どうも、ほにゃらら sp.です。
今回はグッピーの遺伝において、各形質がどのような遺伝をするのか一覧にまとめてみました。
第一弾は体色に関する形質についてまとめています。
グッピーの交配計画を立てる際などにお役立てください。
- 優性形質(顕性形質)・・ある形質の遺伝子が、2本の染色体のどちらか一方にあるだけで発現される形質。
- 劣性形質(潜性形質)・・・ある形質の遺伝子が、2本の染色体両方に無いと発現されない(隠れる)形質。観賞価値の高い形質は劣性ホモであることが多い。
- ヘテロ・・・ある形質の遺伝子を、2本の染色体で優性のものと劣勢のものを1つずつ併せ持った状態。ふつう、ヘテロでは優性形質が発現される。
- ホモ・・・ヘテロの対義語。2本の染色体でどちらも優性または劣性の同じ遺伝子を持つ場合をいう。省略されることが多い。
- 不完全優性(不完全顕性)・・・ある形質の遺伝子をヘテロで持つ場合に、優性形質とも劣性形質とも異なる形質の発現を見せるもの。グッピーではブルーグラスが有名。
- F1・・・雑種第一代目。グッピーでは異品種交配の場合でも一代目であれば指す。
得られた同世代を交配して得られた二代目はF2と表現し、このようにして代を重ねることで得られた三代目はF3,四代目はF4・・・と数字が大きくなる。
グッピーの体色に関する形質一覧
体色に関する形質は、基本的に全て常染色体上にあると言われます。
常染色体上の形質は、オスメス関係なく発現します。
常染色体上にある形質はメンデルの法則通りの遺伝が見られ、最もシンプルな遺伝様式を見せる形質です。
基本的に一つの遺伝子により制御されており、交配の計画が比較的立てやすい点が特徴です。
形質名 | 遺伝記号 | イメージ | 色素細胞上の変異 | |
---|---|---|---|---|
ノーマル | AA※ | 野生型 | ||
ゴールデン | bb | 黒が減少 | ||
タイガー | gg | 黒が減少 | ||
アルビノ (ルチノー、ブドウ目) | ll | 黒が欠乏 | ||
RREA | aa | 黒が完全欠乏 | ||
ブラオ | rr | 赤が欠乏 | ||
アイボリー | ii | 赤の発色を抑制 | ||
ドゥンケル | dd | 赤が欠乏? | ||
ヴァイス | bbrr ※二重劣性 | 黒が減少 赤が欠乏 |
ノーマル
体色がグレー~茶褐色に染まる、最も基本的な表現型です。
いわゆる野生型と呼ばれる表現で、グッピーの基本となる体色です。
体色に関して特に他の色が関わっていなければ、この発色になります。
この形質は基本的に優性です。
品種名を呼ぶ上では、「ノーマル」の名称は省略されることが多いです。
ゴールデン
体色が鮮やかな黄色に染まる表現型です。
国産・外国産問わずよく見られる表現で、鮮やかな印象を与えてくれます。
海外ではブロンドと呼ばれるため、遺伝子記号には「b」が用いられることが多いです。
この形質は劣性ホモ(bb)で発現します。
アルビノ(ルチノー)
体色が薄く白っぽくなり、眼が赤く染まる表現型です。
別名でブドウ目とも呼ばれる、赤黒い眼が特徴です。
後にRREAが発見されたため、あまり盛んに改良されていません。
ただし、全身が赤く染まるフルレッド系の品種に関しては相性が良いので、ルチノーが積極的に導入されています。
RREAと区別するため、遺伝子記号にはlutinoの頭文字である「l」が用いられることが多いです。
この形質は劣性ホモ(ll)で発現します。
系統維持の際は、背曲がりが出やすい点に注意して選別します。
RREA(リアルレッドアイアルビノ)
黒を表現するメラニン色素が完全に欠乏した表現型です。
RREAはReal Red Eye Albino の略称です。
アルビノ(ルチノー)より後に発見された形質ですが、グッピーで単にアルビノと言うとこちらの表現型を指すことも多いです。
グッピー業界では、紛らわしいので前者をルチノー、後者をRREAと呼び分けることが多いです。
こちらがアルビノとしては標準的な立ち位置にあるため、遺伝子記号には「a」が用いられることが多いです。
最も標準的な遺伝様式を持つため、グッピーにおける遺伝の基礎を学ぶには最適です。
