どうも、ほにゃらら sp.です。
今回紹介するのは改良メダカの歴史について。
実に多種多様な表現が次々と生み出されているメダカですが、その歴史を追ってみましょう。
2003年以前 基本品種のみの時代
鑑賞用のメダカとしては「ヒメダカ」が古くから知られていました。
ヒメダカは最古の改良メダカ、源流とも言える品種です。
メダカブームの火付け役となった「楊貴妃」「幹之」はこの時代にはまだいません。
それらの登場はもう少し先の話となります。
最古の改良メダカ、ヒメダカ
ヒメダカは緋色をめざして改良されたことから、ヒメダカという名が付いたとされています。
野生のメダカは数を減らしており、最も安価で入手しやすいメダカといえばヒメダカとなります。
今も昔も、肉食魚用の活き餌としてよく利用されています。
このため、メダカといえばヒメダカを想像する方も多いほど、一般的な品種です。
小学校の理科の学習教材として親しんだ方も、きっと多いことでしょう。
黄色みを帯びた優しげな体色を持ち、水槽やビオトープで泳ぐ姿は大変可愛らしいものです。
白メダカ、青メダカの登場
メダカといえばクロメダカとヒメダカ。
1990年代までは、メダカといえばヒメダカかクロメダカのどちらかを指しました。
しかし、2000年代に入ってから「白メダカ」「青メダカ」が登場し、一躍注目を浴びました。
この2つは改良メダカの先駆け的存在であると言えます。
2004~2007年 楊貴妃が登場
この時代に楊貴妃が登場します。
ヒカリ、ダルマといった形態変化が見られる品種が登場したのもこの時代で、積極的に改良が進められました。
楊貴妃の登場
メダカブームの火付け役となった「楊貴妃」がここで初めて登場します。
従来のヒメダカに比べ圧倒的に鮮やかな色彩が、多くの愛好家を魅了しました。
楊貴妃の登場は現在の改良メダカブームの、第1のきっかけといえます。
そのぐらい大きなインパクトが2004年にはあったのです。
当時は最先端の品種として大変話題になりました。
現在では入門用という位置づけになりましたが、その人気は今もなお変わりません。
アルビノ、琥珀の登場
最近では見かける頻度が少なくなりましたが、当時楊貴妃と並んで注目を浴びていた品種です。
アルビノメダカは長い間「いそうでいない」といった位置づけにありましたが、2004年頃からまとまった数での流通が見られるようになりました。
琥珀メダカはクロメダカとヒメダカの中間のような色彩を持ち、楊貴妃と並び人気だった品種の一つです。
その名の通り、琥珀色の色彩が当時人気を博しました。
この頃に琥珀系の尾ビレに入る黄色い色彩が着目され始め、その後尾ビレの色彩が美しい品種への改良のきっかけになっています。
どちらも見かける頻度は少なくなりましたが、それぞれの表現をベースとして受け継いだ品種が現在でも続々開発されています。
体型の変化
色彩の変化だけでなく、体形の変化が固定化されたのもこの時代です。
主に「ダルマ系」「ヒカリ系」の2つがこの時代に登場しました。
ヒカリメダカは腹ビレが背中にくる形に体型を改良した品種で、上から見ると光沢が強い点が特徴です。
ダルマメダカは縮こまった体形が特徴です。
水温によって普通体型との中間形も出現し、こちらは「半ダルマ」と呼ばれています。
熱帯魚で言う「ショートボディ」や「バルーン」と呼ばれるタイプの改良品種です。
後にヒカリとダルマの複合系も登場し、ヒカリダルマメダカと呼ばれ珍重されました。
当時は色彩のバリエーションがそう多いわけではありませんでした。
ヒカリ、ダルマ、普通体型の体型3種と、ヒ、黒、白、青の4色からの組み合わせが一般的でした。
特にダルマメダカは作出・系統維持の難易度が高く、愛好家の間では熱心に繁殖に取り組まれていたようです。
2008年 幹之の登場
改良メダカに対する価値観を大きく変えたきっかけとなった、「幹之」メダカはこの年に登場します。
普通体型で光沢を持つ幹之の登場は、それまで不可能と考えられていた発色であり、改良メダカの愛好家の間でビッグニュースになりました。
幹之メダカは現在でも改良メダカ人気品種の筆頭とも言え、メダカブームの火付け役となったもう一つの品種といえるでしょう。
幹之が登場するまでは光沢を持つメダカといえばヒカリメダカが一般的で、ヒレの形状が独特なものになるのは必然とされていました。
ところが、幹之メダカは普通体型で光沢を表現しています。
それまでの間不可能と考えられていた表現が、ここに誕生したのです。
この光沢は後に「体外光」と呼ばれ、さまざまな品種に取り入れられるようになります。
ただし、初期の幹之メダカは現在知られるものほど光沢が強いものではありませんでした。
現在でいう強光や鉄仮面などのような強い発色を持つ個体は、この時代にはまだほとんどいません。
また、当時の幹之の表現は青または白系の品種にしか遺伝させることができなかったため、黒や赤系にも遺伝できるという点で、ヒカリメダカの人気も衰えませんでした。
