ドジョウの魅力
ドジョウの世界へようこそ。
ドジョウは日本産淡水魚の中でも、底床の掃除屋さん という扱いで古くから人気の高いグループです。
ドジョウは砂の中に潜る習性があり、またその表面や中にあるエサを食べる習性があります。
このため、金魚や他の魚が食べ残したエサを、きれいに食べてくれるという意味では丁度良い役割を果たしてくれます。
よく見ると顔つきや行動も意外と愛嬌があり、また馴染み深い種は丈夫で飼育しやすいため、この点でも古くから人気があるようです。
元々人里近いエリアに生息する魚種であり、古くは食材でもあったことから馴染み深い淡水魚と言えるでしょう。
現在でも、一部地域では食材として親しまれています。
しかし一口にドジョウと言っても、日本のドジョウは実は多種多様です。
馴染み深い「ドジョウ」や「シマドジョウ」の他にも、日本のドジョウには特異な習性・生態を持った種がたくさんいます。
また地域性も強く、特定の地域にしか分布しない種も数多く知られています。
外見での区別は難しく、また全容を理解するためには遺伝子や日本の地形などの知識も要求されますが、知れば知るほどに奥深さを感じるグループです。
それでは単なる掃除要員には終わらない、奥深いドジョウの世界へ。
貴方を誘いましょう。
ドジョウとは
ドジョウとは、ドジョウ科に属する淡水魚の総称です。
にょろにょろとした体形を持ち、砂に潜って暮らす種が多いです。
主に水底を生活圏とし、他の魚の食べ残しを食べてくれることから、アクアリウムでは掃除屋さん、残飯処理係などとして位置づけられることも多いグループです。
しかし、日本のドジョウはその多様性も奥深いことで知られています。
特にシマドジョウ、スジシマドジョウの仲間は地域によっていくつかの種に分けられており、これを比較したり、集めたりする楽しみがあるでしょう。
掃除要員に留まらない奥深さが、ドジョウの仲間にはあります。
主なドジョウ
国内に分布しており、流通が見られる種を紹介します。
※観賞魚としての流通が見られない種は割愛します。
ドジョウ
学名:Misgurnus anguillicaudatus(ドジョウ)
Misgurnus dabryanus(カラドジョウ)
Misgurnus sp.(キタドジョウ)
別名:マドジョウ
最もポピュラーなドジョウです。
アクアリウムにおいては大型魚のエサ用として販売されることが多いのですが、金魚や日本産淡水魚の水槽などでは残飯処理要員としても人気があります。
野生下の個体、流通する個体共に、日本在来の「ドジョウ」と外来種の「カラドジョウ」が混在している状態と言われています。
北日本を中心とした一部地域にはさらに「キタドジョウ」という種もいます。
どの種も外見は酷似しており、見た目での判別は困難を極めます。
シマドジョウなどの他のドジョウと特に区別したいときは「マドジョウ」と呼ばれることも多いです。
販売個体の主な用途は「エサ用」であるため、区別されずに「ドジョウ」または「マドジョウ」として販売されることがほとんどです。
掃除要員として採用する場合、働きぶりはどちらも変わりません。
シマドジョウ
学名:Cobitis biwae
斑点や筋状の模様が特徴的なドジョウです。
日本固有種で河川中~下流域、湖沼などに生息しています。
特徴的な模様の個体差は激しく、個体によってはライン状になる個体もいます。
一般的なドジョウに比べ比較的きれいな水を好み、砂礫底で見られます。
水路やため池などよりも、河川を好む傾向があります。
実は2012年に4種に細分化されており、「シマドジョウ」という標準和名は既に消滅しています。
スジシマドジョウ
学名:Cobitis sp.
