アクアリウムをやっていく上で必ず必要になってくる「ろ過」。その中に「生物ろ過」という工程があります。実は、この生物ろ過にはウェット式とドライ式の2種類があることをご存じですか?
本記事ではこの2種類の特徴と違いについて解説していきます。
フィルターやろ材に関してあまり詳しくないという方はこちらの記事を読んでみてください
ウェット式ろ過とは
ウェット式とは、ろ材が常に水に浸かっている状態でろ過する方式のこと。現在販売されているほとんどのフィルターがこのウェット式を採用しています。代表例をいうと、外部式フィルターや投げ込み式フィルターですね。
ドライ式ろ過とは
ウェット式に対して、こちらのドライ式はろ材が空気中に露出している状態でろ過を行う方式です。シャワーのようなイメージで、水槽の水をろ材にかけながらろ過します。ドライ式は一般的ではなく、製品もそれほど多くありません。海水魚や大型魚を飼育するオーバーフロー水槽、水族館の水槽などの特別大がかりな水槽が多数ある環境で使用されていることがあります。高いろ過能力を必要とする場合に有効です。
ウェット式とドライ式のメリット・デメリット
ドライ式
メリット
・ろ過能力が高い
一般的にウェット式の3~5倍ものろ過能力があるといわれています。生物ろ過には酸素を好む「好気性バクテリア」の存在が重要となりますが、ドライ式ならろ材が空気中にあるため、豊富な酸素があります。結果、好気性バクテリアの働きが活発になってろ過能力が高くなるのです。
・メンテナンスが楽
物理ろ過をしっかりと行うことができれば、汚泥が生物ろ材に詰まることが少なく、ウェット式ほど頻繁に生物ろ材を掃除・交換しなくてもよくなります。(※掃除・交換は必須です)
・アンモニアを硝化する前に気化して除去できる
飼育水と空気がよく触れ合うため、アンモニアを気化させて除去することができます。
ただし、アンモニアを完全に気化するためには3mもの高さの「ドライタワー」が必要といわれており、アクアリウムで一般的に使われるドライろ過でどの程度効果があるかは分かっていません。
飼育水と空気が接触する時間を増やし、より多くのアンモニアが除去できるように考え出されたのが「ドライタワー」。ドライ式ろ過のろ過能力をさらに上げる機構としてDIYで作製することもあります。
デメリット
・CO2を逃がしてしまうため水草育成には不向き
・ろ過の立ち上がりに時間がかかる
バクテリアの定着・繁殖に数カ月を要するといわれています。
・市販されている既製品の種類が少ない
大がかりな設備が必要なため既製品は少なく、あったとしても高額になります。ドライ式のろ過構造を持つのは上部式フィルター、オーバーフロー水槽くらいです。
・初心者・家庭向きではない
時間と資金が必要なことから、初心者には向かないと言えます。ご家庭でドライ式ろ過の構造を使いたい場合はオーバーフロー水槽が良いでしょう。
ウェット式
メリット
・立ち上がりが早い
バクテリアの定着が早いので、立ち上がりまでの時間もドライ式に比べてかかりません。
・種類が多い・初心者でも扱いやすい
容器にろ材を入れ、水中に入れるか水を流すという分かりやすい構造です。
市販されているラインナップも数多く、家庭用の定番方式になっています。
デメリット
・ろ過効率はあまり良ない
以下のような「チャネル現象」により、ろ過の効率が落ちます。
水の性質上目詰まり部分を避け一定の水路を形成します。そのため、水路部分だけはろ材が有効に機能するものの、それ以外の部分は全く機能しなくなります。これをチャネル現象といいます。
http://www.totto.co.jp/roka_tsuite.html チャネル現象とは
また、すでに述べた通り、好気性バクテリアは酸素を好みます。水中は空気中よりも酸素が少なくなるためバクテリアの働きが弱くなり、ドライ式に比べるとろ過効率は落ちます。
各方式のメリット・デメリットを挙げましたが、趣味でアクアリウムを始める場合はラインナップが多く、大がかりな設備が必要ないウェット式一択となるでしょう。
ウェット&ドライ式という選択
ドライ式とウェット式の良いところを組み合わせた方式です。代表的な商品をご紹介しましょう。
GEX ウェット&ドライろ過槽-N
GEXグランデシリーズ、デュアルクリーン600シリーズの上部フィルター用ウェット&ドライろ過槽です。これを取り付け、ろ材を足すことでウェット&ドライ方式にすることができます。
GEX グランデシリーズ、デュアルクリーン600シリーズはこちら
デュアルクリーン600
グランデ600
CO2を逃がしやすいという欠点がある上部フィルター対応なので、CO2添加が必須となる水草育成の水槽には不向きですが、肉食魚の飼育などにはマッチするでしょう。
ろ過装置を選ぶ時の注意点
ろ過装置を選ぶときは、ドライ式・ウェット式だけに注目するのではなく、使用用途に合ったろ材の量を入れられるか、ろ過能力は適切であるかなどといった点にも注目しましょう。ろ過能力は、高ければいいというものではありません。過剰なろ過は水槽内の環境バランスを崩す一つの要因となり、生き物や水草の状態を崩してしまう逆効果も招く可能性があります。
▽ろ過装置を選ぶ際のポイントを詳しく解説▽
ろ過能力が高くても水換えは怠らない
また、いくらろ過能力が高いろ過装置を使っていても水換えは必須です。
生物ろ過ではバクテリアが、アンモニア→亜硝酸塩→硝酸塩と有害な物質を徐々に弱毒化してくれます。最終的にたまっていく硝酸塩は毒性は弱いものの無害ではありません。濃度が高くなればpH低下を招き、生き物へのダメージにつながります。
▽ろ材ってなんだ?詳しく解説▽
番外編 流動式ろ過方式について少しだけ
ウェットろ過で発生してしまうチャネル現象。これを抑えるべく編み出された方式が流動ろ過方式です。水流をろ材に通すだけでなく、ろ材をそのものを動かして水との接触を増やそうという考えです。従来のウェットろ過の弱点を補い、さらに高効率なろ過を実現しています。
▽稼働している様子がこちら▽
詳しくはまた別の機会にご紹介できればと思います。
今回は以上です。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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