この形質は劣性ホモ(aa)で発現します。
ルチノーとは異なる遺伝子によって制御されるため、ルチノーと混ぜてしまうとF1にノーマル体色が生まれてくるので注意が必要です。
ブリーダーの間では、F2で分離するルチノーとRREAの見分けがつきにくいため、ルチノーとの交配は避けるべき組み合わせといわれています。
ブラオ
全身が青黒く染まる表現型です。
「ブラオ(bulau)」とはドイツ語で「青」を意味し、ブルーグラスに代表される水色の発色と深い関わりのある遺伝子です。
色素細胞の役割上は青い色素を発するのではなく、赤い色素が欠乏することによりこの発色を表現しています。
赤い発色を制御する遺伝子なので、遺伝子記号にはredの「r」が使用されることが多いです。
この形質は不完全優性であることが知られており、ヘテロ(Rr)で持つとレッドグラスなどの赤い発色が水色に置き換わる表現が見られます。
この発色がブルーグラスで有名な「ブルー」の色彩です。
ブラオは他の体色とは異なる例外的な要素が多いため、詳しくは後述します。
ここからは流通が少なくなり、入手機会がやや減る体色です。
タイガー
体色が黄色に染まり、鱗が黒く縁どられる表現型です。
ゴールデンに似た発色を示しますが、鱗に縁取りが現れる点で区別できます。
海外ではgoldと呼ばれることから、遺伝子記号には「g」が用いられることが多いです。ゴールデンと混同しやすいので注意しましょう。
タイガーを導入すると尾ビレの柄が乱れやすいことから、日本では不人気の形質です。
見た目もゴールデンと大きく変わらず、流通も多くありません。
一方で、開発があまり進んでいない形質と見ることもできます。
あまり見かけない表現型ですが、細々と新品種の開発が進められてはいるようです。
この形質は劣性ホモ(gg)で発現します。
アイボリー
ブラオと似た役割を持つ、「赤を発色させない」表現型です。
アイボリーは赤を抑えるメカニズムがブラオとは異なります。
赤を表現する色素細胞自体は持っているものの、色素の顆粒が入らないことにより赤が表現されません。
遺伝子記号はivoryそのままで「i」が用いられることが多いです。
この形質は劣性ホモ(ii)で発現します。
ブラオの表現に関わるr遺伝子と密接に関係があり、RRが揃って赤が表現され、なおかつiiが揃ってアイボリーに置き換わるRRiiとなる遺伝子型のときに最も美しい象牙色が表現されます。
アイボリーの初輸入時に「バイオレット」という名前で輸入されたため、名称が混乱しています。バイオレットは基本的にアイボリーと同義です。
ドゥンケル(ドゥンケル型ブラオ)
ドゥンケル型ブラオ、エンドラーズ型ブラオとも呼ばれる表現型です。
ブラオに似ていますが、こちらは尾ビレの柄に干渉しません。
柄を入れられる点が、通常のブラオとは異なる大きな特徴です。
遺伝子記号には「d」が使われることが多いです。
この形質は劣性ホモ(dd)で発現します。
ヴァイス
ゴールデンとブラオの二重劣性により表現される体色です。
二重劣性とは、劣性の表現型を同時に2つ持ち合わせたものを指します。
遺伝子記号で言うとbbrrとなります。
ゴールデンとブラオの2つの表現型を同時に持ち合わせると、このような白い発色を示します。
ノーマルが基本色
体色に関わる形質はほとんどが劣性(潜性)です。
優性(顕性)の遺伝子を1つでも持っていればグレーや茶褐色を中心とした、「ノーマル」と呼ばれる体色になります。
もし遺伝様式を考慮せずにむやみな交配を繰り返した場合、いずれはこの体色に戻ることがほとんどでしょう。
野生型の形質に戻ることを、通称「先祖返り」と言います。
大文字で表現される形質(優性形質)は基本的にノーマルです。
ヘテロの場合は基本的に、見た目はノーマル体色となります。
逆に言えば見た目がノーマル体色であっても、保有する遺伝子はヘテロの可能性があります。
そしてヘテロか否かを見た目で区別することはできません。
両親に見た目ノーマルの個体を使用して子が得られた際に、もし劣性形質を持った子が生まれて来れば、この時点で親がヘテロであると判明します。
ノーマルの親と劣性形質を持った親を交配した場合、基本的にF1は全てノーマルになります。
