく、頭から尾の先まで青緑のラインが入る点が異なります。
ネオンテトラよりも一回り小さく、見た目は繊細な印象があります。
ロットによって色が違う?
グリーンネオンテトラには赤みの強いタイプと弱いタイプが知られています。
この発色は入荷したロットによって異なり、採集された産地の違いといわれています。
どちらのタイプであっても、飼育方法に特に違いはありません。
▼こちらも参考
グローライトテトラ
学名:Hemigrammus erythrozonus
ガイアナ、エッセクイボ川原産のカラシンです。
ネオンテトラ同様に古くから愛好されてきた人気種で、落ち着いたグレーの体色に入る鮮やかな蛍光オレンジのラインが特徴です。
美しく、安価で、丈夫で飼育しやすく、ネオンテトラ同様に入門種として知られます。
群泳イメージ
バリエーション
バリエーションとしてはアルビノ個体が流通します。
グローライトテトラのアルビノは古くから知られており、流通量も多いです。
グレーの体色が白に置き換わったことで、特徴のオレンジのラインがさらに優しい色合いになっています。
ラミーノーズテトラ
学名:Hemigrammus bleheri
アマゾン川原産のカラシンです。
透明感のある体に真っ赤な鼻先が美しい魚です。
本格派の水草レイアウト水槽ではカージナルテトラに並び人気の高い魚種で、赤く鮮やかな鼻の発色は水草水槽で大変よく映えます。
弱酸性の軟水で飼育することでこの発色はさらに良くなるため、水草育成のバローメーターとしても有用です。
状態が良いと真っ赤に染まります。
群泳イメージ
バリエーション
バリエーションとしてはブリリアントと呼ばれる鱗の輝きが強い個体が流通します。
原種の体色は鼻先以外は落ち着いた色合いをしていますが、こちらは体側もギラギラと輝きます。
ブラックネオン・テトラ
学名:Hyphessobrycon herbertaxelrodi
ブラジル、パラグアイ川原産のカラシンです。
古くから東南アジアで養殖された個体が流通し、安価で丈夫なだけでなくシックな美しさが人気のテトラです。
引き締まった黒に入るゴールドのライン、眼の上の赤い発色はよく目立ちます。飼い込まれた個体では各ヒレがうっすらと黄色味を帯び、入門種といえど侮れない美しさを持っています。
本種だけでも上品な美しさがありますが、ネオンテトラやカージナルテトラのような派手な種と混泳させることで、落ち着いた色彩がお互いの魅力を引き出します。
群泳イメージ
バリエーション
バリエーションとしてはアルビノ個体と、黒を強調したタイプが流通します。
ゴールドのラインは、アルビノになっても健在です。
ブラックファントム・テトラ
学名:Hyphessobrycon megalopterus
ブラジル、パラグアイ川、グァポレ川原産のカラシンです。
体高のあるボディに漆黒の大きな背ビレと尻ビレが魅力的な種で、黒い大きなスポットがうっすらと輝くブルーに縁どられる点も見逃せません。総じてシックな色彩が魅力です。
明るめの水草水槽によく映え、飼育は容易です。
名前に反して性質も温和で、混泳にも向いています。
同種間でヒレを広げ合う、“フィンスプレッディング”という行動をとることが知られており、その光景は小型種ながら見ごたえがあります。
レッドファントム・テトラ
学名:Hyphessobrycon sweglesi
コロンビア、オリノコ川原産のカラシンです。
赤く透明感のある体色と黒の大きなスポットが入る美しい魚で、オスは背ビレと尻ビレが大きくなります。
水草水槽によく映えることから水草レイアウトの広がりとともに人気になった魚です。弱酸性の水質で長期間じっくり飼い込むと、赤い発色が鮮やかになります。
こちらも同種間でフィンスプレッディングすることが知られており、その光景は小型種ながら見ごたえがあります。
バリエーション
本種にはいくつか発色が異なるタイプが知られており、タイプによって背ビレや体側のスポットに差異が見られます。
その中でもコロンビア産のワイルド個体で“ルブラ”と呼ばれるタイプは、赤みが強く人気が高いです。
通常の個体に比べると流通がなく、入荷が少ないのがネックです。
レモンテトラ
学名:Hyphessobrycon pulchripinnis
ブラジル、タパジョス川原産のカラシンです。
古くから親しまれている種で、名前のとおりレモンのように黄色く染まる可愛らしい魚です。
