オヤニラミの飼い方<日本産淡水魚解説>

その他水生生物
その他水生生物

どうも、ほにゃらら sp.です。

今回紹介するのはオヤニラミ。
日本産としては唯一のスズキ目ケツギョ科に属する純淡水魚です。

本種の魅力は何といっても淡水魚らしからぬその見た目。
どちらかといえば海水魚に多く見られる、いかにもスズキ目な姿形をしています。
しかし、本種は一生を淡水で暮らします。

また肉食性が強いわりに、それほど大きくもなりません。

このため、比較的小型の設備で飼育可能な、純淡水性のカッコいい肉食魚 というのがオヤニラミの特徴といえるでしょう。
また、観賞魚としては比較的頭もよく、人慣れしやすいのも特徴です。

本種は肉食性の観賞魚としては素晴らしい側面を持つ一方で、飼育にあたっては知っておかなければならない大事な心構えもあります。

本種の持つ特性をきちんと理解したうえで、飼育に臨みましょう!

オヤニラミとは

生物学的情報
名前オヤニラミ
学名Coreoperca kawamebari
別名ミコウオ、ミコノマイ、ネコノマイ、ヨツメ、ネラミ、ミズクリセイベイ、カワメバル、ミツクリセイベイ
分類スズキ目ケツギョ科
食性雑食
(肉食傾向強め)
分布日本
(本州淀川水系以西、四国、九州北西部)
※関東地方、濃尾地方などに移入報告あり
飼育要件
飼育しやすさ★★★☆☆
ふつう
入手しやすさ★★★☆☆
ふつう
混泳しやすさ★★☆☆☆
混泳不向き
最大体長13cm程度
適正水温15~25℃
pH生存可能:6.5~9.5
適正範囲:7.0~9.0
備考肉食性が強く、人なれしやすい

本州淀川水系以西、四国、九州北西部に生息するケツギョの仲間です。

主に河川の中流域から用水路に生息しますが、その生息数は減り全国的には希少な種となっています。

褐色の体色は周囲の環境に合わせて変え、体側には数本のバンドを持ち、エラブタには美しい大きな班を持つのが特徴です。
エラブタにこの目立つ斑を持つ淡水魚は、国産種ではオヤニラミだけです。

全国的には希少魚として知られています。

非常に人馴れしやすく、淡水魚らしからぬその見た目、愛嬌のあるしぐさ、ユニークな産卵行動から人気の種です。

名前の由来にはいくつかの説があります。
親は産卵するとオスが卵を守るため、”親が睨みを利かせている”ように見えることが、名前の由来とされています。
他にも、エラブタの目立つ斑を子に例え、”親を睨んでいるように見える”ことも一説として考えられています。

そのほか、別名として淡水魚でありながら海水魚のメバルのような体型をしているため”カワメバル”、エラブタにある斑を目として数え”ヨツメ”とも呼ばれます。
福岡県では、古くは”水くり清兵衛”とも呼ばれていました。

このように、地域によってさまざまな呼び名があります。

飼育は十分なろ過の効いた水であれば容易ですが、水質の悪化には弱く、高水温にも注意が必要です。

成長とともにテリトリー意識が強くなり同種間では争うようになります。
気が強い部類に入るので、他種との混泳も注意したほうが良いでしょう。

エサは人工飼料にも餌付きますが生餌を好み、小型のエビや冷凍アカムシを好んで食べます。
肉食性が強いため、口に入るサイズの小魚やエビは食べられてしまいます。
基本的には単独飼育が無難です。

産卵は春から夏にかけてペアで行われ、流木などの棒状の基質に産卵後、オスが世話をする様子を見ることができます。
テリトリー内の底砂を掘るので、底砂は比重の重いものが適します。