東海地方以西に生息するドジョウです。
現在では複数の種に細分化されており、明瞭な筋は個体差が大きく、地域によっても異なります。
繁殖期に筋模様が明瞭に変化するものもいます。
アクアリウムにおいて比較的流通量が多いと思われる「チュウガタスジシマドジョウ」は、この筋模様が周年ほとんど変化しないようです。
全ての型に共通するのは眼の下に棘があり、雄の胸びれの付け根の骨質盤は円形になる点です。
飼育は容易で、ドジョウ同様に飼育できます。
本種も2012年に5種8亜種に細分化されており、「スジシマドジョウ」という標準和名は既に消滅しています。
ホトケドジョウ
学名:Lefua echigonia
本州及び四国地方東部に分布するドジョウです。
近年数を減らしており、保護が必要になりつつある種としても知られています。
本種は遊泳性が強く、一般的なドジョウと異なり砂に潜ることがありません。
貝を好んで食べることでも知られており、スネールイーターとしても一定の活躍が見込めます。
ただし、飼育難易度はドジョウの中でも高めに入ります。
元々溶存酸素が豊富で水がきれいな湧水域を好む傾向があり、高水温を極端に苦手とします。
20℃前後が調子が良く、25℃を超えると状態を崩しがちです。
可能であればクーラーは設置したほうが良いでしょう。
細菌感染にも弱い傾向があり、一度病気が出ると一気に感染が広がる傾向があります。
導入前は事前にトリートメントしておくのがおすすめです。
一方で繁殖に関しては他のドジョウよりも容易といわれ、コンディションよく飼育できればご家庭でも十分に狙えることが知られます。
屋外のビオトープや池で飼育すると、良い結果が得られる傾向があるようです。
アジメドジョウ
学名:Niwaella delicata
本州中部~近畿地方にかけて分布するドジョウです。
山間部の河川に生息しており、急流の浅瀬を好む傾向があります。
外見はシマドジョウに似ますが、体が細長く、口ひげが短い等により区別できます。
口はよく見ると吸盤状になっており、この口で石に吸い付きます。
急流域に適応した進化を遂げた種と考えられ、石の上に生える藻類を主食としています。
このことから、コケ取りとしてもある程度の活躍が期待できます。
急流域に暮らすため、一般的なドジョウに比べ極端に高水温に弱いことと、溶存酸素の多い水を好むことがポイントです。
水温は23℃以下に抑えるのが望ましく、クーラーの設置はほぼ必須と言えるでしょう。
なお本種は一部地域では食用として親しまれています。
アジメの名や種小名の「delicata」には”美味”の意味があります。
ドジョウの中で最も美味な種とされますが、アクアリウム用に販売されている個体は食べないでください。
ヤマトシマドジョウ
学名:Cobitis matsubarae
別名:タイリクシマドジョウ
九州地方及び山口県にのみ生息するドジョウです。
日本固有のドジョウですが、ヨーロッパからアジアにかけて広く生息するタイリクシマドジョウと混同されていた経緯があり、その名残でタイリクシマドジョウと呼ばれることもあります。
シマドジョウとはオスの胸鰭の付け根の骨質盤が円形になる事から区別できます。
本種はシマドジョウとスジシマドジョウの異種間交雑により生じた、両種の遺伝子を保有する特異な種(異質四倍体性種:異なる種に由来する2種の遺伝情報を2組ずつ、計4組持つ種)であることが知られています。
ナガレホトケドジョウ
学名:Lefua torrentis
東海地方と瀬戸内周辺地域に分布するドジョウです。
ホトケドジョウが流水環境に適応する形で分化した種と考えられており、山間の浅くて流れの緩い場所を好みます。
日中は礫間や岩の隙間に身を潜め、夜間に活動を始めます。
近縁のホトケドジョウに比べ、体に散在する暗色斑点が無く、茶褐色のホトケドジョウとは違い本種は淡黄色をしています。
また、最大の特徴として眼から口吻にかけて暗色のラインを持ちます。
産卵期は4~6月で、礫底にたまった落ち葉に産卵します。
また全生活環を通じて浮遊期は無く、仔魚は孵化後直ちに底生生活に入ります。
山間部の”沢”のような極小河川に生息するため、水質悪化や高水温に極端に弱いです。
このため、飼育難易度は高い部類に入ります。
18℃を超えると調子を崩しがちなので、クーラーは必須です。
エゾホトケドジョウ
学名:Lefua nikkonis
北海道に分布するドジョウです。
本州でも一部地域で分布の報告がありますが、これらは人為的な移入が疑われているようです。
ホトケドジョウに比べ小型で、尾ビレの中央基部に暗色班あり、区別は容易です。
雄の体側中央には黒色帯が鰓の後ろから尾筒まで入ります。
餌は底生の水生昆虫などを主食としています。
