熱帯魚がかかる厄介な病気、穴あき病。
ここではその治療に有効な魚病薬と、その基本的な使い方について解説します。
穴あき病とは
名前の通り体表にぽっかり穴が開いてしまう病気です。
グラム陰性細菌であるエロモナス・サルモニシダ(Aeromonas salmonicida)が魚の体表に感染することにより引き起こされる細菌性感染症の一種です。
金魚や錦鯉に多い病気とされますが、熱帯魚でも一定数見られます。
筋肉や内臓がむき出しになってしまい、見た目は非常に痛々しそうです。
しかし、当の病魚は餌食いも良く、意外と気にしていなさそうなそぶりを見せることが多いです。
発見が早ければ完治は可能な病気です。
穴が開いた状態では大変重症に見えますが、適切に治療を施すことで案外治ります。
(ただし、元通りになるとは限りません。)
有効な魚病薬
穴あき病に有効な魚病薬は次の通りです。
基本的には成分に抗菌剤と呼ばれる、「オキソリン酸」または「フラン剤(ニトロフラゾン、ニフルスチレン酸ナトリウム)」を含んだ魚病薬を使用しましょう。
色素剤系は効果がありません。
穴あき病は低水温期に発症しやすいです。
このため、ヒーターで水温を安定させると発症率を低減できます。
治療中は28~30℃を維持すると効果的です。
エロモナス属細菌は飼育水が古くなり劣化すると増殖しやすいと考えられています。
適切な換水により、清浄な水質の維持を心がけましょう。
製品名 | グリーンF ゴールドリキッド | 観パラD | エルバージュ エース | グリーンF ゴールド顆粒 | グリーンF リキッド |
---|---|---|---|---|---|
薬効 | ★★★ | ★★★ | ★★☆ | ★★☆ | ★★☆ |
着色 | 無 (飼育水は着色) | 無 (飼育水は着色) | 無 (飼育水は着色) | 無 (飼育水は着色) | 有 |
性状 | 液体 | 液体 | 粉末 | 粉末 | 粉末 |
有効成分 | オキソリン酸 | オキソリン酸 | ニフルスチレン酸ナトリウム | ニトロフラゾン スルファメラジンナトリウム | ニトロフラゾン メチレンブルー |
水草水槽 での使用 | 可能 | 可能 | 不可 | 不可 | 不可 |
備考 | 穴あき病に特効 | 穴あき病に特効 | 即効性が高い | 薬効期間が長い 負担が緩やか | 白点病、水カビ病との 併発時に有効 |
※メリットとなりうる要素は青く着色しています。
- 薬効:「観パラD」および「グリーンFゴールドリキッド」が穴あき病に対しては特効です。
- 着色:抗菌剤は飼育水を黄色く着色しますが、シリコンやエアーチューブはほとんど着色しません。グリーンFは色素剤が含まれるため青く着色します。
- 性状:基本的に液体のほうが計量が容易で扱いやすいです。
- 有効成分:オキソリン酸が特に有効です。
ニフルスチレン酸ナトリウム、ニトロフラゾンも効果があります。 - 水草水槽での使用:オキソリン酸は水草水槽でも使用可能です。
- 穴あき病の治療は長期化することが多いですが、見た目よりも比較的予後は良い病気です。
適切に治療できれば、完治も見込めます。
各魚病薬の使い方
薬品ごとの詳しい使い方は、以下の動画をご覧ください。
実際の水槽への使用例を、1~2分程度の短い動画でわかりやすく紹介しています。
※実際に薬浴させる場合は、商品に添付されている説明書をよくお読みの上ご使用ください。
グリーンFゴールドリキッド
穴あき病の治療に有効な、オキソリン酸を主成分とした魚病薬です。
液体なので計量が容易なうえ、水草水槽でも使えます。
観パラD
グリーンFゴールドリキッドと同じくオキソリン酸を主成分とした魚病薬です。
オキソリン酸の配合量がグリーンFゴールドリキッドよりも多く、効き目は強めです。
治療が難しいとされる穴あき病に極めて高い効果があります。
また、本魚病薬は穴あき病のみを対象としています。
本品は強いアルカリ性(pH約11)のため、pH5.0以下の飼育水では使用しないでください。
エルバージュエース
細菌性感染症の治療薬としては最も有名な魚病薬です。
魚体への吸収が良く、即効性が高いのが特徴です。
一方で薬効期間が短く、魚への負担が大きいのは留意点です。
魚に十分な体力があるうちに使用するのがおすすめです。
グリーンFゴールド顆粒
エルバージュエースに比較すると魚への負担が少なく、薬効期間が長いのが特徴です。
魚の導入直後や体力が落ちているときはこちらがおすすめです。
薬効範囲となる症状もエルバージュエースより広く、尾腐れ症状や皮膚炎の他にも鱗の剥離やびらん(粘膜のただれ)にも効果があります。
グリーンF
メチレンブルーの効能に加え、細菌性感染症にも効果のある魚病薬です。
尾腐れ病の他に白点病や水カビ病を併発している場合特に有効です。
そのような状況から回復できる可能性が最も高い魚病薬は、このグリーンFです。
穴あき病に白点病や水カビ病も併発している状態となると、治療の難易度は高めです。
薬浴時にあると便利なもの
トリートメント水槽
病魚を隔離して治療する場合に便利です。
穴あき病は個体レベルでの疾病ですので、魚を隔離しての薬浴は有効です。
使い捨て手袋
薬液が手につくと、着色して取れなくなることがあります。
使い捨てのポリ手袋は対策としておすすめです。
ゴーグル
薬品、薬液から目を守ります。
不意に飛び散った薬液が目に入ると危険なため、装備しておくと安心です。
手付きビーカー
粉末タイプの薬品を溶かしたり、計量する際に何かと便利です。
普段の水換えにも活躍します。
ベロペット
粉末タイプの薬品を溶かした際、水槽に計量しながら入れるのに便利です。
普段の給餌にも活躍します。
再発に備えよう
原因菌であるエロモナス・サルモニシダは非運動性のエロモナス属細菌です。
エロモナス属細菌には2種類あり、もう一つの運動性エロモナス属細菌に比べると、比較的治療はしやすい部類に入ります。
エロモナス自体は常在菌なので、なくすことはできません。
とはいえ健康な個体が感染することはなく、個体の免疫力が著しく低下したときに感染します。
したがって、個体の状態を崩さないように定期的な換水を行い、状態良く飼育することが重要です。
穴あき病の原因菌であるサルモニシダは高水温に弱く、28℃以上で管理することでほぼ発生しなくなります。
一方で、運動性エロモナスである「エロモナス・ハイドロフィラ」は高水温で発生しやすくなるので注意が必要です。
こちらは観賞魚の病気の中でも難治性として知られる、松かさ病の原因菌として知られます。
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