こんにちは、メダカ担当のスズキです(魚ではありません、人間です)。
世の中のメダカブームに乗ってメダカを飼い始めた人も多いのではないでしょうか。
「メダカの教室」は、そんなビギナー向けのなるほどシリーズです。
今回の授業は、メダカの形質その①として、体型・体色・鱗について解説します。
形質とは、平たくというと生物が持っている特徴のこと。
改良メダカの形質を知っておくことで品種解説の理解が深まるでしょう。
品種改良にチャレンジしてみたい方にも役立つ知識です。
メダカの形質は7グループ
日本メダカ協会が発表しているガイドラインによると、2024年3月の段階で改良メダカの形質は7グループ(体色・透明鱗・目の変化・虹色素胞・柄・ヒレ変化・体型)44個に分類されています。
分類されることで品種の区別、選抜の基準が明確になるほか、命名に関しても、形質の組み合わせで行われていることで特徴がわかりやすいメリットがあります。ただ、命名に関してはグッピーと違って必ずしも形質の組み合わせだけではありません。
背景として近年では改良メダカの表現の複雑化が進み、品種の分類が明確ではないためです。
有名な楊貴妃をはじめ、オロチ、忘却の翼……といったようにニックネームのついたメダカが多く混在しているのも改良メダカの世界ならではでしょう。
まずは押さえておきたい基本の3グループ(体型・体色・鱗)についてです。
メダカの体型に現れる形質(ヒカリ・ダルマ・ヒカリダルマ)
メダカは体長によって普通種体型からダルマ体型まで6段階程度に区分されますが、形質としては、ヒカリ・ダルマ・ヒカリダルマの3種類です。
ヒカリ
ヒカリ体型は、背骨を中心に上下対称の体型が特徴で、尾ビレが菱形で、背ビレとしりビレが同じ形状となっています。
ヒカリとは、腹部の虹色素胞が背中に転移し、上から見ると背ビレより前部分が光ることに由来します。ただし、光のない体型もいる現在は、尾ビレと背ビレで判断されています。
ヒカリ体型は骨曲りの個体が多いのも特徴です。
強光
ヒカリ体型の背中の光が通常よりも強く、光が途切れずに銀色の筋に見えます。
銀帯
ヒカリ体型の背中の光が体の横まで進行し、帯状の光を発現します。透明鱗の個体に多く見られます。
ダルマ
ダルマ体型は、普通種の半分程度の体長にしかならないのが特徴です。背骨が部分的に癒着して短くなっているためで、背中が盛り上がっているのもその影響によります。
泳ぎが苦手で、水温や水質の変化に敏感、かつ飼育や産卵が難しいのもダルマ体型の特徴です。
体長は6段階程度に区分されますが、普通種体型とダルマ体型の間のものを半ダルマと呼びます。
普通種体型
半ダルマ
ヒカリダルマ
ヒカリダルマ体型とは、ヒカリとダルマ、両方の特徴をあわせもっているものです。ヒレの形はヒカリ体型、体長はダルマ体型のように普通種の半分程度の姿をしています。
ヒカリダルマ体型は基本的に評価が高い体型で、形が良いものは体色に関係なく良質なメダカとされます。
メダカの体色に現れる形質
メダカのバリエーション豊かな体色は、色素胞と呼ばれる細胞(効果器)が関係します。
魚類において色素胞は鱗やヒレにあるもので、色素胞の中に色の素となる色素顆粒が詰まっています。
この色素胞や色素顆粒の量と分布が体色や模様を決めているのです。
メダカの場合、鱗に黒・黄・白・虹の4種類の色素胞があります。
それぞれの体色ごとに、どの色素胞の影響を受けているのか見てみましょう。
茶
黄
白
青
茶…
野生種に一番近い体色。黄色素胞と黒色素胞の濃度によって茶色の表現には幅があります。(画像はクリアブラウンメダカ)
黄…
改良メダカでは古くから親しまれてきた色で、ヒメダカが最も知られています。
黒色素胞がないことで黄色が発現しています。
白…
黒色素胞と黄色素胞がなく、メダカは魚類では珍しい白色素胞を持つことで白の表現が可能です。
白色が発達するとクリーム色になります。
青…
黄色素胞がないことで青みがかったように見えます。
黒色素胞と白色素胞の量や大きさの違いで青の濃淡が変化します。
ブラック
黄金
琥珀
朱赤
ブラック…
濃い青色からさらに黒色素胞が多くなったことで黒色に見えるメダカです。青と同様にブラックは黄色素胞を持たないのが基本ですが、「ヒレ黄」と呼ばれる黄色素胞を持つメダカもいます。ヒレ黄は名前のとおり、各ヒレに強く黄色が現れます。
黄金…
野生種から発見された薄黄金色の個体を累代繁殖させて固定化しており、美しさから人気の体色です。
体色の維持が難しく、薄くなれば茶色、濃くなると琥珀色となります。
黄色とは違って黒色素胞があり、黒い飼育容器に入れると黒みがかった色になります。
琥珀…
濃い黄金の個体から茶褐色の個体が生まれ、累代繁殖させて誕生しました。
茶色よりも赤みが強く、特に尾ビレと稜線には朱赤に近い色が発現します。
茶、黄金、琥珀のいずれも似ており、黒色素胞と黄色素胞を持ちますが、黄色素胞の分布や色彩が異なることで体色が異なります。
朱赤…
鮮やかな朱色を表現しており、改良メダカブームに火をつけた楊貴妃が特に有名です。
琥珀から黒色素胞が発達しなくなったことで朱赤色になると考えられています。
オレンジ
ピンク
オレンジ…
朱赤ほどの赤さはなく、黄色と朱赤を特徴とする体色です。
ピンク…
朱赤のメダカに白色素胞が発達する遺伝子が作用することでピンク色の表現となります。
白体色でもピンクっぽい、ピンク体色でも白っぽいものがいます。明確な判別基準はないものの、ヒレを見てヒレが朱赤に近い色をしていればピンク、色がのらないものは白で体色の判別が可能です。
メダカの鱗に現れる形質(透明鱗・半透明鱗)
透明鱗は、銀色の部分である虹色素胞が欠けることで鱗が透けるという形質で、銀色以外にも体色に影響があります。表現の度合いによって透明鱗は、強透明鱗(パンダ)・透明鱗・半透明鱗(オーロラ)・普通鱗の4段階に分類されます。
透明鱗
透明鱗は、エラ蓋部分の虹色素胞が欠けることでエラが透けてエラ蓋が赤くなるのが一番の特徴です。それ以外にも、体色がやや透明になる、あるいは部分的に色抜けする、ヒレに色が乗るなどさまざまな表現が見られます。
透明鱗のうち、片側のエラ蓋だけが赤くなるものを片ホホと呼びます。また、エラ蓋が赤くなる透明鱗に対してその特徴を持たない野生型のメダカは普通鱗と呼ばれます。
強透明鱗(パンダ)
透明鱗
半透明鱗(オーロラ)
半透明鱗は、普通鱗と透明鱗の中間で透明感のある体色を特徴としています。見た目による明確な基準はありませんが、目視でもわかる透明感ある体色が判断材料とされています。
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まとめ
今回は、メダカの形質のうち、体型・体色・鱗についてお届けしました。
その他の形質についても今後解説する予定です。
それでは次の授業をお楽しみに!
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