小型コイの魅力
ラスボラをはじめとした、小型コイ科の世界へようこそ。
ラスボラとは、東南アジアを中心に分布するコイ科の小型熱帯魚の一グループです。
ここでは、ラスボラ類のほか群泳させて美しい小型のコイ科熱帯魚もあわせてご紹介します。
ラスボラはテトラ類に並び、水槽内で群泳を楽しむ小型魚として人気があります。
水草水槽での群泳は古くから人気のある、定番の組み合わせといえるでしょう。
丈夫で飼育しやすく、比較的混泳もさせやすいので、初心者向けの熱帯魚としてもよく紹介されます。
温和で協調性の良い魚種が多く、テトラ類との混泳も長きにわたって人気の組み合わせです。
小型のコイ科にはラスボラ以外にもさまざまな魅力を持つ魚種がいます。
例えば、「ボララス」や「ミクロラスボラ」というグループは、ラスボラ類よりもさらに小型で30cm以下の小型水槽でも群泳が楽しめます。
しかも飼育環境を整えると、小さいながらも抜群の発色を見せてくれるものも多いです。
省スペースで熱帯魚の飼育を本格的に楽しみたい時には、まさにうってつけの魚種といえるでしょう。
「ダニオ」の仲間も古くから人気です。
こちらはラスボラ類よりひと回り大きく、水槽内を機敏に泳ぎ回ります。
色彩も美しく、たいへん活発な魚種ですので見ていて飽きの来ないグループです。
「バルブ(プンティウス)」の仲間も古くから人気があります。
こちらはラスボラ類より一回り大きくなる傾向があり、また人にもよく慣れます。
上述の魚種に比べると、個体の性格が感じられるのが面白いグループです。
他にも、上記のいずれにも属さないコイ科魚類は世界中にさまざまな種が分布しています。
ここで紹介する魚種はほんの一部ですが、比較的入手しやすいものを中心に取り上げました。
興味を持った種がいれば、ぜひ飼育にチャレンジしてみてください。
それでは東南アジアを中心に繁栄した小型魚、ラスボラをはじめとした小型コイ科熱帯魚の世界へ。
貴方を誘いましょう。
- ラスボラとは
- ラスボラの魅力
- 主な小型コイ
- ラスボラ・ヘテロモルファ
- ラスボラ・エスペイ
- ラスボラ・ヘンゲリー
- シザーステール・ラスボラ
- ブルーアイ・ラスボラ
- ラスボラ・カロクロマ
- ラスボラ・アクセルロディ”ブルー”
- ラスボラ・アクセルロディ”レッド”
- ボララス・ブリジッタエ
- ボララス・メラー
- ボララス・ウロフタルモイデス
- ボララス・マキュラータ
- ボララス・ミクロス”レッド”
- ミクロラスボラsp.”ハナビ”
- ミクロラスボラ・エリスロミクロン
- ミクロラスボラ・ブルーネオン
- ゼブラ・ダニオ
- オレンジグリッター・ダニオ
- レオパード・ダニオ
- パール・ダニオ
- ゴールドリング・ダニオ
- ダニオ・エスメラルダ
- チェリー・バルブ
- ゴールデン・バルブ
- オデッサ・バルブ
- チェッカー・バルブ
- レッドライン・トーピード・バルブ
- プンティウス・ゲリウス
- プンティウス・ペンタゾナ・ジョホレンシス
- スマトラ
- シルバー・シャーク
- レッドテール・ブラック・シャーク
- レインボー・シャーク
- レッドフィン・レッドノーズ
- アラバマ・レインボーシャイナー
- ダニオネラ
- アンゴラ・バルブ
- ケラ・ダディブルジョリィ
- 小型コイ飼育の基本
- 小型コイの繁殖
- 小型コイの病気
- 小型コイ用語集
ラスボラとは
ラスボラとは、コイ目コイ科に属する、東南アジアを中心に広く分布する熱帯魚の一群です。
厳密には、”過去にラスボラと呼ばれていたグループ“であり、現在では分類が細分化されてラスボラ属ではなくなった魚種も多くいます。
アクアリウムとしての流通においては、当時の名残で今もなおラスボラと呼ばれているものも多いです。
ラスボラ類はテトラ類と人気を二分する代表的な小型美魚で、特に水草水槽で群泳させるスタイルが大変人気です。
性格も温和で飼育しやすいものが多く、テトラ類と同様に初心者から上級者まで幅広い層から長年に渡って人気があります。
南米で繫栄した小型美魚がテトラであるならば、こちらはアジア版の小型美魚といえるでしょう。
この記事では、ラスボラ類をメインにアクアリウムで流通する主な東南アジアを原産とする小型美魚(ダニオ・バルブ類他)についてもあわせて解説します。
どちらも、飼育上の基本的な性質には共通点も多い魚種です。
ラスボラの魅力
水草水槽での群泳が美しい
ラスボラの魅力を最大限に引き出すのは、なんといっても水草水槽での群泳です。
ラスボラ類は基本的に群れを成して生活します。
群泳の姿は非常に分かりやすい美しさがあることから、コンテストレベルのレイアウト水槽にも頻繁に採用されるグループです。
特に「ヘテロモルファ」「エスペイ」の2種は、本格派の水草レイアウト水槽において、定番中の定番ともいえる魚種でしょう。
温和な性格で混泳しやすい
基本的に温和な性格で他魚との協調性も良く、混泳には向いたグループです。
分布域こそ違えど、生息環境や適応する水質が南米のテトラ類と共通する部分も多いため、多くのテトラ類との混泳も可能です。
テトラとラスボラは定番の組み合わせとして、本格派の水草レイアウト水槽でもよく見かけます。
主な小型コイ
大きく分けて、ラスボラ系、ボララス系、ミクロラスボラ系、ダニオ系、バルブ系、その他と分けられます。
