どうも、ほにゃらら sp.です。
今回ご紹介するのはダトニオ・プラスワン。
インドネシアのボルネオ島原産のスズキ目の淡水魚です。
黄色の体色に、目のバンドから数えて8本の黒いバンドがくっきりと入り、ギザギザした背ビレが迫力に満ちています。
体高があることでよく目立ち、縞々のバンド模様は観賞価値が高く人気の魚種です。
大型魚水槽の混泳相手としても人気です。
ダトニオ・プラスワンとは
生物学的情報 | |
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名前 | ダトニオ・プラスワン |
学名 | Datnioides microlepis Coius microlepis |
別名 | ボルネオタイガー カプアスタイガー スマトラタイガー |
分類 | スズキ目ダトニオイデス科 |
食性 | 肉食 |
分布 | インドネシア - ボルネオ島、スマトラ島、バンカ島 |
飼育要件 | |
---|---|
飼育しやすさ | ★★★★☆ 容易 |
入手しやすさ | ★★★★★ よく見かける |
混泳しやすさ | ★★★☆☆ ふつう |
最大体長 | 60cm程度 |
適正水温 | 22~26℃ |
pH | 生存可能:6.0~8.0 適正範囲:6.5~7.5 |
備考 | pHが低い状態が長く続くと状態を崩しやすいので注意 |
本種はボルネオ島、スマトラ島、バンカ島といったインドネシアの島々に分布するダトニオイデスの一種です。
このグループは略してダトニオと呼ばれます。
虎のような特徴的な縞模様から、このグループは「タイガーフィッシュ」と括られることもあります。
ダトニオイデスの仲間は複数種知られていますが、その中でも最もポピュラーで入手しやすいものがこの「プラスワン」です。
本種が「プラスワン」と呼ばれるのは、「本ダトニオ」と呼ばれる別種の存在によります。
タイ、カンボジア原産のシャムタイガー、カンボジアタイガー(pulcher種)が本ダトニオと呼ばれており、それに比べ本種はバンドが一本多い8本が入るため、プラスワンと呼ばれています。
「プラスワン」は、尾筒の2本の細いバンドがしっかりと崩れずに表現されるのが特徴です。
なお、本種と比較される「本ダトニオ」は入荷が極めて少ないです。
サイズが同程度であればアロワナやポリプテルスとの混泳が可能なので、大型魚水槽での良き混泳相手として、古くから根強い人気があります。
いろいろなダトニオイデス
ダトニオイデスの仲間はプラスワンの他に4種知られています。
本ダトニオと呼ばれるpulcher種は最も入荷が少なく、最高級とされています。
プラスワン以外も入荷は不定期で少なめです。
欲しい種がいる場合、頻繁に通って探す形となるでしょう。
プラスワンだけは比較的安定した流通が見られるので、入手しやすさから人気が集中しています。
本ダトニオ(シャム・タイガー/カンボジア・タイガー)
学名:Datnioides pulcher
タイ、カンボジア、ベトナムに分布する、ダトニオイデスの仲間で最も珍重される種です。
目のバンドから数えると7本のバンドが特徴です。
厳密には希少性が高いとされるタイ産の「シャム・タイガー」を本ダトニオと呼ぶことが多いです。
ただしタイ産の個体に関しては、現在は入手が困難です。
入手できるとすれば、ブリード個体になるでしょう。
現在はタイ産の個体が入手困難であることから、カンボジア産、またはベトナム産の個体がまれに輸入されることがあります。
希少性の高いタイ産の個体が「本ダトニオ」「シャムタイガー」と呼ばれ珍重される一方で、他の産地の個体は「カンボジアタイガー」や「〇〇産プルケール種」と呼ばれることも多くなっています。
高額ではあったものの、ブリード個体が流通した際には話題になりました。
再び安定して流通される日が来ることが望まれますね。
シックスバー・ダトニオ(メニーバー・ダトニオ/シックスバンド・タイガー)
学名:Datnioides quadrifasciatus
Coius quadrifasciatus
タイ、マレーシア原産のダトニオイデスです。
銀褐色の体色が特徴的な種で、名の通りバンドが6本入ります。
しかし、別名のメニーバー(meny bar)が指す通り、6本よりも多い個体も見られます。
他のダトニオに比べバンドの個体差が大きく、6~9本見られるのがふつうです。
フォーバー・ダトニオ(フォーバー・タイガー/メコン・タイガー/ベトナム・タイガー)
学名:Datnioides undecimradiatus
タイ、カンボジア、ベトナムのメコン川原産のダトニオイデスです。
縞模様の数は6本ですが、頭部と尾びれのバンドを除いた4本のバンドから、「4バンドナンダス」や「4バータイガー」の名称で流通しています。
ベトナムにも先述のプルケール種が分布していますが、本種の方が先に流通していたため、「ベトナム・タイガー」といえば本種を指します。
過去には偽ナンダスと呼ばれたこともありますが、本ダトニオが貴重なため、非常に人気のある種類といえるでしょう。
本種は比較的小型なことも特徴です。
最大サイズが30cm程度で留まるため、90cm水槽でも十分のびのびと飼育できます。
ニューギニア・ダトニオ(ニューギニア・タイガー)
学名:Septaria porcellana
ニューギニア原産のダトニオイデスです。
ダトニオの中でも後発の種として紹介され、初輸入時には大変話題となりました。
黄~金色の体色が美しく、その体色は他のダトニオにはない派手さを持っています。
幼魚のうちは“イリアンレッド”とも呼ばれ背ビレの基底部が赤い発色がよく目立ち、成魚ではバンドの黒色がにじむように広がり、黒化してきます。
本種は本来、汽水域に分布しているといわれています。
とはいえ純淡水に適応することもでき、塩分は添加せずとも長期飼育可能なようです。
リアルバンドってなんだ?
