チョウセンブナ<熱帯魚解説>

グラミー・アナバス
グラミー・アナバスその他水生生物種類解説(熱帯魚)

どうも、ほにゃらら sp.です。

今回紹介するのはチョウセンブナ。
「フナ」とつきますがフナとは全くの遠縁で、どちらかといえばベタやグラミー類に近縁です。
その中でもアナバスの一種であるパラダイスフィッシュに近縁な仲間です。

全体的に気性が強めとなるアナバス類としては比較的温厚な部類に入ります。
丈夫で飼育もしやすい魚です。

またアナバスとしては珍しく低水温への耐性があり、暖かい室内であればヒーターなしで飼育することも可能です。

かなり古い時代から外来種として日本に定着している種でもあることから、熱帯魚としてよりは日本産淡水魚として認識している方も多いかもしれません。

チョウセンブナとは

生物学的情報
名前チョウセンブナ
学名Macropodus ocellatus
Macropodus chinensis
別名ジシンブナ
分類スズキ目キノボリウオ科
食性雑食
繁殖生態泡巣
(バブルネストビルダー)
分布中国、朝鮮半島
飼育要件
飼育しやすさ★★★★★
とても容易
入手しやすさ★★★☆☆
ふつう
混泳しやすさ★★☆☆☆
混泳不向き
最大体長7cm程度
適正水温10~28℃
pH生存可能:5.5~8.0
適正範囲:6.0~7.0
※あまり気にしなくてOK
備考低水温への耐性があります。
外来種として日本に帰化しています。

中国、朝鮮半島原産のアナバスの仲間です。

普段は褐色の地味な体色をしていますが、オスは成熟するとラウンドテールの尾ビレが赤くなります。
仕上がった個体のメタリックブルーの背ビレと尻ビレが美しく、普段の色彩からは想像もつかないような、非常に見ごたえのある姿へと変貌します。

沖縄に生息するタイワンキンギョとは同属であり、よく似た外見を持ちます。
本種は尾ビレがラウンドテールになる点で容易に判別可能です。

繁殖に関しては泡巣を作るタイプです。
一般的なベタやグラミー同様の繁殖生態を持っています。

パラダイスフィッシュをより飼いやすくしたようなイメージの魚で、より低温に強く、発色もさせやすいです。
また原種系アナバスとしては最も流通量が多く、比較的安価で入手しやすい点も嬉しいところです。

飼育は大変容易です。
アナバス類としては珍しく低水温に強いという特性があり、約10℃までは問題なく耐えられます。
暖かい室内であれば、冬季も無加温で飼育可能です。


チョウセンブナに似た魚

パラダイスフィッシュ(タイワンキンギョ)

中国福建省以南から東南アジア原産のアナバスの仲間です。
成熟したオスの個体は尾鰭が赤く染まり、体側も赤と青の美しいストライプ模様を表現します。
尾ヒレの両端が伸長する、「ライヤーテール」の形状も相まって、非常に見応えのある姿になります。
このような特徴を持つグループを、「パラダイスフィッシュ」系と総称します。

別名“タイワンキンギョ”と呼ばれることもありますが、分類上は金魚とは全く無縁の魚になります。
グラミーではないので、腹ビレは伸長しません。

本種は国内でも沖縄県に分布が知られています。
ルーツについては在来とする説と外来とする説がありますが、いまのところどちらなのかははっきりしていません。
低水温にも強いため、暖かい室内などであれば冬季も無加温での飼育が可能です。
飼育自体は大変容易です。

アルビノパラダイス・フィッシュ

パラダイスフィッシュにはいくつかの改良品種が知られています。
このうちアルビノタイプは最も見かけることが多い品種です。

原種の赤と青の発色を残しつつ、地肌が白くなるので繊細な印象の美しさへと変化しています。

見た目は繊細ですがその性質は強健で、低水温にも強く飼育は容易です。

チョウセンブナとの比較
パラダイスフィッシュ
  1. 尾ビレの両端が伸長する(中央がへこむ)
    この形状をライヤーテールといいます。
チョウセンブナ
  1. 尾ビレは丸くうちわ状
    この形状をラウンドテールといいます。