これらのグループはかつての分類にならって振り分けられたものが多く、最新の分類では別属に振り分け直されたものも多いです。
しかし、観賞魚としての飼育上の性質は、概ね以下のグループ内で共通します。
ラスボラ・ヘテロモルファ
学名:Trigonostigma heteromorpha
別名:トリゴノスティグマ・ヘテロモルファ
マレー半島からスマトラ島に生息する小型のコイ科の魚です。
古くから東南アジアの小型ラスボラの代名詞として親しまれ、美しい体色と飼育のしやすさからポピュラーな種です。
流通量も多く、入手しやすいラスボラといえるでしょう。
オレンジの体色に、“バチ模様”と呼ばれる黒い模様が入ります。
バチとは、三味線を引くための道具の形状に由来しています。
渋く味わいのある美しさを持ち、弱酸性の水で飼育するとその美しさはさらに強まります。
飼育は容易で、温和で混泳に適した種です。
特にクリプトコリネでレイアウトした水槽と相性が良く、群泳させれば本種の美しさが最大限に発揮されます。
本種はラスボラ系熱帯魚の代表種という位置づけにある魚ですが、実は1999年にラスボラ属からトリゴノスティグマ属へ変更されています。
ただ、古くからアクアリウムにおいてラスボラ代表というポジションにいたこともあり、今もなおラスボラの名称で親しまれています。
ラスボラ・エスペイ
学名:Trigonostigma espei
別名:トリゴノスティグマ・エスペイ
東南アジア原産の小型のコイ科の魚です。
ヘテロモルファによく似た色彩パターンを持ちますが、本種のほうが体高がやや低く、細身です。
黒いバチ模様も細くなっている点で、容易に区別が付きます。
ヘテロモルファと同等かそれ以上に流通量も多く、入手しやすい点もうれしいところです。
他のラスボラの仲間と同様にpHを低めにすると、より美しい発色を見せてくれます。
ヘテロモルファに比べオレンジの色彩が強く、水草水槽で群泳させると非常に美しく人気の魚です。
飼育も容易で温和であり、他魚との混泳も問題ありません。
本種もヘテロモルファ同様、実はトリゴノスティグマ属に変更されています。
ラスボラ・ヘンゲリー
学名:Trigonostigma hengeli
別名:グローライト・ラスボラ、トリゴノスティグマ・ヘンゲリー
スマトラ島、ボルネオ島原産の小型のコイ科の魚です。
先述のヘテロモルファやエスペイに近縁な種で、このグループでは体高が最も低く、スレンダーな印象を与えます。
黒いバチ模様も3種の中でもっとも細くなっており、この点で容易に区別が付きます。
先述の2種に比べると、流通量は若干少なめです。
本種も他のラスボラの仲間と同様にpHを低めにすると、より美しい発色を見せてくれます。
ヘテロモルファやエスペイに比べ清涼感があり、水草水槽で群泳させると非常に美しく人気の魚です。
ヘテロモルファやエスペイに準じ、飼育は容易で温和です。
他魚との混泳も問題ありません。
本種も、トリゴノスティグマ属に変更されています。
シザーステール・ラスボラ
学名:Rasbora trilineata
インドネシアなどに生息するラスボラです。
泳ぐ際に尾ビレの動きがハサミを動かしている動作に見えることから、この名で呼ばれています。
透明感のある体に、尾ビレの先端が黒く染まるシンプルな色彩を持つ種です。
しかし、じっくりと飼い込まれた個体では、落ち着いた美しさが水草水槽などで特に際立ちます。
ヘテロモルファに比べると一回り大きくなります。
温和で飼育しやすく、同程度のサイズの小型魚であれば混泳にも向いています。
ブルーアイ・ラスボラ
学名:Rasbora dorsiocellata macrophthalma
マレー半島、インドネシア原産の小型のラスボラです。
背ビレの黒いスポットとブルーに輝く眼が美しい種です。
ヘテロモルファがトリゴノスティグマ属に変更された関係上、ある意味では本種こそがラスボラ属の代表種といえるかもしれません。
従来のラスボラ属に残っている魚種の中では、比較的流通量も多く、入手しやすい部類に入ります。
飼育は容易で温和な性格です。
サイズが小さいので、餌や他魚のサイズには注意が必要です。
ミクロソリウムやクリプトコリネを植えた東南アジア風の陰性レイアウトでは、より一層本種の魅力を味わうことができるでしょう。
ラスボラ・カロクロマ
学名:Rasbora kalochroma
マレーシア、インドネシア原産のラスボラです。
オレンジを基調にグリーンの大きな2つのスポットが入り、やや角ばった体型は日本の渓流魚のような精悍な印象を受けます。
鮮やかなオレンジの体色が魅力的ですが、一方でラスボラ類としては例外的に飼育難易度が高いことでも知られています。
本種を上手に飼育するには、pH5.0台の弱酸性を維持すること、ろ過バクテリアを十分に定着させ亜硝酸及び硝酸塩の検出が0に近い環境を維持することが重要です。
また、購入直後はデリケートでスレなどによる細菌感染や白点病、コショウ病などを発症しやすく、トリートメントしてから導入することが大事です。
飼育難易度の高さからラスボラの最高峰とも評されており、挑戦しがいのある種として人気です。
ラスボラ・アクセルロディ”ブルー”
学名:Sundadanio axelrodi?
Sundadanio gargula?
Sundadanio margarition?
