今回ご紹介するのは「スジエビ」です。観賞用よりも、釣りのエサや肉食魚のエサとして知っている方が多い種ですね。
海水・汽水・淡水に生息する近縁種もまた食用として利用されています。一方で、色彩豊かで変わったフォルムで観賞用としても人気の高い、スジエビを深掘りしていきます。
生物学データ
学名:Palaemon paucidens
分類 | テナガエビ科・スジエビ科 |
体長 | 8cm |
食性 | 雑食(肉食性寄り) |
分布 | 日本・朝鮮半島南部・東南シベリア サハリンetc. |
日本およびその周辺と分布が広く、ほとんどの種類は汽水域・海に生息していますが、本種は淡水のスジエビです。
透明感のある甲殻に7本の黒いバンド、大きな眼と長い前脚が特徴です。
ヌマエビとは目視で判別可能できますが、テナガエビ類の近縁ということもあり、テナガエビの幼個体との判別が難しくなります。
『シラサ』『モエビ』『カワエビ』との別名を持ちます。
昼は石や水草や流木などに隠れて過ごし、夜になると活発に動きます。食性は肉食性が強く出ますが、藻類なども食べます。
食べても、飼っても良し!
スジエビは3~5cmほどの小さなエビで、モエビ(藻蝦)やカワエビ(川蝦)などと呼ばれます。名前の由来は胸にスジが見えることにあるようです。
釣りのエサや水棲カメ、大型熱帯魚、フグなどのエサとしてのイメージが強く、観賞用としてのイメージはあまり持たれていないと思われます。
琵琶湖でも採取できる本種は、滋賀県の郷土料理「えび豆」になくてはならない食材でもあるのです。
幼テナガエビ・スジエビの見分け方
外見はほぼ同じ。個体差による部分もあるでしょうが、判別できる部分があります。
上記3つのポイントで見分けができます。他に挙げるとするとスジエビは名前の通り
多くの黒いバンド模様がありますが、テナガエビにはありません。
個体差があるものの、見分けることが可能になります。
スジエビの仲間などなど……
スジエビB型
学名:Palaemon paucidens
日本および朝鮮半島に生息。A型・B型共に体色やバンド模様は本種と同じですが、B型は少しスジ模様が太く、サイズは大型になるといわれています。
※入荷時は6cmほどあり、通常のスジエビよりサイズが大きかったようです。
B型は塩分の多い湖や、河川の下流域に生息しています。身近にいる淡水のスジエビはA型が多いといわれています。
A型は陸封型で水槽内繁殖が可能な大卵型、B型は降海する小型卵のため汽水が必要となります。
オレンジスジエビ
学名:Palaemon paucidens var.
スジエビの改良品種です。
殻は透明感のあるオレンジの配色がきれいで、バンド(スジ)の色は黒ではなく、赤や褐色といった特徴があります。
『赤スジエビ』との別名を持ちます。
イルミネーション・シュリンプ
学名:Palaemonetes tenuipedium (Desmocaris sp.)
インドネシア原産。
特徴的な配色から名前が付けられたように、暗い水槽や水草の陰で体に散らばるスポットが輝き非常に美しい種です。
透明な体の中に金色に輝くスポットが並び、尾柄部分のスポットが特に目立ちます。
テナガエビやスジエビに近縁なグループになります。
『ゴールドスポット・シュリンプ』という別名も持ちます。
クリスマスツリーシュリンプ
学名:Macrobrachium kulsiense
インド原産のテナガエビ。小型の種で、甲殻にちらばるスポットがとても美しい種です。額角も独特の形をしています。
『インドパールシュリンプ』『スノーフレークシュリンプ』と言う別名を持ちます。
※テナガエビの仲間ではありますが、大きく成長するとスジエビのように飼育できます。
ネグロロングホーン・シュリンプ
学名:Palaemonetes sp.
ネグロ川(ブラジル)・オリノコ川(コロンビア)に生息。
透明感のある甲殻に腹部から腹節にかけて黄色いラインが入ります。
野生下ではpHが低い弱酸性の軟水が適しているといわれています。
『ネグロロングノーズ・シュリンプ』という別名を持ちます。
スイミングシュリンプ系
スイミンググラス・シュリンプ
学名:Palaemonetes ivonicus
ペルー、コロンビアに生息。
4cmと小型で体型も細く、体色は澄んだ透明感があります。
水槽内では活発に泳ぎます。
『スモール・スイミング・シュリンプ』という別名を持ちます。
アフリカンスイミンググラス・シュリンプ
学名:Desmocaris trispinosa
中央・西アフリカに生息。
スイミング・シュリンプと似ていますが、生息地が異なります。
体色は透明化感があり、若干薄く青みがかっています。
『ナイジェリアンスイミング・シュリンプ』という別名を持ちます。
レッドドット・シュリンプ
学名:Macrobrachium sp.?
