インパイクティス・ケリー<熱帯魚解説>

種類解説(熱帯魚)
種類解説(熱帯魚)

どうも、ほにゃらら sp.です。

今回ご紹介するのはインパイクティス・ケリー。

見る角度によって背中の青い発色が変わるカラシンの仲間です。
色味の変わるメタリックブルーの発色は水草水槽に大変よく映え、ネオンテトラとはまた異なるブルーの発色を見せてくれます。

レイアウトに群泳させる魚として、古くから人気の高い熱帯魚です。

インパイクティス・ケリーとは

名前インパイクティス・ケリー
学名Inpaichthys kerri
別名ロイヤル・テトラ
分布ブラジル ― マディラ川上流域
サイズ最大体長4cm程度
最適pH6.0~7.0くらい
あんまり気にしなくてOK

インパイクティス・ケリーはブラジル、マディラ川上流域原産のカラシンです。
背中のブルーの輝きが見る角度によってさまざまな色合いに変化する点が本種最大の特徴です。
青紫~赤紫まで変化が見られ、オスのほうがやや青みが強く、メスは多少黄色みがかって見えます。

この変化する発色を写真や動画でお伝えするのは非常に難しく、ぜひ一度現物を目にしていただきたい色合いです。

本種はれっきとした小型テトラ類の一種であり、実は「ロイヤル・テトラ」という別名も持っています。……しかし、この名前はなぜかあまり定着していません。
学名表記をそのまま読んだ「インパイクティス・ケリー」の名前でもっぱら流通しています。

ロイヤル・テトラの由来

インパイクティス・ケリーは、魚類学者で知られる上皇さまが皇太子時代の1978年(昭和53年)に行われた「ブラジル移民70周年記念式典」でブラジルを訪問した際に寄贈され、日本へ持ち帰られた由緒ある熱帯魚です。

その後、国内で繁殖に成功し、観賞魚として流通するようになりました。
「ロイヤル」の別名は、この経緯に由来しています。

入荷の珍しいカラシンは学名そのままで読むことが多いものの、ブリード技術が確立して入荷量の多いカラシンは多くの場合、「〇〇・テトラ」という名前で流通することがほとんどです。
ですが、本種の場合は入荷量が多いにも関わらず、学名そのままのほうが通りが良いようです。

インパイクティス・ケリー
(ワイルド個体)

東南アジアで大量にブリードされているため入手は容易、丈夫で飼育も容易です。
ごくまれにワイルド個体が流通しますが、基本的にはブリード個体が流通の大半を占めます。

本種は一般的なテトラ類に比べると少々気が強く、自分よりも小さい魚を追い掛け回すことがあります。
しかし、それほど激しく追い回すわけでもありません。
十分に水草を茂らせるなどある程度隠れ家を用意しておけば、混泳は可能です。

本種の飼育に関しては、熱帯魚飼育に必要とされる基本的な設備を整えていれば、それでOKです!
pHもどちらかと言えば弱酸性を好みますが、そんなに気にしなくてOKです。
少しぐらいアルカリ性に傾いても平気です。

割と水質には寛容なので、あまり小難しく考えなくとも基本さえ押さえれば問題なく飼育できます。
ただし本種の魅力を最大限に引き出すためには、弱酸性の軟水環境で、水温を23℃くらいまで下げて飼育したほうが調子が良いです。
この環境で飼育すると、背中のブルー発色が美しく輝き、良い色を見せてくれる傾向があります。