インドネシア、バンカ島、ビンタン島、ボルネオ島原産の小型のコイの仲間です。
ラスボラ類屈指の小型美魚として初輸入時から大変話題になった種で、透明感のある体色にメタリックに輝くブルーが美しく、赤や黒に染まる尻ビレがワンポイントになっています。
小型水槽でも飼育でき、水草水槽では抜群の美しさを放ちます。
飼育はやや難しい部類に入ります。
先述のカロクロマほどシビアな管理を要求しないものの、弱酸性で十分にろ過が効いた環境が理想的です。
水質の変化や悪化には、デリケートな面を見せます。
また痩せやすいので十分な給餌が必要になります。
性質は温和なので、同程度のサイズの小型魚なら混泳可能です。
ラスボラ・アクセルロディ”レッド”
学名:Sundadanio rubellus
Sundadanio echinus?
Sundadanio retiarius?
別名:スンダダニオ・ルベラス
スンダダニオ・エキナス
スンダダニオ・レティアリウス
インドネシア、バンカ島、ビンタン島、ボルネオ島原産の小型のコイの仲間です。
ブルータイプとは対をなす、近縁な別種です。
ブルータイプに比べると流通量は少なく、やや入手しづらいです。
ブルータイプはメタリックな青い発色が特徴的ですが、レッドタイプは透明感のある赤い発色が目立ちます。
基本的な性質はブルータイプに準じ、飼育難易度はやや高めです。
弱酸性で十分にろ過の効いた環境を準備し、痩せやすいので十分に給餌することが重要です。
ボララス・ブリジッタエ
学名:Boraras brigittae
別名:ボララス・ブリギッタエ
インドネシア、ボルネオ島原産の非常に美しいボララスです。
赤味の強い体色にグリーンからブルーの細長いスポット模様が本種の特徴で、尾ビレに見られる2つの赤いチップを持ちます。
この点で、よく似たボララス・メラーとは判別可能です。
最大でも2cm未満の超小型種です。
温和でよく群れることから、小型水槽でも十分にその美しさを味わうことができるのが魅力的な種です。
本種はボララスの中でも最も美しい種として、初輸入時から話題になりました。
飼育は容易ですが、本来の色彩を発揮させるためにも弱酸性の軟水での飼育が適しています。
性質は温和ですが成魚でも非常に小さいため、混泳の際はサイズが合う種が限られます。
ボララス同士なら、問題なく混泳できるでしょう。
ボララス・メラー
学名:Boraras merah
ボルネオ原産のボララスです。
ブリジッタエの近縁種であるといわれています。
ブリギッタエと同所的に分布しているようで、両者が混入して入荷してくることも多いです。
ブリギッタエは細長いスポットが入るのに対し、本種では体側には丸いスポットが入り、それを囲むようにオレンジのラインが入ります。
この点でブリギッタエとは容易に区別可能です。
本種もブリギッタエ同様、最大で2cmに満たない超小型種です。
30cm未満の小型水槽に群泳させると、非常に魅力的な水景になります。
メラー(merah)は”赤”を意味しており、弱酸性の水で飼育することでさらに赤い発色を見せてくれます。
性質は温和ですが成魚でも非常に小さいため、混泳の際はサイズが合う種が限られます。
ボララス同士なら、問題なく混泳できるでしょう。
ボララス・ウロフタルモイデス
学名:Boraras urophthalmoides
別名:ボララス・ウロフタルマ
ラスボラ・ウロフタルモイデス
カンボジア、タイ、ベトナム原産のボララスです。
体側のグリーンとオレンジのラインが美しい小型美魚として人気種です。
ボララス・メラーやブリジッタエに比べて体高があるので、やや存在感のある種です。
飼育は容易ですが、ボララス属共通でサイズが小さいため、混泳魚とエサには注意が必要です。
ボララス・マキュラータ
学名:Boraras maculatus
別名:ドワーフ・ラスボラ、ラスボラ・マキュラータ
マレーシア、インドネシア、タイ原産のボララスです。
ボララス属の中でも本種は最大の種ですが、それでも3cmにも満たないサイズです。
美しい赤い体色を持ち、飼育の容易さから古くから人気の種です。
近年紹介された他の派手なボララスに比べると地味に思われがちですが、弱酸性の水質でじっくり飼い込まれたオスは全身が赤く発色し、体側の黒いスポットがアクセントになったとても美しい魚です。
タイ東部に生息するボララス・ミクロス“レッド”とは体側、尻ビレ付け根、尾ビレ付け根の黒いスポットの位置がよく似ていますが、本種のほうがよりサイズが大きくなり、スレンダーな体型を持つことで区別できます。
また、生息域が広いため、体側のスポットには差異が見られるタイプも存在します。
飼育は容易で、数を多めに群泳させるととても見ごたえのある水景になります。
ボララス・ミクロス”レッド”
学名:Boraras naevus
Boraras micros “Red”
Boraras sp.