成熟し発情したオスは美しい黄色い体色が現れます。
入手しやすく安価で丈夫であり、入門種としてもオススメです。
多少、水草をかじる性質がある点に留意します。
しかし、それほどひどい食害をするほどでもありません。
硬い葉の水草であれば特に問題になりません。
バリエーション
インパイクティス・ケリー
学名:Inpaichthys kerri
ブラジル、マディラ川上流域原産のカラシンです。
見る角度により異なる色合いを見せる背中のブルーが特徴です。
美しい体色は水草水槽によく映え、レイアウト水槽でも人気の魚です。水温は一般的なテトラ類より少し低めに保つと調子が良いです。
古くから親しまれている魚では「〇〇テトラ」と呼ばれることが多く、本種も「ロイヤル・テトラ」の別名を持ちます。
まぎれもないテトラ類の一種であり、それなりの流通量もあるのですが、なぜか本種に関しては学名表記のまま流通することが一般的です。
テトラ類の中ではやや性質が粗く、他のテトラ類と混泳させると多少の小競り合いを見せることがあります。
しかし、そこまでひどいものではなく、十分に水草が茂っていれば他のテトラとの共存は全く問題ありません。
繁殖が難しいとされるテトラ類の中では、繁殖が最も容易な部類に入ります。
環境が整っている水草水槽では知らぬ間に産卵が行われ、いつの間にか稚魚が泳いでいることもあります。
バリエーション
古くから人気の根強い種であり、いくつかのバリエーションが知られています。
元々美しい青の面積をさらに広げる形で改良した「スーパーブルー」と、逆に明るい発色へと改良した「ゴールドピンク」の2品種があります。
エンペラーテトラ
学名:Nematobrycon palmeri
コロンビア原産のカラシンです。
青いラインと青い目が特徴で、オスの尻ビレはフォーク状に伸長します。
シックで上品な美しさを持つ魚ですが、発情したオスはは体色が鮮やかになり、ヒレの伸長も相まって単独でも見ごたえがあります。
オスはテリトリー意識が強く小競り合いをします。
水草を十分に植え込んでおけば、他のテトラ類との混泳も可能です。
バリエーション
黒さを強くする方向と、白さを強くする方向、正反対の方向で改良が進められた2品種があります。
プリステラ
学名:Pristella maxillaris
ガイアナからブラジル、アマゾン川下流域まで広く生息するカラシンです。
古くから小型カラシンの入門魚として親しまれ、清涼感のあるグレーの体色をベースに、ワンポイントで黄、黒、白の模様が入ります。赤く染まる尾ビレも特徴的な種です。
じっくり状態良く飼い込むと、黄色や赤の発色が鮮やかになり、見ごたえが増します。
バリエーション
プリステラにはいくつかのバリエーションが知られています。
体色以外にも体形のバリエーションもあり、「バルーンタイプ」も流通します。
シルバーチップ・テトラ
学名:Hasemania nana
ブラジル南東部原産のカラシンです。
ハセマニアの名で古くから知られ、白銀に染まる各ヒレの先端のチップと飴色の体色が特徴です。
水草水槽ではきびきびと動き、このヒレのチップはよく目立ちます。
カラシンの仲間にしては珍しく、脂ビレがないのもポイントです。
群泳イメージ
ファイアー・テトラ
学名:Hyphessobrycon amandae
ブラジル、アラグアイア川原産の小型のカラシンです。
カラシンの中でも特に小型で、赤一色のシンプルな体色を持ちます。
緑との対比が美しく、どんな水草レイアウトにマッチします。
このため、ぜひレイアウト水槽で群泳させたい魚です。
飼育自体は容易ですが、発色を鮮やかに引き出すためには弱酸性の軟水で長期間飼い込むことが欠かせません。
じっくり飼い込みましょう。
群泳イメージ
ゴールデン・テトラ
学名:Hemigrammus rodwayi
ガイアナ、スリナム、フレンチギアナ原産のカラシンです。
体の輝きは体表面に付着しているバクテリアによるものといわれ、魚本来の発色ではありません。
成長の過程で剥がれ、本来の体色に戻ってしまうこともあります。
また、「ゴールデンテトラ」として流通する魚には主に2種類存在し、こちらは“ロドウェイ”と呼ばれるタイプになります。
飼育は容易で丈夫ですが、魚病薬を使用すると体表のバクテリアが死滅してしまう点に留意します。
結果、光沢のある体色が剥がれてしまうことがあります。
ゴールデンテトラは2種いる?