湿地帯の細流や池沼で一生を過ごし、成体では隠れ家となる水草が繁茂した場所を好む傾向にあります。
本種も溶存酸素が豊富で水がきれいな湧水域を好む傾向があり、通常のホトケドジョウ以上に高水温を極端に苦手とします。
20℃を超えると調子を崩しがちなので、クーラーは必須と言えるでしょう。
ヒメドジョウ
学名:Lefua costata
モンゴル、中国、朝鮮半島、アムール川に分布するドジョウです。
外見はエゾホトケドジョウに酷似しています。
国産種ではありませんが、本州の一部地域に移入していると言われています。
ホトケドジョウらしく高水温や水質の悪化にはやや弱い傾向を見せますが、一般的なホトケドジョウに比べるといくぶんか丈夫なようです。
基本的な生態は国産のホトケドジョウ類に準じます。
夏季はクーラーが必要です。
イシドジョウ
学名:Cobitis takatsuensis
北九州、中国地方西部に生息する日本固有のドジョウです。
シマドジョウの仲間ではもっとも小型の種で、石が転がっているような河川中上流部に生息することから名づけられたと言われています。
体側に入る2本のラインが特徴的で、尾ビレ付け根に突起がある点や他のシマドジョウに比べ寸胴な点で判別が可能です。
渓流に生息するため高水温と水質の悪化に弱い傾向があります。
20℃を超えると調子を崩しがちなので、クーラーは必須と言えるでしょう。
また、本種は山口県では県条例により無許可での捕獲は禁止されています。
フクドジョウ
学名:Nemacheilus barbatulus toni
北海道、東北地方北部に分布するドジョウです。
東北地方南部、関東地方でも発見例が知られますが、それらは移入によるものと考えられているようです。
流速のある河川上流域に生息し、砂礫や石の多い環境で見られます。
一般的な土壌に比べ細長い顔つきを持ち、流水環境に適応しているようです。
また、最大で20cm程度に成長します。
国産のドジョウとしては大型種になります。
灰褐色の体色を持ちますが、個体によっては斑紋が明瞭な個体も見られます。
水温は23℃以下に抑えるのが望ましく、クーラーの設置はほぼ必須と言えるでしょう。
大陸系のドジョウ
入荷はかなり少なめですが、まれに大陸系のドジョウ類が入荷することがあります。
主に中国・韓国原産のため低温に強く、飼育しやすい種類が多いようです。
キタシマドジョウ
学名:Iksookimia pumila
韓国原産のドジョウです。
日本のシマドジョウやアジメドジョウに似た外見ですが、体側の模様は独特で複雑な模様を持ちます。
飼育は容易で、低温にも強く日本産淡水魚と同様に飼育できます。
ヨコシマドジョウ
学名:Niwaella multifasciata
韓国、東江流域原産のドジョウです。
黄色がかった体色にバンド模様が非常に美しい種です。
頭部は細かいドット模様が見え、バンド模様も良くみると細かいスポットの集まりであることが分かります。
日本のアジメドジョウと同属とされ、また顔つきや口の形状も同様であることから、自然下では藻類中心の食性をしているものと推測されます。
飼育下では、人工飼料も良く食べるようです。
飼育は容易で、低温にも強く日本産淡水魚と同様に飼育できます。
ハナジロドジョウ
学名:Koreocobitis rotundicaudata
韓国原産のドジョウです。
日本のマドジョウに似た外見ですが、若干黄色味が強く、ドジョウの特徴である「ヒゲ」がオレンジなので独特な印象を受けるドジョウです。
また、正面から見ると鼻筋が白く見えることが名前の由来となっています。
飼育は容易で人工飼料にも餌付き、低温にも強く日本産淡水魚と同様に飼育できます。
シュガースポットローチ
学名:Misgurnus sp.
中国原産のドジョウです。
非常に長く大きな体格をしており、特に背ビレから尾ビレまでが異様に長くなっています。
バナナの様な黄色い体色と、完熟したバナナの皮に現れる黒や褐色の斑点、シュガースポットの様な模様が特徴的です。
その見た目の特異さだけではない存在感があります。
ドジョウの仲間では非常に大型ですが、臆病な性格はそのままのようで、隠れ家になるような岩や流木などを用意すると良いでしょう。
砂などに潜る習性はあまり強くないようです。
水質にもうるさくなくエサも選り好みせず何でも良く食べますが、溶存酸素が多い環境を好みます。
ドジョウ飼育の基本
水槽の選択
ドジョウ類はほとんどが30~60cm水槽で飼育できます。
最大でも20cm程度と小型種が多く、基本的に温和なため複数飼育も問題ありません。
色々な種類を集める場合でも、基本的にケンカしないので多くの場合60cm水槽で事足りるでしょう。