別名:ボララス・ナエヴス
タイ原産のボララスです。
体に入る3つのスポットが特徴的な種で、スポットの入り方が似ているボララス・マキュラータとは、体側中心に見られるスポットの大きさで区別されます。
ボララス・メラーやブリジッタエに比べ、体高がある点も大きな特徴の一つです。
飼育は容易です。
弱酸性の水でじっくり飼い込むと良いでしょう。
体が小さく温和な魚なので、混泳魚とエサには注意が必要です。
成魚でも2cmに満たないサイズで、小型水槽でも群泳させることができます。
群泳させると水草水槽によく映えます。
ミクロラスボラsp.”ハナビ”
学名:Celestichthys margaritatus
(旧名: Danio margaritatus,Microrasbora sp. )
別名:ラスボラ・ギャラクシー
ファイアーワークス・ラスボラ
ダニオ・マルガリタートゥス
ミャンマー原産の小型のコイの仲間です。
「ハナビ」「ファイヤワークス」「ギャラクシー」など、さまざまな名前で呼ばれ、独特の色彩から初輸入時には大きな話題となりました。その後、2007年2月28日に新属新種として記載されました。
ミクロラスボラ・エリスロミクロンによく似た小型美魚で、ハナビやギャラクシーなどと呼ばれるように体側の細かい点状模様が特徴的です。
オスは各ヒレに鮮やかな赤い模様を持ち、小型魚の中でも屈指の美麗種として高い人気があります。
その人気から国内外でブリードが試みられ、あっという間に繁殖個体の安定的な流通に至りました。
飼育は容易ですが、本種は一般的なラスボラ類とは異なりどちらかといえば弱アルカリ性の水質を好む傾向があります。
とはいえ、そこまで水質に敏感というわけでもなく、弱酸性の水槽にもなじみます。
水草水槽での群泳は非常に美しく見応えがあり、人気です。
食が細く痩せやすい面があり、しっかりとした給餌が必要です。
ミクロラスボラ・エリスロミクロン
学名:Danio erythromicron
Celestichthys erythromicron
別名:ダニオ・エリスロミクロン
ミャンマー、インレー湖原産のコイの仲間です。
小型美魚が多いミャンマーのインレー湖から知られる熱帯魚の中でも代表的な種で、以前は長い間実物が輸入されず幻の魚とされていました。
青い体色には細かいバンドが入り、尾ビレ付け根には黒いスポットが見られる美しい種です。
分類についてはしばしば議論のあった魚種で、1999年にはミクロラスボラ属でしたがその後セレスティクティス属に変更され、その後ダニオ属に変更されたという経緯があります。
したがって実は、本種は分類学上はダニオ系グループということになります。
しかし、最大でも3cmと小型であること、ゼブラダニオなどの一般的なダニオ類ほど機敏に泳ぎ回るわけでもありません。
観賞魚としての飼育上の性質や生態は、ミクロラスボラに近いようです。
このためか、アクアリウムにおいては今もなお、ミクロラスボラグループの一種として扱われています。
一般的なラスボラ類と異なり、本種はどちらかといえば中性~弱アルカリ性の新しい水を好む傾向があります。
これは他のインレー湖産の種も同様なようです。
一度落ち着けば丈夫な種ですが、小型で臆病な性質のため食が細く痩せやすい点に注意が必要です。
混泳魚に十分注意し、生餌の使用や本種の匹数を多くすると良いでしょう。
ミクロラスボラ・ブルーネオン
学名:Microdevario kubotai
(旧名: Microrasbora kubotai)
別名:ミクロラスボラ・クボタイ
タイ南部原産の小型のコイの仲間です。
透明感のあるグリーンの体色と、体側のメタリックな輝きが小型ながらも非常に美しい種です。
1999年にミクロラスボラ属の新種として記載され、その美しさから一躍人気の小型美魚となりました。
その後、2009年にミクロデバリオ属へと再編成されましたが、アクアリウムでは今もなおミクロラスボラの一種として扱われています。
種小名の“kubotai”は、この魚を発見したタイ在住の日本人シッパーの久保田氏にちなんでいます。
飼育は水質にデリケートな部分を見せますがそれは導入時だけで、一度落ち着いてしまえば丈夫な魚です。
水槽内を活発に泳ぎ、やや暗めのシダなどを用いた陰性の水草レイアウトで非常によく映えます。
ミクロソリウムなどをメインとしたレイアウトと相性が良いでしょう。
ゼブラ・ダニオ
学名:Danio rerio
別名:ゼブラフィッシュ
インド原産のダニオです。
名前の通り体色の青のゼブラ模様が美しい種で、飼育が容易なことから入門種として古くから親しまれています。
最もスタンダードなダニオといえば本種でしょう。
コイの仲間らしく口元には2本のヒゲを持ち、オスはメスに比べやや黄色みが強いです。
ダニオ類共通の特徴として水槽内を活発に泳ぎまわります。
群れを作り機敏に動くので、見ていて飽きの来ない魚です。
飼育は容易でエサもなんでもよく食べ、繁殖力も旺盛です。
丈夫で飼育しやすく、入手もしやすいため、はじめて飼育する熱帯魚としておすすめできる一種です。
繁殖が容易な点から脊椎動物のモデル生物として実験、研究に利用されていることも多いです。
日本のメダカと同様に遺伝子の解明も進んでいます。
オレンジグリッター・ダニオ
学名:Danio choprai
Danio choprae
別名:グローライト・ダニオ
ミャンマー、イラワジー川原産の小型のダニオです。
黄色からオレンジに変化する美しい体色を持ち、緑のラインはヤマメようなパーマーク模様が入ります。
存在自体は古くから知られていましたが、比較的近年になってその美しさと飼いやすさが見直されるようになり、流通量が増えているようです。
飼育は容易で、餌も人工飼料で十分です。
温和で混泳にも向いていますが、同種間では若干小競り合いをします。
水槽内での繁殖も可能です。
他のダニオ類同様、バラまき型の産卵形態をとることが知られています。
レオパード・ダニオ
学名:Danio frankei
Danio rerio var.?
