レッドファントム・テトラ<熱帯魚解説>

カラシン・テトラ
カラシン・テトラ種類解説(熱帯魚)

どうも、ほにゃらら sp.です。

今回紹介するのはレッドファントムテトラ。

真紅のボディに、大きく広がる背ビレと尻ビレが魅力的な小型カラシン(テトラ)の仲間です。
体側に入る黒い大きなスポットも良いアクセントです。
鮮やかな赤い色彩が魅力です。

単体で飼育しても見ごたえがあり、水草レイアウト水槽に群泳させても人気の高い種です。
鮮やかな色彩と特異な体型から水草の緑に良く映え、大変目を惹きます。

レッドファントム・テトラとは

名前レッドファントム・テトラ
学名Hyphessobrycon sweglesi
分布コロンビア ― オリノコ川
サイズ最大体長5cm程度
最適pH6.0~7.0くらい

レッドファントム・テトラはコロンビア-オリノコ川原産のカラシンです。
小型ながらも背ビレと尻ビレを大きく展開し、真紅に染まる体色は存在感があります。

しかし、購入したてのうちはこちらの画像のような淡い赤を示します。
お世辞にも鮮やかとは言えません。

状態良く飼育することで、真紅の発色を見せてくれるのです。

真紅に染まったレッドファントム・テトラの群泳

同種のオス同士では「フィンスプレッティング」というヒレを広げ合う行動が見られます。
この行動により最大限までお互いにヒレを広げ合い、優劣を競います。
メスはオスに比べるとヒレがあまり大きく広がりません。

本種は東南アジアで大量にブリードされているため入手は容易です。
飼育も容易な上、性質も温和で混泳にも適しています。

本種の飼育に関しては、熱帯魚飼育に必要とされる基本的な設備を整えていれば、それでOKです!
飼育だけならpHもどちらかといえば弱酸性を好みますが、そんなに気にする必要はありません。
少しぐらいアルカリ性に傾いても平気です。

しかし、本種本来の発色を堪能するためには、弱酸性の水質に整えたいところです。
普通に飼育しているだけでは、真紅の発色は見せてくれません。
いくつかの条件を整える必要があります。


バリエーション

レッドファントム・ルブラ

レッドファントムにはより強い赤みを表現する“ルブラ”と言うタイプが知られています。

通常のレッドファントムより赤みを強く表現するので、人気の高いタイプです。
その分、通常の個体に比べるとやや高価となる傾向があり、入荷量も少なめです。

なお、その正体は……後述します。

最高潮の赤い発色を堪能するためにはいずれにせよ、弱酸性の軟水で状態良く飼育することが不可欠です。

ルブラの正体

“ルブラ”の正体は、主にコロンビア便で輸入される「赤い発色が最初から強いワイルド個体」です。

「”ルブラ”には本物と偽物がある」といわれることがありますが、実際は発色具合が異なるだけの同種なのです。特に地域変異というわけでもありません。

このため、実は厳密に言うと本物も偽物もなかったりします。
(本物偽物の議論とは一体何だったのでしょう。)

一応、発色の強いワイルド個体を仕入の便宜上“ルブラ”として区別することはあります。

背ビレで見分けられる説

ルブラは、背ビレに白があると偽物 といわれることがあります。
しかしこれは成長段階により背ビレの柄が変化しているだけ、というのが実際のところです。

背ビレの模様の変化は、レッドファントム・テトラをはじめとしたハイフェソブリコン属のカラシンではよく見られます。

幼魚期

幼魚では背ビレが上から「白、黒、オレンジ」の順で3色に染まります。

成魚期

成魚では先端だけ黒、全体が赤の2色になります。

よく見かけるブリード個体はこれに対し、発色が良くなるまで時間がかかります。
しかし、“ルブラ”は元々の発色が良いだけで、その後の飼育環境によっていくらでも変わります。
“ブリード”も発色に時間がかかるだけで、環境を整えれば同等の発色を見せてくれます。


よく似た別種

本種は“ファントムテトラ”と称される、体高のあるハイフェソブリコン属(旧メガランフォダス属)の代表種ともいえます。

赤い体色を持つファントムテトラ体型の種はいくらか存在するため、ピックアップしてご紹介します。

レッド・プリステラ

学名:Hyphessobrycon sp.

コロンビア、オリノコ川原産のカラシンです。

赤く透明感のある体色と黒の大きなスポットが入る点がレッドファントムと共通します。

成長しても背ビレや尻ビレが伸びずに短いままとなる点、レッドファントムに比べると最大サイズでも一回り小さくなる点で判別が付きます。

全体的に小ぶりでスマートなレッドファントムといった印象で、小型水槽ではこちらの方がおすすめできます。
幼魚のうちはなかなか区別が難しいです。

バルーンサーぺ

学名:Hyphessobrycon callistus

南米広域に分布するカラシン「サーペ」の改良品種です。

こちらも赤く透明感のある体色と黒の大きなスポットが入る点がレッドファントムと共通しますが、背ビレ、尻ビレが黒く縁どられる点で区別ができます。

飼育は容易ですがこのグループのテトラ類としては例外的に性質がやや荒く、自分より小さく動きが緩慢な魚に対しては攻撃性を見せます。
このため混泳の際は、注意が必要です。