オヤニラミは熱帯魚でいうところの、シクリッドの仲間に近い性質を持っています。

シクリッドの仲間ではありませんが、シクリッドの魅力と日本産淡水魚の渋い魅力を持ち合わせたような種といえます。

オヤニラミは国産種であるため、加温を必須としません。
お住まいの地域にも寄りますが、ヒーター不要で飼育可能な点も特徴です。

アーリー
アフリカンシクリッドの代表種。
オヤニラミはこれらの日本版
といった雰囲気で、
飼育を楽しめるでしょう。

有用なアイテム

オヤニラミは肉食魚ですが、最大でも15cm未満にとどまることが多いため、60cm水槽で終生飼育が可能な魚です。
水質は比較的広い範囲に適応し、中性付近であれば問題なく飼育可能です。
どちらかといえば、弱アルカリ性に寄っていたほうが調子が良いようです。

エサは人工飼料にも慣れますが、基本的には肉食性が強い魚です。
飼育し始めは活き餌を中心に与え、徐々に切り替えていくとよいでしょう。

おすすめの組み合わせは次の通りです。

水槽フィルター底床
45~60cm上部、外部大磯砂、砂利、砂
セラミック
幼魚期:イトメ、赤虫、人工飼料
成魚期:メダカ、クリル、人工飼料

肉食魚なので水を汚します。
上部式以上のろ過能力を持つフィルターを採用すると良いでしょう。

基本的に生き餌を与えます。

幼魚期は活イトメが最も理想的ですが、冷凍イトメ、冷凍赤虫も食べます。
10cmを超えてきたら、メダカも食べるようになります。

個体によっては人工飼料に慣れてくれることもあるので、浮上性の人工飼料を与えると良いでしょう。餌付いてくれれば、その後の飼育が容易になります。

イトメ
活イトメが最も理想的

幼魚のうちは最も理想的なエサです。

栄養価は理想的ですが入手と管理がやや難しく、コストも高めな点はネックです。

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アカムシ
手軽さが魅力の冷凍赤虫

イトメに比べると消化が悪く栄養価は落ちるものの、入手しやすくイトメよりもコストが低い点が魅力です。

与えすぎには注意しましょう。

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小型魚
肉食魚のエサとして
メダカは定番

メダカが口に入るサイズに成長してきたら、小型魚に切り替えることで成長が良くなります。

個体のサイズに合わせてメダカ、アカヒレなどを使い分けて与えましょう。

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エビ
オヤニラミはエビが大好物!

活きたエビはオヤニラミの大好物です。

餌食いが悪い場合に与えると、高確率で食べてくれるでしょう。

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人工飼料
食べてくれるなら
飼育が容易に!

人工飼料に餌付く個体は非常に飼育が容易です。

ただし個体の性格による要素が強く、餌付いてくれるかどうかは個体次第です。
すぐに食べてくれる個体もいれば、一切受け付けない個体もいます。
個体によって好みがあるようですので、色々試してみるのも良いかもしれません。

肉食魚としては最大でも10cmを超える程度に留まる小型種なので、小粒のものが良いでしょう。

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クリル
クリルを食べてくれるなら
人工飼料も食べるかも

人工飼料に餌付かせる前段階に有効です。

いきなり人工飼料は食べてくれない個体がほとんどです。
まずは活き餌からクリルに切り替え、クリルから人工飼料に切り替えるようにすると良いでしょう。

肉食魚としては小型種なので、クリルが大きい場合は適当なサイズにちぎって与えてください。

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混泳について

オヤニラミは比較的攻撃的な魚種です。
このため、基本的には混泳には向いていません。

トラブルを避けるためには、単独飼育をお勧めします。

同種間ではケンカをするため、複数匹飼育する場合は十分なスペースと隠れ家を用意する必要があります。
単独飼育の場合は45cm水槽で十分ですが、複数飼育の場合は60cm以上の水槽が安心です。

他種との混泳は、肉食魚なので口に入ってしまうサイズの小魚、エビとは混泳できません。
サイズが同程度の魚種であれば混泳できる場合もありますが、個体同士の力関係に注意して選ぶと良いでしょう。