チョウセンブナとパラダイスフィッシュはお互いに体形はそっくりです。
しかし、尾ビレの形状が明瞭に異なります。

比較すれば一発で見分けられるでしょう。


有用なアイテム

おすすめの組み合わせは次の通りです。

水槽フィルター底床
30~90cm投げ込み、外掛け、上部、外部ソイル、大磯砂、砂利、砂、セラミック顆粒、フレーク

30cm水槽以下であれば投げ込み式または外掛け式、それ以上のサイズの場合は上部式か外部式がおすすめです。

基本的にはグラミー類に準じますが、より強い水流を嫌います。
水質に関しては非常に寛容で水の汚れにも強く、中性付近であればさほど選ばないようです。

サンゴ砂以外であれば、何でも使えます。
ソイルが最もおすすめです。極端に硬度を上げるタイプの底床は好みません。

フレークまたは顆粒がおすすめです。
基本的には選好みせず、よく食べる個体が多いです。

チョウセンブナの飼育に関しては、グラミー類の一般的な飼育方法で十分対応できます。

基本的にはグラミーに準じた性質を持ちますが、グラミーよりも条件の要求が若干緩めです。
初心者の方でも飼育しやすい魚です。

グラミー全般に共通する基本的な性質については、グラミー・アナバス共通ページをご覧ください。


混泳について

チョウセンブナの混泳に関してはやや不向きといえます。
同種同士ではケンカをするので十分な隠れ家が必要です。

口に入るサイズは捕食されたり、ヒレを齧られたりする可能性があるので、混泳させる場合は本種と同じくらいの大きさの魚が良いでしょう。

外来種としての歴史は古く、大正時代から定着していることが知られています。
このため日本産淡水魚として扱う方もいます。

低水温に耐性があることから、日本産淡水魚との混泳にも向いています。
むしろ熱帯魚よりも日本産淡水魚との組み合わせを楽しむ人の方が多いかもしれません。

サイズが同程度のタナゴやモロコ、ドジョウなどとは問題なく混泳できます。
サイズ差があるとチョウセンブナが攻撃しやすくなるので注意しましょう。

混泳相手混泳相性備考
グッピー
動きが緩慢でヒレが長いので、チョウセンブナにちょっかいを出される可能性はあります。
プラティ・卵胎生メダカ
チョウセンブナが弱酸性を好むのに対し、卵胎生メダカの多くが弱アルカリ性を好む点は多少配慮します。
サイズ差があるとチョウセンブナにちょっかいを出される可能性があります。
カラシン・小型テトラ
ヒレをかじらない種であれば問題ありません。
チョウセンブナに攻撃される可能性もありますが、回避できることが多いでしょう。
コイ・ラスボラ
ヒレをかじらない種であれば問題ありません。
チョウセンブナに攻撃される可能性もありますが、回避できることが多いでしょう。
ローチ・ボーシャ・タニノボリ
ボーシャ系以外は問題のない組み合わせです。
ボーシャ系はチョウセンブナとの力関係に注意しましょう。
フライングフォックス/アルジイーター
幼魚は問題ありません。
成魚になると気性が荒くなるので、チョウセンブナを襲う場合は隔離しましょう。
ドワーフシクリッド
×お互いに攻撃性があるので混泳は難しいと考えたほうが良いでしょう。
アフリカンシクリッド
×攻撃性を示すため、混泳は不可能と考えたほうが良いでしょう。
エンゼルフィッシュ
×お互いに攻撃性があるので混泳は難しいと考えたほうが良いでしょう。
ディスカス
ディスカスがヒレをかじってしまう可能性があります。
あまりおすすめできない組み合わせです。
ベタ・グラミー・アナバス
×ベタとは混泳できません。体形が似た魚種に激しく攻撃します。
グラミー類も体形が似ているので避けたほうが良いでしょう。
コリドラス
お互いに干渉しないため、基本的に安心して混泳できます。
オトシンクルス・ロリカリア
お互いに干渉しないため、基本的に安心して混泳できます。
プレコ
×チョウセンブナが止水を強く好むのに対し、プレコは溶存酸素が多く流れのある環境を好みます。
また体が平べったく動きが緩慢なチョウセンブナの体表を舐めてしまう可能性があるので、混泳はおすすめできません。
レインボーフィッシュ
動きが緩慢でヒレが長いので、チョウセンブナにちょっかいを出される可能性はあります。
ハゼ・ゴビー
チョウセンブナのヒレをかじってしまう可能性が高く、混泳はあまりおすすめできません。
フグ・パファー
×攻撃性を示すため、混泳は不可能と考えたほうが良いでしょう。
エビ・ビーシュリンプ
エビ類はチョウセンブナに捕食されてしまう可能性があります。
口に入らないサイズであれば混泳可能です。