2009~2011年 ヒカリ、ダルマ全盛期
普通体型のメダカは楊貴妃と幹之の二大人気品種が出揃った一方で、ヒカリやダルマといった体形に変化が見られる品種の改良が盛んに進められていました。
この時代はヒカリ系、ダルマ系メダカの全盛期といえます。
ヒカリとダルマの複合系も多く見られました。
通常のメダカより尾ビレが大きくなるヒカリ系は、銀河などの尾ビレの色彩が目立つ品種と相性が良いとされました。
ヒカリ系のなかでも銀河メダカはこの時代に登場しました。
銀河メダカは尾ビレの色彩に着目し、体色と尾ビレの色彩にメリハリをつける形で改良が進められました。
元は青メダカがベースとなったようですが、黄色の色彩が加わり何とも言えない神秘的な体色を表現しています。
ヒカリメダカ系の品種としては、現在も人気の品種の一つです。
出目メダカが登場したのもこの時代です。
形状の変化といえばそれまではヒカリとダルマが中心でしたが、それ以外の形態も見られるようになりました。
ただし、2012年以降は改良の方針が体型の変化よりも体色の変化に力を入れる方向性にシフトしたらしく、形状に変化のある品種は以降だんだんと少なくなっていったようです。
ヒカリメダカの派生系品種です。
なかでも、背ビレが2本にわかれる系統は「サムライ」と呼ばれ注目を集めました。
ヒカリメダカ系の中では流通が少なく、珍しい系統とされます。
目が大きくなる出目メダカに対し、逆に小さくなる方向性で改良が進められた品種です。
このタイプは「男前メダカ」「点目メダカ」とも呼ばれ、当時は最高クラスの高級品種でした。
この表現は視力があまり良くないらしく、他の品種と混泳させると餌を食べるときに不利になりやすいようです。
他にも、「目前メダカ(ポニョメダカ)」など、体や顔つきの形状に改良が加えられることが多かった時代でした。
2012年 改良が加速、種自体が細分化
2011年までは体形の変化に力が入れられていましたが、2012年頃から体色の変化に力が入るようになったようです。
透明麟系の品種が充実
黒系メダカの登場や、透明麟系の品種の登場が見られました。
キタノメダカとミナミメダカ
さらに、この年はメダカの分類に大きなニュースがありました。
それまで「メダカ」と呼ばれていた魚には、実は2種含まれていたことがこの年に判明しました。
日本海側の一部地域に住むメダカは「キタノメダカ」として細分化され、残ったメダカは「ミナミメダカ」として整理されました。
その結果、「メダカ」という標準和名は2012年に消滅したのです。
改良メダカはミナミメダカがベースとなっています。
2013年 ラメ・体内光が出現
小川ブラックといった黒系の人気品種や、ラメ、体内光といった幹之の派生系となる表現が登場したのがこの時代です。
幹之とヒカリ体型の組み合わせ「螺鈿光」などもこの時代に作出されました。
特にラメはさまざまな体色と遺伝上の都合でも相性が良いようで、以後多くの品種に取り入れられました。
2014年 幹之のクオリティが向上
高い需要から幹之の流通量がポピュラー種と言えるほど普及し、流通量の増加に伴ってクオリティも上がってきました。
「強光」や「鉄仮面」といった、クオリティの高い個体が流通するようになったのも2014年前後のことです。
メダカの愛好家の間で、広く”グレード”の概念が知られるようになった年とも言えるでしょう。
2015年 ラメの台頭、三色の登場
全身白の発色に数多くのラメが散りばめられたダイヤモンドダストをはじめとし、ラメ系の品種が数多く登場したのがこの時代です。
また、魔王メダカといった変色系の品種も登場しました。
およそこの年あたりから、多種多様な表現型が続々生み出されるようになったものと思われます。
三色メダカが登場したのもこの時代です。
まるで錦鯉の小型版とも言えるような色彩は注目を集め、さまざまな生産元で三色系品種は作出されるようになりました。
それぞれの系統で重視する発色が異なるようで、系統ごとに「〇〇三色」という名前で販売されることが多いです。
2016年 三色の台頭
前年に登場した三色の表現は、さっそくラメや透明麟などを取り入れ多様化を見せました。
他に、各ヒレが伸長する「スワロー」と呼ばれる表現も注目を集めます。
スワロー系グッピーのような表現がメダカでも可能になるのであれば、ダルマやヒカリ、スモールアイなどの派生を見るとそれ以上の表現も可能になるのではないかと、当時衝撃を与えた表現です。
2017年 オーロラ、オロチ、紅帝、松井ヒレ長
夜桜をはじめとしたオーロラ系品種が台頭し、単色系屈指の人気品種「オロチ」「紅帝」が登場したのもこの時代です。
また、この年はメダカだけで少なくとも延べ100商品以上、取り扱いが開始になりました。
夜桜の登場
「オーロラ」と呼ばれる不安定な表現が導入され、色彩にさらなる多様化が見られたのがこの時代です。
そのなかでも「夜桜」系の品種は一躍注目を集めました。