フィルター、照明が付いたセットなら、より安心して始めることができますね。
フィルターの選択
ドジョウの生息環境は大きく分けて3タイプに分けられます。
各タイプにあった商品選びが重要です。
上部式フィルターまたは外部式フィルターであれば、どのタイプも飼育可能です。
底床内に潜る習性を持つ種が多いので、底面式フィルターは避けたほうが良いでしょう。
水質について
ほとんどのドジョウ類は、概ねpH7.0~7.5程度の弱アルカリ性を好む種が多いです。
元々日本産の魚種ですので、日本の水質にはよくなじみます。
ドジョウやシマドジョウなど、比較的人里近いエリアに生息する種は水質の適応範囲が広くいようです。
弱アルカリ性に傾いた水質が理想的ですが、多少弱酸性に傾いてもさほど問題はないようです。
湧水地帯や渓流に生息する種は、できるだけ弱アルカリ性に傾いた環境で飼育したほうが良いでしょう。
底床の選択
多くのドジョウ類は底床に潜る習性があるため、基本的には砂が良いでしょう。
底に潜る習性のない種は、大磯砂も利用可能です。
ソイルは水質を弱酸性に傾けるうえ、巻き上げられると水が濁ります。
このため底床内に潜る習性のあるドジョウには、基本的に不向きです。
サンゴ砂は逆に硬度を上げすぎるため、向いていません。
餌
低層魚用のタブレットフードが向いています。
ホトケドジョウなど遊泳するタイプの魚種は、沈下性の顆粒フードが良いでしょう。
基本的に餌付きは良い方です。
餌付かない個体がいる場合、冷凍アカムシを与えると多くの場合食べてくれます。
ヒーターの使用
日本の気候に慣れていますので、基本的に不要です。
冷水性の種は20℃前後での飼育が理想となるため、むしろない方が良いでしょう。
国産のドジョウ類の飼育においては、クーラーの方が重要性が高いです。
クーラーの使用
一部のドジョウにおいては必須レベルです。
人里近いエリアに生息するドジョウ類(ドジョウ、シマドジョウ系、スジシマドジョウ系)は比較的暑さに強いので、クーラーがなくても問題ないことも多いです。
これらの種は一般的な熱帯魚同様、一時的なら最大で30℃ぐらいまでは耐えられます。
一方で冷水性の一部の種は、クーラーがないと飼育が困難と考えたほうが良いでしょう。
冷水性の種は水温20℃前後で調子が良いです。
25℃を超える日が長く続くと、生存が危ぶまれる点に留意しておきましょう。
▼こちらも参考
ドジョウの病気
白点病や水カビ病に罹りやすいです。
体表に鱗がないので、物理的なケガから水カビ病を発症することが多いようです。
特に導入したばかりや、底砂の選択が適切でない場合は発症しやすいので注意しましょう。
また、冷水性の一部の種は水温にシビアです。
調子が悪い時は、まず先に水温の管理状況を確認するとその原因が突き止められるかもしれません。
よくある病気(白点病、水カビ病)
多くの病気は熱帯魚と共通ですので、主な病気は下記を参照ください。
白点病、水カビ病はかかりやすい代表的な病気です。
ドジョウは鱗がないので松かさ病を発症することはありませんが、同じ細菌に感染すると全身が赤く充血します。
ホトケドジョウ系は細菌性感染症にかかりやすく、口やひげの先端が白っぽくなっていたら、感染の初期症状の可能性があります。
この時は抗菌剤系の魚病薬が有効となることが多いです。
塩水浴
魚病薬を使用しない対処法としては、症状が軽度であれば塩水浴が有効です。
採集で入手した個体の場合、導入前にしばらくの間塩水浴してから導入すると、コンディションが整いやすくなります。
繁殖について
ドジョウ類を家庭で繁殖することは、一般的に困難と言われています。
ホトケドジョウは比較的狙いやすい部類に入るらしく、ビオトープのような環境で屋外で育成すると、良い結果が得られるようです。
採集について
日本産淡水魚を真に理解するのであれば、自身での採集体験は欠かせません。
最初はきっかけづくりとして魚を購入するのも良いでしょう。
しかし、ゆくゆくは自身で採集に赴き、現地で理解を深めるのが理想形です。
元々日本に生息している魚種ですから、生息環境を直に見て、体験することは飼育する上でも役に立つたくさんの情報を得られます。
全国ドジョウ行脚
ドジョウの仲間は国内に分布していると言っても、地域ごとに様々な種がいます。
特にシマドジョウ、スジシマドジョウの仲間は地域性が強く、特定の地域にのみ分布する種が数多くいます。
これらの種を観察するため、全国に足を運んでみるのも面白いかもしれません。
エゾホトケドジョウ、フクドジョウといった冷水性の種は、北海道に多く分布しています。
ドジョウをきっかけに、北海道旅行を計画してみても良いでしょう。
ドジョウの採集は楽しいものですが、持ち帰るのは必要最小限に留めましょう。