原種系アナバス類としてみれば比較的温和な部類に入りますが、それでもチョウセンブナの攻撃性は若干強めといえるでしょう。

チョウセンブナの攻撃対象にならない同程度のサイズの魚や、動きが機敏でヒレが短く、チョウセンブナの攻撃をかわせる魚と相性が良いです。

グラミー同様、チョウセンブナは数が多いとトラブルに発展することがあります。
60cm水槽の場合、多くても3~4匹程度にとどめたほうが良いでしょう。

▼こちらも参考


外来種としてのチョウセンブナ

チョウセンブナは国内の一部地域に、外来種としての定着例が知られています。
元々低水温への耐性があり、水質の汚れや変化にも強いことから、野外に放たれた場合定着リスクの高い種です。

なお本種は攻撃性・侵略性がさほど強くないようで、今のところ移入が知られる地域でも著しい悪影響は見られないようです。
むしろ、各地の移入先ではどちらかといえば消滅状態に近い状況にあるようです。

しかし、既に定着事例が存在する以上は定着リスクの高い魚種ということになります。
飼育している個体は絶対に野外に放流しないでください。

大陸原産の魚は注意して管理しよう

本種の他にも中国、朝鮮半島原産など日本と気候が似た地域出身の魚は、低水温への耐性があるため万が一野外に逸出すると外来種として定着してしまうリスクが他の魚種に比べ高めです。

チョウセンブナ
リノゴビウス・ウイ
(ホンコンゴビー)
火山タナゴ
コウライオヤニラミ

これらの魚種は日本産淡水魚に近しくも微妙な差異が見られという点で、大変味わい深い魅力がありニッチな人気のある魚たちでもあります。

一般的に問題視されやすい捕食-被食の関係だけでなく、近縁種が分布する地域に逸出した場合、交雑のリスクも起こり得ます。
大陸原産の淡水魚はむしろ交雑に関する問題が、他の外来種よりも強く問題視されています。

したがって魅力的な魚種ではありますが、取扱いには背景にある事情をよく理解した上で、センシティブになるべきです。

全ての魚種に言えることですが、一度飼育を始めたら絶対に野外へ放流することが無いよう終生飼育に努めなければなりません。
大陸系の魚種は、その責任がさらに一段階重いと考えてください。

逸出のない飼育ができさえすれば、これらはヒーターが無くても飼育でき、日本産淡水魚に近しくも異なる魅力を見せてくれる素晴らしい観賞魚です。

万が一これらの魚種が野外での定着事例が数多く認められるような状況になってしまうと、飼育禁止、輸入禁止になってしまっても全く不思議ではありません。

飼育している個体は絶対に野外に放流しないでください。


チョウセンブナ まとめ

チョウセンブナ。

日本にも外来種としての分布が知られている、原種系アナバス類の一種です。

大正時代から移入されていることが知られており、低水温への耐性が強いため日本産淡水魚の一種として扱われることも多いでしょう。

観賞魚としてみた場合、比較的飼育が容易でありながら、仕上げる美しさを楽しめる魚種です。
加えて、ヒーターが無くとも飼育可能という点は魅力に感じるかもしれません。

外来種としての侵略性は強いとはいえず、どちらかといえば消滅状態に近くはあるようです。
しかし国内への定着事例が知られている以上は、その取扱いはセンシティブになるべきです。

本種特有の味わい深い美しさを堪能しつつ、背景にある問題について考えを巡らせてみるきっかけにも良いかもしれませんね。

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投稿者
ほにゃらら sp.

福島県産のワイルド個体。
ロカリティの詳細は残念ながら記録がない模様。
アクアリウム歴はだいたい20年くらい。
「同属内で多様なバリエーション」が好き。若干コレクター気味。
つまりコリドラスや、ミクロソリウムが最高。ということですね。

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