今回ご紹介する生体はカバクチカノコ貝です。
お掃除役で水槽内の地位を確立している貝類の中でも、コケ取り能力に優れています。
また、丈夫な生体なので飼育も容易です。
地味な印象が強いカバクチカノコ貝の生態を深掘りしていきます。
生物学データ
学名:Neritina pulligera
分類 | アマオブネガイ科 |
体長 | 3.5cm |
食性 | 雑食 |
分布 | 日本(南西諸島)・東南アジア |
日本(東南諸島)奄美諸島以南や東南アジアに生息にするカノコガイの仲間です。殻の色は茶・黒・黄色など色の濃淡があります。アクアリウムでコケ取りで知られる貝類の中では、石巻貝やサザエ石巻貝に比べてサイズが大きい生体です。
河口域の淡水から汽水に生息します。水温・水質に幅広く適応できることから、淡水飼育で問題はありません。タンクメイト・お掃除屋さんとしても優秀です。
夜行性で昼には流木などに隠れていることが多く、夜になると活発になります。
コケ除去能力
水槽内のお掃除屋といえば、ヌマエビ類を導入する方が多いかと思います。
今回ご紹介するカバクチカノコ貝などの貝類もまたタンクメイトとして優秀な働きをしてくれます。
貝類が得意とする場所は壁面だったり、ツルツルした面やガラス面に対して効果があります。シュリンプはツマツマ取るイメージですが、貝類は動いた場所がわかるように大きな幅で食べてくれます。
逆に細かい部分・隙間などのコケ取は苦手な分野になります。
Neritinini 族の仲間
シマカノコ貝
学名:Neritina paralella・Neritina turrita?
Neritina natalensis?・Vittina cumingiana?
日本(南西諸島以南)・東南アジア沿岸域で生息している貝。黄色と黒の縞模様で、イナヅマカノコとは異なり、複雑なラインではなく殻先から伸びるシマシマ模様がきれいな種です。
『ゼブラスネール』という別名も持ちます。
流通も多く入手しやすい種です。
イナヅマカノコ貝
学名:Neritina sp.・Neritina paralella?
Neritina dubia?・Neritodryas dubia?
Vittina variegata?
東南アジア沿岸域に生息する貝。
殻長が石巻貝に比べて高く、黄色と黒、赤褐色といった色、イナヅマの様な模様が特徴的です。
『タイガースネール』『シマオカイシマキ貝』『ベニオカイシマキ貝』などの別名も持ちます。
オカイシマキという名から、陸棲が強く、水槽から脱走することが多いです。
スラウェシ・イナヅマカノコ貝
学名:Neritina sp.・Neritina paralella?
Neritina dubia?・Neritina cornuta?
Neritodryas dubia?・Vittina variegata?
インドネシアはスラウェシ島に生息する貝。
ムラクモカノコのような模様を持ち、イナヅマカノコ貝のバリエーションの1つといわれているようですが、フタの色が異なります。
下記の記事でスラウェシ島のご紹介をしています。あわせてご覧ください。
ドングリカノコ貝
学名:Neritina plumbea
日本(南西諸島以南)・東南アジア原産の貝。
ドングリのような色彩と形が特徴的でコケを取る能力の高い貝です。個体の中にはイナヅマカノコに似た模様を持ちますが、薄いグレー、白っぽいフタで見分けることができます。
ムラクモカノコ貝
学名:Neritina variegata
日本(南西諸島)~東南アジア原産。
個体が小さいうちは褐色部が少なく縞模様がきれいに分かれてますが、成長をすると褐色部が多くなります。名前の通り、叢雲(※群がり立つ雲・群がる雲)という点からも模様バリエーションが豊富になります。
コケ除去能力の高さ、移動速度が速い点から、水槽内のコケのお掃除屋さんとしても優秀です。
飼育環境・設備
水槽サイズ
・飼育容器はプラケースから水槽まで可能です。※生体最大40mm程です。
※60cm水槽 コケ予防の場合3匹 コケが酷い場合5匹程度。
・フィルターは飼育容器のサイズに合うもの・容器によっては水換えのみで大丈夫です。
※脱走防止に水槽のフタは必要になります。脱走して死んでしまうリスク回避できます。
フィルター
水質への適応能力が高く、さほど気にすることはありませんが、低いphが苦手なので傾けないためにも、ろ過は安定させる必要があります。飼育する水槽サイズに合わせて選べば問題ありません。
水質・水温
水温:20~28℃ 水質:弱酸性~弱アルカリ性
低いphを好む生体ではないためph5.5以下にならないようチェックします。
水温が低くなると、動きが極端に鈍くなります。コケ除去能力も動きの低下に伴って
低くなるので水温は23℃前後で固定してあげると良いです。
底床
コケの除去用に導入される方が多いかと思います。水質の適応能力が高いこともあり、底床はどんなものでも使用できますが、本種の生息域から単独飼育の場合、砂利などがオススメです。
餌・給餌方法
水槽内にコケが生える環境であれば特別に餌をあげる必要性はないでしょう。
混泳
貝類は大半の生き物と混泳が可能です。
混泳OK
混泳NG
※貝類を捕食するフグや大型の魚・ナマズは誤飲の恐れがあり、リスク回避を考えるとNGとなります。
繁殖
汽水域で生息するため、卵を産み付けることがあります。ただし、ふ化した幼生は海水での生活で成長することから水槽内での繁殖はできません。
まとめ
カバ口カノコ貝は、水草への食害もなく、水質・水温適応能力の高さから多くの種との混泳も可能、お掃除役としても優秀な生体です。
広い範囲でコケが生えてお困りの方は、ぜひ本種のお迎えをおすすめします。
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