「プラスワン」の中に、まれに本ダトニオと同じか近い本数のバンド模様になる個体がいます。
このような個体は「リアルバンド」と呼ばれ、特に人気の高いタイプです。
本ダトニオが入手しづらい現状、「プラスワン」のリアルバンドであれば比較的まだ入手が現実的なので、入荷があると注目を集めます。
本ダトニオとは尾ビレ付け根のバンドの入り方が異なるので、この点で区別は可能です。
有用なアイテム
ダトニオ・プラスワンの飼育に関しては、スタンダードな大型魚といったところでしょう。
90~120cm以上の大型水槽が用意できれば、終生飼育が可能です。
おすすめの組み合わせは次の通りです。
水槽 | フィルター | 底床 | 餌 |
---|---|---|---|
90~120cm | 上部、外部 | 大磯砂、砂、砂利、ガーネットサンド | 人工飼料、クリル、エビ、メダカ、小赤 |
最終的には90cm以上の大型水槽での飼育が良いでしょう。
小さいうちはサイズに合わせた水槽で飼育し、将来的に水槽のサイズアップを見込んでください。
上部式、または外部式が良いでしょう。
ダトニオは排泄量が多いので、フィッシュレットの併用が大変有効です。
水質にはさほど注文を付けてきませんが、極端に酸性またはアルカリ性に傾いた環境は好みません。このためソイルやサンゴ砂は不向きです。
砂や大磯砂などの砂利系底床、またはガーネットサンドなどが良いでしょう。
慣れれば人工飼料を食べてくれますが、餌付けるにはやや時間がかかる傾向があります。
幼魚のうちはイトメやアカムシなどを与え、成長と共にメダカや小赤などの生餌を中心に切り替えます。
慣れてきたらクリル等を与え、徐々に人工飼料に切り替えていくとよいでしょう。
混泳について
幼魚のうちは複数匹での飼育が可能です。
しかし匹数が少ないとケンカをしやすく、成魚では激しく傷つけあうため単独での飼育が適しています。
混泳させる場合、逆に過密気味に飼育したほうが縄張りを形成できなくなるため上手くいきます。
※過密気味に飼育する場合は、水換えなどメンテナンスはマメに行いましょう。
当然ですが、口に入るサイズの小型魚は食べられてしまいます。
成長後、サイズが同程度であれば、遊泳域の異なるアロワナやポリプテルス等と混泳が可能です。
これらの大型魚の混泳相手としても人気の高い魚種です。
体型の似ている魚とはケンカすることがあるので、オスカー、フラワーホーンといったシクリッド類やバラムンディなどとの混泳は避けたほうが良いでしょう。
なお、大型シクリッドに近いグループの魚なので、個体の性格による要素も強めです。
このため個体によっては本来相性が良いとされる魚種と上手くいかなかったり、逆に本来相性が悪いとされる魚種とも混泳できる場合もあります。
とりわけ、アジアアロワナは「龍」、ダトニオは「虎」のイメージがあることから、両種の混泳は特に人気です。
比較的混泳成功率は高い部類に入りますが、混泳トラブルを確実に避けたい場合は、単独飼育のほうが無難といえるでしょう。
また他の大型魚に比べると、本種の成長は緩やかです。
大型魚同士で混泳させる場合は、本種が十分に育ってから混泳させるのがおすすめです。
幼魚のうちは神経質な側面が強いので、単独飼育か、または本種よりサイズが小さく攻撃性の低い種との混泳がおすすめです。
表層&底層を泳ぐ大型魚
前提として、ダトニオより混泳相手が小さい場合は攻撃されるリスクがあります。
混泳相手 | 混泳相性 | 備考 |
---|---|---|
アロワナ | 〇 | 表層を主に泳ぐアロワナとは、比較的混泳させやすいです。 |
ポリプテルス | 〇 | 底層を主に泳ぐポリプテルスとは、比較的混泳させやすいです。 |
大型プレコ | 〇 | 底層を主に泳ぐプレコとは比較的混泳させやすいです。 コケ取りとして相性も良いです。 |
オスカー | △ | 体形が似たオスカーとは攻撃し合う可能性があります。 このため匹数が少ない場合はおすすめできない組み合わせです。 過密気味にすると混泳できる場合もあります。 |
フラワーホーン | △ | 体形が似たフラワーホーンとは攻撃し合う可能性があります。 このため匹数が少ない場合はおすすめできない組み合わせです。 過密気味にすると混泳できる場合もあります。 |
大型ナマズ | 〇 | 底層を主に泳ぐ種とは、比較的混泳させやすいです。 中層を泳ぐ種との混泳は避けたほうが良いでしょう。 |
ナイフフィッシュ | △ | 同じ中層を泳ぐダトニオとは攻撃し合う可能性があります。 このため匹数が少ない場合はおすすめできない組み合わせです。 過密気味にすると混泳できる場合もあります。 |