現在でも夜桜をベースにした派生品種は続々と作出されています。
単色系品種がグレードアップ
オーロラ系の複雑な色彩表現が話題となる一方で、全身黒一色の「オロチ」、赤一色の「紅帝」が登場したのもこの年です。
それぞれヒメダカ、クロメダカの究極系とも言える発色を持ち、こちらも負けず劣らずの人気のある品種です。
松井ヒレ長が登場
ロングフィン系統として新しく「松井ヒレ長」が登場したのもこの時代です。
ヒレの一部が伸長するスワローと異なり、松井ヒレ長はヒレ全体が大きく伸長するのが特徴です。
上見でも横見でも見栄えの良い品種で、一躍人気になりました。
2018年 ロングフィン全盛期
2017年に登場した松井ヒレ長をベースに、スワローも合わせると数々のロングフィン系品種が世に生み出されたのがこの時代です。
中でもアルビノを導入した「龍の瞳」は象徴的な品種と言えるでしょう。
三色系メダカも発展を遂げ、雲州三色や非透明麟三色もこの時代に誕生しました。
独創性の強い体色も続々開発されており、腹膜に青い色が乗る「深海」や、ブラックリムと呼ばれる黒く縁どられた鱗と赤いヒレの色彩が対照的な「五色」などの人気品種もここで誕生しています。
この年はメダカだけで少なくとも延べ200商品弱を取り扱い始めました。
2019年 人気品種の掛け合わせ
2018年までに登場した数々の人気品種を掛け合わせ、その結果誕生した品種がこの年に多く出回りました。
夜桜や三色、松井ヒレ長、深海などからの派生が多く見られます。
2020年 特殊品種の多様化
サファイアや忘却の翼を筆頭に、既存の品種の派生としては一ひねりある表現が見られるようになったのはこの時代です。
各々の品種名も、より凝った名称が付けられる傾向になってきました。
この年はメダカだけで少なくとも延べ300商品以上を取り扱い始めました。
それぐらい多様性が見られた年になります。
一方で、コロナ禍の影響でイベントを開くことが困難な年でもありました。
サファイアの登場
青ラメが魅力的な「サファイア」は登場以来、一躍話題になった品種です。
サファイアには背ビレありのものとなしのものが知られます。
上見での青く輝くラメの鑑賞性は、背ビレなしの方が良いでしょう。
一方で、背ビレありのほうが系統の維持や、他品種への交配には扱いやすいようです。
ダルマメダカの再燃
一時期人気が下火になっていたダルマメダカですが、2019年頃から徐々に人気が再燃したようです。
2020年にはまた他の品種の表現を取り入れることで、多様な表現を見せてくれました。
2021年 普通種が需要増
2021年は巣ごもり需要によるものか、メダカ自体の需要は加速しました。
それまでのポピュラー種に人気が集中したようです。
2020年ほどの勢いはないようでしたが、改良も進められてはいました。
2022年 ラメ色の変更
サファイアメダカに発端した青ラメのように、ラメの色に個性を持たせる改良が進められた年でした。
夜桜の派生系となる「宮桜」「彩桜」、それまであまり見られなかった緑の発色を強調した「サボテン」などが話題になりました。
ラメの可能性を追求した年となったようです。
2023年 これからのメダカ
2023年4月時点、ユリシスメダカの派生系とロングフィン系の品種に注目が集まっているようです。
今年はどんな表現を見せてくれるのか、その変化が楽しみですね。
毎月のように新しい表現が登場するメダカ。
チャームで取り扱い中のすべてのメダカは、以下のボタンからどうぞ。
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コメント
はじめまして。私、めだかモミジの西山と申します。
とても興味深い記事をありがとうございます。
今現在、海外向けにめだかについての解説の動画を作成しており、日本のめだかが海外に日本の新しい文化として
広まることを目標に活動しています。今回、改良メダカの歴史について動画を作成しており、とても参考にさせていただいています。
今回、こちらに掲載されている画像を動画内でぜひ使用させていただけないかと思い、ご連絡させていただきました。
お返事いただけますと幸いです。
これからも応援しております。
めだかモミジ様
コメントありがとうございます。
画像の利用につきまして、誠に恐縮ではございますが、個人的な目的での使用はお断りとさせていただいております。
日本の文化として海外向けに紹介される場合、記事冒頭にもありますが「チャームでの取り扱い開始時期」に準拠する点にご留意ください。
あくまでも当店での取り扱い開始時期を基準としていますので、生産者視点での流通史とは、年代が多少前後する場合がございます。
メダカの品種改良はめざましいスピードで日夜開発が進められており、今後もさらなる新品種の登場により、その歴史が紡がれていくことが期待されます。
本記事の内容は、ぜひ海外への普及にお役立てください。