ここで得られたF1は全て、劣性形質をヘテロで持っています。
このF1を同世代で(ヘテロ同士)交配することで、F2ではノーマル1(25%):ヘテロ2(50%):劣性1(25%)の割合で分離します。
このためある劣性形質を導入した場合、基本的にF1では得られません。
F2まで子を採って、25%の確率ではじめて得られるのです。
観賞価値のある形質ほど、劣性形質であることが多いです。
仮に100匹出産させたとして、目的の劣性形質を持つ個体は25匹ほどとなります。
その中で次世代に使える親を選別していく・・・となると、いかに多く子を採るかが重要になります。
このようにして、世代を重ねて劣性形質を導入していくのがグッピーの遺伝の基本です。
不完全優性のブラオ
体色の基本形質のうち「ブラオ」に関しては例外で、ヘテロではノーマルでもブラオでもない異なる形質「ブルー」が発現します。
このような表現を「不完全優性(不完全顕性)」と呼びます。
ブラオが発現すると尾ビレを大きく広げ、体側の柄が消失し無地になります。グラスなど柄を表現する遺伝子を持っていても、ブラオの性質により上書きされ無地になってしまうのです。
ただし、ブラオは柄を表現する遺伝子を消してしまうわけではありません。
ブラオ特有の機能により柄が塗りつぶされてしまうだけで、柄を制御する遺伝子自体は保持しています。ブラオを親に交配して子を得た場合、子がブラオでなければ柄は再度発現します。
体色だけでなく柄に干渉してしまう性質上、ブラオは扱いにくいとされ敬遠されがちな形質です。
一方でブラオの遺伝子(r)をヘテロ(Rr)で持つと、「ブルー」と呼ばれる本来赤い部分が水色に置き換わる形質が発現します。
また、「ブルー」はヒレなどの赤い発色部分が水色に置き換わるだけなので、体色に関してはノーマルとなります。
グッピーの中でもトップクラスの人気品種「ブルーグラス」の青い色彩表現は、このブラオのヘテロに由来しています。
「ブラオ」は柄を消してしまう性質から、扱いにくい形質とされ人気は高くありません。
これに対し、ヘテロで表現される「ブルー」の発色はグッピーにおいて最も人気です。
ブルーグラスの青い色彩は常にRrとヘテロの時に発現する形質です。
したがってブルーグラス同士の交配でどれだけF1をとっても、必ずRR(レッドグラス)、Rr(ブルーグラス)、rr(ブラオ)に分離します。
ブルーグラスを100%固定することができないのは、この性質に由来します。
二重劣性表現
クリーム、ヴァイスなどと呼ばれる白系の表現は、「二重劣性」と呼ばれる2つの劣性形質を同時に持ち合わせる珍しい表現型です。
他にも形質を重ねることで三重劣性、四重劣性にすることも可能です。
しかしグッピーの場合、体色の表現に関しては重ねれば重ねるほど白に近づきます。
ヴァイスの時点で十分に白く、これ以上重ねても見た目で識別ができません。
出現率が低いこともあり、流通も少なく人気もあまり高くない表現です。
希少性は高く、入手の機会は多くはありません。
「ヴァイス」や「ゴールデンブルー」といった形質を持ったグッピーはほとんど販売されていません。
しかし、遺伝様式を知っていればこのようにして自分で作出が狙えます。
様々な形質の遺伝様式を理解すれば、誰にでも狙ったグッピーを生み出せるチャンスがあります。
自分だけのオリジナルグッピーが創造できる、この点がグッピーの魅力です。
見た目で区別できない形質
先に述べたブルーグラスとレッドグラスのメスのように、見た目での区別が困難な形質も中には存在します。
見た目では区別できませんが、遺伝上は区別して遺伝します。
見た目で区別できない個体の遺伝子型を調べるには、交配して得られた子の形質を見るほかありません。
グッピーの遺伝形質一覧 体色編 まとめ
今回は体色の遺伝についてお届けしました。
ここで紹介したカラーがボディのベースの色彩となり、これに体側や尾ビレの柄、ヒレの形状が加わることで品種としての表現が形作られます。
体側や尾ビレの柄、ヒレの形状の遺伝についてはまた、後日お届けしようと思います。
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