※混泳相手の種や性格によっては、例外もあります。
◎・・・混泳に適した組み合わせです。
〇・・・混泳は可能ですが、種や個体の性格によっては工夫が必要な場合もあります。
△・・・混泳は不可能ではありませんが、適しているとはいえません。工夫次第で可能になる場合もあります。
×・・・混泳には適さない組み合わせです。
黒化
ダトニオは長く飼育していると、全身が黒くなることがあります。
この現象は「黒化」と呼ばれています。
黒くなるかどうかは個体の素質による部分が大きいらしく、詳しいメカニズムについても不明です。
ただ、水質よりも飼育環境の刺激の有無が関連しているのではないか?と考えられているようです。
ダトニオは他魚種に比較して頭が良いようなので、メンタル的な要素が体色にも反映されているのかもしれません。
混泳魚による緊張感があるなど、ダトニオにとって刺激的で満ち足りた環境であれば黒化しにくいといわれます。
一方で、エサや水質が気に入らない、刺激が少なく退屈、などダトニオにとって何かしら物足りない環境では黒化しやすいといわれています。
レイアウト
ダトニオはパワーのある魚なので、レイアウト水槽で飼育すること自体がもともとあまり向いていません。
幼魚のうちであれば、レイアウトを楽しむこともできるでしょう。
レイアウトする場合は、とにかく排せつ量が多いので、「メンテナンス性」が大事になります。
また、運動量も多いのでせっかく細かくレイアウトを組み上げても破壊されてしまいます。
このため、水草を直接底床には植えないほうが良いです。
以上の特性を踏まえると、アヌビアスやミクロソリウムなどの「活着系」水草から選ぶと良いでしょう。
“メンテナンスの際に簡単に動かせるかどうか”が重要なポイントです。
▼活着性水草について詳しくはこちら
病気
ダトニオは基本的に丈夫な魚ですので、一度環境に慣れてしまえばめったに病気にはかかりません。
ダトニオの病気の前触れは「目」に現れやすいです。
日々の観察では、目を特に重点的にチェックしましょう。
目の白濁
ダトニオは中性付近の水質での飼育が理想的です。
多少弱酸性、アルカリ性、どちらに傾いても適応してくれますが、極端に弱酸性に傾いた環境では調子を崩しやすくなります。
このとき、最初に症状が出やすいのが目の白濁です。
特に混泳水槽では排せつ量の多さから硝酸塩が蓄積し、pHが弱酸性に傾きやすいです。
注意して観察する必要があるといえるでしょう。
目が濁ってきたら、水換えの合図と取ることもできます。
気づいたらできるだけ早い段階で水換えするなどで手を打てば、回復することも多いでしょう。
エロモナス感染症(ポップアイ・松かさ病)
目の白濁を放置すると、次にエロモナス感染症を引き起こしやすいです。
目の白濁から充血が見られるようになり、この段階でも放置すると目が飛び出したようになります。
この状態は「ポップアイ」と呼ばれ、エロモナス感染症が引き起こす典型的な症状の一つです。
エロモナス感染症には抗菌剤系の魚病薬が有効ですが、予後の悪い病気として知られています。
目の白濁の段階で手を打てばここまで進行しないことが多いので、とにかく予防が大切です。
白点病
熱帯魚の病気の中でも最も典型的な病気の一つです。
ダトニオの場合では、購入してすぐの小型個体に発生しやすいです。
大型個体では体力があるためか、あまり発生しないようです。
季節の変わり目など、水温変化が大きい時期に発生しやすい傾向があります。
▼こちらも参考
ダトニオ・プラスワン まとめ
ダトニオ・プラスワン。
一般に「ダトニオ」といわれるグループの中では最も入手しやすい種です。
いわゆる「本ダトニオ」は入荷がほとんどなく入手困難なため、ダトニオを飼育したいとなると本種の選択が現実的となるケースも多いでしょう。
混泳については本種が攻撃性を持つものの、体形が異なり遊泳域が異なる魚種に関しては攻撃しにくいです。このためアロワナやポリプテルスとの混泳が人気です。
混泳トラブルを避けるには単独飼育のほうが無難ですが、その場合退屈に感じるのか黒化してしまうことがあるようです。
多少のリスクは承知の上でも、ある程度刺激がある環境の方が発色よく飼育ができるようです。
アロワナやポリプテルスをメインにしている水槽では、混泳相手としてうってつけの存在といえるでしょう。
また、バンドの個体差を集めてみたり、シックスバー、フォーバー、ニューギニアといった近縁種を集めてみるのも面白いかもしれませんね。
ダトニオ単体で見ても大変奥が深く、飼育しがいのある魚です。
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