学名:Hemigrammus armstrongi
もう1種のゴールデンテトラが“ブルーライン”と呼ばれるタイプです。
アームストロンギ種とも呼ばれ、ロドウェイ種とは全くの別種です。
体の輝きはロドウェイ種同様で、こちらも魚本来の発色ではありません。
こちらはより銀に近い発色を見せ、体側にブルーからオレンジのラインが入ります。こちらのタイプのほうが、ゴールデンの発色が長持ちしやすいといわれています。
グリーンファイアー・テトラ
学名:Aphyocharax rathbuni
パラグアイ水系原産の小型のカラシンです。
ネオンテトラの背のブルーを深みのあるグリーンに置き換えたような体色をしており、オス個体では各ヒレに入る白いチップがワンポイントになります。
温和で混泳にも向きますが、同種間では若干の小競り合いが見られる点に留意します。
状態を上げるには、弱酸性の軟水でじっくり飼育すると良いでしょう。
グラスブラッドフィン
学名:Prionobrama filigere
マディラ川原産のカラシンです。
シャープな体形に透明な体と赤い尾ビレの対比が特徴的な種で、オスでは尻ビレの先が白くなります。
清涼感と派手さを併せ持ち、水草水槽に群泳させると鮮やかな赤い尾が目を惹きます。
頭が赤く染まるラミノーズテトラとは前後が対比する色彩とも言え、混泳させても面白いでしょう。
ダイヤモンド・テトラ
学名:Monkhausia pittieri
ベネズエラ原産のカラシンです。
名前のとおりダイヤモンドのような輝きを放つ美しい種です。
オスは成長とともに各ヒレが伸張し、優雅な雰囲気へと成長します。
また、多少小競り合いが見られることがあります。
しかし、大きなトラブルにまで発展することは少ないです。
草食性の強いモンクホーシャの近縁種であるため、本種も水草を多少かじる性質があります。
大き目の水槽でじっくり飼育すると良いでしょう。
群泳イメージ
ロージー・テトラ
学名:Prionobrama filigere
ブラジル、エッセクイボ川原産のカラシンです。
古くから美魚としてポピュラーな種で、ロージーの名の通りバラ色(赤)に染まるテトラです。
体高のあるひし形の体形を持ち、特にオスは背ビレと尻ビレが伸長します。
単独でも非常に優雅で美しい姿を見せてくれます。
鮮やかな赤い発色は水草レイアウト水槽に大変よく似合います。
ホワイトフィン・ロージー・テトラ
学名:Hyphessobrycon sp.
Hyphessobrycon bentosi?
アマゾン川原産のカラシンです。
ロージー・テトラによく似た体形をしていますが、本種は背ビレ、腹ビレ、尻ビレの先端が白く水槽内でもよく目立ちます。
体色もやや淡く、赤というよりはピンクに近い発色を示します。
安定してブリード個体の流通も見られる人気種ですが、正確な分布等には不明な点も多く、学名も決まっていません。
こちらも水草レイアウト水槽に大変よく似合います。
淡い色彩が特徴なので、ロージー・テトラに比べ陰性系のレイアウトによりマッチするかもしれません。
フレーム・テトラ
学名:Hyphessobrycon flammeus
アマゾン原産のカラシンです。
体の後半部が燃え上がる炎のように赤く染まる、ポピュラーな小型のカラシンです。
本種は状態により発色が変わり、導入したてではくすんだ赤をしていますが、環境になじんでくると鮮やかな赤い発色を示します。
さらに環境が整い、ベストコンディションまで仕上がると、頭部が青みを帯びた輝きを増してきます。
高温になると青くなる炎同様、まさに“フレーム”の名はふさわしいと言えるでしょう。
水草水槽に大変よく似合う魚です。
ブラインド・ケープカラシン
学名:Astyanax jordani
メキシコ洞窟内に生息する中型のカラシンです。
他のテトラ類よりやや大きく、最大で10cm程度に成長します。
本来は洞窟に生息する種で、洞窟生活で必要のない眼や体色が退化していった結果、このようなユニークな見た目になりました。
ややホラーな印象もあるかもしれません。
嗅覚や側線が発達しているらしく、目が見えなくても餌を食べる分には全く困らないようです。
体色もまるでアルビノ系品種のような淡いピンクの発色をしています。成長とともに細かく半透明な鱗が輝きはじめ、独特の魅力を持った魚です。