ハイフェソブリコン・エピカリス

学名:Hyphessobrycon epicharis

ネグロ川、オリノコ川原産のカラシンです。

バラ色の体色と尾ビレ付近まで著しく伸長する背ビレが特徴的で、胸部の黒いスポットもやや後半に流れる形で入ります。

種小名の“epicharis”は魅力的という意味を持ちます。
入荷量が少なく希少な種であり、珍カラとしてマニア憧れの一種です。

飼育は容易ですが、美しい発色のためには色揚げ効果の高いエサを中心に与えましょう。


有用なアイテム

レッドファントム・テトラは飼育だけなら教科書通りのテトラであるため、一般的なカラシンの飼育方法で初心者の方でも飼育しやすいテトラです。

テトラ類全般に共通する基本的な性質については、小型カラシン共通ページをご覧ください。

しかし、真紅の発色を最大限に引き出すとなると、話は別です。
レッドファントムテトラ最大の魅力はこの赤い発色となりますので、できれば環境を整えたいところです。普通に飼育しているだけではあまり赤くなりません。

赤い発色を最大限に引き出すためには、弱酸性の軟水環境での飼育が欠かせません。
以下の3つのアイテムをそろえると良いでしょう。

※赤みの強いワイルド個体を入手したとしても、飼育環境が発色に適切な環境条件を満たしていなければ、どんどん色褪せていきます。

なお、魚自体は丈夫で適応範囲の広い種ですので、水質が直接的な原因で死亡することはほぼありません。

底床

栄養系ソイル

水質を弱酸性に整えてくれるため、底床は「ソイル」の使用がオススメです。

特に水草水槽での飼育が主になるため、水草との相性が良く弱酸性の軟水に傾ける作用の強い「栄養系ソイル」がおすすめできます。

魚中心で飼育する場合は、「吸着系ソイル」が良いでしょう。

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pH管理

pH6.0~6.5の範囲を維持するように心がけると、鮮やかな赤い発色が期待できるでしょう。

定期的にpH測定を行うことで、本種と水草にとって理想的な環境かどうかの確認ができます。

pH測定試薬
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▼pHの下げ方は下記も参考

エサ

色揚げ用飼料

全身が赤く染まるため、水質の調整だけでなく色揚げ機能のあるエサを与えるのも有効です。

カロチノイドやアスタキサンチンを含む餌を長期間に渡って与えることにより、その効果が表れてきます。

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照明

レッドファントム・テトラの赤みをより強めて観賞するためには、照明にもこだわると良いでしょう。

LEDの中には赤い発色を強めて表現するよう光が調節された製品もあります。

いわゆる色揚げLEDと呼ばれる照明が効果的です。

観賞性を高めたモデル
「vivid」
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混泳について

レッドファントム・テトラは非常に混泳向きのカラシンです。
テトラ類同士であれば基本的に問題ありません。

同じテトラ類同士や、ラスボラ、コリドラスなどが混泳相手として良いでしょう。

カージナル・テトラやインパイクティス・ケリーなどの青系の魚と組み合わせたり、ブラックネオン・テトラやプリステラなどのシックな体色のテトラ類と組み合わせると、鮮やかな色彩の本種は主役としてよく目立ってくれます。

混泳相手混泳相性備考
グッピー
グッピーは弱アルカリ性を好みます。
プラティ・卵胎生メダカ
多くの卵胎生メダカは弱アルカリ性を好みます。
カラシン・小型テトラ
コイ・ラスボラ
ローチ・ボーシャ・タニノボリ
フライングフォックス/アルジイーター
ドワーフシクリッド
サイズ差に注意
アフリカンシクリッド
×
エンゼルフィッシュ
ファントムテトラ類は体高があるので、
他のテトラ類よりはエンゼルフィッシュとの
混泳に向いています。
ディスカス
ファントムテトラ類は体高があるので、
他のテトラ類よりはディスカスとの
混泳に向いています。
ベタ・グラミー・アナバス
コリドラス
オトシンクルス・ロリカリア
プレコ
レインボーフィッシュ
多くのレインボーは中性付近を好みます。
ハゼ・ゴビー
フグ・パファー
×
エビ・ビーシュリンプ
稚エビは食べられる可能性があります。
レッドファントムテトラの混泳相性表
※混泳相手の種や性格によっては、例外もあります。
◎・・・混泳に適した組み合わせです。
〇・・・混泳は可能ですが、種や個体の性格によっては工夫が必要な場合もあります。
△・・・混泳は不可能ではありませんが、適しているとは言えません。工夫次第で可能になる場合もあります。
×・・・混泳には適さない組み合わせです。

基本的には、テトラ類に対し攻撃を仕掛ける生体でなければ、ほとんどなんでも混泳可能です。
テトラ類がトラブルの火種になることは少ないですが、テトラ類以外の同居魚同士の相性はよく考えてあげてくださいね。

テトラ類以外の生体間での相性はあるので、留意しましょう。


レッドファントム・テトラ まとめ

レッドファントム・テトラ。
真紅の体色が美しく、大きく広がるヒレの主張も強いことから混泳水槽でも、水草レイアウト水槽でも人気の高いカラシンです。

購入したばかりだと色が薄く、最初は触れ込みよりも魅力の薄い魚に感じるかもしれません。
しかし安定した環境でじっくりと飼い込めば、燃え上がるような真紅の発色に染まります。

最高の発色に至るまでには少々時間を要しますが、水草の緑との相性は抜群です。
ぜひ、気長に磨き上げていきましょう。

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投稿者
ほにゃらら sp.

福島県産のワイルド個体。
ロカリティの詳細は残念ながら記録がない模様。
アクアリウム歴はだいたい20年くらい。
「同属内で多様なバリエーション」が好き。若干コレクター気味。
つまりコリドラスや、ミクロソリウムが最高。ということですね。

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