ハイグロフィラの魅力
ハイグロフィラの世界へようこそ。
ハイグロフィラは、東南アジアを中心に広く分布するキツネノマゴ科の水草です。
比較的育成しやすい種が多く、古くから人気の高い有茎草が多く知られます。
水草レイアウトにもおいても中~後景を彩る定番種であり、育てやすく成長のコントロールもしやすいことから好んで用いられます。
また、一部の種ではCO2を添加せずともそれなりの美しさに育ってくれるものもうれしいところです。
さらに比較的低光量、肥料なしで育つ種類もいます。
種類が非常に多くコレクション性も高いことから、レイアウトのみならずマニアックな人気もあります。
入門向けといえるほど育てやすく、レイアウトに使用しても扱いやすく、コレクター的需要もある。
このように、さまざまな楽しみ方ができるのがこのハイグロフィラ系の魅力といえるでしょう。
自分好みの個性豊かな育成が楽しめるハイグロフィラの世界へ。
貴方を誘いましょう。
ハイグロフィラとは
分類 | シソ目キツネノマゴ科 |
pH | 5.0~7.0 |
GH | 0~6 |
CO2 | 必要 1滴/3秒 ※添加無しで育成可能なものもいる |
主な原産地 | 東南アジア(一部南米) |
ハイグロフィラは東南アジアを中心に広く分布するキツネノマゴ科の植物です。
水辺を好む性質があり、自生地では水中、水上どちらの姿でも生育しています。
適応力の高い植物ともいえるでしょう。
有茎草の入門種とも呼ばれ、水草全体から見れば育成は容易な部類に入ります。
最低限の光量とCO2添加が満たされていれば、それだけで十分育つものが多いでしょう。
底床はソイルが理想的ですが、砂や大磯砂でも育ちます。
基本的に強健な水草ですが、ハイグロフィラは全体的に低温に弱い傾向があります。
水温が20℃を下回ると弱りだすものが多いので、加温して育成しましょう。
水上葉も楽しめる
ハイグロフィラの仲間は水中と水上とで大きく葉の形状を変える種類も多いです。
アクアテラリウムなどで、水中と水上両方の姿を楽しむのも良いでしょう。
どちらもハイグロフィラ・バルサミカ
大きく姿が変わる種の一例として、ハイグロフィラ・バルサミカは水中ではギザギザとした繊細な葉をしています。
しかし水上では、これがギザギザにならず細長い丸葉になります。
水中と水上とではまるで別種に見えるような、全く姿を変える種類もハイグロフィラには多く知られます。
主なハイグロフィラ
水草レイアウト水槽で特に使用頻度の高い人気種をピックアップして紹介します。
ハイグロフィラ・ポリスペルマ
学名:Hygrophila polysperma
定番種として、初心者から上級者まで幅広く人気のあるハイグロフィラの基本種です。
ライトグリーンの美しい葉を展開する有茎草で、丈夫で育てやすい水草として古くから親しまれています。
流通量も多く、入手しやすい点もうれしいところです。
育成において特にCO2添加を必要とせず、光量も60cm水槽で1000lm程度あれば十分育ちます。
むしろ一般的な水草が要求するような最適な環境を整えると、無尽蔵に増えすぎることもあるので注意が必要です。
根張りも良く水草の中でも成長が速く、水槽立ち上げ初期の水草として水中の養分を素早く吸収し、コケの発生を抑えてくれます。
底床バクテリアの繁殖を促進するため、はじめて水槽をセットする際の立ち上げ用の水草としてもよく使われます。
レイアウト水槽の立ち上げ時に一番最初に植えておき、完成形ではそのまま後景草として活用するのはよくあるパターンといえるでしょう。無駄のない活用法です。
葉が非常に柔らかいので、レイアウトに用いる際はエビや草食性の魚からの食害に注意します。
言い換えれば成長が早く食べやすいので、水草を主食とする生体のエサとしても有効です。
ハイグロフィラ・ロザエネルヴィス
学名:Hygrophila polysperma ‘Rosanervig’
葉脈が赤く染まるポリスペルマの変種です。