多くの水草も熱帯魚より少し低めの水温のほうが調子が良いことが多く、この点でも水草水槽とはベストマッチな相性であるといえます。


バリエーション

スーパーブルー・インパイクティス・ケリー

インパイクティス・ケリーの最大の特徴である、ブルーの面積をより拡大させた改良品種です。

テトラにしては珍しく雌雄で発色が異なる品種で、オスは全身が青く染まりますがメスは黒く染まるという特徴があります。

原種の色彩も十分美しいですが、さらに主張を強めたのが本品種となります。

メス個体

メス個体は青い部分が黒に置き換わります。

テトラ類の改良品種としては珍しく、オスメス区別して販売されることが多いです。

オスとはうって変わり、こちらはシックなメタリックブラックが落ち着きを見せながらも高級な印象を与えます。

ゴールドピンク・インパイクティス・ケリー

インパイクティス・ケリーの白変個体を固定した改良品種です。

アルビノに似た発色を示しますが、アルビノではないので目は黒いままです。

写真には映りにくいのですが背中には特有のブルーの発色は残っており、独特の輝きを放ちます。


インパイクティス・ケリーによく似た種

主にNematobryconネマトブリコン属で構成されます。
インパイクティス・ケリー自体はネマトブリコン属ではありませんが、背中の発色が似たグループとなります。

エンペラー・テトラ

学名:Nematobrycon palmeri

コロンビア原産のカラシンです。
インパイクティス・ケリー同様に見る角度により色味が変化する背のメタリックブルーが特徴ですが、オスの尾ビレはフォーク状に変化する点が異なります。

シックで上品な美しさを持つ魚ですが、仕上がったオス個体は大変鮮やかで見ごたえがあり、ケリー以上に華やかな印象を持ちます。

レインボー・テトラ

学名:Nematobrycon lacortei

コロンビア原産のカラシンです。
エンペラーテトラ同様、尾ビレがフォーク状に伸長し、仕上がった時のフォルムは格別の美しさです。

インパイクティス・ケリーやエンペラー・テトラに比べると青みが弱い代わりに黄色みが強い発色を示します。
こちらも見る角度によって色が変わる、複雑な色合いを見せてくれます。

まさにレインボーの名にふさわしい輝きと色合いを見せてくれる魚ですが、ワイルド個体が主流となるため輸入が不定期です。

また、カラシンとしては異例なほど、水質の条件をややシビアに要求します。弱酸性の軟水環境で最高潮の発色を見せてくれます。
本種を優雅に群泳させることができれば、立派な上級者といえるでしょう。


有用なアイテム

インパイクティス・ケリーは一般的なテトラ類に比べ、23℃付近とやや低水温を好む傾向があります。
一般的な26℃固定式のオートヒーターでも飼育自体は可能ですが、本種にとっては温度設定がやや高いです。このため、理想を言えば温度調節可能なタイプのヒーターを用いると良いでしょう。

また、夏場はクーラーやファンの使用が、他のテトラ類以上に重要となります。

その他は一般的なテトラ類に準じます。
テトラ類全般に共通する基本的な性質については、小型カラシン共通ページをご覧ください。

小型カラシン(テトラ)の世界
代表的な小型美魚、小型カラシンの情報サイト。テトラ類の飼い方、育て方、飼育に必要な全ての基礎知識と、厳選した人気種をピックアップして紹介しています。

混泳について

インパイクティス・ケリーはテトラ類としては少々気が荒めですが、混泳は可能です。
本種より小さい魚や、動きが緩慢でヒレが長い魚の場合は、ヒレを多少かじられてしまう可能性がある点に留意しましょう。

とはいえ、水草を茂らせたり、流木や石を複雑に組んだりして隠れ家を増やしておけば、問題になるレベルではありません。

なるべく本種と同じかそれより大きく、動きが機敏な魚と混泳させると良いでしょう。
同じテトラ類同士や、ラスボラ、コリドラスなどが混泳相手として適しています。

ウィローモスなどを茂らせておくと
攻撃性を緩和できます。
混泳相手混泳相性備考
グッピー
グッピーは弱アルカリ性を好みます。
ヒレかじりに注意
プラティ・卵胎生メダカ
多くの卵胎生メダカは弱アルカリ性を好みます。
カラシン・小型テトラ
コイ・ラスボラ
ローチ・ボーシャ・タニノボリ
フライングフォックス/アルジイーター
ドワーフシクリッド
サイズ差に注意
アフリカンシクリッド
×
エンゼルフィッシュ
サイズ差に注意
ヒレかじりに注意
ディスカス
サイズ差に注意
ベタ・グラミー・アナバス
ヒレかじりに注意
コリドラス
オトシンクルス・ロリカリア
プレコ
レインボーフィッシュ
多くのレインボーは中性付近を好みます。
ヒレかじりに注意
ハゼ・ゴビー
フグ・パファー
×
エビ・ビーシュリンプ
稚エビは食べられる可能性があります。
ネオンテトラの混泳相性表
※混泳相手の種や性格によっては、例外もあります。