古くから親しまれているダニオです。
飼育が容易なことから入門種としてゼブラ・ダニオと共に親しまれる、ヒョウ柄が美しい種です。
入荷も多く、入手のしやすさも魅力です。
存在自体は古くから知られていますが、その生息地は明らかになっていません。
ゼブラダニオと非常に近縁で交雑も可能なことから、ゼブラ・ダニオの変異種や改良品種ではないか?ともいわれています。
飼育は容易で、ゼブラダニオに準じエサもなんでもよく食べます。
非常に飼育しやすい魚といえるでしょう。
繁殖力も旺盛で、飼育条件が良ければよく増えます。
パール・ダニオ
学名:Danio albolineatus
東南アジアに広く生息するダニオです。
ゼブラ・ダニオと並び古くからポピュラーな種で、淡いブルーの発色と体側後半部のオレンジのラインが美しい種です。
一般にはブリード個体が多く流通し入手しやすく、丈夫なため入門種のひとつとされています。
本種は広い生息域を持つことから産地差が見られ、体色が濃く、体側のラインの色彩が異なるタイプも知られています。
水槽内では他のダニオ類と同様元気良く泳ぐ姿が見られます。
飼育は容易です。
同種間ではやや小競り合いをしますがそれほど問題にはなりません。
同程度のサイズであれば、混泳にも向いた種です。
ゴールドリング・ダニオ
学名:Danio tinwini
ミャンマー、カチン州原産のダニオの仲間です。
2003年に初輸入され、金のリング状の模様が体側に入る美しい種です。
しかし、入荷量はやや少なめです。
ダニオの仲間ではサイズがやや小型で、ゼブラダニオに比べると一回り小さくなります。
性質も温和で、小型水槽にも適した種といえるでしょう。
飼育に関しては他のダニオ類に準じ、容易です。
ダニオ・エスメラルダ
学名:Danio roseus
Brachydanio roseus?
別名:ブラキダニオ・エスメラルダ
エスメラルダ・ダニオ
ローズダニオ
パールダニオ
タイ、ミャンマー、ラオス原産のダニオの仲間です。
2000年に記載された、比較的新しく発見された種です。
パールダニオをより豪華にしたような発色を持ち、光の当たり方で体側はブルーに輝きます。
腹部や各ヒレの赤い色彩の対比は、ダニオの中でも群を抜いた美しさといえます。
ただし、入荷はやや少なめです。
いくつか似た種が知られていますが、体側のラインが非常に不明瞭で、尾ビレの上下端に白いチップ、ヒレに入る模様などで区別が可能です。
飼育は他のダニオ同様に容易で水質にもうるさくありませんが、水温はやや低めを好みます。
同種間では若干小競り合いをしますが、性質は温和で他魚との混泳も可能です。
チェリー・バルブ
学名:Puntius titteya
スリランカ原産のポピュラーなプンティウスです。
オスは成熟すると全身が赤桃色に染まり、水草レイアウトに非常に映える存在となります。
真っ赤に染まるオスに比べ、メスはベージュを基調とした発色をするので雌雄の判別は容易です。
バルブ系の代表種といえば、本種を指すことも多いでしょう。
飼育は人工飼料を食べ、協調性も良いため飼育しやすい種です。
飼育自体は容易ですが、水草水槽に入れる際は柔らかい新芽はかじられてしまうことがあるので注意が必要です。
ゴールデン・バルブ
学名:Puntius sachsii var.?
Puntius semifasciolatus var.?
古くから知られるプンティウスです。
不規則な黒斑を持つ黄色のボディと赤く発色する各ヒレが美しい種で、飼育が容易なために古くから入門種として知られています。
以前は独立した種とされていましたが、現在では中国に生息するグリーン・バルブの改良品種とする説が有力です。
発情したオス個体では黒斑部分がメタリックなグリーンに輝き、非常に美しい色彩を表現します。
飼育は容易で、同程度のサイズであれば混泳にも向いた種です。
やや臆病なのである程度まとまった数で飼育し、餌が十分に行き渡るよう配慮が必要です。
オデッサ・バルブ
学名:Puntius padamya
Pethia padamya
ミャンマー原産のバルブの仲間です。
プンティウスの中でも極美種と賞賛され、近年になりミャンマーからのワイルド個体が知られるまでの間、改良品種と思われていました。
その後2008年に“Puntius padamya”として記載され、その後Pethia属という別属に変更されました。
体側にブルーと2つの大きな黒いスポット持ち、発情したオスが見せる真っ赤な体色とワンポイントになった背ビレは非常に美しいです。
飼育は容易です。
丈夫で水質の悪化等にも強くエサも人工飼料で問題ありません。
発情したオスは非常に気が荒いため、レイアウトや混泳魚には十分注意が必要です。
エサを与えすぎると体型を崩してしまいます。
適量の給餌を心がけましょう。
チェッカー・バルブ
学名:Puntius oligolepis
スマトラ島原産の小型のバルブです。
古くから小型のバルブとして愛好されてきた種です。
一見地味な種ですが、オスはじっくりと飼育することで各ヒレが赤く色づきます。
また鱗片が黒くなり、これがチェック柄のように表現されることからチェッカーの名がついています。
仕上がると、シックで重厚な美しさへと変貌を遂げます。
飼育は容易です。
プンティウスの仲間では性質が温和で小型なため、混泳にも向いています。繁殖も容易です。
レッドライン・トーピード・バルブ
学名:Puntius sp.cf.denisoni
インド原産の中型のプンティウス類です。
極美魚としてドイツで紹介され話題になった魚です。
以前は珍バルブとして高価でしたが、現在ではブリード個体がよく見られるようになり、ポピュラー種になりました。
スレンダーな体型と、鮮やかな赤の鼻先、黒いラインと尾びれのスポットが特徴で非常に美しい魚です。
飼育は容易で、水質にうるさくなく、餌もよく食べます。
ただし、餌のやりすぎで体型が悪くなりやすいので注意が必要です。
群泳が美しい魚種ですが、最大で18cmとサイズがやや大きくなります。
90cm以上の大型水槽で群泳させると、その魅力を最大限に楽しめます。
泳ぐ力が非常に強いため、水槽にフタを設置したほうが良いでしょう。
プンティウス・ゲリウス
学名:Pethia gelius
Puntius gelius
インド原産のプンティウスです。
最大でも4cmほどにしかならず、プンティウスとしては珍しくラスボラ類に並ぶほどの小型種です。
性質は非常に温和でおとなしい魚です。
透明感のある体色に黒い縞が入り、かわいらしい顔つきをしています。
