どうも、ほにゃらら sp.です。
熱帯魚や金魚、メダカの調子が悪い時、困りますよね。
もしかして病気かな?と思ってみるも、見た目に異常は見当たらない……。
こんなとき、おそらくどこのご家庭の食卓にも置いてあるであろう「塩」が実は有効なのです。
今回は、その「塩」の使い方をまとめてご紹介したいと思います。
魚の調子が悪いように感じたとき、水量に対し塩分が0.5%になるよう塩を投入(0.5%=水1Lあたり塩5g)すると、多くの場合は解決します。
熱帯魚や金魚、メダカなど淡水魚全般に使えます。ぜひ知っておきましょう!
水槽サイズ | 塩投入量の目安 |
---|---|
30cm(水量約12L) | 60g |
45cm(水量約32L) | 160g |
60cm(水量約58L) | 290g |
塩水浴のメリット
多くの病気の初期症状に塩が効く!
初期症状であれば、およそあらゆる病気に有効です。
白点病、水カビ病、尾腐れ病……だいたいの病気は、発見がごく初期であれば薬を用いずとも塩のみの投入で治ってしまうことが珍しくありません。
ただし、松かさ病に関しては効きが悪いです。
鱗が逆立って見えるようなら、魚病薬の投入をお勧めします。
メチレンブルーなど、魚病薬には水槽内に入れると着色してしまうものもあります。
これを避けたい場合にも塩は有効です。
また、魚病薬との併用も有効です。
併用する場合は魚病薬にある記載の指示を守り、薬浴してください。
※魚病薬自体に塩化ナトリウムが入っていることがあります。
微々たる量ですが、併用する場合は塩分の総量を確認したほうが良いでしょう。
なんとなく調子が悪い時にも塩が効く!
見た目に異常はないけれど、なんとなく調子が悪そうというときに。
病気かもしれないけれど、原因が特定できないときに。
こんなときにも塩の出番です。
魚病薬は薬効の対象である病気を見極めないと効果がありませんが、塩は病気の種類を見極めなくともおよそ効果があります。
ただし、塩を入れたにもかかわらず回復効果が見られない場合は、外観では分からない何か重い症状にかかっている可能性を疑いましょう。
購入したばかりの魚のトリートメントにも!
塩は購入直後の魚の状態を立て直したいときにも有効です。
長い輸送距離を運搬されてきた魚は、疲労により状態を崩してしまうことがあります。
こんな時にも塩は有効です。
メインの水槽に入れる前に1週間程度塩水浴してから導入することで、より万全の状態で魚を迎え入れることができます。
特にグッピーや金魚に関しては必須と言えるほど、塩水浴トリートメントは有効です。
ケンカした魚の療養にも!
混泳相性が悪い場合、ケンカして傷ついてしまうことがあります。
比較的おとなしいとされる種類でも、個体同士の性格によって合う、合わないがあるのです。
特に、シクリッドやエンゼルフィッシュでは激しいケンカをしてしまいがちです。
傷ついてしまった個体の養生にも塩水浴は有効です。
塩水浴のやり方
塩水浴のやり方はいたって簡単です。
飼育水が0.5%塩水になるよう、塩を投入します。
投入すべき塩の量は、水1Lあたり5gです。
例えば、60cm水槽であれば水量は約58Lなので 58×5=290g といった具合です。
1袋1kgの場合、1/3近くの量を使う形になるので「えっ、こんなに入れるの」と最初は驚くかもしれません。
入れてしまって大丈夫です。
必ずしも厳密に測る必要はなく、多少塩分が前後する程度には問題ありません。
食卓にある塩も使用可能ですが、観賞魚用に専用品も販売されています。
塩の種類について
ひと口に塩といっても実は3種類あります。
大差はありませんが、効果に微妙な差があります。
せっかくなので押えておきましょう。
1.食塩
塩化ナトリウム99%以上の純度の高い「塩」です。
水質に影響を与える余分なミネラル分がほとんど含まれていません。
魚病薬と併用する場合は、不純物が少ないこの塩が最も望ましいです。
2.塩
海塩由来のいわゆる一般的な「塩」です。
塩化ナトリウムが主成分ですが、にがりに由来する塩化マグネシウムなど微量のミネラル分を含んでいます。
塩単品で使用する場合、魚種によってはこのミネラル分はプラスに働くことがあるようです。
3.人工海水
海水魚飼育に必須となる「塩」です。
多様な微量ミネラルが含まれており、海水魚飼育には欠かせません。
しかし、淡水魚の塩水浴用に使用する場合はあくまでも「代替品」という位置づけになります。
厳密に測りたい場合
厳密に塩分を図りたい場合は、塩分計を利用すると良いでしょう。
どうして塩が効くの?