非常にユニークな生態を持ちますが、飼育に関しては見た目の割に他のテトラ類と大差ありません。
昼夜問わずあまり活発に泳ぎ回ることは少なく、大人しい印象を受けますが、テトラ類にしては少々気が荒めとなる点に留意します。
同種間ではテリトリー争いをするため、群泳させるなら匹数を多く導入する必要があります。
他種との混泳は若干の小競り合いはするものの、サイズが差が著しくなければほとんど問題になりません。
ジェリービーン・テトラ
学名:Ladigesia roloffi
シェラレオネ、西アフリカ原産のカラシンです。
背ビレと尾ビレがオレンジに色づき、やや細身なボディのネオングリーンとのコントラストが非常に美しい種です。
アフリカ産カラシンの中でもサイズが小型で性質も温和、水草水槽に向いています。
群泳させたときには誰もが魅了される美しさを持つ魚です。
飼育に関してはややデリケートで、導入時は水換えを丁寧に行って硝酸塩濃度を低く保つと結果が良いでしょう。
一度落ち着けば丈夫で、弱酸性でじっくり飼い込むことで発色が良くなります。
群泳イメージ
コンゴ・テトラ
学名:Phenacogrammus interruptus
西アフリカ、コンゴ川原産のカラシンです。
古くからアフリカン産の代表種として愛され、メタリックグリーンからイエローの体色と伸長するヒレがゴージャスで美しい種です。
10cm以上とやや大型に育つため、90cm以上の水槽で群泳させることで本種の魅力が最大限に発揮されます。
柔らかい水草はかじられる傾向があるので、ミクロソリウム等の硬い水草でレイアウトするとよいでしょう。
群泳イメージ
ちょっと注意が必要な小型カラシン
ここから先で紹介する魚は、飼育にちょっと注意が必要な種類です。
ここまで紹介した種類に比べ少々気が強く、混泳の際は配慮が必要です。
例えば水草を多く植えたり、流木や石などを複雑に組み上げて隠れ家を増やすことで解消できます。
ブルーテトラ
学名:Boehlkea fredcochui
ペルー原産のカラシンです。
青い体色が一際よく目立ち、背ビレと尾ビレに見られる白い発色が良いアクセントになっています。
ネオンテトラとはまた異なる青の発色で、涼しげな印象の美しい種類です。
しかしその一方で、テトラ類としては例外的に気が強い点に留意が必要です。
水槽内では活発に泳いで他魚を追い回すことが多く、混泳に気を使う必要があります。
テリトリー意識が強く、気の荒いところがあるので、混泳させる場合は対策が必要です。
水草を多く植えたり、流木や石、シェルターなどで複雑に隠れ家を組むと攻撃性を緩和できます。
モンクホーシャ
学名:Moenkhausia sanctaefilomenae
ブラジル、パラグアイ川、ウルグアイ川原産のカラシンです。
やや緑がかったグレーの体色に赤い目を持ち、体高のある独特の体型が魅力的です。
尾ビレ付け根のブラックスポットがシックな印象を持ちます。
スポットの周辺は淡い黄色に縁どられます。
丈夫で飼育が容易なことから古くから親しまれて来た種で、モンクホーシャ属を代表する種として、属名が流通名になっています。
モンクホーシャ(Moenkhausia)属の魚は飼育は容易ですが、やや気が荒いので混泳の際は注意が必要です。
流通量の多い種としては草食性が強く、水草の新芽をかじってしまいがちな点に注意が必要です。
アヌビアスやミクロソリウムなどの、葉の硬い水草を中心に採用することで、かじられにくくなります。
ブラックテトラ
学名:Gymnocorymbus ternetzi
アルゼンチン、パラグアイ、グァポレ川原産のカラシンです。
古くから知られるポピュラーな熱帯魚で、全身が黒く染まり、体高のある独特の形状はテトラにしては珍しい体形を持ちます。
最終的にはほぼシルバーの発色へと変化します。
小さいうちは温和ですが、成長に従い気が荒くなる点に注意します。
大きくなると他種に対しても攻撃的になるため、あまり混泳には適しません。小型種同士での混泳よりは、本種より大きい種との混泳に向いています。飼育自体は容易です。
バリエーション
ブラックテトラの白変個体に、人工的に着色が施されたものです。