こちらも古くから知られる定番種で流通量も多く、他の水草には見られない色彩から高い人気があります。
ポリスペルマの変種なので基本的な性質はポリスペルマに準じます。
ただし、単純に育てるだけであればポリスペルマ同様の環境でも育ちますが、ロザエネルヴィス最大の特徴である赤い発色を引き出すのは難易度が高いことでも知られています。
CO2、肥料添加無しの環境で育てると赤い発色が表現されず、ポリスペルマと見分けがつかなくなることもあります。
本種の魅力を最大限に発揮させるには、60cm水槽で3000lm程度の光量と、CO2添加、液肥主体で肥料を与える管理が有効です。
ポリスペルマに比べると成長スピードは遅いようです。
手に余るほど増えすぎることは、あまりありません。
ウォーター・ウィステリア
学名:Hygrophila difformis
ポリスペルマと並び、古くから知られているハイグロフィラです。
「ウィステリア」の名前が有名でハイグロフィラとして呼ばれることがあまりないので、本種を知っていてもハイグロフィラの仲間であることは知らなかった、という方もいるかもしれません。
細長く分岐した鋭い葉で、一株あたりの葉の密度も高く、入り乱れたような姿が特徴的です。
草体が美しいわりに育成しやすく、たくさん茂ると葉の複雑な空間が稚魚の隠れ家になります。
このことからレイアウトだけでなく、グッピーなど小型魚のブリードを目的とする水槽にも良く用いられます。
ニューラージリーフハイグロ
学名:Hygrophila stricta ‘Thailand’
比較的新しく知られるようになったハイグロフィラです。
名前の通りの大型種で、葉長10cmにも及ぶ大ぶりの葉を付けることがあります。
90cmクラスの水槽での使用がおすすめです。
元々本種とよく似た姿をした「ラージリーフハイグロ」が知られており、より育てやすい類似種として注目を浴びたのが本種です。
育成は容易ですが、草体全体がある程度の光量を要求します。
光量が足りなくなると、下葉が落ちやすくなる特性があります。
株本まで光が届くよう、根元には流木や石などはあまり配置しないほうが良いでしょう。
ハイグロフィラ・ピンナティフィダ
学名:Hygrophila pinnatifida
2014年頃に安定して流通量が見られるようになった、個性の強い草体を持つハイグロフィラです。
鳥の羽のようにギザギザした珍しい形状の葉をつけます。
それに加えて、本種は有茎草でありながら活着性を持つという極めて珍しい特性を持っています。
このため、一般的なハイグロフィラ同様有茎草として扱う他に、アヌビアスやミクロソリウムのような活着系水草として扱うこともできるのが本種の特徴です。
見た目の割に育成は容易な部類に入り、CO2の添加も必須ではありません。
(もちろんあったほうが調子は良いです。)
また本種は弱酸性の軟水に偏った環境よりも、若干硬度のある環境のほうが調子良く育てられるようです。
レイアウトでは個性的な草体を活かし、変化を付けたいワンポイントの植え込みによく使われます。
ハイグロフィラ・サリチフォリア
学名:Hyrophila salicifolia
Hygrophila ringens var.ringens
黄緑色から緑色の美しい細葉を展開する、シンプルな草体のハイグロフィラです。
育成において特にCO2添加を必要とせず、光量も60cm水槽で1000lm程度あれば十分育ちます。
総合的に見て、扱いやすい有茎草といえるでしょう。
比較的草丈があるため、水面まで達してしまう場合はこまめにカットして差し戻すと良いでしょう。
本種は東南アジア一帯に広く分布しており、日本にも自生していて「オギノツメ」という和名もあります。
ただし、アクアリウムのルートで流通する本種が日本に自生するオギノツメと同じものかどうかは、詳細不明といわれています。
ハイグロフィラの種類は実に多種多様です。
ここで紹介したものは比較的流通量が多い基本種に過ぎません。
さまざまな水草を組み合わせてレイアウトを創り上げてみるのも良いでしょう!