グループこそプンティウスに属しますが、サイズや群れる性質、性格など、飼育上の性質はラスボラに近いところがあります。
飼育は容易で、性質が温和なため複数匹導入すると良いでしょう。小型の魚との混泳に向いています。
プンティウス・ペンタゾナ・ジョホレンシス
学名:Puntius pentazona johorensis
Systomus hexazona
タイ、マレーシア原産のプンティウスです。
透明感のあるオレンジをベースに黒~ダークグリーンのバンドが5本規則正しく入ります。
また、本種は背ビレの付け根に黒斑が入りません。
状態が良いと鮮やかなオレンジに染まり、大変美しい魚です。
以前は本種はプンティウス・ペンタゾナの一亜種として扱われていました。
pentazonaは5本の帯が走ること、johorensisはジョホール(マレーシアの州)産であることを意味しています。
アクアリウムではジョホレンシスの名称でなじみ深いですが、現在では属名も種小名も変更され、Systomus hexazonaという学名で記載されています。
飼育には弱酸性の水質が適し、導入時などは水質の変化で調子を崩しやすいので注意が必要です。
外観は後述のスマトラによく似ていますが、性質はスマトラに比べると非常におとなしいです。
他魚のヒレや水草をかじることもなく、混泳にも適しています。
スマトラ
学名:Puntius tetrazona
Systomus tetrazona
スマトラ島、ボルネオ島原産の小型のプンティウスの仲間です。
古くから流通量が多く、飼育が容易なことでもよく知られています。
体高のある菱形の体型と、4本の暗緑色のバンドが特徴的な種です。
ポピュラーな種の中でも、混泳には気をつけなければいけない種の代表種としてよく知られます。
エンゼルフィッシュやグラミー、グッピー等のヒレの長い種との混泳は適しません。
また、カボンバの新芽やエキノドルスといった柔らかな水草も、ボロボロにされてしまうことがあります。
混泳の問題児としてその名が知られていますが、近年ではブリードが進んだためか、以前ほどの気の荒さは見られなくなったようです。
しかしながら、気性の強い性質が消えたわけではありません。
混泳には十分に気をつけたほうが良いでしょう。
他魚と混泳させると何かとトラブルを起こしがちですが、混泳させないのであれば本種は入手しやすく、丈夫で飼育もしやすい良い魚です。
単独で飼育する分には、入門種としても最適です。
シルバー・シャーク
学名:Balantiocheilos melanopterus
タイ、マレーシア、インドネシア原産のコイの仲間です。
古くから親しまれるポピュラー種で、サメのような体型と三角形の背ビレ、銀色の体色に黒く縁取られた各ヒレからこのように呼ばれます。
なお分類上は、サメとは全く無縁です。
原産地では最大で30cmを超えるといわれますが、水槽内飼育では15cmほどで成長が止まることが多いようです。
飼育は容易で、エサも人工飼料で十分です。
性質も温和なのでサイズが同程度であれば混泳も可能です。
レッドテール・ブラック・シャーク
学名:Epalzeorhynchos bicolor
タイ原産のコイの仲間です。
熱帯魚の中でも古くから親しまれ、サメのような三角形の背ビレと漆黒の体によく目立つ赤い尾ビレが美しい種です。
本種も分類上、サメとは全く無縁の魚です。
中層付近を活発に泳ぎ、水草水槽では特に体の色彩が映えよく目立ちます。
アクアリウムでは流通量が多くよく見かける魚種ですが、原産地では一時期絶滅したと思われていたほど激減していた時期があったようです。
その後野生下でも再発見され、絶滅は免れていたようです。
飼育は容易で、エサも人工飼料で十分です。
最大サイズは12cmと、このグループの魚種にしては比較的小型です。
しかし、気が荒く同種間では非常によく争う点に注意が必要です。
混泳の際は十分な隠れ家を用意するなど、工夫が必要です。
例えば、本種よりも大きい種と混泳させたり、他の魚に本種を1匹だけ導入したりすると、混泳させやすくなります。
レインボー・シャーク
学名:Epalzeorhynchos frenatum
タイ原産のコイの仲間です。
レッドテール・ブラック・シャークの近縁種で、熱帯魚の中でも古くから親しまれています。
本種は尾ビレだけではなく、全てのヒレが赤く色付いている点で容易に区別が付きます。
体色もやや薄く、褐色に近い色をしており、尾筒に大きな黒い斑点が一つ見られます。
中層付近を活発に泳ぎ、水草水槽では特に体の色彩が映えよく目立ちます。
飼育は容易で、エサも人工飼料で十分です。
ただし、本種も気が荒く同種間では非常によく争う点に注意が必要です。
混泳の際は十分な隠れ家を用意するなど、工夫が必要です。
こちらもレッドテール・ブラックシャーク同様、本種よりも大きい種と混泳させたり、他の魚に本種を1匹だけ導入したりするのは有効です。
レッドフィン・レッドノーズ
学名:Sawbwa resplendens
ミャンマー、インレー湖原産の小型のコイの仲間です。
インレー湖の固有種で、1属1種のサブワ属に分類されています。
小型のコイの中でも特に美しい色彩で知られますが、雌雄で体色は大きく異なります。
オスは名前の通り、鼻と尾ビレが赤く色づきブルーに輝くボディとのコントラストが非常に美しく仕上がります。
メスはやや地味で、排出腔付近に黒いスポットを持ちます。
判別は容易です。
飼育は容易で温和な魚なので混泳にも向いていますが、美しい体色を引き出すのは難しいです。
美しい発色には時間がかかります。
またインレー湖は中性から弱アルカリ性となるようですので、弱アルカリに傾いた水でじっくり飼い込むと良いでしょう。
繁殖も可能で、水草の葉裏に産み付けることが知られています。
アラバマ・レインボーシャイナー
学名:Notropis chrosomus
アメリカ合衆国、アラバマ州原産のコイの仲間です。
スレンダーな体型とオレンジのラインが美しい種で、ブリード個体の流通が見られます。
仕上がった個体は、まさに虹色の輝きという表現がぴったりの発色を見せてくれます。
以前は希少種でしたが、少しずつ流通量は増えてきているようです。
アクアリウム用に流通する小型コイ科の魚の多くは東南アジア原産ですが、本種は北米原産となり、他の魚種に比べ耐寒性があります。
とはいえ18℃を下回ると厳しいようで、ヒーターなしで日本の冬を越すのは難しいかもしれません。
飼育は容易で、同程度のサイズなら混泳にも向いた種です。
活発に泳ぐので、遊泳空間を広くとると良いでしょう。
飛び出し事故も多いので、フタは必須です。
ダニオネラ
学名:Danionella sp.