白変個体そのままで販売されることはあまりありません。
人工的な着色による発色なので、成長とともに抜けていき、最終的には真っ白になります。
海外では人気のようです。
ペンギンテトラ
学名:Thayeria boehlkei
ブラジル、アラグアイア川原産のカラシンです。
体側中央から尾ビレの下葉に入る黒のラインと、やや頭を上に向けてピョコピョコと泳ぐ姿が特徴的で、その泳ぎ方と容姿から“ペンギン”に例えられます。
愛嬌がある上に飼育しやすく人気ですが、成長とともに気の荒い部分を見せるため注意が必要です。
バリエーション
ペンギンテトラを丸い体形に改良した、いわゆる「バルーン」と呼ばれるタイプの品種です。
スマートな見た目が一転、ころころと愛らしい体形になりました。
愛らしい体形にペンギンテトラ独特のぴょこぴょことした動きが相まって大変かわいらしい印象になっています。
また、原種に比べて泳ぎが得意でなく機動性に欠けるため、混泳に関しても原種よりはいくらか緩和されています。
カラシンのグループについて
アクアリウムにおいて流通する小型カラシンといえばテトラ類が大半を占めますが、それ以外にもいくつかのグループが知られています。
テトラ類のなかでも、その中でいくつか細分化できます。
小型カラシン飼育の基本
小型カラシンの飼育は、熱帯魚飼育において基本中の基本と言えます。
したがって観賞魚飼育用として販売されている製品の多くで、テトラ類の飼育は可能と言えます。
すべての熱帯魚に応用が利く基本が、小型カラシンの飼育には詰まっています。
水槽の選択
特に選びません。
フィルターが設置できるものであれば、どのサイズでもOKです。
フィルター、照明が付いたセットなら、より安心して始めることができますね。
飼育可能数は、2Lあたり1匹が目安です。
例えば30cmキューブ水槽なら12匹程度、60cm水槽なら30匹程度が目安となります。
フィルターの選択
飼育するだけなら特に選びません。
どのフィルターでも飼育可能です。
メンテナンス性と長期的な維持管理を視野に入れると、小型水槽では「外掛け式フィルター」、60cm以上の水槽では「上部式フィルター」「外部式フィルター」がオススメです。
水質について
小型カラシンの仲間、とりわけテトラ類は基本的に、水質についてはさほど気にしなくても問題ありません。
どちらかと言えば弱酸性を好みますが、多少弱アルカリ性に傾いても平気です。
従って、フィルターに初期付属のろ材をそのまま利用すればOKなことがほとんどです。
ラミーノーズテトラ、レッドファントムテトラ、ファイアーテトラ、フレームテトラなど、一部の赤い発色が特徴的な種で発色に水質が関わります。
より鮮やかな発色に仕上げたい場合には、底床にソイルを採用したり、水質を弱酸性に傾けるろ材を採用したりすると良いでしょう。
パワーハウス ソフトタイプ がろ材の中では代表的です。
底床の選択
サンゴ砂以外であれば、どの底床も使用できます。
弱酸性の軟水に傾けるソイルが最も相性に優れます。
大磯砂はアルカリに傾ける性質があるとはいえ、強く傾けるわけではないので問題なく使用できます。
砂利系、ゼオライトなどの底床を用いても問題ありません。
NGアイテム
サンゴ砂などの「水質をアルカリに傾ける作用が強い底床」のみ、不向きです。
大磯砂程度であれば問題ないものの、サンゴ砂などのカルシウム分を多く含む底床は、適応範囲の広いテトラでも流石に苦しくなってきます。
餌
顆粒またはフレークの人工飼料が良いでしょう。
どちらを与えてもよく食べます。
多くの種は餌付けに苦労せず、人工飼料を与えればすんなり食べてくれる個体がほとんどです。
どうしても食べてくれない場合には、冷凍赤虫が有効です。
混泳
基本的には温和なため、混泳に向いています。
一部、攻撃性が強い種もいるため、組み合わせには注意しましょう。
もし小競り合いが発生しても、水草を多く植えたり、流木や石などを複雑に組んで隠れ家を増やすと、解消されやすくなります。
小型カラシンの繁殖
飼育難易度とはうって変わり、繁殖に関しては難易度が高い種が多いです。
繁殖方法・生態が未解明となる種も少なくありません。
また、流通量の多い種であっても雌雄判別が難しい種も多いです。