バングラデシュ原産。細かいスポット模様が美しく、長い前脚と先端が赤く、長い額角を持ちます。
大きな点状模様は青や赤といった色ですが、広がる細かい点状模様が赤く入っているのが特徴です。
『インドレッドドット・シュリンプ』『レッドスポッテド・シュリンプ』という別名を持ちます。
インドクリスタル・シュリンプ
学名:Macrobrachium idella?
インド原産。
テナガエビの仲間とされています。
体型や色味スジの入りかたがスジエビのような特徴を持ちます。
※前脚のハサミが大きいため、小さな種との混泳は適しません。
インドピーコック・シュリンプ
学名:Macrobrachium sp.?
インド原産。
詳細な情報がありません。
※各特徴からスジエビに近いタイプといわれています。
アイボリー・シュリンプ
学名:Palaemontes sp.?
(Macrobrachium sp.?)
インド原産。
スジエビや、テナガエビのような体型で、二本の前脚は長く、名のとおり体色は明るい黄色~ややオレンジ色が特徴です。
※緑の強いものや白に近い配色の個体もいて、色彩変異も楽しめます。
詳細は不明な点が多く、水槽内での繁殖などについても不明です。
海水の仲間
オキスジエビ
イソスジエビ
海水にもスジエビの仲間がいます。色鮮やかで透明感のある体色は淡水のスジエビの仲間に似ています。
近縁類
こちらの記事でテナガエビのご紹介をしています。あわせてお読みください。
飼育環境
水槽サイズ
30cm以上の水槽であれば問題なく飼育可能です。
温厚な種ではありますが、過密な飼育は避けてください。エサの取り合いによる小競り合いを避けるため、隠れられる場所を多くご準備ください。
フィルター
急激な水質変化(悪化)に弱いため、ろ過能力の高いもの、飼育容器のワンサイズ上のものを選ぶと良いでしょう。
水温・水質
最適な水温:23℃、適正水温は10~25℃と幅広いですが、涼しい場所を好みます。
※日本にいるエビであることから低水温にも強く、水が凍ることがなければ冬を越すこともできます。
水質は弱酸性~弱アルカリ性となります。
※急な水質の変化には弱いため、導入時は水合わせを行うようにしましょう。
底床
甲殻類という点を考えれば田砂・大磯砂・玉砂利など弱アルカリ性に傾く底床を使うようにしましょう。
再利用できる点でも長持ちしますが、長期利用により成分が減少していくため、
弱アルカリ性へ傾ける効力は弱くなるので注意が必要になります。
ソイルなども使用は可能です。水草を入れたレイアウトをお考えであれば、弱酸性寄りに近づけた飼育が理想になるでしょう。
レイアウト
隠れ家になるような流木や石などを多くいれたレイアウトが良いかと思います。
水草はウィローモス・アナカリス・カボンバなどがオススメです。
※葉は小さくても量が多いこともあって隠れる場所が豊富ですが、スジエビは水草を食べるので
枯れないよう注意が必要です。
餌
自然下では、小魚(メダカ程のサイズ)や水生昆虫、小型の甲殻類、貝類、ミミズなどを捕食するほど肉食性が強いですが、藻類や水草も食べます。
生き餌や冷凍アカムシ・人工飼料などで対応できます。
※餌が少ないと共食いをするので餌を十分に与えるようにしましょう。
混泳
テナガエビの仲間であることもあり、大きな個体は貪欲で夜に他のエビや魚を襲うことがあります。
過去に『マジック・シュリンプ』という名で、黒ヒゲコケをよく食べるというスジエビの仲間が流通していました。
マジックシュリンプが、黒ヒゲコケを食べるように改良された種なのか、特殊な食性のスジエビの一群かはわかりませんが、スジエビの中には変わった食性を持つタイプも見られるようです。
しかし、スジエビの仲間は基本的に肉食性が強い種が多いため、混泳については、小魚や小型のエビを避けた方が良いと思われます。
藻類や草を食べる性質もあります。
食害を受けてしまうので水草も種類は選ぶ必要があるでしょう。オトシン・貝類は混泳可能です。
※オトシン自体が温厚な種ですが、捕食対象にならなければ混泳は可能となります。
繁殖
スジエビには、『淡水で繁殖可能なタイプ』『汽水がないと繁殖ができないタイプ』の2タイプがいます。※海外種でも純淡水での繁殖可能なタイプがいます。
各タイプで繁殖方法が異なるので、方法別に参考記事をご紹介します。
まとめ
スジエビは、観賞用として認知されるより、飼育している魚のエサや釣りなどのエサ、食用といった活用方法で認知される、観賞用とは離れた位置にいる生体です。
テナガエビ科なので小さなテナガエビとして飼育してみたり、タンクメイトとして混泳や繁殖を楽しんでみても良いかと思います。
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