▼過去取り扱い全種一覧はこちら
ハイグロフィラの使い方
レイアウトでは基本的に中~後景草として使われます。
取り扱いのクセが少なく比較的育てやすい種が多いため、はじめてのレイアウトにもおすすめできるグループです。
ただし、ハイグロフィラ全種の育成が容易なわけではありません。
育成が容易な種が大部分を占めますが、それにも段階があります。
基本はあくまでも60cm水槽で3000lm程度の光量とCO2添加ありの環境を標準として考えます。
それに比べて条件が増えるのか、減るのかを種ごとに見ていくのが良いでしょう。
一部にCO2添加しなくとも育成可能な種類もありますが、基本的には必要なものが多いとお考えください。
ハイグロフィラ育成の基本
冒頭でのおさらいとなりますが、標準的なハイグロフィラは以下の環境を満たしていれば基本的に育成可能です。
水温 | 20~26℃ |
光量 | 30cm水槽:1000lm以上 45cm水槽:2000lm以上 60cm水槽:3000lm以上 |
CO2 | 1滴/3秒(60cm標準水槽相当) |
pH | 5.0~6.5 |
GH | 0~6 |
肥料 | 液体肥料メイン |
また、育成が容易とされる次の4種に関しては、もう少し緩い条件でも育てられます。
水温 | 20~28℃ |
光量 | 30cm水槽:300lm以上 45cm水槽:600lm以上 60cm水槽:1000lm以上 |
CO2 | 無くても可 |
pH | 5.0~7.0 |
GH | 0~6 |
肥料 | 無くても可 |
この4種に関しては、CO2無添加でもある程度育てることはできます。
もちろん添加が可能な場合は、添加したほうが調子良く育ちます。
水温
20~26℃が良いでしょう。
ハイグロフィラの仲間は全体的に耐寒性が低く、20℃を下回ると成長が鈍化する傾向があります。
水上葉で管理する場合、屋外での冬越しは不可能とお考えください。
光量
60cm水槽で3000lmを基本と考えてください。
ある程度の光量を与えたほうが美しく育ちます。
種類によっては、根本まで光を当てないと下葉が落ちてしまうものもいます。
植栽位置、照射位置にも気を付けると良いでしょう。
CO2添加
レイアウトに用いる目的で育成するのであれば、基本的に必要です。
なくても育つ場合もありますが、徒長するなど草体が美しく維持されません。
ポリスペルマなど一部の育成が容易とされる種の場合は、なくても育成可能です。
底床
基本的にソイルでの育成がおすすめです。
水草の育成に適している栄養系ソイルであればまず間違いはないでしょう。
アマゾンハイグロなどの南米産の極端な軟水を好む種を除けば、大磯砂などでの育成も一応は可能です。
水質
基本的には弱酸性の軟水に寄った水質を好みます。
どの値が最適となるのかは種に寄りますが、概ねpH5.0~7.0の範囲が良いでしょう。
この範囲の中で南米産は低めの維持が良く、ピンナティフィダなどの活着系は高めに維持すると良い結果が得られるようです。
トリミング
ハイグロフィラのトリミングは基本的に「ピンチカット」と「差し戻し」によって行います。
茎にある節が残っていれば、そこから脇芽が出てきます。
差し戻した場合は切った茎の先端から根が出てきて、比較的短期間で根付きます。
コケ対策
ハイグロフィラは葉が柔らかいので、コケ取り用のエビとしてはミナミヌマエビがおすすめです。
ヤマトヌマエビも有効ですが、匹数が多いと勢いあまって葉を食害されてしまう場合もあります。
ハイグロフィラは再生力も強いので、もし全体が覆われてしまうほどコケがはびこっている場合は葉を落としてしまい、頂芽だけを残して再生を狙ったほうが美しく仕上がるでしょう。
肥料
液体肥料をメインに与えると良いでしょう。
育成が容易とされる種の場合は、無理に与えなくても構いません。
与えすぎると、勢いあまって増えすぎることがあります。
殖やし方
ハイグロフィラの殖やし方は、水草の中でもトップクラスに容易な部類に入ります。
「節のついた茎」が残っていれば、それを底床に差すだけで簡単に増やせます。
したがって節を残してカットした茎を植えればOKです。
一つでも節が残っていることが重要で、葉が残っている必要はありません。
頂芽も必要ありません。
節さえあれば、茎は短くてもかまいません。
茎を植えておくと節から脇芽が出て、やがて成長していきます。
ハイグロフィラは育成環境が整っていれば、どんどん脇芽を出し成長していく強健な水草です。
トリミングには強いグループですので、積極的にカットしても大丈夫です。
ハイグロフィラ用語集
差し戻し・・・カットした水草をまた底床に差し戻すことで株を殖やす方法です。
多くの有茎草は茎をカットしても地面に植えればまた根が出て生育します。
ハイグロフィラの仲間も例外ではありません。
ハイグロフィラの殖やし方としては最も基本的な手法といえるでしょう。
アマゾンハイグロ系・・・南米産の匍匐性のグループです。
レイアウトでは主に前~中景草として用いられます。
実はこのグループはStaurogyne属に分類されており、ハイグロフィラとは別属になります。
しかし、古くからハイグロフィラの仲間として扱われていた経緯がありました。
このため、今もなおハイグロフィラの仲間として括られることが多いようです。
コメント