「カラシンフック」の有無で見分けられるといいますが、未成熟個体では判別が困難です。
産卵させるまでの手順
- 熱帯魚飼育の基本的な飼育設備を整えます。
底床や水草の上にばらまくタイプの産卵形態をとるため、前景草やウィローモスなどをよく茂らせておきましょう。この茂みに向かってばらまかれたものが、生存率が高いです。
繁殖を主目的とするならば、フィルターにはスポンジフィルターを採用すると良いです。 - テトラ類は基本的に群れで飼育するので、5匹以上で飼育していれば大抵の場合オスメス混じっていると思います。
テトラ類の雌雄判別は難しい種が多いですが、インパイクティス・ケリーの場合は容易です。
脂ビレが青いものがオス、オレンジのものがメスです。 - 1日2回以上、多めにエサを与えます。
人工飼料でも構いませんが、冷凍赤虫を与えると良いでしょう。 - 十分に成熟したメスはふっくらとした体型になってきます。
- 弱酸性の軟水環境を維持しつつ、週に1回程度の定期的な水換えを行い、水質の維持に務めましょう。
- この状態をしばらく維持すると、うまく行けばいつの間にか産卵が行われます。
産卵後の育成
ばらまき型産卵のため、卵を水槽内で発見することは困難です。
多くの場合、稚魚になってから発見されることがほとんどでしょう。
そのまま水槽内で育つこともありますが、稚魚の生存率を上げるためにはふ化したら回収して親とは隔離すると良いです。
ふ化した稚魚にはブラインシュリンプの卵をふ化させて、幼生を与えます。
「珍カラ」という楽しみ方
このページで紹介した魚は入荷の多い主な種を中心としていますが、カラシンの仲間には多種多様な種類が居ます。その数、数百種は軽く超えるでしょう。
単独でまとまった入荷が見られることがほとんどなく、他種の入荷の際に混ざって少数入ってくる……。こういった種を、マニアの間では珍しいカラシン、略して「珍カラ」と呼ばれます。
テトラ類は飼育は容易で初心者向けのイメージが強いグループですが、珍カラとなると話は別。
大変奥深い世界です。
店頭でテトラや南米産の魚の水槽をのぞき込んでは、ラベルに書いてあるどの魚種でもない魚を追いかけ、そのまま「なんだかよく分からない謎のテトラ」を(運が良ければ混じり元の魚の値段で)お買い上げ。
そのあと海外の情報まで読み漁って同定して、一喜一憂してみたり。
通称、「混じり抜き」と言われる行為ですが、このカテゴリを好む人々の楽しみ方の一つです。(通信販売だとできないのがネック)
ハイフェソブリコン・エピカリスやトゥッカーノ・テトラなど、一部の種では少ないながら単独の輸入も見られます。これらの種も、珍カラの範囲に入ります。
「珍カラ」はその性質上、輸入のタイミングが読めません。
したがって基本的にいつやってくるかは分かりません。
見かけた時が、買い時です。
ほとんどはテトラ類なので、基本的に温和で混泳させやすい点は嬉しいところです。それはそれとして、珍カラにハマると結局水槽は増えます。
まだまだたくさんいます。
小型カラシン用語集
混じり抜き・・・ショップに入荷した南米産の魚の中に、たまに混じって入荷する謎のカラシンを選り抜く行為です。珍カラはまとまった数で入荷することが少ないため、この手段での入手が基本となります。
チャームでは入荷時に確認できた個体は選別しており、同定できたものは個別で販売することもあります。
フィンスプレッティング・・・ヒレを大きく広げて相手を威嚇する行為です。ブラックファントムテトラ、ロージーテトラなどの、ハイフェソブリコン属のカラシンでよく見られます。
プラチナ・・・全身がギラギラと輝く変異個体です。
発光バクテリアの寄生によるものといわれていますが、メカニズムなど詳細は不明です。
ワイルド個体の中に稀に発見されることがあり、非常に高値が付く傾向があります。
魚病薬を使用すると剥がれてしまい、通常の個体に戻ってしまうことがある点に留意します。
ここまで紹介したカラシンたちは、チャームで販売しています。
(※入荷状況によっては取り扱っていないこともあります。)
ぜひ魅力的なカラシンに興味を持って、その飼育を始めてみましょう!
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