Danionella translucida?
Danionella mirifica?
ミャンマー、タイ原産の小型のコイの仲間です。
何かの稚魚と見間違うほどのサイズの超小型種で、成魚でも2cmに満たないサイズが特徴です。
以前は世界一小さな脊椎動物とされていました。
ボララス類よりもさらに体高が低く、色彩は透明です。
このため同じ体長でも、より小型に感じます。
透明な体は食べたエサまで透けて見え、飼い込むと脊椎を中心にうっすらと黄色からグリーンの発色を見せてくれます。
群れで泳がせると清涼感があり、小さな水槽に適しています。
超小型種のため、エサや混泳魚には十分な注意が必要です。
エサは細かくした人工飼料や、ブラインシュリンプの幼生が適しています。
アンゴラ・バルブ
学名:Barbus fasciolatus
別名:アフリカンバンデッド・バルブ
南アフリカ原産のバルブです。
数本の黒いバンドとオレンジの体色が特徴です。
多くの魚種が東南アジア原産となる中、本種はアフリカ原産で通称「アフリカンバルブ」と称されるグループの代表種として知られます。
アクセントになった赤い眼と、中層付近をホバリングしながら泳ぐ姿が特徴的です。
じっくり飼い込んだ個体はより体色が美しくなります。
飼育は容易で、性格も温和です。
水草レイアウトによく似合う魚です。
ケラ・ダディブルジョリィ
学名:Chela dadiburjori
Laubuca dadiburjori
ミャンマー、タイ原産の小型のコイの仲間です。
「ハチェットバルブ」と称されるグループの一種で、ダディブルジョリィ・ハチェットバルブの名でも知られます。
青のラインとスポットが美しく、水槽の上層を元気に泳ぎます。
水草水槽にも良く映える魚です。
飼育も容易で、混泳にも向いています。
ハチェットバルブの名からイメージされる通り、胸ビレが良く発達していて、水面から飛び出すことがあります。
水槽にはフタが必要です。
小型コイ飼育の基本
小型コイの代表ともいえるラスボラ類の飼育は、テトラ類の飼育にほとんど準じます。
熱帯魚飼育において基本中の基本といえます。
したがって、観賞魚飼育用として販売されている製品の多くでラスボラ類の飼育は可能でしょう。
ラスボラをはじめとした小型コイ類とテトラ類との飼育上の相違点としては、水質の好みの違いが挙げられます。
テトラ類はほぼすべての種が弱酸性の軟水を好みますが、小型コイ科では一部に弱アルカリ性に傾いた水質を好む種がいます。
もっとも、適応力は比較的高いため、中性付近の水質であればどちらも飼育可能です。
発色を最大限まで引き出したい場合は、できるだけ現地の水質を再現するよう意識して水質を調整すると良いでしょう。
水槽の選択
特に選びません。
フィルターが設置できるものであれば、どのサイズでもOKです。
多くの種は群れる習性があるので、最低でも5匹以上で飼育するのが良いでしょう。
ボララスやミクロラスボラといった超小型種は、30cm水槽でもまとまった数の群泳も楽しめます。
今回紹介した魚種はほとんどが60cm水槽で問題なく終生飼育できますが、一部、上述の「その他のグループ」として紹介した魚種の中には、比較的サイズが大きく成長するものもいます。
最大サイズに留意しながら、水槽サイズを選んでください。
フィルター、照明が付いたセットなら、より安心して始めることができますね。
フィルターの選択
小型コイ類のみを飼育するだけなら特に選びません。
どのフィルターでも飼育可能です。
コスト感を重視するのであれば、投げ込み式フィルターで十分でしょう。
他の魚種と混泳させる場合は、混泳相手の要求に合わせると良いでしょう。
底床の選択
弱酸性を好む種にはソイルを、そうでない種には大磯砂がおすすめです。
餌
顆粒またはフレークの人工飼料が良いでしょう。どちらを与えてもよく食べます。
水面を泳ぎ回るので浮上性がおすすめです。
多くの種は餌付けに苦労せず、人工飼料を与えればすんなり食べてくれる個体がほとんどです。
めったにありませんが、どうしても食べてくれない場合には冷凍赤虫が有効です。
繁殖を狙う場合は、こちらも積極的に与えると良いでしょう。
混泳
ラスボラ類は基本的に温和で攻撃性はないため、混泳はさせやすいグループです。
ボララス類やミクロラスボラ類は極めて小さいので、温和な魚種であってもサイズ差があると攻撃対象にされうる点に留意します。
ダニオ類も温和で混泳させやすいグループですが、水槽内をせわしなく泳ぎ回ります。
ゆったりと泳ぐ魚種にとっては、ストレスを感じる原因になりうる点に留意しましょう。
プンティウス類は魚種によって温和なものとそうでないものがいるので注意しましょう。
性格は温和でも水草をかじるなど、何かしらの留意事項を持つものが多いです。
全体的に表層を群れで遊泳し、低層魚にはほとんど干渉しません。
小型コイ科は種による好む水質が異なるため、飼育したい種が要求する水質に合致する種と混泳させると良いでしょう。
小型コイの繁殖
観賞魚としてポピュラーなグループですが、家庭での繁殖難易度は高めです。
魚種により繁殖生態は大きく異なり、例えばラスボラ・ヘテロモルファでは葉の裏に粘着卵を生むことが知られています。