なお水草との相性に関しては、比較的良いです。
肉食魚としては比較的小型なため、レイアウトを破壊するようなことはありません。

したがって育成環境をあまり選ばない水草であれば、育成は可能です。
ただしエビはオヤニラミに食べられてしまうので、コケ対策はやや難しくなります。

マツモ
ホザキノフサモ
セキショウモ
クロモ

またオヤニラミは、底砂を食む性質が多少あります。
底砂は厚めに敷き、大きめの石などで根元を守ると抜かれにくくなるでしょう。

流木や石に固定させて使うのも一つの手です。
水草が底床内に根を張れば、抜かれてしまうことはそうそうないでしょう。


希少魚としてのオヤニラミ

オヤニラミは本来、本州淀川水系以西、四国、九州北西部に生息する、日本産淡水魚としては唯一となるケツギョ科に分類される淡水魚です。

生息地では絶滅危惧種に指定されており、その希少性から良くも悪くも注目を浴びています。
日本産淡水魚全体を見渡して、分類的にも生態的にも珍しい要素の多い魚種ですので、大事に飼育したいところです。

また京都府では府指定の天然記念物に指定されており、無許可での採捕は禁止されています。
他にも、市町村単位で天然記念物に指定している地域があります。

※2024年8月現在、指定地域以外での採捕は制限はありません。


外来種としての脅威

オヤニラミは全国的には希少魚として知られる一方で、その肉食性が災いし一部地域では「国内外来種」として猛威を振るう側面も知られています。

国内外来種とは、日本国内の一部地域に分布が限られている種が、本来分布しない地域に人為的に移動させられたものを指します。

移入が生じた原因としては水産種苗の放流に混じった可能性がある他、観賞魚としての人気も高いため、飼育しきれなくなった個体を投棄する形での放流もあったのではないか?という可能性も指摘されています。

確かに本種の飼育は、肉食魚故にクセがある部分もあります。
肉食傾向が強いため、餌付けしても人工飼料に慣れない個体もいます。
そういった個体に対しては、活き餌を調達して終生飼育しなければなりません。

本来の分布域では希少魚として保護される一方で、関東地方や濃尾地方ではその肉食性の強さから国内外来種として在来の肉食魚と競合したり、小型魚を捕食するなど問題が生じています。

地域によっては保護されるべき希少種でありながら、また同時に地域によっては駆除されるべき外来種でもあるという、複雑な境遇を抱えた魚種でもあるのです。

なお、本来の分布域であったとしても放流してはいけません。
河川によりオヤニラミが持つ遺伝子は微妙に異なっています。
由来のわからない個体を放流してしまうと、交雑集団が生じてしまう恐れがあるからです。

それだけでなく、飼育環境由来の病原菌や寄生虫を自然環境に放出するリスクもあります。
いかなる場合であれ、放流はしてはなりません。

滋賀県では許可が必要

滋賀県では、県による「指定外来種」にオヤニラミは指定されています。
無許可での飼育は禁止されており、飼育する場合は県への届け出が必要です。

放流は厳禁!

オヤニラミは低水温に強く、魚食性も強い魚です。

水槽内では魅力ある肉食魚ですが、現に関東地方や濃尾地方では野外に定着した個体群が国内外来種として在来種に対して被害を与えていることが分かっています。

オヤニラミは観賞魚として魅力あふれる側面をたくさん持つ一方、野外に逸出すると生態系に大きな被害を与える可能性を秘めているのです。
このため、一度飼育をはじめたオヤニラミは絶対に放流してはなりません。

オヤニラミを飼育すると決めた以上は、途中で飼育をやめることはできません。
必ず最後まで面倒を見きれるかどうか、入念な計画と覚悟を持って飼育に臨むようにしてください。

宮崎県で大問題!外国産のオヤニラミ
コウライオヤニラミ

朝鮮半島に分布するオヤニラミの近縁種、コウライオヤニラミ。

本来日本には分布しない魚種ですが、2017年に宮崎県の河川で発見され、その後同水系内で侵略的なふるまいを見せながら生息域を拡大している外来種として知られています。