基本的には本種と同じかそれより大きく、ヒレが伸長しない種であればほとんど混泳可能です。
本種より小さい種や、ヒレが伸長する種に関しては、多少なり攻撃してしまうことがあります。
混泳が不可能なほどひどくはないことが多いですが、留意はしておきましょう。


インパイクティス・ケリーの繁殖

繁殖は難しいといわれる小型カラシンの中では、本種は比較的容易といわれます。
水草をよく茂らせている水槽ではいつの間にか産卵に至っていることもあり、気が付くと稚魚が泳いでいるなんてこともあります。

pH6.0ぐらいの弱酸性の水質と少し低めの水温を維持し、水槽一面に水草を茂らせていると繁殖の条件が整いやすくなります。

オスメスの区別
オスの脂ビレ
メスの脂ビレ
※改良品種のため体色が黒ですが、
脂ビレの発色は通常個体同様です。

テトラ類は雌雄の区別が困難な種が多い中、本種は珍しく雌雄の区別が容易といえる種です。

脂ビレが青いものがオス、オレンジのものがメスです。

一般に、オスのほうが青みが強く、メスは黄色みが強くなる傾向があります。

産卵させるまでの手順

  1. 熱帯魚飼育の基本的な飼育設備を整えます。
    底床や水草の上にばらまくタイプの産卵形態をとるため、前景草やウィローモスなどを良く茂らせておきましょう。この茂みに向かってばらまかれたものが、生存率が高いです。
    繁殖を主目的とするならば、フィルターにはスポンジフィルターを採用すると良いです。
  2. テトラ類は基本的に群れで飼育するので、5匹以上で飼育していれば大抵の場合オスメス混じっていると思います。
    テトラ類の雌雄判別は難しい種が多いですが、インパイクティス・ケリーの場合は容易です。
    脂ビレが青いものがオス、オレンジのものがメスです。
  3. 1日2回以上、多めにエサを与えます。
    人工飼料でも構いませんが、冷凍赤虫を与えると良いでしょう。
  4. 十分に成熟したメスはふっくらとした体型になってきます。
  5. 弱酸性の軟水環境を維持しつつ、週に1回程度の定期的な水換えを行い、水質の維持に努めましょう。
  6. この状態をしばらく維持すると、うまく行けばいつの間にか産卵が行われます。

産卵後の育成

ばらまき型産卵のため、卵を水槽内で発見することは困難です。
多くの場合、稚魚になってから発見されることがほとんどでしょう。

そのまま水槽内で育つこともありますが、稚魚の生存率を上げるためにはふ化したら回収して親とは隔離すると良いです。

ふ化した稚魚にはブラインシュリンプの卵をふ化させて、幼生を与えます。


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インパイクティス・ケリー まとめ

インパイクティス・ケリー。
見る角度により背のメタリックブルーが異なる色彩を見せる、大変美しい熱帯魚です。
この発色を画像でお伝えすることは難しいので、ぜひ現物で見ていただきたいところです。

水草水槽に群泳させるテトラとしても定番で、水草を良く茂らせていれば混泳も楽しめます。
少々気が強いのでレイアウトと魚種の組み合わせに配慮しつつ、幻想的なブルーの色彩をご堪能ください。

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投稿者
ほにゃらら sp.

福島県産のワイルド個体。
ロカリティの詳細は残念ながら記録がない模様。
アクアリウム歴はだいたい20年くらい。
「同属内で多様なバリエーション」が好き。若干コレクター気味。
つまりコリドラスや、ミクロソリウムが最高。ということですね。

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