小型コイの代表ともいえるラスボラ類は、繁殖に関しては難しいです。
しかしゼブラ・ダニオをはじめとしたダニオ類に関しては、繁殖方法が比較的明らかになっています。
ここでは、参考としてゼブラ・ダニオの繁殖方法を紹介します。
もしかするとラスボラ類やその他のコイ科小型魚にも、応用できる部分があるかもしれません。
ゼブラ・ダニオの場合、メスは成熟すると抱卵して腹部が膨らみ判別可能になります。
この状態の個体が見られるときに、ウィローモスなどの産卵床になるものを入れておくと、オスがメスを追いかけ産卵行動に至ります。
産卵形態はバラまき型のため、産んだ卵はすぐに散らばってしまいます。
親魚に見つかれば、すぐに食べられてしまいます。
したがって、稚魚を育てるには産卵を確認したらすぐに採卵するか、親魚に見つからないほど複雑に水草を繁らせる必要があります。
親魚から卵を隔離したら、ふ化した稚魚には細かくした人工飼料を与えてください。
産卵させるまでの手順
- 熱帯魚の基本的な飼育設備を整えます。
- よく茂らせたウィローモスを入れておきます。
- 繁殖させたいゼブラ・ダニオのペアを入手します。
雌雄の区別は難しいですが、5~10匹ほど購入すれば大抵の場合オスメスそろっているでしょう。 - 冷凍赤虫を中心に、栄養価の高いエサを多めに与えます。
- 調子良く飼育を続けると、メスのお腹が卵で膨らんできます。
- しばらくするとメスが水草に卵をばらまく形で産み付けます。
- 卵を見つけたら、親を取り出すか、または卵が産み付けられた水草を別の水槽に隔離しましょう。
- そのままにしばらくすると卵はふ化します。
産卵後の育成
ふ化した稚魚は細かくした人工飼料を与えてください。
ある程度のサイズまで成長したら、ブラインシュリンプの幼生をふ化させて与えると早く成長します。
小型コイの病気
白点病や水カビ病、尾腐れ病などがよくかかる病気です。
よくある病気は下記で解説しています。
ラスボラ、ボララス、ミクロラスボラは「コショウ病」という、全身がコショウの粉をまぶしたようになる病気にかかってしまうことも多いです。
こちらは白点病に比べ、白点の一つ一つがコショウの粒のように細かいことで区別できます。
コショウ病は「ウーディニウム」という原生動物(せん毛虫)の寄生により発症します。
白点病の原因寄生虫である「イクチオフチリス」も同じ原生動物なので、基本的な対処も白点病と同様です。
コショウ病に対しては、薬浴だけでなく0.5%塩水浴とマジックリーフなどによるpH降下を併用すると、より効果が高まると言われています。
コショウ病は白点病よりも初期症状が分かりづらく、発見が遅れがちです。
発見が遅れることで白点病よりも治りづらく、治っても何度も繰り返すことが多い厄介な病気です。
▼こちらも参考
小型コイ用語集
トリゴノスティグマ・・・ラスボラ類の代表種ともいえるヘテロモルファが現在分類されている属名です。
エスペイ、ヘンゲリーも現在はこちらに振り分けられています。
実はヘテロモルファがRasbora属に分類されていたのは1998年までのことで、1999年には既にTrigonostigma属に変更されていました。
しかし、アクアリウムにおいてはヘテロモルファはラスボラ類の代表種的なポジションにいます。
名称の変更は流通の混乱を招くため、しばらく元のラスボラ属扱いのままで、その呼称が浸透していきました。
アフリカンバルブ・・・アフリカ原産のバルブの仲間です。
もとい、実はこちらが真のバルブです。
Puntius属の魚種に〇〇・バルブと呼ばれる種が数多く存在しますが、これはかつてPuntius属がBarbus属の一員だったころの名残です。
Puntius属は主に東南アジアを中心に分布するのに対し、Barbus属は主にアフリカに分布します。
当初はどちらもBarbus属でしたが、流通のメインは現在と同様に東南アジアの種が中心でした。
これと呼び分ける目的で少数派だったアフリカ産のBarbus属は「アフリカンバルブ」と呼び分けていました。
その後、東南アジアのグループは多くはPuntius属に変更になり、バルブという当時の名称だけがアクアリウムの世界には残りました。
プンティウスという名称は、近年になり浸透しつつあります。
一方で元来のBarbus属には、アクアリウムにおいてはアフリカンバルブと振り分けられた魚種が残りました。
実はアフリカンバルブこそが、分類上は真の意味での無印Barbus属なのです。
もっとも、近年ではアフリカンバルブは流通自体が少なくなってしまいました。
安定的に入荷が見られるのは「アンゴラ・バルブ」ぐらいでしょう。
ハチェットバルブ・・・胸ビレが大きく伸長し、ジャンプ力の高いグループです。
主にChela属に分類される種が該当します。
水面付近を泳ぎ回り、ジャンプ力に長けた性質を持ちます。
これはカラシンのハチェット類と同様の性質です。
分類上はカラシンの仲間のハチェット類とは全く遠縁ですが、これは収斂進化により獲得した形質といえるかもしれません。
飛び出し事故が多いので、水槽にはフタを用意したほうが良いでしょう。
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