個体差の比較をするにしても、多くても5~6匹いれば十分なことが多いでしょう。
▼採集に関しての詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
法令による規制のあるドジョウ
一方で、ドジョウ類の中には法令による制限が掛けられているものもいます。
2023年12月時点です。
- アユモドキ(天然記念物)
- トサシマドジョウ(高知県条例)
- ハカタスジシマドジョウ(種の保存法、福岡県条例)
- タンゴスジシマドジョウ(種の保存法)
- ヒナイシドジョウ(高知県、愛媛県条例)
- ヒョウモンドジョウ(沖縄県条例)
- イシドジョウ(山口県条例)
「トサシマドジョウ」「ハカタスジシマドジョウ」「タンゴスジシマドジョウ」「ヒナイシドジョウ」「ヒョウモンドジョウ」の5種は法令により、無許可での捕獲が禁止されています。
イシドジョウに関しては、山口県では規制対象ですがそれ以外の地域では採集に制限はありません。
アジメドジョウは一部地域で食用とされることもあり、漁業権が設定されている地域があるので留意しておきましょう。
採集の際は、これらの制限に注意しながら行いましょう。
採集に制限のある種は、基本的に分布範囲が極めて局所的です。
外観で他種との判別が困難なグループであるため、分布域での採集行為は避けたほうが良いでしょう。
ドジョウ用語集
日本産淡水魚の飼育において特に使われる主な専門用語をピックアップして紹介します。
国内外来種・・・国内の在来種ですが、本来の分布域外に人の手により移殖され、定着してしまった種を指します。
例えばオオガタスジシマドジョウは本来琵琶湖水系の固有種ですが、関東地方の一部地域に定着が見られると言われています。
ドジョウ類は交雑が起こりやすく、地域個体群も多いので、外来種の存在はとりわけ問題視されます。
地域個体群・・・ある種において、同種でも地域により微妙な差異が見られる個体群を指します。
ドジョウ類では元々シマドジョウやスジシマドジョウに地域個体群が見られると考えられており、それぞれが精査された結果、種や亜種へと細分化されました。
国内外来種は交雑により地域個体群の遺伝子情報を攪乱する恐れがあるため、問題視されています。
眼下棘(眼前棘)・・・シマドジョウ類に特有の形質です。
シマドジョウ類、スジシマドジョウ類は目の下に棘条の骨を持っています。
網で掬うと、この棘が網に引っかかることがあります。
国産のドジョウでは、刺さってもさほど痛くはありません。
骨基盤・・・ドジョウ類のオスの胸鰭に特有の形質です。
ドジョウ類の種を判別する際に重要となる形質の一つです。
基本的に模様が不定で色柄による判定は困難なので、骨基盤の形状を見て判断することで正答率が上がります。
ただし、骨基盤はメスにはありません。
メスは、骨基盤以外の部位での判定が必要になります。
簡易判定表
外見がよく似ている「シマドジョウ類」「スジシマドジョウ類」「ヤマトシマドジョウ類」の3種は、およそ以下の特徴と産地で判定できます。
※個体差が大きいので100%正確とは限らない点にはご留意ください。
しばしば同所的に分布しており、判定は困難ですが、以下の特徴に着目するとある程度判断がつくでしょう。
放流は厳禁
ドジョウ類は日本産淡水魚の中でも、とりわけ外来種問題が深刻です。
ドジョウ類は地域性が強く、外観での識別は困難ですがそれぞれの地域で固有の遺伝子を持っています。
放流が行われると、主に交雑によりこの多様性が破壊されてしまうのです。
外見では判別が難しくとも、遺伝子を見れば判定ができるのだそうです。
ドジョウは鑑賞用としてだけでなく食用としても需要があることから、各地での放流行為が見られるようです。
中国産の「カラドジョウ」などはその例の一つです。
国産種はもちろんのこと、大陸系の種類はより一層の注意が必要です。
放流により本来の分布域ではない地域へと分布が広がってしまい、交雑により元来独自の遺伝子を持った野生集団が、交雑集団に置き換わってしまう例が見受けられます。
ドジョウ類は本来、日本という島国で長い時間をかけて各地で分化してきました。
一方で、ドジョウ類は近縁の別種とも交雑しやすいという性質を持っています。
人為的な放流は、そういった多様性を破壊する行為なのです。
放流さえしなければ、このような生態系を攪乱する行為は防げるのです。
水槽内で飼育されている限りは、ドジョウ類は素晴らしい観賞魚です。
ドジョウを飼育し始めたら、途中で逃がすことなく、必ず寿命を迎えるまで飼育に努めましょう!
まずはきっかけとして、
ドジョウの魅力に触れてみましょう。
ドジョウの奥深さが分かってきたら、
ぜひ採集にもチャレンジしてみましょう。
コメント