最後に、なぜ塩が病気に効くのか。
そのメカニズムを少し説明します。
まず、塩自体に病気を治す効果はありません。
当然と言えば当然です。薬品ではなく、何の変哲もないただの塩なのですから。
では、なぜ効くのかというと。
塩には「その魚が本来持っている免疫を最大に引き出す」効果があるからです。
魚は基本的に、「浸透圧の調節」を行わなければならない体の構造になっています。
魚の体内の塩分は0.9%程度ですが、調節の仕組みは淡水魚と海水魚では逆の仕組みとなっています。
淡水魚の場合、ここで塩分の添加により体液に近づけることで、この「浸透圧調節」にかかる負担を一時的に軽減できます。
0.5%程度に保つと水分の流入量が減少し、浸透圧調節にかかる負担を軽減できるようです。これにより、浸透圧調節に回していた体力を免疫に回すことができるようになります。
その結果、免疫力が引き出される という仕組みです。
水の塩分が濃すぎると普段との環境の変化が大きすぎて逆に負担となるため、0.5%がちょうどよい値とされています。
魚の状態を見極められる方であれば、0.2~0.8%くらいの範囲で適宜調節しても良いでしょう。
よくわからなければ0.5%にしておくのが無難です。
副次的な効果ですが、体表に付いている病原菌や寄生虫は塩水中では活動が抑制されることが多いようです。
魚の免疫を整えつつ、体表の病原菌や寄生虫の活動を弱めることができるので、結果として初期症状なら治ることがある……というのが、「塩で病気が治る」の真相でしょう。
なお、体内に入り込んでいる病原菌にはほとんど効果がないようです。
松かさ病に効きにくいのは、このためと考えられます。
高濃度塩水浴
体表に付着する寄生虫を薬品を使わずに、一網打尽にする秘技です。
塩分0.9~1.0%と高濃度の塩水に、30分~1時間だけ泳がせるという荒業です。
魚の様子を見ながら行う必要があり、魚の様子に異常が見られた場合はすぐに中止する必要があります。
淡水棲の生物は、体液より塩分が高い環境では浸透圧調節ができないので、否応なく死滅します。
寄生虫だけでなく魚も死んでしまう濃度ですので、寄生虫だけ死滅して魚は耐えられる時間を見極めて行うことが重要です。
うまく時間を調整できれば効果は大きく、体表に付く寄生虫を全て落とすことができます。
しかし時間の調整を誤ると、魚に致命的なダメージを与えかねないリスクもあり、諸刃の剣と言える究極の塩水浴です。
塩水浴のデメリット
塩水浴は様々な場面で有用ですが、必ずしもメリットだけではありません。
デメリットもあることを、よく認識しておく必要があります。
フィルターが入っている場合はバクテリアにダメージを与えること、隔離水槽などでフィルターが入っていない場合はアンモニアの毒性を強めることから、長期使用には不向きであることが分かります。
また、あまり長期間浸透圧調節機能を使わせないことも、弊害を生む可能性があります。
こまめに換水を行うなどして、長くても2週間以内で決着を付けるべきでしょう。
それで決着がつかない場合、塩水浴のみでは解決できないトラブルを抱えていると判断したほうが無難です。
水草へのダメージ
塩は水草にダメージを与えます。
水草が入っている水槽に直接塩を投入した場合、水草が弱ってしまうことがあります。
できれば専用の塩水浴用水槽を使用するか、あらかじめ水草だけ取り出しておくと良いでしょう。
ろ過バクテリアへのダメージ
塩はろ過バクテリアにもダメージを与えます。
専用の塩水浴用水槽を使用することで、このダメージは回避できます。
小型魚であれば、30cm程度の塩水浴・薬浴水槽を1本持っておくと便利でしょう。
イオン交換系底床・ろ材との相性
吸着系ソイルやゼオライト系の底床・ろ材など、水質浄化にイオン交換の機能を利用した製品を使用している場合、塩を投入することで逆イオン交換が行われてしまいます。
こうなると、吸着した不純物を放してしまうことがあります。
せっかく吸着した余分なミネラルやアンモニアが離脱し、急激にpH・硬度が上昇してしまうことがあります。
もし悪影響が出た場合は、直ちに水換えをして塩分を下げましょう。
高pH化・アンモニアの強毒化
塩水は水のpHを上げやすくします。
そしてpHが高い状態ではアンモニアの毒性が強まります。
特に隔離水槽ではろ過バクテリアが存在しないため、アンモニアはすぐに分解されません。このため、換水が重要です。
イオン交換系底床・ろ材で述べた通り、塩水中ではゼオライトなどの吸着材が吸着効果を発揮しない点にも留意が必要です。
水中のアンモニアの除去は吸着材に頼れないため換水が主力となります。
特に隔離して専用の塩水浴用水槽を用いる場合は意識しましょう。
換水の際は、元々調整した塩分と同じ塩分にした水を使用します。
塩水浴をやめて通常飼育に戻す場合は、真水で水換えをしてください。
メダカの塩水浴
一般的にトリートメントの塩分は0.5%にすることが多いのですが、メダカの場合は塩分耐性が高いので、もう少し高く添加できます。
メダカを塩水浴させる場合、0.7%程度まで引き上げてさせると良いでしょう。
目安としては水1Lあたり7gです。
塩水浴のつかい時 まとめ
魚の調子がなんとなく悪い時に、とりあえず試せるため塩は万能と言えます。
早期発見であれば、塩だけで治ってしまうこともあります。
投入量は水量×5g ぜひ覚えておきたいところです。
一方で、メリットばかりではありません。デメリットもよく把握しておきましょう。
水草やバクテリアにダメージを与えること、ろ過がない環境下ではアンモニアの毒性を強めることは要注意事項です。
また、魚病薬ではないので過信は禁物。
あくまでも補助的に用いると良いでしょう。
ここで紹介した塩の投入量、正確に求めたい場合には実はちょっと計算式が異なります。
溶かす物質の重量(g) ÷ ( 溶かす物質の重量(g) + 水の重量(g) ) × 100
となります。
厳密には0.5wt%(0.5重量%)というのが正確なところです。
しかしアクアリウムにおいて、魚の状態を整える目的で用いる場合。
水1Lあたり5gと覚えておけば、それでほとんどの場合は十分です。
観賞魚の診療所
日本動物薬品株式会社様が観賞魚の病気と治療方法、魚病薬の使い方についてまとめたサイトです。
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