日本のオヤニラミとは異なり底生性の強い魚種で、日本のオヤニラミよりも二回りほど大きく育ちます。

強い肉食性により、ハゼやドジョウといった底生の小型魚を水域から駆逐してしまうほどの猛威を振るっていることで知られています。

在来種を絶滅させかねないほどのあまりの被害の大きさのため、2024年8月から宮崎県の内水面管理委員会により、持ち出しや移植が罰則付きで禁止されました。

本種は持ち出しが禁止される以前、観賞魚ルートでの流通が見られました。
水槽内では魅力あふれる観賞魚ですが、野外に逸出したことで生態系や水産業に致命的な打撃を与えかねない外来種となってしまったのです。

すべての魚種に共通して放流はしてはならないことですが、特に魚食性の強い魚種は生態系や漁業に対し直接的な被害を与えます。

もし現在飼育している方は、愛情をもって大切に、放流することなく終生飼育してください。

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そっくりさんに注意!

オヤニラミは日本国内に分布しているため、採集することも可能です。
ただし、その生息域はやや限定的です。
全国どこにでもいる魚ではなく、出会うための道のりは簡単とは言えません。

ブルーギル
(特定外来生物)

一方で、オヤニラミとよく似た姿かたちをしている魚として、「ブルーギル」が挙げられます。

ブルーギルは北米原産の外来種で、全国各地に広く生息しています。

色彩や顔つきが異なりますが、体形はよく似ています。
オヤニラミ最大の特徴ともいえるエラブタの突起は本種にもあり、慣れないと見分けるのは難しいかもしれません。

釣り上げられたブルーギル。
練り餌やアカムシなどで簡単に釣れます。

ブルーギルは特定外来生物に指定されており、採集した場所から活きたまま移動させると罰則があります。もちろん飼育も禁止です。

オヤニラミの分布域はやや限定で、いるところに行かないとなかなか出会えません。
一方でブルーギルは全国各地にその生息が見られ、身近な小川や池などでもいたるところで見かけます。

近所での採集で遭遇する確率は、ブルーギルのほうが圧倒的に高いでしょう。

オヤニラミと間違えてブルーギルを持ち帰ってしまった場合、罰則の対象となりますので注意してください。

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オヤニラミ まとめ

オヤニラミ。

日本在来の唯一のケツギョ科淡水魚であり、淡水魚らしからぬ見た目をした魅力あふれる肉食魚です。
しかも肉食魚としては最大でも13cm前後程度で留まるため、比較的小型の水槽で飼育可能です。
国産種のためヒーターも不要なので、飼育設備を揃えるのが難しくない点もうれしいところです。

見た目だけでなく、人馴れしやすい性質やその行動、繁殖生態も淡水魚としてはユニークなため、鑑賞的価値の高い淡水魚といえるでしょう。

しかしその一方で、本種は全国的には希少魚として知られています。
国産種なので採集も可能ですが、京都府など一部の地域では採集が禁止されているので、制限のある地域では採集はできません。

本種の飼育においてはこの点を念頭に置き、大事に飼育してください。

本種の捕食行動や繁殖行動などをもし写真や動画に撮ることができたら、ぜひSNSなどで共有してみましょう。
希少な淡水魚ですので、その画像や映像はやがて貴重な記録になるかもしれません。

また、本種は希少魚として知られながら、在来分布域以外では外来種として悪影響を与えている実情があります。
一度飼育を始めたら、絶対に放流してはなりません。

このように、オヤニラミの飼育の際には知っておかなければならないことがたくさんあります。
しかしながら、知れば知るほどその魅力はより深まり、単に「飼いやすい肉食淡水魚」には留まらない、オヤニラミの奥深さがきっと感じられるようになるでしょう。

飼育をきっかけとして日本産唯一のケツギョ科純淡水魚、オヤニラミとそれを取り巻く背景への理解を、ぜひ深めてみましょう!

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投稿者
ほにゃらら sp.

福島県産のワイルド個体。
ロカリティの詳細は残念ながら記録がない模様。
アクアリウム歴はだいたい20年くらい。
「同属内で多様なバリエーション」が好き。若干コレクター気味。
つまりコリドラスや、ミクロソリウムが最高。ということですね。

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